午後2時に放送センター西口にくるように箕輪さんからメールをいただいた。回線チェックが午後2時からはじまるから、それから観察をはじめるといいですよ、とのことであった。
泣く子も黙るNHK放送センター
3月16日の放送は、北海道の佐幌小学校と沖縄の辺土名小学校をISDNテレビ回線で結んでの月一回の生放送である。「回線チェック」とは佐幌小学校と沖縄の辺土名小学校をむすんでみて、技術的な確認、たとえば画像や音声の乱れの修正などを行うことである。
回線チェックは副調整室(以下、副調)で行われた。副調の様子は、前回のレポート「生放送のエスノグラフィー」に図示してあるとおりで、以下のようになっている。
副調の様子
箕輪さんにつれられて僕が副調に入ると、そこには音声さんやTD(テクニカル・ディレクター)さん、そして、当日のPD(プログラムディレクター)の森さんや、3月1日にNHKに入局したばかりという佐藤さんらがいた。佐藤さんは、「まだホヤホヤですよー」と言っていた。「ホヤホヤということは温かいんだろうなぁ」とアホなことを僕は考えていた。
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音声さん |
PDの森さん |
回線チェックは、佐幌小学校から行われた。PDの森さんが中心になって、技術的なチェックが行われていく。しかし、どうもこの場で確認されているのは、それだけではないらしい。あとでPDの森さんが語っているコトバから類推するに、たとえば「子どもの元気のよさ」や「セリフのうまさ」などを確認しているらしい。確認されたこの種の情報は、15日10時から行われた前日打ち合わせで、スタッフに報告されていた。
佐幌小学校の回線チェックが終わり、次は辺土名小学校である。しかし、ここでトラブルが発生した。音声の入出力がNGとのことであった。結局、このトラブルを解決するために、2時間ほどかかった。原因は副調のケーブルにあったようだが、「どこが悪いのか?」を特定するのに、時間がかかったようであった。テレビ会議システムをつくっている会社、相手校、そしてスタッフのあいだで、何度も何度も電話がやりとりされ、問題部分を特定しようとするが、その特定が本当に難しい。やりとりは主に電話でなされていたが、音声でインターフェースを伝えようとするのは、結構骨の折れる作業である。この種のことは僕も経験しているが、「ネットワークというのは一度トラブルがおこると本当にヤッカイなもの」なのだ。第一、ケーブルの接続不良なのか、ハードが悪いのか、ソフトが悪いのか、症状からでは特定できないことが多すぎる。1時間ほど作業を見ていたが、本当に同情してしまった。
トラブル発生:音声の入出力がNG
佐藤さんはいう。
「放送に関しては、みんなプロなんですけど、通信の領域となると、本当に難しいですね」
通信と放送がリンクするような今回の番組のような場合、このようなトラブルが頻繁に発生するのであろう。これからそのような番組が増えることを考えると、うち捨ててはおけない問題のように感じた。つまり、領域(ドメイン)を越境した知識、そうした知識をもつ主体が求められており、その主体の育成のために、どのような組織内教育が行われるべきか、という問題が残ることになるからだ。この問題は、どこぞの国の教育問題にもすっぽりとあてはまる。教科という枠組みを超えた知識、そうした知識を自らつくりあげることのできる主体、そうした主体の社会的要請が強くなってきている。 |