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2019.9.27 06:18/ Jun

「有意差あり」は組織を変えない!:あなたの調査結果のフィードバックは「相手本位」ですか?

 中原研や中原ゼミでは、いくつかの会社・組織の現状にかかわる組織調査を実施し、それらを組織にフィードバックして、組織変革に役立てるプロジェクトを実施しています。
   
 取り扱う対象組織は多くは「企業」・・・ときには学校。
  
 扱うデータは、人事にまつわるデータから、組織内のアンケートデータ、果てにはパルスサーベイのデータまで、データは様々です。
  
 こうした活動は、「研究」だけではありません。
  
 大学院の授業「人材開発・組織開発特論2」などは、まさに、そのものずばりの授業。
  
 この授業では、学生らが数名のグループを組んで、自分たちでクライアントを決め、彼らに対して組織調査を行い、フィードバックして、人材開発・組織開発・リーダーシップ開発を実施することが求められます。
  
 人材開発・組織開発・リーダーシップ開発は「やってみなければ学べない」
  
 来年度に迫った大学院新コース設置に向けて、様々な試みが行われています。
  
立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コース
https://ldc.rikkyo.ac.jp/
  
大学院経営学研究科経営学専攻リーダーシップ開発コースの説明会を開催
https://www.rikkyo.ac.jp/news/2019/08/mknpps000000ywz8.html
  
大学院第一回説明会資料・動画を掲載しました
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/2019/0913/
   
  ▼
    
 ところで、収集し、分析して、データをいかに扱い、どのように「お届け」するのかは、非常に大きな問題です。
  
 そこには、絶対に大切にしなければならない「原則」があります。
  
 それは
  
 フィードバックするデータは「相手本位」でなければならない
   
 ということです。
  
 要するに、
  
 相手が「理解」できなきゃ、意味がない
 相手が「ピン」とこなきゃ、意味がない
 相手が「ははーん」とうならなきゃ、意味がない
 相手が「対話して、解決してみようか」と思わなきゃ、意味がない
  
 ということです。
  
 なぜなら、立ち上がるのは、「研究室やゼミメンバー」ではなく「相手」だからです。
あくまでも現場にたつのは「相手」
  
  ▼
  
 しかし、ここをまったく誤解しているフィードバックは実に多いものです。そして、それは、データの分析者が専門家であればあるほど、そうなる傾向が強い気がするのは気のせいでしょうか。
  
 どんなに高度なモデリングをして全体像を一覧できても、どんなに高度にかつ厳密に測定ができていても、「相手」がわからなければ意味がない。
  
 AIを使っていようが、機械学習だろうが、ディープラーニングだろうが、そうした手法を問うことには、意味がありません。
    
 どんなに高度な分析結果でも、
  
「相手が理解し、ピンときて、ははーんと思い、対話に向かいたい」と思わなければ意味がない
  
 のです。
  
 せんだって、中原ゼミ・学部生3年生の佐藤智文(さとう・ともふみ)君が、こんないいことを言っていました。
  
「有意差あり」は、組織を変えない
  
 僕は、ここ数年で学生が言ったなかで、もっとも素晴らしい名言だと思います。
  
 彼は、今、立教経営の3年生。
 BLPのデータアシスタント(学生アシスタントの一種で、データを取り扱う専門のアシスタント)として、田中聡さんや木村充さんの指導のもと、様々なデータを分析して、フィードバックすることに挑戦しています。佐藤君は、分析をしていて、このことに気づいたといいます。素晴らしいことです。
  
 Be simple!
 これがもっとも重要なことです。
  
 いまや、わたしの関係するプロジェクトの多くでは、度数(%)しかフィードバックしません。多くのひとが理解できるのは、結局、度数の比較でしかないからです。
  
(だから、高等教育の現場で行われている機関調査(IR)とか、その手のプロジェクトにも、高度な分析は必要はありません・・・高度な分析をしても、文系の先生にはわかりません。また有意差やらモデリングを行っても、文系・理系入り交じる組織に、それを返して、それぞれなりの基準で、結果を解釈されることの方がややこしい事態を招くのです・・・閑話休題)
  
  ▼ 
  
 また、組織調査では、ものすごく網羅的に、数百にわたるボリューミーな診断項目などをフィードバックするようなシートも、まま、見受けられます。
  
 しかし、これとて、どんなに網羅的であろうが、どんなにボリューミーであろうが、相手が「相手が理解し、ピンときて、ははーんと思い、対話に向かいたい」と思うようなデータ提示を行わなければ意味がありません。
  
 Cummings and Worley(2009) には、フィードバックするべきデータに関して、様々な留意点が述べられています。
 それを参考にして、データを現場に「お届け」するときに留意したいポイントを列挙します。
   
1.そもそも「対象者」に関係があるデータ(relevant)
・組織の課題解決と関係があるデータがフィードバックされるべき
・他の組織のデータをフィードバックしても、さして意味がない
  
2.理解できるデータ(Understandable)
・メンバーがすぐに解釈できるデータであるべき。
・グラフや表などを用いて、理解がすぐにできるようにする   
   
3.イメージしやすいデータ(Descriptive)
・具体的な行動にひもづいたデータであるべき
・イラストや事例などがあるとよい
  
4.要点がまとまっているデータ(Summarized)
・データはしばしば多すぎて、クライアントが解釈出来ない。
・データが多すぎると、変革そのものが不可能だと思う
・データをまとめることは必要、だが歪みを生じさせない
  
5.信頼性のあるデータ(Verifiable)
・正確なデータ。確実な行動を導くことができる
・クライアントの言葉を直接用いる   
  
6.タイムリーであること(Timely)
・データは集計・分析されたらすぐにフィードバックされるべき
・情報の鮮度があるので、メンバーが分析する動機がわく
    
 ▼
  
 今日は人材開発・組織開発・リーダーシップ開発にまつわる「データ」のお話をいたしました。
  
 あなたが相手に提示しようと思っている「データ」は「相手本位」ですか?
   
 「有意差あり」は、組織を変えない
  
 そして人生はつづく
  
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