ASTD2004にいってきた!

2004/06/01 Update

 2004年5月23日から、ワシントン・コンベンション・センター@ワシントンDCで開催されている「ASTD2004」という学会に参加しています。

ASTD2004
   
  

  

ワシントンの中心部から車で10分くらいでしょうか。ワシントンコンベンションセンターは、とても大きな会場です。ただ、周囲の治安は、あまりよくないようです。

  

 ASTDとは「American Society of Training and Development」の省略です。「企業の人材育成担当者」や「人材マネジメント」を担当する役員である「Chief learning officer(チーフ・ラーニング・オフィサー)」、そしてそうした領域で研究を行っている研究者が参加している学会です。

 この学会、今年でなんと60回目なんですね。第二次世界大戦前後、各企業が生産を拡大しようとした際に、いったい「どのように人材を育成するべきか」という関心の高まりから、学会が生まれたそうです。1960年代のインストラクショナルデザインの勃興、そして、1990年代のeラーニングの台頭。これまでいくつかの波をのりこえて、ここまできたのですね。

 ASTD
 http://www.astd.org/

 ASTD2004
 http://www.astd.org/ASTD/conferences/ice/ice04_home

 この学会、毎年、アメリカで開催されており、参加者は1万人だといいます。世界各国から参加者がいるように思います。アジア系では、特に韓国と中国からの参加が目立ちます。でも、日本からも多いかな。少なくとも100名以上は参加しているように思います。

 カンファレンスの他に、人材育成関連のサービス、ソリューションなどを集めた「エキスポ」も開催されているんですね。こちらの方は、幕張メッセのような広さの会場が、すべて「それ関係」の展示でうまるほどです。

ASTD2004
   
  

  

エキスポは、こんな感じです。本当に広い会場で、このはしからはしまで、すべてが人材育成グッズで埋まっています。

  

 ところで、なぜ、僕がこの学会に参加しているか、ということから話をはじめましょう。もう既に日記でさんざん述べているので、あらためて言う必要もないのですが、実は、僕は、去年から「企業」をフィールドにした「学習研究」「教育研究」を少しずつ取り組み始めているのです。「研究」の成果は、これから(2005年以降)、徐々にでてくるのではないかと思います。

 管見ながら、この領域は、なかなか教育学の先行研究がないのですね。経営学、経済学、社会学、心理学など、関連する研究領域はたくさんあります。でも、僕の主たる関心である「教育や学習の場をつくる」ということに、ジャストミートするような研究って、そう多いわけではない。そこに「教育」とか「学習」という観点を持ち込んで研究をしてみたい、というのが、僕のもともとの関心です。是非、共同研究のパートナーになっていただける企業、研究にご協力いただける方がいらっしゃいましたら、とても嬉しいです。

 あっ、これ誤解を避けるために前もって言っておきますが、この領域の先行研究が少ないのは、日本に限ったことではないですよ。ASTD2004では、何人かの研究者の人と話す機会を得ました。で、僕は決まったようにこう言っていたのですね。

「(拙い英語で)実は、この領域に僕はあまり詳しいわけではないんですよ。アメリカと違って、こういう領域って、日本のアカデミズムではあまり研究されていなかったと言えるかもしれませんね。」

 でね、帰ってくる答えはいつもこんな感じです。

「(流暢な、そして速すぎる英語で)June(僕は海外では、Juneと書いている。Junと名乗ると、ユンと呼ばれる)、それはアメリカでも同じ状況だよ、だから、これから、みんなでどうやって研究をしていくか、コンセンサスをつくらなければならないんだろ。これから僕らで、協力して、新しい領域をつくるんだよ。」

 昨日もヒューレットパッカードの研究者が同じ事を言っていました。彼らは、この問題を正面から取り扱った本を執筆し、つい先日、出版されたそうです。こういう状況なのに、日本では、よく「アメリカは非常に進んでいる」と言われていますね。でも、それは必ずしもこちらの人の認識とは違うようですよ。

 まぁ、話がそれました・・・ともかく、「どちらが進んでいるか」なんてどうでもよいことです。ともかく、僕の取り組みを紹介しますと、去年は、「はじめての人材育成:ワークプレイスラーニングデザイン入門」(中央経済社)という本を、何人かの執筆者の方々と執筆しました。

中原淳(編著)、北村士朗・荒木淳子・松田岳士・浦嶋憲明・小松秀圀(著)(近刊) ここからはじまる人材育成 - ワークプレイスラーニング・デザイン入門(仮題). 中央経済社, 東京

 この本は、企業の人材育成担当者の方々にインタビューを行い、「彼らがどのような苦労と工夫のもとに、それぞれの学習環境をつくりあげているか」を論じた本です。いわゆる狭い意味での「研究知見」ではないですが、僕にとっては、かなり冒険的な一冊です。この取材の際には、とてもオモシロイ語りを聞かせていただきました。富士ゼロックス、富士通、マイクロソフト、デンソー、オートバックス、東京海上火災の各社の担当者の方には、この場を借りて御礼申し上げます。

 この本、僕は執筆者でありながら編者でもあったわけですが、企業の人材育成担当部門にはじめて着任なさった方が、手にとって、1)先行事例、2)基礎的なキーワードを知ることができるように編集を心がけたつもりです。先日、校正を終えたので、おそらく、2004年7月には本屋の書棚に並ぶことと思います。

 本の執筆に取り組んだのが去年・・・校正を終えたのが先日・・・こういうと、なんだか企業に対する僕の興味・関心は、突然、ふってわいたように出てきたと思われるかもしれませんね。確かに「本格的な取り組み」は去年からです。しかし、実は、僕の興味関心の根はとっても深くって、大学院修士課程の頃には、「いつか企業を対象とした教育研究をやってみたい」と言っていました。これ、本当よ。

 誤解を避けるために言っておきますが、僕は「企業を対象にした学習・教育研究」がしたいのであって、「中原は別の学問に目移りしてるぞ」「中原は企業に入りたがっているぞ」とかいうのは、全くの誤解です。「熱しやすい」のは僕の性格ですが、あいにく同時に「冷めにくい」。どんなフィールドをもとにモノを考えたとしても、僕の専門性・興味関心は、次のとおりです。

1) 人が知識を生み出す場、相互に学ぶ様子、教える姿を観察・分析すること
2) 楽しく学べる環境、より効果的に教えることのできる環境を開発すること
3) デザイン・開発した環境の効果を評価すること

研究方針・目的について、こちらをご参照ください

 要するに、どんなフィールドであろうと、それが小学校であろうと、企業であろうと、「学習する」「教育する」という観点から、その場の実践を考察することこそ、僕の専門性です。そして、そこから足を動かすことは断じてありません。

 前置きが長くなりました。

 それでは、下記に、今年のASTDで僕がオモシロイと個人的に感じたワークショップ、講演、展示について、簡潔に概要を紹介致します。単に概要をのせるだけでしたら、ASTD2004のページにいって、プログラムを英訳すればよいということになりますので、かなり僕の私見もはいっています。その分を割り引いてご覧ください。あと、公開できない写真、内容もたくさんありました。これは、また今度、実際にお会いしたときにでもお話し致します。

 なお、全体的な感想としては、非常に満足でした。来年もぜひ行きたいです。あと、eラーニングという言葉も、無事に使われなくなってきているようでよかったと思っています。誤解を避けるためにいっておきますが、「eラーニングという言葉が使われなくなった」だけで、それは、以前よりも、地味ながらに自然に浸透しているような気がします。

 キャッチーな言葉は普及期には人々の関心を集めるために必要なのです。しかし、それが少しずつ浸透し、質が上がってくるにしたがって、マイナスに作用することが多くなるんですね。人々の思考を停止させてしまう言葉になっちゃうんです。ですので、できれば、次の年は、「blended learning」という言葉も使われなくなってほしい、なとひそかに思っています。

 ラーニングはラーニングなんです、ブレンドもくそもあるかい!


Incentive, Motivation and Workplace performance :
Research and best practice
Harold. D. Stolovich

概要
 ストロビッチらは、「インセンティヴ(報酬)は、従業員のパフォーマンスの向上に寄与するか」ということを考察した。
 研究の方法論には、1)先行研究の読み込み、2)先行研究のメタアナリシス、3)米国企業への質問紙調査を採用した。
 その結果、「1. インセンティヴは個人の仕事に対する関心を破壊する」「2. インセンティブとして、得られる結果以上のものを払って終わる」という2つの神話は、間違いであることが明らかになった。「インセンティブに基づくパフォーマンスの改善モデル(Performance Improvement by Incentive Model)」を提唱した。ちなみに、「Performance Improvement」というのは、昨今のASTDで繰り返し主張されている概念である。
 
 
□Harold. D. Stolovichという人
 ・モントリオール大学の名誉教授
 ・現在は、HSA Learning and Solutionsのコンサルタント
 
 
□本研究では下記を探求する
 ・インセンティヴはパフォーマンスの向上に寄与するか?
 ・上記の問いに、先行研究はどう答えているか?
 ・米国企業は、インセンティヴに年間117 billonも費やして
  いるのに、それが「Work(うまくいっているか)」いないか
  わかっていない。
  →だから知る必要があるのだ!
 
 
□研究方法
 1. 先行研究のメタアナリシス
 2. 先行研究の読み込み
 3. インセンティヴを使っている米国組織へのサーベイ調査
 
 
□インセンティブに関する神話
 インセンティヴに関して、よく以下のように言われている
  1. インセンティヴは個人の仕事に対する関心を破壊する
  2. インセンティブとして、得られる結果以上のものを払って終わる
 
  ↓(しかし、上記の研究によって下記のようにわかった)
 
  1. インセンティブは仕事の価値を向上させる
  2. インセンティブは従業員の自信とロイヤリティを向上させる
  3. よくデザインされたインセンティヴシステムは、
   パフォーマンスを向上させる
 
 ↓(そのほか、オモシロイ発見もあったぞ) 
 
 
□発見
 ・インセンティヴの種類でどの程度パフォーマンスが向上
  するか?
   ・個人ベースのインセンティブ(27%の向上)
   ・チームベースのインセンティブ(45%の向上)
 
 ・インセンティブプログラムは、長期がよいか短期がよいか?
  →長期間になればなるほど、パフォーマンスが増す
   ・短期(1週間以下) - 20%向上
   ・中期(6ヶ月程度)- 30%向上
   ・長期(6ヶ月以上)- 44%向上
 
 ・インセンティヴシステムというのは、意外に従業員に知られて
  いないことが多い
  →インセンティブを与える人、与える規準の不明確さ
  →インセンティヴを誰に与えるかの選抜の70%は、根拠なく行
   われている
  →明確な規準が必要

 ・インセンティヴに不満をもつ従業員はほとんどいない。
  従業員の不満は、インセンティブの「実施」にある
 
 
□「インセンティブに基づくパフォーマンスの改善モデル
 (Performance Improvement by Incentive Model)

 ・インセンティブを手段としたパフォーマンス改善の手続きを
  提唱している。
  →インセンティヴシステムをデザインする
 
 
中原の雑感
 メタアナリシスの研究方法論については、非常に詳細に検討を要する。故に、上記の結果のうち、特に細かい数値については、どの程度信頼性を持ち得るデータか、あるいは結論かはわからない。彼らの論文が、ISPI(International Society of Performance Improvement)に載っているとのことであるから、詳しくはそちらを参照されたい。また、アカデミズムでは、この種の研究は、動機付け研究として、非常に多くの知見の蓄積がある。単純に考えれば、筆者らのいう「インセンティヴ」は、外発的な動機付けということになる。しかし、筆者らがどの程度、これらの研究知見を参照しているかは、わからない。

  しかし、昨今、業績主義は多くの企業に導入されているが、その場合、多くの企業では、同時にインセンティヴ・システムも付随して導入している。故に、筆者らが指摘した問題は、非常に重要な社会的意義をもつ。「パフォーマンスを向上させること」を主目的として「インセンティブをデザインする」という視角は、非常に新鮮である。 なお、これに関連するインセンティヴをもとに、Communities of practiceを社内につくりあげることをめざしている、Dow社の事例を参照されたい。


The chief learning office's critical role:
Adding value to the organization
Tamar Elkeles
Jack J. Phillips

概要
 「Chief learning officer」は何をすべきなのか。QUALCOMMのChief learning officerであるTamarが、8つのポイントを述べた。 セッションの冒頭には、「CLOの評価のための質問紙調査」に全員で取り組んだ。カークパトリックの4段階評価モデルに、ROIを組み込むことで有名になったジャック・フィリップスは、QUALCOMMで行われたパフォーマンス改善モデルを紹介する。

 ちなみに、下記の熟語は、今年のASTDの大流行である。

1) Chief learning officer should align performance system with their business strategy.

  cf. align A with B (AとBとを連携させる)

2) Chief learning officer said that learning should be embeded into everyday life.

  cf. embed A into B (AをBに埋めこむ)

 ちなみに、教育学ではこういう熟語をよく使うよ。

3) Teacher should integrate handheld device into their science curriculum.

  cf. embed A into B (AをBに統合する)

 ジャック=フィリップスの著書に関しては、下記のとおり。

Jack Phillips(1994) In Action: Measuring Return on Investment. ASTD,

Jack Phillips(2002) In Action: Performance Analysis and Consulting. ASTD,

Jack Phillips(2002) Handbook of Training Evaluation and Measurement Methods. Butterworth-Heinemann

  
□CLOの役割
 1. 戦略を策定し、それに従った投資レベルを決定すること
 2. 学習とビジネスをAlignすること
 3. 個人 / 組織のパフォーマンスを向上させること
 4. 効率的で効果的な知識伝達システムをデザインすること
 5. 学習をビジネスとしても運営すること
 6. 生産的なパートナーシップをつくりあげること
 7. ビジネスの成長のため、組織のTalentを管理すること
 8. 学習する企業の価値をデモンストレートすること
 
 
□5段階モデルによる評価
 ・5段階モデルに基づいて、パフォーマンス改善のための様々な
  施策をデザインし、評価することが可能
 
 (※上記著書を参照)
 
 
中原の雑感
 「成功したと見なされているChief learning officerが、成功の秘訣を語る」というよくある語りで、あまり説得力がない(とても「説得的」なプレゼンをする女性だったが)。成功を語る際の語り方に問題があるように思う。この種のプレゼンテーションでは、よく「成功の秘訣、ババーンと8つにまとめました、箇条書きにしてみました、これさえやればアンタも素敵なCLO」という感じで発表してしまうのだけれども、まぁ、それもアメリカらしいといえば、アメリカらしいが、どうも「自分の実践(こころみ)の魅力を他者に伝えることに失敗している」ように思えてならない。事実、僕の横に座っていた人は、ディスカッションの際、「お説教はいいから、具体的に何をやって、どんな反応がかえってきたのかを教えて欲しいよ・・・」とつぶやいていた。

 この問題はまた別のところで語ろうと思うが、「企業内の人材育成の試みを語るときのフォーマット(プロトコル)、場のルール」を早期に確立するべきだ、と僕は思っている。教育学では、教師研究の領域にこの種の研究の蓄積があり、現在も発展している。それを行わない限り、いくら「事例」を報告されても、オーディエンスの納得を引き出せないのではないだろうか。

 また、これはやや研究的視点かもしれないが、「Chief learning officerが、どのような仕事に実際に従事しているのか」を観察する研究があってもよいと思う。本当にそうした職が必要ならば、彼らがどのような職務を日々遂行しているのか、について詳細な観察が必要である。

 ちなみに、先ほどのストロビッチの研究でも指摘されているように、「Performance Improvement」という概念が、昨今のASTD関係の学会では主張されている。ASTDの発行するリファレンスにも、「Workplace learning and performance」という中心的概念が提唱されている。この背景には、下記のような主張が存在するように思える。

1) 企業の人材育成担当者は、組織の中に学習を引き起こすだけでは不十分であり、パフォーマンスまで向上させるべきである

2) インストラクショナルデザインは、非常に時間がかかるわりには、役に立たないことが多い。

 しかし、先のASTDのリファレンスしかり、Performance inprovementのための方法はというと、いわゆる「ニーズ分析」「タスク分析」からはじまって評価で終わる「Instructional design」のモデルとほぼ同じである。 「Performance Improvement」は、上記の批判に答えるために、敢えて従来のモデルを下敷きにして「つくられた」されたものと考える。しかし、そのプロセスに本質的な違いはない。 「学習」と「パフォーマンス」の関係には、組織文化、学習者の性格など、様々な媒介変数が関与する。それなのに、このモデルでは、媒介変数についてはすべてブラックボックスにしている。
 インストラクショナルデザインのモデルを援用し、ラーニングをパフォーマンスに置き換えるだけでは、1)と2)の批判をかわすことには、どうも失敗しているようである。 単純に「学習」を「パフォーマンス」に言い換えただけで、パフォーマンスが向上するわけがない。


Managers not MBAs
Henry Minzberg

概要
 マネージャはクラスルームでつくられない。人が「マネージャになる」のは、現場である。これまでのMBA教育は間違った人材を輩出し、まちがったマネジメント概念を広めてきた。

 第一世代のMBA教育は、ハーバード流の「ケーススタディと講義」である。次にでてきたのは、Action LearningやWork Out(ワークアウト)に代表される「Learning from created experience」というコンセプトをもった教育である。これは第二世代のMBA教育とも呼べる。それに対して、筆者らは「Natural learning」を提唱したい。

 マネージャは、クラスルームで行うべきことは何か? それは他者をリスペクトし、自分の経験を他者に語り、省察(reflection)しあうことである。マギル大学のMBA教育「Natural learning」を中核にした教育は、このコンセプトのもとに開発されている。それに応じて、クラスルームのデザインまで変更した。

 なお、ミンツバーグの主張する省察(reflection)は、教育学では1980年代の教師教育に導入されている。「省察」を中核とした様々な教師トレーニングプログラムが既に開発されている。これとの関連も、非常に興味深い。また、国内のMBA大学院では、神戸大学が「プロジェクト方式」による教育を提供している。

 ちなみに、本講演は、ミンツバーグの下記の著書による。彼の講演は、教育の観点からとてもオモシロかった。ほんで、出張中にも関わらず、思わず「漬け物石」のような重さの本を買ってしまい、さらにサインまでもらってしまった。あーあ、これをもって、これからNYとは・・・でも、面白かったなぁ。

Mintzberg, H.(2004) Managers Not Mbas: A Hard Look at the Soft Practice of Managing and Management Development. Berrett-Koehler publishers.

  

□概要
 ・マネージャはクラスルームで「つくられる」わけではない
 ・マネージャは現場で学ぶ、つくられる
  →You can't create but improve manager
  →Manageはscienceではない、むしろcraftである
   →すべてはexperienceに依存している
 ・クラスルームでできることは何か?
  →マネージャが相互のリスペクトに基づき
   自らの経験を省察(reflection)するべきである
 ・これを敷衍した教育実践をマギル大学において実践している
 
 
□MBA教育の歴史と筆者の主張する教育
 ・第一世代 - 「ケーススタディと講義」・・・ハーバード
  →人の事例で考える≒It's too superficial one!
 ・第二世代 - 「アクションラーニング」「ワークアウト」
  →「Learning from created experience」
  →「Boot camp」
   →よくできたプログラムでは確かに効果があるが、
    以下の弱点がある
     1. 少ししか学べない
     2. マネージャは忙しい
 ・第三世代(筆者が主張しているもの) - 「Natural learning」
   →下記を重視する
     1. Reflection
     2. 自分のissueを対象
     3. Boot campではなく、ゆっくり考える
     4. Use work not make work
 
 
□ミンツバーグの行うマネージャ教育(http://www.impm.org
 ・マネージャはPracticeing manageを行う
  →職にとどまりながら学ぶ
  →実践をもとにした経験をクラスルームの中に持ち込めるように
 ・クラスルームでは、Reflectionする
  →これまでのMBA教育では、Finance, Marketing, Accounting
   などという風に、ビジネスファンクションの集合がマネージャ
   のもつ知識とされていた
 ・上記を行うため、クラスルームのデザインも変更した
  →cf. ハーバードとマギル大学のクラスルームの違い
 ・教師(教授)には以下のことを10箇条を言い続けている
  →1.2.3. Don't pack it
  →7.8.9. Liten!, Liten!, Liten!
 ・費用は一人あたり45000$
  →下記の理由により安いものだ
   ・「Bad managerによってもたらせる被害は甚大」
   ・松下ではMBAを取得した人の9%はやめる、このプログラムは
    職にとどまりながら学ぶ。故に離職率はゼロである
 
 
中原の雑感
 「Natural learning」の概念には全く同意できないものの、ミンツバーグの主張には、とても納得させられる。
 彼は「そもそもマネージャとは、何を機会に、学んでいくのか」「その学びを支援するために、どういう教え方が必要で、どのような環境を用意すべきか」ということに焦点をあてている。非常に教育的な思考と言える。
 周知のとおり、「Reflection(省察)」はMITの教授であったドナルド=ショーンによって専門家の思考形式として主張され、1980年代後半から90年代前半にかけて教育学に輸入された。
 専門家とは、法則や公式などの知識を記憶し、状況にあてはめるのではなく、状況と対話してそのつどそのつど振る舞い、同時に自らの実践を反省する存在をいう。
 国内のMBA教育を行っている大学で有名な大学には、一橋大学、慶應大学などがあるが、そのひとつでもある神戸大学では、ケーススタディとは一線を画する独自の教育プログラム「プロジェクト方式」を採用している。

ASTD2004
   
  

  

ミンツバーグの講演の様子。マネージャの教育の中核には、「Reflection」があるのだと説明している。

  
ASTD2004
   
  

  

この比較はとっても面白かった。左の写真は、ハーバードのビジネススクールのパンフレットらしい。U字型の机に学生がすわり、カリスマ化した教授は常に指を「天」に向けている。まさに「ビジネス・グル」。それにたいして、マギル大学のプログラムで使用されている教室は、右の写真みたいな感じ。線になっているところには、黒板があるのだそうだ。

  
ASTD2004
   
  

  

やっちゃいました。つい、サインをもらってしまった・・・。この本、まだパラパラとしか眺めてはいないが、MBA教育の歴史からはじまって、それがどんな問題を抱えて、人材育成にどのような失敗をもたらしてきたのかを前半で考察しています。後半では、ミンツバーグが実践するMBA教育の学習環境デザインについて書いてありました。

  

Building a premier corporate university
Frank J. Anderson, Jr.
Defence Acquisition University

概要
 国防省の企業内大学である「Defence Acquisition University(DAU)」の概要を伝える。DAUは、1998年に創立された。1) Knowledge sharing(Communities of practice)、2) Continuous learning(e-learning)、Performance supportなどの各種事業を行っている。本事例は、ASTD Best Award、Training Top 100 2003、Corporate University Xchange Excelleng Awards - Best pracice 2003など、各賞を受賞している。
 
 
□DAUの概要
 ・Department of defenceの下部組織
 ・アメリカ本国をはじめ全世界のアメリカ軍に教育を提供している
 
 Defence Acquisition University
 http://www.dau.mit/
 
□DAU設立のプロセス
 1. Leadership Alignment
  →ブッシュ大統領の宣言
  →ラムズフェルドの生命
 2. 学習者の把握
  →陸軍、海軍、空軍、学習対象者を科目ごとに把握
 
 3. 学習戦略の策定 ≒ サービスの決定
  →下記のようにサービスを確定した
   1. Knowledge Sharining
     ・Acquisition community connection
     ・Community of pracice
   2. Continuous learning
   3. Traning courses
   4. Performance support
 
 
□現在の状況
 ・Training関係の各賞を受賞
 ・受講者の70%がe-learningで受講
  →そのほかには、衛星、オンキャンパスなどがある
 ・利用統計
   1. Knowledge Sharining
     ・Acquisition community connection
     ・1週間に18000人の利用
   2. Continuous learning
     ・190578のアクセス
     ・155253人のユーザ
   3. Traning courses
     ・58176回のコース修了
     ・40465回のインターネットによるコース受講
   4. Performance support
 
 
中原の雑感
 DAUは、いわゆる「コーポレートユニバーシティ」「Blended learning」「Communities of practice」の先進事例として昨今注目をあびている。
 講演にたったフランク=アンダーソンは、発表中、「Our boss has ownership, initiative and commitment」と繰り返して述べていた。このことからも、本事例は、いかにも軍隊らしい強力なトップダウンな構築された学習インフラストラクチャと言えるだろう。
 この学習インフラストラクチャは、いわゆるKnowledge Managementから、Training Courseの配信、およびPerformance Supportまでを含む統合された教育組織である。教育組織を一元化する強みは、データの集合できることと、統一したカリキュラムを学習者に提供できることにある。日本でも、同様の強みを発揮することを目的にいくつかのコーポレートユニバーシティが構築されている。筆者らが取材させていただいた「FUJITSUユニバーシティ」もそのひとつであろう。


High performance learning organization:
The future of corporate universities
Jeanne Meister & Tom Kraack

概要
 アクセンチュアが提案する「High Performance Learning Organization(HPLO)」の概念を説明し、HPLOに関する質問紙調査の結果を解説する。HPLOを行う組織には、7つの共通する特徴があると指摘している。また、HPLOの概念を拡張し、顧客教育が行われている業界、およびその意義について指摘する。 最後に、学習をトレーニング・クラスルームに限定した考え方に意義をとなえる。学習は、ナレッジマネジメント、コミュニティ・オブ・プラクティスなど、社内の様々なリソースの中に場所に埋めこまれているべきである、と述べている。
 講演者は、「コーポレートユニバーシティ(Corporate University)」で有名なJeanne Meister。今回の発表では、コーポレートユニバーシティをさらに拡大し、HPLOという概念を導入している。彼女は、数年前、アクセンチュア・ラーニングのVice Presidentに就任し、AVAYA Universityなど、先進的なコーポレートユニバーシティを生み出している。
 
 
□High Performance Learning Organization調査
 ・285 organizationに対するオンラインサーベイ
  →回答企業の24%はFortune500企業
 
   ↓(HPLOってなんだろう)
 
 ・アクセンチュアは、下記をHPLOの構成要素として抽出した
   1. Blended devivery approach
     →F2Fでの学習に、eラーニングを統合した学習
   2. Leadership training
     →リーダーシップ(マネージャ教育)
   3. Competance development
     →コンピテンシーによるビジネス戦略との融合
   4. Reach the value chain
   5. Integrated learning into other process
     →学習を他のビジネスの活動に埋めこむこと
   6. Alignment
     →ビジネス戦略が学習と連携しているか
   7. Measurement
     →測定を行っていること

 ・285企業のうち、23企業はHPLOとして認められる状態であった

   ↓(ところで、最近、どんな事に各社は興味をもっているか?)

 ・2007年までに御社で達成したい目標は何ですか?
  1. Leadership development(63%)
  2. Updateing e-learning infrastructure(41%)
  3. Enterprise performance management(38%)
 
 
□顧客教育
 ・顧客教育に熱心な業界
  1. ヘルスケア
  2. ファイナンス
  3. ハイテク=コミュニケーション
  3. トランスポーテーション、建築
 
   ↓(どんなメリットがあるか)

 ・顧客教育のメリット
  1. 顧客満足度を向上させることができる
  2. 顧客のロイヤリティを向上させることができる
  3. 競争優位につながる
  4. 生産拡大
  5. 収益の拡大
 
 
□学習
 ・学習は従業員たちの日々の生活に埋めこまれている
  1. アニュアル・リーディング
  2. ナレッジマネジメント
  3. オン・ザ・ジョブトレーニング
  4. ワークプレイスポータル
  5. コミュニティ・オブ・プラクティス
  →クラスルームだけで起こるモノと思ってはいけない
  →それぞれの構成要素をバラバラに考えてもいけない
  →学習という視点から見れば、すべてはつながっている


中原の雑感
 通常、「ナレッジマネジメント」「コミュニティ・オブ・プラクティス」「企業内ポータル」などは、別々の事柄としてとらえ、それぞれにシステムを実装しなければならないと考える人が多い。それが証拠に、書店にいけば、それぞれに専門書が出版されており、それぞれ全く違うモノであるかのように論じられている。しかし、私見では、この認識は激しく間違っている。成功しているナレッジマネジメントでは、知識の創造とアーカイヴ化の部分に、コミュニティ・オブ・プラクティスが生まれている。そして、そこで生まれた知識は、「企業内ポータル」というシステムで提供されている。人は、そうした場ではじめてアタリマエに学べるのである。
 学習をキーワードにそれぞれは「つながって」おり、そうした中で活動することで学べるとする彼女の主張は、アタリマエながらも非常に新しい。


Recognizing people developers through leadership development
Steve Constantin, The Dow chemical Company

概要
 Dow chemical Companyにおける2つの取り組み「Genesis Award」と「Leadership institute」について紹介するのことが、本セッションの目的である。
 第一に「Genesis Award」とは、「他者に新しい知識を伝える」「新しい領域の最初の学習者となる」など、「開発」に自ら取り組んだ従業員に対して、賞を与える制度である。そのことにより、1)従業員の生産性が向上する、2)受章者同士のインタラクションがまし、コミュニティ・オブ・プラクティスが生まれた。
 次に、太平洋エリアにリーダーシップを発揮できるマネジャーが不足したことから、Leadership Instituteとよばれる仮想の組織(教育プログラム)を開発した。現在までに40名の学習者がここを卒業した。そのことにより、卒業生同士のコミュニティ・オブ・プラクティスが生まれるなど、予想しない結果が起こった。
 いずれも、意図せざる結果として「コミュニティ・オブ・プラクティス」が生まれている点が非常にオモシロイ。
 
 
□DoWという会社
 ・46000名の従業員、他国性企業
 ・年間の売り上げは33 billion
 ・化学、プラスチック、農業関係の製品


□Genesis Award Program
 ・「開発」に自ら取り組んだ授業員を表彰
  →例えば
   1. 他者に新しい知識を伝える
   2. 新しい領域の最初の学習者となる
 ・この賞は16ヵ国で実施
 ・インパクトのある表彰システムを構築したかった
  →1994年から実施
 ・5000人に1人の従業員が毎年表彰される
  →2002年は17名

  ↓(どのようにセレクションを行うか)

□「Genesis Award」選考の過程
 ・ノミネーション(9月 - 10月)
   →360度評価によるノミネーション
 ・セレクション(1月 - 4月)
   →規準に基づきコミッティがセレクション
   →インタビューなどを行う
 ・表彰
  →本社でCEOによって表彰
 
 ↓(効果は・・・)

□注目すべき効果
 ・受章者たちを中心にしたコミュニティ
   →Formation of internal talent networkが生まれた
   →情報交換、コミュニケーションがうまれる
   →重要なものは、アーカイブ化している


中原の雑感
 DoW社で生まれたコミュニティは、「コミュニティをつくろう」と社員に呼びかけて生まれたのではない。あくまで、インパクトのある表彰システムがきっかけになって、Talent(Wengerの言葉でいうならばExpertise)をもった人たちがつながりはじめ、それが「コミュニティとして機能するようになった」ところがポイントである。
 通常、コミュニティ・オブ・プラクティスを「つくろう」とする人は、コミュニティを「実体化」あるいは「物象化」して開発にあたるが、それではなかなかうまくいかないことが多い。


Communities of practice(CoPs):
Leveraging your organizaion's tacit knowledge
Debra Price-ellingstad(Dept. of education, U.S.)
Patricia Adelstein(Dept. of education, U.S.)

概要
 アメリカの連邦政府、教育省の特殊教育部門で試行されたCommunities of practiceを報告する。「どうやって障害のある子どもを教育したらよいだろうか」「一般の子どもとどのようにインクルージョンを果たせばよいだろうか」など、様々な教育的課題に対して、ダイアローグを続ける。
 一般に、CoPsが試行されているのは、民間企業であることが多い。本事例は、連邦政府で行われているという点において、非常に希有である。


□CoPsとは
 ・重要なのは下記の3点
  1. Domain(What)
    →何を、全員でディスカッションするべきか?
    →何が全員でPassionをもって共有するべき話題か?
  2. Community(Who)
    →誰が学ぶ必要があるのか?
  3. Practice(How)
    →どのようにしてそれを行うか?


□OSEP(Office of special education program)の挑戦
 ・目的
   1. 障害をもった子どもに対する教育を改善したい
   2. 研究成果を実践に反映させたい
   →「障害児に対する法律」の実行者=Teaching Assistant
     たちのTacit Knowledgeを、どのように支援できるか?
 ・背景
   5年間のグラントがでて、テクノロジースタッフを確保


□OSEPのCoPs
 ・メンバー
   →6コミュニティ(1コミュニティ20名から50名)
   →特殊教育部門長を含む
     →リーダーシップをきってくれる
     →CoPs的な活動に対して理解がある


中原の雑感
 本研究は「コミュニティ」を「物象化」・「実体化」し、それをテクノロジーで支援するという場合にたどる研究のプロセスを、そのまま忠実に再現している。そこでどのような出来事が生まれ、メンバーにどんなメリットが生まれたのかはわからなかったことが残念。


Developing future leders at hyundai Motor Company
through blended learning
Hyundai Motor Company

概要
 韓国に本社をかまえる「現代自動車」は、従業員62000人をかかえ、年間20.8billion $を売り上げる巨大企業。現代自動車の目標は、2010年までに世界で5番目以内の自動車メーカになることにある。そこで、HR、ファイナンス、マーケティング、オペレーションマネジメント、テクノロジカルマネジメントの5領域に次世代のリーダを養成することにした。
 この次世代リーダー教育は、ブレンド・ラーニングの手法を用いて行われた。その結果、コストを400000$削減しつつも、カリキュラムの量を30%向上させ、90%以上の学習者満足度を達成した。
 なお本事例は、2002年の結果をフィーマティブ・エバリューエーションした結果から生まれた。


□次世代リーダー教育のプラン
 ・5年間で900名のリーダーを養成
 ・グループ企業含め
 ・選考の基準は下記のとおり
   1. 仕事の経験
   2. パフォーマンス
   3. パイオニア・スピリット
   4. 社会的関係


□実は2002年には完全オフキャンパスで実施していた
 ・115名が参加
 ・1年間のプログラム
 ・地元の大学を活用
 ・学習の形態は、講義とディスカッション
 ・結果(学習者からのフィードバック)
  1. 基礎的スキルのトレーニングが必要
  2. 仕事の勉強の両立がムズカシイ
  3. 仕事を抜けて授業に出席するのは不可能
  4. よりRealな場での経験を重視した方がよいのでは?

  ↓(そこで2003年の実施にからみ、プログラムを前面改訂)
  ↓(HMC Group MBA Program 2003と命名し、名誉感を演出)

□HRC Group MBA prog. 2003
 ・ブレンディッドラーニングで実施
   →最初の3ヶ月はオンラインで学習(100時間)
   →ビジネスの基礎
  ・最後の7ヶ月は下記の活動に従事(300時間)
   1. ベンチマーキングトリップ
   2. アクションラーニング

 ↓(気になる結果は...)

□結果
 ・達成率
  →オンライン 98%
  →オフライン 94%
 ・満足度
  →オンライン 4.1/5.0
  →オフライン 4.5/5.0
 ・カリキュラム量 30%増
 ・コスト削減 400000$の削減


中原の雑感
 「オンラインでの学習は、オフキャンパスでの学習の事前学習に最適」というコンセプトのもと、実行された非常によい事例。2002年の失敗を、振り返り、新しい研修スタイルを「フォーム(Form)」しているところが参考になる。


Drilling to the core competencies and mining for emplyee learning
Mary Ann Bopp(IBM)
Sharon Arad(IBM)

概要
 ビジネス戦略と人事戦略の乖離を克服するため、次第に普及し始めているコンピテンシーマネジメント。
 本事例では、IBMが自社のコンピテンシーモデルをどのように作成し、どう評価を行ったかを解説している。またつくったコンピテンシーをどのように使うかについても言及している。非常にスタンダードでありながら、なかなかできない好事例。
 特に参考になるのは、多国籍企業におけるコンピテンシーのつくりかた。文化の差をなるべく少なくし、ユニバーサルに活用されるコンピテンシーモデルをつくるにはどうしたらよいか。世界各国に従業員をかかえるIBMならではの挑戦である。


□なぜ、今、コンピテンシーなのか?
 ・ビジネス戦略と人材育成の乖離
 ・IBMにとって何が成功か、不透明な状況にあること
 ・クラスルームのトレーニングに注目が集まっていること
 ・コースがカリキュラムになっておらず、バラバラ

 ↓(IBMのコンピテンシーモデルをつくろう)


□コンピテンシーモデルの作り方
 1. 他社のモデルをレビューする
 2. エキスパート(好業績者)のフォーカスグループを組織
   ・10ヵ国で4日間、30回のミーティング
   ・250名のトップ業績者、マネージャを対象
   ・重要なコンピテンシーを同定してもらう
   ・リストにしてもらう
     →具体的な行動を対応させる
 3. エキスパート(好業績者)に電話インタビュー
   ・7ヵ国、19人の従業員
 4. グローバルのコンピテンシーモデルのたたき台をつくる
   ・しかし、これをそのままは使えない
    →異文化のカベがある
    →高文脈文化の国(日本)と低文脈文化の国(米国)では
     商習慣が全く異なる
 5. たたき台を全世界にとりあえず配布して、妥当性を検証
   ・11カ国語に翻訳
   ・28ヵ国に送付
   ・45000人におくった(56%から返事がかえってくる)
   ・満足度を調べる
   ・結果は写真のとおり
 6. ファイナライズ

 ↓(ようやくコンピテンシーモデルができたので・・・)

□現在、様々な方法で活用中
 1. 自己学習の際に利用
 2. マネージャ、メンター、コーチ
 3. 人材開発ガイド(イントラのWebアプリケーション)
   ・Web delivery component
   ・Planing aid component
    →自分に重要なコンピテンシーをIdentifyしてくれる
    →Learning pathをアドバイスしてくれる

追伸
 ちなみに、コンピテンシーには様々な定義がある。が、ぶっちゃけ簡単に言ってしまえば、「能力」のことだ、もちろん括弧付きの。コンピテンシーマネジメントの実際は、まず「高い業績をだしている人が、どんな能力をもっているか」を調べることからはじまる。ほんでもって、能力リストをつくる。で、その能力リストとビジネス戦略をてらしあわせて、人材を配置したり、採用したりするってことです。
 ちなみに、一応、状況的認知アプローチの知見をかじったことのある者としては、こうした普遍的な「能力」など存在しないと思っているし、このマネジメント手法の有効性もあまり信用はしていない。だからさっきは「括弧付きの」と述べたのです。というよりは、むしろ、ビジネスで人材を語る際の共通言語として機能するくらいものだと思う。このことは、「はじめての人材育成:ワークプレイス・ラーニング・デザイン入門」の中で述べてさせていただきました。


Creating enterprise-wide transformational learning initiatives
that drive strategic business priorities
Drew Morton(IBM)

概要
 本事例は、IBM社のマネジメント教育の概要を述べたものである。IBM社のマネジメント教育といえば、Blendedアプローチを採用した教材として非常に有名である。今後は、これをさらに発展させ、マネージャが使用するポータルサイトを構築し、そこに1)カレンダー等の仕事関係のツール、2)マネージャ教育のツール、3)部下管理のツールなどを実装していくとのことであった。

 本事例は、写真を用いて説明するのが適当だが、それはWebでは公開しない。ゆえに、省略する。


Exploring connected leadership:
Frameworks and tools for developing organizational capacity
Patricia M. G. O'connor (CCL)
Christopher Ernst (CCL)

概要
 CCL(Center for creative leadership)は、リーダーシップを育成する非営利組織として、非常に有名。その名声は、ビジネススクールの開催するExecutive educationを凌駕するほどである。
 このセッションでは、彼らが行っているワークショップの規定をなすリーダーシップの考え方を説明する。彼らは、Connected leadershipとよばれる概念を提唱している。この概念は、非常に深い。
 僕の言葉で説明するならば、リーダーシップとは個人の属性や専門性に依存するのではない。リーダーシップが発揮される(可視化)される状況には、他者との社会的関係がある。つまり、リーダーシップは個人が他者と「Connectedな状況」に埋めこまれているのであり、その中で達成され、可視化されるということになる。
 セッションの途中では、Visual explorerとよばれるリーダーシップ開発の手続きを紹介した。全員でVisual explorerを体験した。


□従来のリーダーシップ概念
 ・リーダーシップ=個人の属性と思われている
  →権威や専門性は個人にあると思われている
  ↓(だから)
 ・通常、リーダーシップは下記のように開発される
  1. チャレンジを見つける
  2. 個人がリーダーの専門性をつける
  3. よく知られたソリューション
  4. 実装する

 ↓(これに対してCCLではConnected leadershipを提唱)

□Connected leadershipを提唱
 ・リーダーシップとは組織のメンバーによる集合的な活動
  (Collective activity)
 ・何をするときに、リーダーシップは発揮されるか?
   ↓(みんなで下記を行うとき)
  1. Setting direction
    ・どこに自分たちは向かい、なぜ、何をなそうとしているか
     ...を考えるとき
  2. Creating alignment
    ・どのように自分たちの状況を理解し、共有すべきか?
    ・どのように自分たちの活動が調整可能か?
     ...を考えるとき
  3. Building commitment
    ・どのように一緒にいられるか?
    ・どのようにしたら一緒に働けるか?
    ・何が協力関係をよりよいものとするか?
     ...を考えるとき

 ↓どうやって上記を開発するか?

□開発法
 1. チャレンジを発見する
 2. リーダーシップは、わかちもたれた専門性によって達成される
 3. 意味をシェアし、納得してもらう
 4. ナビゲートする
  
 ・専門性は複数のリーダーたちの関与によって開発される

 ↓(具体的な方法は? たとえば)
  
□Visual explorer
 ・Discovery excercise & the star model

ASTD2004
   
  

  

Visual exprolerでは、まずね、自分の会社の経営課題を述べるんです。で、そのあとで、こういう絵を各自渡されます。で、その会社の経営課題を、この絵をもとに、説明する。次に、それを聞いていた人に、絵をわたして別の解釈を述べてもらうのですね。で、最後に自分でいろんな人たちから聞いた解釈をふまえて、再解釈をするといった感じです。これがね、Star modelという名前で呼ばれている、手続きです。

  

エキスポで僕が心惹かれたもの

エキスポ点描
   
  

  

LEGOのSerious Playがありました。要するに、Legoブロックを使ったマネージャ教育です。左の写真は、1人に4つのアタマがついている。右の写真は、いわゆる知識の伝達モデルですね。

  

おまけ

おすすめホテル
   
  

  

あのね、僕の今回とまったホテル、これはおすすめです。 ワシントンで、わずか95ドルです。信じられません。すばらしい。 きれいだし、部屋は広いし、従業員教育は行き届いているし、いうことは何もありません。夕方6時には、シャンパンのサービスもあります。
 
立地条件がまた良いのです。徒歩3分圏内に、なんと、スターバックス、リカーショップ、ホールフーズ(非常に有名な有機野菜のスーパー)
、サブウェイなどがあります。

ちょっと内装は変わっているけど、これだけ安くて満足できるホテルは、久しぶりだったので、つい紹介してしまいました。
  
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Hotel Helix
1430 Rhode island Ave., NW
Washington DC 20005
202-462-9001
http://www.hotelhelix.com/

  
NAKAHARA,Jun
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