Supporting Collaborative Project-Based Learning

on the WWW

Douglas R. Ward ( MC2 Learning Systems Inc.)

Esther L. Tiessen ( Simin Fraser University)

rep.Miwa ARACHI

Osaka University

-Summary-

■Abstract

Zebuとはプロジェクトに基づく共同学習( Collaborative Project-based learning)をWWWソフトウェアを用いて支援することを目的としたグループウェア技術である。本稿は、教師や学習者がWWWで技術的・実践的・教育的に問題としている点への解決方法として、また彼らにWWW技術が教育における共同作業にどれほど効果的であるかを示唆する役割として、Zebuがどのような効果を持っているのかを述べている。

■Introduction

WWWとは本来、知的労働者の共同作業を支援する意図をもって開発されていたのであるが、実際には、受け身的な通信手段にとどまっている。この傾向は、共同的教育活動を支援するためのWWWの有効性を閉ざしていると考えられる。そこで、WWWを、プロジェクトに基づく共同学習を助長することが出来るようなメディア、に変えてしまおうという試み( ALiVE! Project : Active Leaning in Virtual Environments)がある。

プロジェクトに基づく共同学習において、調べ学習は主要なプロジェクトであり、学習者は数多くの情報源の中から有用な情報を集めてまとめることで、それらの情報の有用性を見い出し、うまく活用することを学ぶ。また、それらの情報を他の学習者と共有することで、その情報に対してプロジェクトにおける個人またはグループとしての責任をもつようになるでのある。

本稿では,WWWの教育的可能性、現在のWWW技術における問題点、またZebuと呼ばれる新しいグループウェア環境を用いたそれらの問題の解決策を報告する。

■Educational Potentials of the WWW

WWWの教育的可能性として次の2点があげられる。

1)WWWは、調べ学習において、豊富な情報を教師や学習者にもたらすことのできる環境である。学習者が自ら自由に情報をひきだすことが出来る上、WWWは最新の確かな情報を得られるため、従来の学校図書館におけるリサーチ活動よりもはるかに可能性のあるものである。

2) WWWは、学習者が自ら情報の発信者となり、情報や学習の目的を共同学習者と場所にかかわらず共有することを可能にする。自らの知識を表現しそれを共有することは、元来有効な学習方法と考えられており、さらにWWWが外に開かれたメディアであることから、情報に責任を持たなければならないために、より批判的な考え方や自分の知識構成を社会的なものとみなすことができるようになる。

■Problems in Realising the Potentials

△Technical Challenges

技術的なチャレンジとして次の3点があげられる。

1)情報の氾濫

WWWは豊富な情報の倉庫であるがそれがゆえ、学習者が調べ学習において的確な情報を得ることは難しい。ブックマークなどの個人学習には有効な情報管理プログラムも開発されているが、共同学習の場においては未だ有効なものではない。

2)制作上の困難

プログラミング言語などは、もはや不可欠とは言えなくなったが、未だにFTPやその他のファイルの移動に関する技術は必要であるし、共同作業のための設定には高度な技術が必要とされる。

3)サイトの管理

膨大なページの管理は容易ではなく、特に学習者がグループで作業する事が必要であったり、ひとつの学校がひとつのページを共有する形である場合には、セキュリティに関してなど、問題は複雑である。技術的には可能であるが、同時に、それぞれのアイディアを共有し公開しなければならないという教育上の問題も関わってくる。一般的にWWWのソフトウェア技術の発展はめまぐるしいのであるが、教育的な面を考慮して改善されているものはほとんどない。

△Educational Challenges

教育的なチャレンジとして次の4点があげられる。

1)情報への知的価値付け

調べ学習において、WWW上で情報を集める事だけにとどまっていることは少なくなく、それらの情報に学習者が自らの考えを加えることは難しい。WWWは、情報収集の場所としてだけでなく、共同学習のための環境になるためには、学習者が新しい考えを生みだし、共有する場であるべきである。

2)学習者へのサポート

教師にとって、生徒に効率のよい学習をさせるためには、ある程度の学習の足場を与えることは必要である。しかし、与えすぎることによって、生徒が学習できる環境をうばってしまうこともある。どの程度、手をさしのべるかは難しい問題である。

3)グループ学習における調整

何人かの生徒がプロジェクトの中の違った部分、または関連した部分で共に活動している場合、生徒の間に同等の学習権利が与えられるべきである。

4)共同作業のサポート

共同作業では、それぞれが作業場に平等にアクセスできることが必要になる。それぞれが何を知っているかを伝え合うだけなど、通信技術的には可能であるが、教育的に平等な共同作業をサポートするのは難しい。

■Solutions in a New Medium

これまでに述べてきたチャレンジを克服するために、ここ2年間の間ALive! というプロジェクトの中でZebuと呼ばれるWWWベースの教育グループウェア環境の開発がなされてきた。技術的には、ユーザーが限られたサイト内でページを制作し編集すること事を可能にした、CGIが基本のソフトウェアである。サーバーベースであるために、ユーザは標準のブラウザを持つだけでよい。

プロジェクトは以下のような構造になっている。

△Projects

1)Pages  テキスト/画像/ビデオ/サウンド/html/リンク/参照のためのリンク/討論 形式の情報を集め作るところ

2) Tempates  新しいページを作る際にベースに使うテンプレート集

3)Reference Collections ブックマークのように、参考にできる情報を集めて整理するところ

4)Galleries ページやテンプレートに使用できるマルチメディア素材をためておき、整理するところ

これより、先ほど述べてき技術上、教育上のチャレンジにおいてZebuがどのように使われることができるのかを、環境問題をとりあげた高校3年生の授業での画面を用いて報告する。(Figureは、原稿参照)

■Solutions to Technical Problems

1)情報の氾濫

Zebuは情報を情報をためて、整理するという2つの主な機能を持っている。ギャラリー内の素材はどこからでも取り出せ、活用できるので、共同作業において、情報を組み立て共有する事は容易である。(Figure1) 一方で、リファレンスコレクションでは、WWW上を含め、本や記事など参考にできる情報をカテゴリー別にまとめることができる。(Figure2)

2)制作上の困難

Zebuはユーザーが極めて簡単に利用できるように作られており、ページを編集するのも、ページ内の"edit" ボタンを押すだけで編集画面が現れ、主に選択することで作業ができる仕組みになっている。(Figure3.4) またサーバーに直接変更が伝えられるため、ファイルの移動の必要がなく、ページをグループで共有することも自動的にできるようになっている。

3)サイトの管理

サイトの管理も簡単なインターフェイス上で出来るようになっている(Figure5) ユーザーはページの編集にとりかかる際、名前とパスワードを要求されるが、ログイン後はプロジェクト内の素材を自由に使うことができる。(Figure6) ユーザーはややこしいページの構成を考える必要はない。

■Solutions to Educational Problems

1)情報への知的価値付け

Zebuを使う使う生徒は、与えられた情報に自分なりに価値を見い出し、それを自分の言葉で説明することを求められる。ただ情報を集めるのではなく、自分が価値があると思う情報をカテゴリーにまとめて整理するなど、テンプレートがそれらの活動をうながしている。(Figure7)

2)学習者へのサポート

教師は、テンプレートの機能を用いて、学習のための効果的なスタート地点をつくりだすことが出来る。テンプレート上に、生徒が学ぶべき内容とともに、学習の過程をガイドする仕掛けを作っておけるのである(Figure8)

3)グループ学習における調整

サイトの管理が簡単なインターフェイス上で出来るため、教師は容易に生徒をグループわけし、それぞれに課題を与えられる。(Figure9) また、ボタンを押すだけで自分の意見を書き込めるディスカッション機能も付いているので、生徒達がどのように共同で作業を進めていくか、話合うことができる。(Figure10)

4)共同作業のサポート

Zebu 上では、登録されている生徒はプロジェクト内のどのページも編集することができるので、プロジェクトは学習者に共有の場所である。また、どのページにも置くことが可能であるディスカッションの機能は、生徒間の論議をサポートしている。

■Conclusions

Zebuは、WWWにおける教育・技術上の問題点に関して、教師や学習者を支援することが出来、されに彼等にプロジェクトに基づいた共同学習におけるWWWの有効性を示したといえる。現在、Zebu は小学校1年生から高校3年生までのさまざまな授業で使われており、本稿で述べた技術上・教育上のチャレンジに関して調査を続けている。

-Clitique-

共同学習全般にいえることでもあるが、とくにこのシステムでは生徒がプロジェクト内の内容を自由に変えることができるため、誰が何をしたかという事に関して評価をすることは難しい。また、本文ではWWW上の情報は最新でかつ確かなものであるという表現がされているが、一概にそうともいえないのも明白であるため、特にこのようなシステムでは調べる手段がWWWに偏る可能性があるので、ウェブ以外の情報にも目を向けさせる工夫が必要ではないだろうか。いずれにせよ、本研究のようにWWWベースのソフトウェアの教育利用は、生徒の学習を支援するだけでなく、コンピューターを使った教育に付き物であった教師の負担を軽減できる可能性があることからも興味深い。

-Suggestion-

本研究のように、いろいろな学習に応用でき、かつ指導者にあまり専門技術を必要としないシステムは、コンピューターの普及にともない今後ますます必要となるので、教師がこのようなソフトウェアを容易に手に入れることができる状況が望ましい。本システムでは、システムそのものよりも、テンプレートの内容が教育としての善し悪しを左右すると考えられるので、このようにネットワーク上の共同学習で用いられるテンプレートの内容に関する研究も必要となるのではないか。


NAKAHARA, Jun
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