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2002/01/26 Update In memory of Bourdieu フランスの偉大な社会学者、ピエール=ブルデューが亡くなったそうです。その追悼をこめて、この場で取り上げることにしました。ブルデューと言えば、「再生産」「ディスクタンオン」とか有名ですね。彼のカバーする範囲は非常に広範なのですが、なんといっても一番有名なのは、教育と再生産の議論でしょう。その学説は、異常なほど難解でいて、含蓄にとむ、そして確実に後世に影響を与えました。
およそ象徴的暴力を行使する力、すなわちさまざまな意味を押し付け、しかも自らの力の根底にある力関係を覆い隠すことで、それらの意味を正統であるとして押しつけるにいたる力は、そうした力関係の上に、それ固有の力、すなわち固有に象徴的な力を付け加える。 という命題、これは教育の象徴的暴力性を暴露した命題なのですが、これははあまりにも有名すぎます。
という教育的な物言いの裏に潜む暴力の問題ですね。こういう教育の暴力性を暴き出し、階層やジェンダーの再生産のメカニズムを「ハビトゥス」「プラクシス」等の概念で説明したところに彼の偉大さがあります。 最近では、市場主義批判&グローバリズム批判の急先鋒でした。
ピエール=ブルデュー、71歳の生涯でした。
2002/01/26 Update 「ゆとり教育」「総合的な学習の時間」等の政策が、「階層の再生産」「インセンティヴ・デバイド(学習意欲の格差)」等、意図せざる結果を生みだしていく。実証的にこのことを明らかにしています。 Reference 2002/03/07 Update 博物館特集 「総合的な学習の時間」が注目されて以来、学校教育と急速に接近した社会教育施設のひとつに博物館があります。 博物館は、今、ドラスティックに変わろうとしているそうです。今回は、博物館特集ということで、博物館の評価とマネジメントにかかわるいくつかの本をあげておきます。 まずは博物館の活動の独自性についてです。いつもおきまりの展示、おきまりのミュージアムショップというわけではなく、何か工夫を、というわけです。 一時期ハンズオンというエキシビジョン形式が注目されましたよね。あと、ミュージアムショップというのも実は博物館を構成するリソースとして非常に重要です。 博物館の活動は好き勝手やっていいわけではありません。法人化とともに、アカウンタビリティが求められるようになってきました。活動のアカウンタビリティを保証するためには、キチンとした評価が行われなければなりません。 活動の独自性を保ちつつ、アカウンタビリティを保証するためには、今までよりももっとキチンとマネジメントされなければなりません。ドラッカーを持ち出すまでもなく、非営利組織のマネジメントは、営利組織のマネジメントよりも深刻な問題をかずかずと生み出すものなのです。 是非、ご一読を。こういう本を読んで博物館にいくと、いつもあなたがみる博物館ではない、もうひとつの<博物館>が見えてきます。 2002/03/28 Update 1996年に出版された前作「CSCL」から5年後。でるでるでるでー、とずっと言われ続けてきた「CSCL2」がいよいよ出版されました。
昨日入手したので、中原もすべてを読んだわけではありませんが、もはや定番のCSILEとか、キワモノ系ではモバイルとか、MITのTAGの研究とかもあって、かなりおもしろかったです。 日本の研究者も何名かの方が執筆されていているところも、前作との違いでしょうか。 1995年にはじめての国際会議が開かれ、まだ6年の歴史しかないCSCL研究。
まだまだ目が離せません。 2002/04/01 Update Multimedia-Based Instructional Design 上の本はちょっと前にある方からご紹介された本で、先日ぱらぱら読みをおえた本。インストラクショナル・デザインの基本中の基本の本で、その表紙から「とんぼのめがね本」とよばれているらしい。特に企業内教育を担当している方には、読まれているらしいですね。 コンテンツをどのように配置し、どのように見せるか、についてのTipsがあふれている本です。セオリーよりも実をとった本ともいえるでしょうが、こういう本がいままであまりなかったわけで、価値があると思います。セオリーは他の本で学べばいいのではないでしょうか。 前にスタンフォードに在住のある方から、「日本でインストラクショナル・デザインが学べる大学はどこか?」というメールをもらって、少し考えてしまった経験があります。 海外では、インストラクショナル・デザインは立派なエキスパティーズとして認められていて、きちんとコースがあるのですね。でも、日本の大学だとそれをキチンと学べる場がまだない、と思います。そういう意味では、こういう本がとっても役立つのではないでしょうか。 下の本「e-Learning Handbook」は、海外のWBT開発者が先日「いいぞー」とオススメしてくれた本です。なるほど、事例もあり、文献もあり、まさにe-Learningに関するハンドブックですね。 以下は、e-Learning、WBT開発者の方におすすめの本です。 Reference
2002/06/18 Update 特集 e-Learningする前に これまで何名かの方々から、「もっとe-Learningの本を紹介してください」というメールをいただいていました。 日本でも教材設計に関する本が出版されました。鈴木克明先生がご執筆なさいました。おそらくは、日本語で読めるインストラクショナルデザイン理論の唯一の本ではないでしょうか。 設計といえば、近年注目されている情報デザインについても押さえる必要があります。 あと、やや理論的になりますが、e-Learningを支える学習理論についても重要です。
1年くらい前かな、2年だったかな、原典が出版されたのは。状況的学習論研究の端緒を開くことになったBrownとDuguidの本の翻訳がでたそうです。遠隔教育についても言及されています。 2002/06/20 Update 特集 社会人大学院を考える 実は、ヤミで僕は社会人大学院・プロフェッショナルスクールの研究をしています。ヤミってことはないか、ちゃんとしているんだけど、まだカタチにはなっていませんね。来春くらいに共編著の本が出版されます。 で、社会人大学院って、今とっても注目されています。 18歳人口が少なくなっているのでね、経営が危なくなるんじゃないか、っていう危惧が大学に広まっているんでしょうね。新たなマーケットとしての社会人という感じの注目のされかたでしょうか。 でもいつも思うのですが、「マーケットとしての社会人」というとらえ方には、恐ろしく社会人をナメているとしか思えないものもあります。 焼き畑じゃないんだから、18歳が少なくなったから、次はベビーブーム世代の社会人だぁ!っていうのはやめようよ、と思います。 もうひとつあるのが、企業内教育のリソースがなくなってきたから、自分で外で学べ、そのための社会人大学院っていう視座です。これも、確かにそのとおりなんだけど、ウーンと思う。 バブルのときは、やれMBAだ、やれMedia Lab.だと海外に人を送り込んでいたのに、何の制度的支援もなく、あとは「自分で外でやれ」っていうのは節操がないんじゃないか。 そういうエゴイズムを「即戦力」とかいうもっともらしいコトバで、美しいコトバで誤魔化すな、と言いたいですね。 まぁ、そうはいっても、社会的制度はどんどんと変貌をとげているので、仕方がないところもあります。誰にも読めない時代だからこそ、そういう時代なのだ、とあきらめるより他はないところもある。 でも、少なくとも教育関係者が語るロジックとしては、そういうトーンよりも、「人は学び続けるイキモノなのだ」という学習論の根本に帰って、そのための教育環境を整備しよう、という方が納得がいきます。 社会人大学院に関しては、それほど本があるわけではありません。
2002/08/26 Update 特集:エティエンヌ=ウェンガー 近年、知識創造マネジメントの観点からも、学習理論の観点からも、注目されているエティエンヌ=ウェンガー。一年ほど前のハーバード・ビジネス・レビューに特集論文が掲載されました。また、最近になって本も出版されました。 彼の提唱している理論は、コミュニティ・オブ・プラクティス(実践の共同体)なのですが、彼自身は、これまで様々な研究者の実践共同体を、「渡り歩いて」、現在の立場に落ち着きました。いいえ、落ち着いたというのは間違いかもしれません。彼は、まだ終わりなき旅の途上なのかもしれません。
2002/11/05 Update この世には、ナレッジマネジメントのことなら口角泡とばして語りたがる人はたくさんいる。「ナレッジマネジメントは、SECIモデルが云々」とか、「ナレッジマネジメントは組織知云々かんぬん」とかいう<概念>や<理論>を語る人はたーくさんいる。 また、「ナレッジマネジメント、ありゃ、失敗だったよねー」とか、「ナレッジマネジメント、そんなのもう古いよ、これからはCRMだよー」と平気のへーちゃんでいっちゃう人もいる。 僕にとっては、ナレッジマネジメントに関する、これらのどちらの物言い、ハッキリ言って「どーでもいい」、心に響かない。もちろん、<概念>や<理論>を軽視しているわけではないし、<この世の動き>を無視しているわけではない。 ナレッジマネジメントとは、モノの見方に近いものである。ナレッジマネジメントという透き通ったメガネを通して、日々行われている会社の実践を見ようとする人は案外少ない。この本は、今まであまり出版されることのなかったナレッジマネジメントの実践の本である。そこには、エーザイやセブンイレブンなどの、数々の実践現場が事例として紹介されている。 Reference 2002/11/26 Update 以前ここでも紹介したことのある「How people learn?」が翻訳されました。教育の現場で活用できる認知心理学の基礎、および学習科学の基礎を学ぶには最適な書物です。 Reference 2002/12/20 Update Community of practice理論を提唱したエティエンヌ=ウェンガー。近年は、組織経営学の観点からも注目されています。その訳書がついに発刊されました。コミュニティ・オブ・プラクティスとは、1)知識や専門性や情熱をもった人々が、2)一緒に取り組むことのできる事柄に対して、3)相互作用、相互貢献を行いながら実践するような場のことをいいます。 ナレッジが環流する組織づくり、場作りに具体的な示唆を与えてくれることでしょう。
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NAKAHARA,Jun
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