|
2000/01/03 Update Inter Communication Vol. 31 特集 マルチメディアと教育 アートとテクノロジーのジャーナルとして定評のあるInterCommunicationの最新号では、特集として「マルチメディアと教育」をとりあげ、主に高等教育以上の同分野における最先端の事例を、何人かの識者が紹介している。 本特集を読んで筆者が抱いた感情は「世の中が激変していること」に対する「素朴なオソレ」と「期待」というアンビバレントな感情である。未だ目にしたこともないものに対する「素朴のおそれ」と、それらの「不可視なるもの」が閉塞感のある既存の体制を変革することに対する「期待」。僕らは、それらアンビバレントな感情を抱えつつも、激変するその「中」を生きていく。 Reference
2000/01/10 Update InterCommunication Vol.31の紹介でも触れた「学びの科学」を提唱した本。研究室と現場の教育実践を常に越境する研究を行ってきたBrown, A. L. の最後の編集した本になる。内容は、これまでの認知科学における「学び」に関する知見の集大成。認知心理学パラダイムにおける「Expert - Novice研究」や既有知識の研究、最新の「Learning Environment研究」、「テクノロジーと学習研究」まで、学びに関するあらゆる研究の知見がまとめられている。初学者のみならず、現場と研究室のあいだを駆け抜けようとする研究者にとっても非常にオモシロク読むことができる。 本の巻頭には、この本の編集中に急逝したBrown, A. Lへの追悼が述べられている。Brownがめざした研究は、今を生きる若手の研究者の手によって、今後も絶えることなく続いていくだろう。
Ann, L. Brown. (1943 - 1999) Scholar and Scientist Champion of Children and Those who teach them Whose Vision it was to bring learning research into Classroom Reference
2000/02/01 Update 上野直樹氏自身の研究も含めて、状況論を概説する良著。ハッチンスの機能システム論、サッチマンのプランと状況的行為、近年のテクノサイエンス研究の知見、状況的学習論の批判と再構築を扱っている。状況的認知アプローチは、学際的な研究領域であるが故に、まとめることに非常に苦労したのではないかなぁと、つい筆者の労を考えてしまう。これまで状況論については、国内で一冊の研究書が編まれたことはなかった。その意味で、非常に貴重な本だと言える。また、本書に展開される上野氏による数々の批判は今後の研究を進めていく上で、非常に有益な指摘になった。あらためて、筆者に感謝したい。 Reference
2000/02/01 Update 僕は統計についてあまり詳しくないので、興味深くよんだ。でも、読み進めているうちに、この本は統計学に関して書かれているというよりも、人文社会科学の研究を進めていく上で、非常に重要な指摘をしているように思った。質的研究を志向していようとも、量的研究を志向していようとも、この本に書かれてあることは非常に参考になる。たとえば、「単なる記録」と「データ」との差は何か?、そもそもデータとは何をもってデータとよべるのか? ブラックボックスをつくらないで研究を進めるためにはどうすればよいか? などの基本的ではあるけれども人が自明視しやすい一連の問いは、一般の統計書にも、もちろんフィールドワークの参考書にも書かれることは少ないのではないだろうか。 また、実践的であることは理論的であることと対峙しない、実践とは基本的であり応用的である、という著者らの問題意識は、実践と理論という二分法に今なお悩み続けている人々に福音をもたらす可能性があるように思う。 統計学の本でありながら、実践について、データについて、再考する機会を与えてくれる良著だった。 Reference
2000/03/24 Update 情報編集力 - ネット社会を生きぬくチカラ IPAからリクルートが委託されたプロジェクト研究、シーホースベイプロジェクトのブレインたちのインタビュー集。松岡正剛氏、金子郁容氏、佐伯胖氏、高木剛氏、鈴木寛氏らのインタビューがおさめられているほか、彼らのデザインしたプロダクトの実践例がのっている。 情報編集力の「力」には、どうも本質主義というか、実体論っぽいニオイを感じざるをえないが、その定義、すなわち、「あるものとあるものの関係性の発見能力」、「意味のある情報どうしをとってきて、組み合わせ、組み替える能力」は、納得がいく。こういうチカラがおそらくこれからNetworked Societyにおいて必要になってくるのであろう。 Reference
2000/07/05 Update IT技術を用いた高等教育の変革の様子を伝える本。早稲田大学文学部の授業変革の取り組みが記述されている。これまで研究書レベル、論文レベルでしか紹介されてこなかった高等教育機関の変革の様子をわかりやすく紹介している。 Web Reference
2000/09/14 Update 企画、取材、撮影、編集、MA。 NHKの超有名ディレクターがドキュメンタリー番組の制作過程を忠実に語る。映像をつくる、とはどういうことなのか、どういう過程を経て、あなたがTVでいつも見ている番組が生み出されているのかが、よくわかる。最近は、メディアリテラシーという概念が注目され、放送をつくりだす「過程」へ、情報教育関係者の注目が集まっている。メディアリテラシーを考える際にも有効な一冊になると思われる。 Reference
2000/09/14 Update 最近邦訳が出版されたD. A. Normanの近著「The Invisible Computer」。邦題は、「パソコンを隠せ、アナログ発想でいこう!」というものらしい。カリフォルニア大学を退き、アップルのFellowをやめた彼は、突然Webのインタフェースデザインコンサルティング会社に顧問として参加する。そして、Normanが選んだビジネスパートナーが、この本の著者「ヤコブ・ニールセン博士」である。 ウェブのユーザビリティに関する本と言えば、有名な本に「The Non-designer's web design book」があるが、この本は、さらに詳しい。 Webはいまやどのコンピュータでも利用できるインタフェースとして、すっかり定着した感がある。プラットフォームを選ぶクライアント - サーバシステムならば、Webを用いたい。システム開発者なら、誰もがそう思うはずだ。 この本は、格好良くて、しかもユーザーが使いやすいWebをデザインしたいと思っている人にとっては、非常によい指南になることであろう。 Reference
2000/12/30 Update サブタイトルは「新時代の教育改革私案」とある。岩波新書でかつて出版された「教育改革」に続く本。教育国民会議の委員のひとりでもある筆者は、近年の教育改革の言説を詳細に分析し、その論理の誤謬をこれでもか、というほど追求する。なるほど、よーく読んでみると、近年の教育改革言説というのは、論理の全くない思いつき改革であることがいかに多いことか。 筆者によれば、近年の教育改革は、「教育の非武装化(Educational Disarmanent)」であり、世界的な教育改革とは全く違った方向に進んでいるという。
巻頭にかかげられた筆者のコトバは、教育改革の一貫性のなさを批判するものとして傾聴に値すると思われる。 Reference |
NAKAHARA,Jun
All
Right Reserved. 1996 -