■Summary
DSA-project(Dialogue Structure Analysis of interactive problem solving:構成的な問題解決の対話構造に関する分析プロジェクト)において 、我々は協調的問題解決時における、認知的な情報処理の側面と、情報交換のコミニュカティヴな側面との関係を探求している。
問題を「協調」して解決している学習者の対話分析の基礎には、コンピュータによる「知的」協調システムを実装した。
このプログラムは、「コンピュータによる教育プログラム支援」の中核をなすもので、「生徒」をシュミレートし、その役割を演じ、本当の生徒と協調して問題解決を進めることができる。
本論考において、我々は「問題解決」の学習状況における協調的相互作用の重大な側面に焦点を当てようとおもう。それを、我々のシステムに実装するのは、大変困難を究めた。
これらの側面は、協調活動時における「タスク解決戦略」と「コミニュケーションの過程」との間の複雑な相互作用に非常に密接な関係をもっている。「本当」の協調活動には、協調する被験者同士が、彼ら個人の見解と推論を伝達しあい、交渉するための、「枠組み」を共有していることが必要なのである。
■Introduction
学習とテクノロジーに関する最近の知見は、「協調的学習(collaborative learnig)」の重要性を強調している。コンピュータと通信を基礎とした「学習環境」は特にこうした学習に適しているように思われる。
教育における「協調的学習の研究」は長い伝統がある。しかし、最近の教育研究において、この「協調的学習」が再び強調されている。これが強調されるのは、最近の構成主義或いは状況的認知の研究において、学習が「enculturation」として再定義されていることによる。「協調」という側面は、学習に対する構成主義的なアプローチにおいて、中心的な役割をはたす。「peer cooperation(仲間との協調)」とはヴィゴツキー的には、社会的活動を内面化する発展的な過程における「媒介段階」として認識されている。さらに、「認知的徒弟性(cognitive apprenticeship)」、「Anchored instruction」、「足場かけ的支援(scaffolding)」という概念は、部分的に「協調的パラダイム」に基礎をなしているように思われる。
教育に関してコンピュータが果たす役割ということになると、コンピュータによるマルチメディア環境に焦点化される。すなわち多様な、真正の学習経験を導く「開かれた学習環境」のことがよく言及される。
また、「協調」という側面は、問題解決時に学習者と協調・支援するcomputerizedされた「知的な道具」が主に認知されている。協調するシステムは学習者、また、学習者集団を一方的、或いは双方的に目的としているが、それはもう一つのアプローチである。このアプローチにおいては、コンピュータによって実現された「知的なパートナー」・「種ミレーとされた学習相手」が、協調的学習の効果をあげた。この意味において、協調するシステムを「学習相手」として実装するためには、協調するエージェント同士、すなわちシステムと学習者のコミニュケーション・インタラクションの必要性が協調されなければならない。
しかしながら、我々は、問題解決というコンテキストにおいて、学習者が如何にコミニュケーションを営み、それによって、自らの情報処理を協調させていくかについての知見を欠いていた。
学習者が自然言語によってコミニュケーションし協調する場合、問題に関する情報だけばかりでなく、情報の「もっともらしさ」や信念のような「メタ認知」的側面の情報も伝達されるのである。