-Epistemology and Learning-

The Media Lab,MIT

■abstract

「Epistemology and Learning(略称EL)」はMITのMedia Labの研究グループの一つであり、新しいテクノロジーが、いかにして新しい「思考」・「学習」・「デザイン」を可能にしていくかを探求しています。具体的には、新しい「tool to think with=思考のための道具」をつくったり、これらのtoolが学校や博物館といったような「現実の状況」において、どんな変化をもたらしうるのかを考察しているのです。

■Theme

learning through Design

我々の研究は「構成主義」の学習理論に示唆を得ています。「構成主義(constructionism)」によれば、知識は、単に教師から生徒に「伝達」されるのではなく、学習者の「心」によって積極的に「構築」されていると考えられます。さらに、「構成主義」によれば、学習者が「新しい考え」を想像できるのは、自分の「外」に、「他者」と共有可能で、再吟味可能な「人工物」を能動的につくっている、まさにそのときであると考えています。

我々の研究では、子どもを「デザイナー」とみなして、彼らを支援する新しいテクノロジーを開発しています。たとえば、子どもたちが「Videogame」や「ロボット」や「シュミレーション」をつくるのを支援したりしているのです。

learning in communities

我々の研究の多くは、人間の思考が「社会的な性質」をもっていることに焦点化おり、人々が如何に思考し、学習しうるかは、彼らが相互作用している「コミニュティ」と「文化」に強い影響をうけていると考えています。我々の研究プロジェクトは、新しいテクノロジーとメディアが、既存のコミニュティ間の関係に変化をもたらす可能性を探求する一方で、コンピュータネットワーク上における新しいタイプの「ヴァーチャルなコミニュティ」の発達を促進しています。本プロジェクトでは、教師のコミニュティの発達と、個々の教室における学習のコミニュティの発達を検証しています。

Learning about system

システムについての知識は、科学・工学・社会科学の広大な領域において、非常に重要なものです。新しいコンピュータメディアのおかげで、研究者が諸システムについて思考したり学習したりする方法が、変わりつつあるのは非常に意義深いことです。また、一方で、コンピュータメディアは、若い学生にもアクセス可能なシステムの知識を形成しています。我々の研究では、如何に学習者がシステムの概念(たとえば、フィードバックや自己組織化)について思考しうるかを探求しようとしています。

■project

constructionism

我々は、「構成主義(constructionism)」を、学習の理論、あるいは、教育の戦略として発展させてきました。構成主義という言葉は、「構成(construction)」という言葉のもつ二つの意味に由来しています。すなわち、まず第一にそれは「人々は新しい知識を構築するときにはじめて学習する」という考え方に基づいており、「学習」を、「情報を学習者の頭の中にそそぎ込むこと」によって成立するとは考えていません。さらに、構成主義は、人々が「有能」に学習するには、その人が個人的に「意味のある人工物」を構築するときであると考えているのです。たとえば、それはコンピュータのプログラムであっても、アニメーションであっても、ロボットであってもかまいません。たとえば、programmable Bricksというものがありますが、これは、子どもの「construction kit」を拡張し、コンピュータの力をLEGO BLOCKに実装させたものです。たとえば、このProgrammable Blickがあれば、子どもは各人の「思考する道具」を想像することが可能になります。子どもはこのあたらしいBlicksをつかって、自律的なロボットをつくることができますし、個人的に科学の実験をすることができます。

Beyond Black Boxes

このプロジェクトにおいて、我々は、コンピュータ・ツールやプロジェクト・マテリアルを開発してきました。それらを使えば、子どもが、まさにかつての科学者のように、自分自身の「科学的な道具」をつくることができるようになり、科学的な探求活動に「かかわれる」ようになるのです。もちろん、それは観察や測定を通してばかりでなく、自らデザインしたり、構成することを通して可能になります。我々の仮説によれば、おそらく学習者は、自らの「科学的な道具」を作り出すことを通して、科学的な活動により強い動機をもって参加できるだけでなく、科学的測定や科学的知識を自ら評価する能力を発達させ、さらには、探求活動の基底をなす科学的な概念に強い結びつきを感じ、科学とテクノロジーの関係をより深い理解をしめすようになるでしょう。

Learning in multicultural setting

我々は、学習における「ジェンダー」・「人種」・「文化」・「認知スタイル」の役割を探求しています。

The computer clubhouse

コンピュータ・クラブハウスは、放課後の学習センターです。そこでは、10才から16才の若者が、コンピュータを使い自分の興味関心と経験に関連する長期間のプロジェクトに参加しています。

クラブハウスでは、そこに居合わせる人々が自分のコンピュータ・グラフィックやロボット、ヴィデオゲーム、音楽、シュミレーション、アニメーションなどを想像することができます。我々は、新しい「学習コミニュティ」がそのような「場」で「創発」する様子を観察しています。

Learning in Virtual Worlds

我々は、オンラインのヴァーチャルコミニュティが、如何に人々、とりわけ子どもの学習形態、あそび、自己認知を変容させていくのかを探求しています。MUDとして知られている(Multi User Dansion)オンラインの世界では、参加者が話したり、メッセージを交換したりするばかりでなく、自ら「ヴァーチャルな世界」を「協同」して作り上げていくのです。我々は現在「Graphical MUD」を開発していますが、そこでは子どもがある「オブジェクト」や「キャラクター」の振る舞いをプログラムすることが可能になります。

Starlogoの紹介は、 Essay & Misc.のページを参照のこと。

Groupwear

我々はヴァーチャル・コミニュティにおける対話と相互理解を支援する「ツール」を開発しています。(中略)さらに我々は、インターネット上の対話支援ツールを開発しています。それを使えば、オンラインのコミニュティにおいて、複雑な考えや問題の理解を共有することが可能になるのです。

Networked Stories:

Learning about Values and Identity

このプロジェクトは、アイデンティティや価値の学習を可能にする、新しいテクノロジー環境を探求しています。我々は、アイデンティティの文化的かつ精神的な重要性を提示するために、インタラクティヴな「storytelling」を活用しています。このプロジェクトの目的は、新しいテクノロジーが「self-reflection(自己の再吟味)」とアイデンティティや価値の伝承を如何に支援するかを理解することにあります。そして、それを通して、メンバーのアイデンティティを喪失させないコミニュティの伝統的価値を、維持したり、再生産することが可能になります。

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NAKAHARA, Jun
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