この夏、「人材開発研究大全」の編集が大詰めを迎えます!

※本日7月25日(月曜日)から、8月7日(日曜日)まで、中原は「夏の充電期間」に入ります。この間のブログ更新は原則としておこないません。たぶん、下記にありますように、充電をしつつも、「人材開発研究大全」の編集作業をしこしことおこなっていると思います。
また8月8日からどうぞよろしく御願いいたします!

  ▼

 1冊で人材開発研究が「丸かじり」できるような本ー「人材開発研究大全」(東京大学出版会)の編集作業が大詰めを迎えようとしております。

 人材開発研究大全は「組織への参入」から「組織からの退出」に至るまでの「人材開発研究の最前線」を網羅した研究書です。
 全33章、800pの本になる予定で、東京大学出版会より今年度中に発刊の予定です。

 人材開発研究が扱う領域は、下記のような領域です。

 採用研究
 教育機関ー大学からのトランジション
 新人育成
 管理職育成
 リーダーシップ開発
 非営利組織の人材開発
 学校の人材開発
 理念経営と学習
 中途採用者の育成研究
 女性管理職の育成
 ポストオフ後のマネジメント
   ・
   ・
   ・

 要するに、人材育成全部。
 このたび、不肖・中原が編者をつとめさせていただき、総勢20名弱の著者の方々にご寄稿いただくことができました。

 しかし、ここまでの道のりは非常に長いものでした。構想からはや2年。原稿がなかなか揃わず(泣)。また揃ったはいいものの、その統一には、予想以上の困難がともない・・・・(笑)。

 編者の木村素明さんが、ひーひー言いながら、なんとかここまで来ました。作業が遅れてしまったこと、著者の皆様に心よりお詫びいたします。本当に申し訳ございませんでした。

 しかし、なんとか、この夏休みで、中原が最終編集をおこない、序章・終章をつけて、完成となります。
 その後は、おそらくゲラがでてくるものと思われます。

 僕としては、本書をもって、この10年の研究生活の区切りをつくりたいと考えています。本書は、こののち10年に、様々にでてくるであろう人材開発研究の下地のようなものになればいいなと思っています。

 本書に着想やヒントを得て、フレッシュな目と知性をもった誰かに「新たな研究」を生み出していく。
 そうした未来の研究によって、人材開発研究大全の内容が「上書き保存」されていくような事態が起こったとしたら、僕としては、最高です。

 またひとつ、皆さんにお読み頂けるものをつくるべく、著者の先生方と連携・強力させていただきながら、何とか前進したいと考えております。

 そして人生はつづく
 

投稿者 jun : 2016年7月22日 06:14


「10年後の組織」を展望しつつ「人材システム」を変革する!? : シナリオプランニングを用いた人材開発施策の企画とは!?

 10年後の学校はどうなっているのか?
 10年後の校長先生の、ある1日をシミュレーションして、ストーリーにしてみよう
 
 こんな取り組みをなさっている教育委員会がございます。
 横浜市教育委員会・教委職員育成課の皆さんです。
 なぜ、このようなことをなさるのか、といえば、「10年後」をみすえて、教員研修やOJTの各種の制度、仕組みを整備するためです。

 お忙しい中、このような仕事をなさるのは本当に大変だろうと思います。ともすれば研修開発や実施は「オペレーション」に追われがちですよね。
 しかし、10年後をみすえた研修開発は、「未来志向」の素晴らしいお取り組みであると感じます。ぜひ、継続なさって頂きたいな、と感じております。

 ▼

 2009年から3年間、横浜市教育委員会と中原研究室は共同研究契約をむすばせていただき、初任教員の育成に関する各種のプロジェクトを遂行してきました。
 そのすべては、当時大学院生であった脇本さん(横浜国立大学)、町支君(青山学院大学)らが書籍におまとめになり(本当にお疲れ様でした。また御協力頂きました横浜市教育委員会の皆様には心より感謝いたします)、すでに「教師の学びを科学する」として出版されています。

 一方、今年から、中原は、横浜市教育委員会から「教員育成顧問」を依頼され、だいたい数ヶ月に一度、課長さん、指導主事のみなさんと議論をさせていただいております。冒頭に述べた、10年後をみすえた人材育成のシステムをゆるやかに議論するためである、と認識しております。完全ボランティア・社会貢献のお仕事ですが、10年後を皆さんと議論させて頂くのは、なかなか興味深いものがございます。


  ▼

 かつて、僕らが2009年にプロジェクトにかかわらせていただいたおりには、最大に問題になっているのは、

 大量の新任教員(経験の浅い教員)をどのように「育成」するのか?

 ということでした。

 それも、もちろん今なお課題なのですが、これから10年を考えますと、大量採用した新人達が、今度は「中堅教員」に成長していきます。

 中堅教員は、学校の要であり、大きな役割を担って頂かなければならない一方、プライベートでもさまざまな分岐がでてくる年齢にさしかかります。

 女性の場合は、産休、育休などで抜けることもでてきて、彼らがそれらで抜けている場合、どのように「経験の浅い代用教員」、その穴を埋めるのか、ということが問題になってきます。
 9時から5時まで、ひとりの教員が安定的に勤務する、ということがむずかしくなる事態も容易に予想できます。今よりも、さらに複雑な人材マネジメントが必要になってくるのです。

 要するに、これから10年で問題になってくるのは、

 大量の中堅教員にいかに活躍してもらえる場や制度や育成システムをつくりあげるか?

 ということです。
 
 こと人口にかかわることは、比較的、予想がつきやすいものです。
 だって、みんな、同じように、一年一年、年をとるでしょう。
 10年後には確実に起こりうることを、今から予想する。
 これが、長期の視野にたった人材開発です。

 加えて、10年後の学校は、ICT機器がさらに導入されていくことが予想されます。
 LGBTやキャリア教育など、従来の学校が扱わなかった課題をさまざまに扱わなくてはならなくなるでしょう。
 英語ももちろん、今よりも充実したかたちが求められます。

 教える内容に加えて、教える方法も変わります。アクティブラーニングなど、課題解決型の学習にどのように取り組んでいくか、ということも課題になります。

 そこで、こうした「10年後」に対応していくために、教職員育成課の方々に、お勧めさせていただいたのが「シナリオプランニングの作成」でした。

 課内の様々な方々を巻き込みながら、10年後に対する想像力をふくらませ、「10年後の学校」に関する「対話」をいただきたいとお願いをいたしました。

 10年後の学校はどうなっているのか?
 10年後の校長先生の、ある1日をシミュレーションして、ストーリーにしてみよう

 もちろん、10年後の未来のことを完全に予想できるわけではないのですが、こうしたシナリオをつくっていくプロセスそのものが、「考える機会」になり、かつ、「対話の機会」になります。
 こうしたシナリオをつくっていくことで、組織内にも「ゆるやかな合意」が生まれる場合もございます。そうした土壌のうえに、10年後の教員育成システムを構想してみませんか、とご提案させていただきました。

 研究室には、数ヶ月に一度、課長の松原雅俊さんはじめ、指導主事の長谷川利恵さん、柳澤尚利さん、根本勝弘さんらがお越しなられます。
 みなさんがお持ちになる10年後の未来を話の種に、短い時間ではありますが、お話しさせて頂くことが、なかなか愉しい時間です。皆さんのお取り組みの熱心さには頭がさがります。

 嗚呼、10年後、遠い未来だと思っていたら、そんなことはない。
 10年後なんて、すぐだよね

 10年後は、いったいどうなっているんだろう?
 僕は、どこで何をしているんだろう(笑)

  ▼

 今日はシナリオプランニングをベースにした人材開発施策の構築に関するお話をしました。
 これは、実は、組織の企業戦略や、人材開発施策をたてるときには、よく採用される手法ですが、おそらく、教員育成で活用されることは、あまりないのかな、と思います。

 10年後の自組織はどうなっているのか?を考えつつ、未来に必要になる人材施策を、今、考える。

 かつて横浜に住んでいたことがあるせいかもしれませんが、僕は横浜の「挑戦的なところ」「未来志向であるところ」が好きです。ぜひ、今後とも、全国に先駆けて、横浜発のモデルをつくっていただきたいと思います。
 人材開発の仕事は、「オペレーション」がどうしても多くなりがちですが、こうした「未来志向の対話」をすることも時には大切なことなのかもしれません。

 そして人生はつづく

投稿者 jun : 2016年7月21日 06:07


参加者募集中! : 大学生研究フォーラム2016:経験で終わるな、メタにあがれ!

こちら一ヶ月前、最終のご案内です!:「大学の今」、「企業の人材マネジメントの今」を「最前線」を1日で知る!?カンファレンス

 大学生研究フォーラム2016

 を今年も開催させていただきます。

 すでにプレワークショップについては満員御礼寸前、本番に関しても、そろそろです。もし、ご興味がおありな方は、どうぞお早めによろしく御願いいたします。夏本番の京都で、大学と仕事世界へのトランジションについて考えてみませんか。
 ちなみに、参加費用は、ランチ立食がついて、それでもなんと無料! ワークショップも無料!スポンサーの電通育英会様には心より感謝いたします。


img2013.jpg

大学生研究フォーラム2016へのお申し込みはこちらです!
http://www.dentsu-ikueikai.or.jp/transmission/forum/outline/

  ▼

 「大学生研究フォーラム」は、「大学の今、企業の今」を1日で知ることのできるカンファレンスであり、今年も、非常に豪華な登壇者の方々にレクチャーいただける予定です。

 今年のカンファレンスのテーマは、

 大学・企業のすすむ道!? : 経験で終わるな、メタに上がれ!

 です。

「個別の知識や実験、研究から一般性のある原理・原則を導くことを、大学時代には鍛えておく方がいい」
「会社にはいって、社会人になったら、過去の業務経験をしっかりと棚卸しして、自分の中に引き出しをたくさん準備しておいた方がいい」

 「大学における学び」や「企業における人材マネジメント」に関する言説空間では、上記のようなことをよく耳にします。
 両者は、文言こそは異なっているものの、深層ではつながっているものと思われます。
 それは個別の知識や実験、研究に終始することなく、あるいは業務経験や体験に終始することなく、より抽象的かつ一般的な原理までそれらを昇華しなければならない」ということです。

 かくして今年のフォーラムでは、「経験で終わるな、メタに上がれ!」という問いかけから会をはじめたいと思います。
 
 「経験で終わるな!」というときに、大学、企業には何ができるのか?

 このカンファレンスにおいて、中原は主に「企業パート」をご担当させていただいております。当日は、中原もプレゼンをさせていただきます。
 
 その後、昭和電工の安藤さまには、「経験学習をコアにした同社の人材育成の試み」、大阪ガスの松本さまには、「顧客の経験や行動を観察することでおこなう新商品・サービス開発の試み」についてお話いただける予定です(ご両名には、心より感謝いたします)。

 それぞれのお話は、前者が人材マネジメント、後者が「新商品開発・イノベーション」といった領域になるのかもしれません。しかし、その要諦は「経験で終わるな、メタにあがれ!」だと僕は思っています。「経験で終わるな、メタにあがれ!」をキーコンセプトとした企業経営の今を、じっくりお楽しみ頂ければと思います。

 今年のカンファレンステーマは下記に詳細がございますが、メインカンファレンスが8月25日(木曜日)となっております。

 今年は「音楽座ミュージカル」によるプレワークショップも開催され、そちらは8月24日(水曜日)です。どうぞ両者ともによろしくお願いいたします。
 
 皆さんで考えてみませんか?
 京都でお会いしましょう!

  ▼

 当日のプログラムはこちらです

ーーー2016年8月25日 メインカンファレンスーーー

 2016年8月25日(木) 9:45~17:00
 京都大学 百周年時計台記念館

ファシリテーター:村上 正行(京都外国語大学・教授)

・講演「企業人事のすすむ道:経験で終わるな、メタに上がれ!」
中原 淳(東京大学 大学総合教育研究センター・准教授)
・講演「大学教育のすすむ道:経験で終わるな、メタに上がれ!」
溝上 慎一(京都大学 高等教育研究開発推進センター・教授)

・大学からの事例報告
「創造的な技術者・研究者を育てる教育-工学部・工学研究科の事例から」
  須田 淳(京都大学大学院 工学研究科・准教授)
「発展途上の脳とメタ認知―京都大学教育学部・教育学研究科の教育活動
で大事にしていること」
  明和 政子(京都大学大学院 教育学研究科・教授)

・企業からの事例報告
「行動観察のビジネスへの応用」
  松本 加奈子(大阪ガス株式会社 大阪ガス行動観察研究所 研究員
兼 株式会社オージス総研 行動観察リフレーム本部 主任)
「新入社員育成プログラムでの経験を成長につなげる取り組み」
  安藤 直人
 (昭和電工株式会社 総務・人事部事業支援グループマネージャー)

プログラムの詳細はこちらをご覧下さい!
http://www.dentsu-ikueikai.or.jp/transmission/forum/outline/

ーーー8月24日(水)プレワークショップーーー

 同じ京都大学百周年時計台記念館2Fで、音楽座ミュージカルによる
 (併催)プレワークショップ「教員のための表現力向上ワークショップ」について

 京都大学 百周年時計台記念館
 2016年8月24日(水) 13:30~17:30

 小学校・中学校・高校・大学の教職員が対象です。(定員100名)
 1988年に旗揚げした音楽座ミュージカルが行う、演劇やミュージカルの
 トレーニングを活用したペア・グループ形式のワークショップ。
 場を作るために必要な教員のあり方を振り返り、アクティブラーニングを
 実践する教員に必要な身体的表現を体得するなど、対話を活性化させる
 場作りに求められる表現を考えていきます。

プログラムの詳細はこちらをご覧下さい!
http://www.dentsu-ikueikai.or.jp/transmission/forum/outline/

投稿者 jun : 2016年7月20日 06:04


「誰とやるか?」でプロジェクトの未来は決まる!?

 中原研究室では、たくさんの共同研究プロジェクトが走っています。中原の研究は約9割が、企業・組織との共同研究。

 大きなプロジェクトでは、数十人の方々が、共同研究に邁進し、日々ご尽力頂いております。ありがとうございます。皆さんとの共同研究を心から愉しみにしております。

  ▼

 研究プロジェクトを立ち上げるときに、僕がいつも思っていることがあります。それは、プロジェクト立ち上げに関する「3つの持論」です。

 下記に「わたしの持論」ご紹介させていただこうと思いますが、だいたい、こんなところでしょうか。

一、研究プロジェクトは「誰とやるか」で成果は決まる
  =誰に参加してもらうかは、もっとも悩みます
  =なぜなら、誰とやるか、誰を巻き込むか
   誰にかかわってもらえるかで、成果が大きく
   決まるからです、経験上。
  
一、研究プロジェクトは「目的の打ち込み」で成果は決まる
  =参加人数が確定し、通常、キックオフをします。
  =そのときに冒頭でおこなうプレゼンは、最も力を
   いれます。なぜなら、この目的の打ち込みで、成果が
   決まるからです、、、経験上。

一、研究プロジェクトは「成果のイメージ共有」で成果が決まる
  =そのプロジェクトを為すことで、どのような成果
   が期待できるのか、そのイメージのすりあわせで
   成果が決まります、経験上。

 要するに言いたいことは、

 研究プロジェクトは「最初が肝心!」
 しょっぱなコケれば、みな、コケる。
 おまえはもう死んでいる

 ということです(!?)。

  ▼

 今日は、研究プロジェクトの立ち上げに関する持論について書きました。ま、これは研究プロジェクトだけではなく、一般的なプロジェクトについても言えることかもしれませんね。

 今日も共同研究が続きます
 そして人生はつづく

 ーーー

新刊「アクティブトランジション:働くためのワークショップ」もどうぞよろしく御願いいたします。内定者教育、採用活動に従事なさっている企業関係者の方々、大学の就職関係者の方々にお読み頂きたい内容です。どうぞご笑覧下さい!


投稿者 jun : 2016年7月19日 06:18


怪しく愉しい「マジックミラーダイアローグ」!?:マジックミラー越しになされる対話に耳をすませば!?

 せんだっての慶應MCCでの授業「ラーニングイノベーション論」では、全講座13回の中盤6回目でしたので、受講者全員で、しっかりと自分の仕事の振り返りをすることにいたしました。

 めざしたいのは「深いリフレクション」。
 用いた手法は「マジックミラーダイアローグ」です。
 マジックミラーダイアローグは、「あたかもマジックミラーがあるかのようにグループをわけてなされるダイアローグセッション」です。
 マジックミラーという言葉からは、何か「怪しい雰囲気」を感じてしまいます(笑)

  ▼

 マジックミラーダイアローグのやり方は下記のとおりです。

1.4人くらいを1グループとします。

2.グループを2つにわけます。振り返りをしたいAさんと、Aさん以外の3人にわけるのです。Aさんは「ひとりぼっち」になります。

3.まず、何らかのかたちでAさんが振り返りたい内容を3人に共有します。

4.ここからAさんは喋ることができません。Aさん以外の3人は、Aさんのことについて勝手気ままに対話をします。「もし自分がAさんだったら、どのように問題をとらえ、何が良くて何を悪いと考え、何をするのか」を勝手気ままに話し合います。

5.Aさんは発言権を失っており、Aさん以外の3人が対話しているのを黙って聞くだけです。この様子が、「マジックミラー越しになされる対話」に似ているので、「マジックミラーダイアローグ」と名づけました

6.十分時間がたったら、今度はAさんがようやくしゃべることができます。Aさんは、Aさん以外の3人がなした対話に対して、まずは謝意とコメントを述べ、その後はグループでAさんの課題解決をおこないます。

 わかりにくいですか?
 図にしたら、だいたいこんな感じです。

magicmirror.jpg

 マジックミラーダイアローグは、僕の専売特許というわけではありません。
 リフレーミング(reframing : 物事の見方や思考の枠組みの解体・ズラし)をめざすような対話セッションでは、よく用いられる手法です。
 一部、カウンセリングでも用いられていますし、ダイアローグの手法としても普及しています。
 ま、名前は「マジックミラー」と名づけられてはいないでしょうけれど(笑)

 要するに、Aさんの情報発信・発言を一時的に「遮断」します。
 このことによって、自分が思っていない方向から、他者の対話や推論を「聞くこと」になります。
 これが「リフレーミング」、ないしは「深いリフレクション」につながる、ということでしょうか。

 授業では、マジックミラーダイアローグにすぐに入らず、その準備をしっかりやったうえで、これにのぞみました。こってり3時間かけて振り返りをさせていただきました。熱心にご参加頂いた受講生の皆様には、心より感謝いたします。

  ▼

 マジックミラーダイアローグは、やり方によっては、いかようにも彫り込むことができると思います。
 コミュニケーションをどの程度の時間「遮断」し、どのように他者とのズレを創り出していくかが、キモです。

 ただし、この状況は思っている以上に「強ストレス環境」になります。他者の勝手気ままな対話を一方的に「聞く」というのは、想像以上にストレスを感じるのです。

 目的に応じて、適切な程度を決めていくことが大切であるように思います。

 学習や教育の手法、それ自体には、一般的に「著作権」が発生しません。
 知り合いの福井健策先生(知財法のプロフェッショナル)がおっしゃっておられたのですが、「法律は、手法を文化を豊かにするための手段と考え、そこに著作権を発生させ、一部の人に権利を与えることを選ばなかった」のだそうです。

「ノウハウの知」について:最も簡単なリアルタイムドキュメンテーションムービーの作り方
http://www.nakahara-lab.net/2013/05/post_2009.html

 ぜひ、さまざまな工夫をしていただければと思います。
 そして人生はつづく

 ーーー

伝説のラーニングイベント「ラーニングバー」。ラーニングバーがなぜ生まれたのか。それはどのように実践されたのかを綴る一冊です。どうぞご笑覧ください。

 

祝増刷!「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)、四刷かかりました!:マネジャーが陥りやすい罠をいかに乗り越えるか。職場を率い成果をだすためのヒントを実証的に明らかにする。どうぞご笑覧ください!

新刊「会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング」発売中です。おかげさまで、すでに3刷増刷!AMAZON「経営学・キャリア・MBA」で1位、「光文社新書」で1位、「マネジメント・人材管理」で1位を瞬間風速記録しました(感謝です!)。
「働かないオジサン」「経験の浅い若手」などなど、現場マネジャーなら必ず1度は悩むジレンマを解き明かし、決断のトレーニングをする本です。どうぞよろしくご笑覧いただけますよう、御願いいたします。

新刊「アクティブトランジション:働くためのワークショップ」もどうぞよろしく御願いいたします。内定者教育、採用活動に従事なさっている企業関係者の方々、大学の就職関係者の方々にお読み頂きたい内容です。どうぞご笑覧下さい!

研修開発の決定版、「研修開発入門」。人事部の書棚においてあるところもあるようです。どうぞご笑覧ください!

 

投稿者 jun : 2016年7月15日 06:13


店長!、なんか、アルバイトの面接だっていう人、来てますけど!? : 内定受諾率・入店数に影響を与える「なんか」!?

「店長、"なんか"わからないけど、これからアルバイトの面接だっていう人、きてますけど。ついつい、面接の候補者を店頭で迎えたアルバイトの子が、悪気なく、こう言っちゃうんですよ。

面接のために人がくることを知らされていないから、ついつい、応募者に向かって、"なんか"っていっちゃう。この"なんか"が問題なのです。ウェルカム感がまったくない」
  ・
  ・
  ・

 去年から、中原研究室はテンプホールディングス株式会社さんと「アルバイト・パート人材の採用・育成」に関する共同研究を開始しています。

 このプロジェクトは、「未曾有の人手不足時代」に突入した現在、いかにアルバイト・パートの人材を新たに確保して、育成していくかを、実証的に研究するものです。

 共同研究は2つのフェイズにわかれています。
 第一期の調査フェイズでは、小売・運輸・外食などの大手7社、従業員規模50万人を超える企業へのご参画をいただきました。五三角頂きました企業の皆様には、心より感謝いたします。

 現在、第二期の開発フェイズでは、調査のデータ+理論+現場の状況を総合的に加味しながら、1)面接官のトレーニングプログラム2)店長のマネジメント研修を開発しています。秋以降に、実証実験がおこなわれる予定で、とても楽しみです。

 ▼

 ところで、冒頭部に紹介された下記の文章は、先だっておこなわれた第二期のキックオフミーティングで、某社の担当者の方が、もらした一言です。キックオフミーティングには、7社のご担当者の方がご参画くださり、熱心に議論をしていただくことができました。心より感謝いたします。

「店長、"なんか"わからないけど、これからアルバイトの面接だっていう人、きてますけど。ついつい、面接の候補者を店頭で迎えたアルバイトの子が、悪気なく、こう言っちゃうんですよ。

面接のために人がくることを知らされていないから、"なんか"っていっちゃう。この"なんか"が問題なのです。ウェルカム感がまったくない」

 調査の結果からも、「なんか」の「破壊力」は示唆されます。

 2万人をこえる調査によりますと、現代のアルバイト・パート応募者は、面接の内容のみならず、職場の環境、職場にどのような人がいるか、この職場に自分は歓迎されているかを、面談時に確認しています。
 たとえば、既存の従業員がきちんと出迎えてくれる、挨拶してくれる、といった要因は、面接後の内定を受諾率や、入社率に少なくない影響を与えるでしょう。

 "なんか"という悪気がないけれど、ぶっきらぼうな一言は、店長が面接の存在を、既存の従業員にしっかりと伝えていないときに起こりえます。
 こうしたことひとつからも、内定の受諾率は変わりうる可能性があるということです。

  ▼

 去年からはじまったアルバイト・パート人材の採用・育成研究は、今、まさにヤマといったかたちです。

 研究成果をまとめる段では、ダイヤモンド社の藤田さん、ライターの井上佐保子さんにも参画頂いており、今年の秋頃に、ダイヤモンド社さんから「アルバイト・パートの人材育成」という書籍を出版させて頂く予定です。どうぞお楽しみに!

 人手不足時代を背景に、アルバイト・パート人材の人材育成を、
「よりよいかたち」にするお手伝いができればと思っております。

 そして人生はつづく

 ーーー

伝説のラーニングイベント「ラーニングバー」。ラーニングバーがなぜ生まれたのか。それはどのように実践されたのかを綴る一冊です。どうぞご笑覧ください。

 

祝増刷!「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)、四刷かかりました!:マネジャーが陥りやすい罠をいかに乗り越えるか。職場を率い成果をだすためのヒントを実証的に明らかにする。どうぞご笑覧ください!

新刊「会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング」発売中です。おかげさまで、すでに3刷増刷!AMAZON「経営学・キャリア・MBA」で1位、「光文社新書」で1位、「マネジメント・人材管理」で1位を瞬間風速記録しました(感謝です!)。
「働かないオジサン」「経験の浅い若手」などなど、現場マネジャーなら必ず1度は悩むジレンマを解き明かし、決断のトレーニングをする本です。どうぞよろしくご笑覧いただけますよう、御願いいたします。

新刊「アクティブトランジション:働くためのワークショップ」もどうぞよろしく御願いいたします。内定者教育、採用活動に従事なさっている企業関係者の方々、大学の就職関係者の方々にお読み頂きたい内容です。どうぞご笑覧下さい!

研修開発の決定版、「研修開発入門」。人事部の書棚においてあるところもあるようです。どうぞご笑覧ください!

投稿者 jun : 2016年7月14日 05:34


次の会議は「コイチ」くらいで、終わりは「ロクピタ」!?:ビジネスパーソンの語彙を採集する

 仕事柄、多くのビジネスパーソンのお話を伺う機会があります。
 
 ヒアリングはもちろんのこと、研修や、様々なプロジェクトでご一緒するなど、たくさんのビジネスパーソンの方々とお逢いします。

 彼らの様々なお話を伺いながら、僕はたくさんの「メモ」をとります。
 時には紙に、時にはコンピュータに。
 僕のとっているメモのひとつが、ビジネスパーソンの方々の使っている「語彙」のメモです。

 ふだん日常の家庭生活では出てこないけれど、ビジネスの現場で生まれ、ひそかに流通している!?言葉。
 ビジネスパーソンの方々が、思わず、口にしてしまった、そんな「生々しくもユーモラスな言葉」
そんな言葉を、ひそかに「採集」しているのです・・・いや、趣味で

   ▼

 たとえば、こんな言葉。
 みなさんは意味がわかりますか。
 いずれも、ビジネスパーソンの方々が、会話の端々で用いておられた言葉です。
 10個だしますので、わかった数をメモしておきましょう。

 1.「終わりは、ロクピタかな」

 2.「誰が、ぎじりますか?」

 3.「ミーティングは、コイチでいいんじゃないですか」

 4.「わたしが、さまっときます」

 5.「なるはやじゃねーよ、ちょっぱやで」

 6.「あの件、寝かしとこ」

 7.「シレっとやりましょうよ、しれっと」

 8.「こうなったら、僕が、まきとるしかないですよね」

 9.「悲しいことに、ガラガラピシャですよ」

 10.「あいつは、ひきだし、多いからな」
 
 どうでしょう?
 皆さん、だいたいおわかりになられますか?
 10個だしましたが、何点でした?

 ここで紹介される用語が、一般的かどうかはわかりません。
 しかし、僕がおつきあいしているビジネスパーソンの方々が、何気なく使っていたものを、密かにメモしたものです。
 おそらく、当の本人も、メモされたとはおわかりではない、と思います。
 なぜなら、この言葉は彼らにとってはまったくの日常で、とりたてて面白いものではないから(笑)

 なぜ、こんなことを影ながらしているのかと申しますとね、そこに「クリアな理由」はないのです(爆)。
 むしろ「マインドの問題」なんです。

 自分の研究のフィールドで生きている方々が、ふだん用いている「語彙」をわかっているのとそうでないのでは、何か違う気がするのです。
 直接的ではないかもしれないけれど、きっと自分の研究や思考に少なくない影響を与えるのではないだろうか。
 僕は、ふだんから「地に足のついた現場感のある研究」がしたいと願っています。
 そのことに、きっと、これらの「語彙」を集めたり愉しんだりするマインドは、役立つのではないか、と影ながら思っています。

 さて、そろそろ先ほどの答えでしょうか。
 先ほどの答えは、、、、

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・ 

 1.「終わりは、ロクピタかな」
    ロクピタ=午後六時にぴったりおわる
    今日の会議は、六時ぴったりにおわるかな・・・という意味ですね

 2.「誰が、ぎじりますか」
    議事る=議事録をとる
    誰が今日は議事録をとりますか?という意味ですね

 3.「ミーティングは、コイチでいいんじゃないですか」
    コイチ=小一時間時間をとっておく
    ミーティング時間は、小一時間くらいとっておきましょうか、という意味ですね

 4.「わたしが、さまっときます」
    さまる=サマライズする=要約する
    今日はわたしが要約(議事録)とります、という意味ですね

 5.「なるはやじゃねーよ、ちょっぱやで」
    ちょっぱやは「なるはや×3倍」くらいでしょうか・
    めちゃくちゃ急いでいる、ということですね

 6.「あの件、寝かしとこ」
    寝かす=放っておく=何も動かさない
    めんどくさい案件を上司から言いつけられたけど、
    やりたくないので、上司が忘れるのを待つ、ときに
    用いられていました

 7.「シレっとやりましょうよ、しれっと」
    シレっとやる=知らんぷりして、密かに、やる
    もう少し玄人の表現に「〜の帽子をかぶってやる」
    というのもあります。「〜の帽子」とは「〜のふり」をして
    という意味ですね

 8.「こうなったら、僕が、まきとるしかないですよね」
    巻き取る=他の人がやっていた仕事をやむなく
    自分でやってしまう
    部下がヘタをうって、上司である自分がやらざるをえない
    ときに、この表現がでてきます

 9.「悲しいことに、ガラガラピシャですよ」
    ガラガラピシャ=シャッターや雨戸がしまる様子ですか。
    めちゃくちゃ「拒絶」
    悲しいことに、相手には完全に拒絶されちゃいました、という意味です

 10.「あいつは、ひきだし、多いからな」
    ひきだし=経験、経験に裏打ちされた専門性やトーク
    あのひとは、経験豊富で、何でもトークできるからな、という意味でしょうか

 たぶん、これであっているよね?(笑)
 さて、皆さん、いかがでしたでしょうか?
 何点?(笑)

  ▼

 今日はビジネスパーソンの用いる言葉について書きました。
 生々しくも、ユーモラスで、僕は、こういう言葉も、こういう言葉を発する人々も、好きです。

 このようなメモが何の役に立つかわからないのですが、なるべく地に足のついた研究を生み出したいと願っています。

 そして人生はつづく

 ーーー

祝増刷!「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)、四刷かかりました!:マネジャーが陥りやすい罠をいかに乗り越えるか。職場を率い成果をだすためのヒントを実証的に明らかにする。どうぞご笑覧ください!

新刊「会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング」発売中です。おかげさまで、すでに3刷増刷!AMAZON「経営学・キャリア・MBA」で1位、「光文社新書」で1位、「マネジメント・人材管理」で1位を瞬間風速記録しました(感謝です!)。
「働かないオジサン」「経験の浅い若手」などなど、現場マネジャーなら必ず1度は悩むジレンマを解き明かし、決断のトレーニングをする本です。どうぞよろしくご笑覧いただけますよう、御願いいたします。

新刊「アクティブトランジション:働くためのワークショップ」もどうぞよろしく御願いいたします。内定者教育、採用活動に従事なさっている企業関係者の方々、大学の就職関係者の方々にお読み頂きたい内容です。どうぞご笑覧下さい!

研修開発の決定版、「研修開発入門」。人事部の書棚においてあるところもあるようです。どうぞご笑覧ください!

企業内教育のスタンダード「企業内教育入門」。16刷・約3万部です。研修開発入門は「実践編」。こちらの理論編もあわせてお読み頂けると幸いです

投稿者 jun : 2016年7月12日 06:35


コラボレーションで「漫画」をつくる!?

 また、新しいプロジェクトが走り始めました。
「マンガでやさしくわかる部下の育て方」という書籍の出版プロジェクトです(笑)。

 こちらは、日本能率協会マネジメントセンターの久保田章子さん、ライターの井上左保子さん、漫画の編集者の浦田雅子さんらとのプロジェクトで、先だって、キックオフ?らしきミーティングがひらかれました。

 僕は、これまで、多くの方々に御協力やコラボレーションのもと、経営教育、ビジネス、人材開発などに関する教材やら、ツールやら、映像は、かなり作ってきた方だと思います。

 でも、マンガは、はじめてだわ(笑)
 どうやってつくるのか、想像すらつかない(笑)。
 
 異なる役割の人々が、どうやってコラボレーションしてつくっていくのかが、そもそも、興味津々。その制作プロセスが、とても愉しみにしています。

  ▼

 先だって開催されたキックオフミーティングは2時間ほどでした。
 今後の予定や役割分担などを確認しつつ和やかに過ぎましたが、この場面でも、興味深いことがありました。

 今回のチームメンバーが、コンテンツについて話しているときに、「全く違う脳の部位」?(部位はメタファーですね)、「違った視点」から、物事をとらえ、考えていることです。
 同じコンテンツについて話しているはずなのに、それぞれの視点が全く異なるのが、とても面白いです。

 簡単にいいますと、

 僕は「理論脳」。
 つねに、理論的に、データ的に不整合がおこさないかを考えている

 久保田さんは「編集脳」。
 一冊の本としてどう仕立て上げるかを考えていらっしゃる。

 井上さんは「文章脳」。
 文章をどのようにつづるかを常に考えていらっしゃる。マンガと文章の役割分担やシナジーはどうあるべきかを考えていらっしゃる。

 浦田さんは「漫画脳」。
 彼女は、常に、この場面をどのように絵として表現しようかを考えていらっしゃる。
 どのようにカットを割ろうか。どういうキャラクターを登場させ、どのようにセリフを喋らせようかを考えていらっしゃる。

 面白いですね(笑)。
 その道のプロと仕事をするのは。

 特に、想像すらつかないのが「漫画脳」です(笑)
 こういう専門家には、はじめてお会いしました(光栄です)。
 僕には「漫画脳」はないわ(笑)
 図工2だし。

  ▼

 プロジェクトは、今年度末の刊行をめざして、スタートしたばかりです。
 今後は、チームメンバーに漫画家さん、ネームをご担当してくださる方を加えながら、展開していくそうです。

 新しいことにチャレンジしていきたいと思います。
 そして人生はつづく

投稿者 jun : 2016年7月11日 06:17


「一枚の絵」に近づく「僕の日常」

 我が家は、地方出身者・共働き・子育て真っ最中。
 ブレーキのないジェットコースターに乗っているかのように
 カレンダーの日付がかわります。

 気がついたら、朝、起きる時間。
 気がついたら、子どもの宿題をみる時間。
 気がついたら、保育園にいく時間。
 気がついたら、お迎えの時間。
 気がついたら、お風呂の時間。
 気がついたら、夜、もう寝る時間。
 日々は、この反復。

 日々の記憶は「映像」というよりも、
 「一枚の絵」に近い。
 
 あまりに目まぐるしくって、
 もはや「時間軸」が消滅しているのです。
 詳しいことはまったく思い出せない。

 朝起きれば、
 「昨日」というタイトルの「一枚の絵」
 が食卓にあるだけ。

 そんな中、確実に一日一日と、
 自分自身は、年齢を重ねます。

「あっ、最近、この芸能人、フケたねー」

 テレビで見かけた芸能人の年齢は、
 自分と「同学年」だったりします。

「そうか、オレも、この人と同じ年齢なんだ・・・」

 日々はかくして、過ぎていきます。

  ▼

 「反復する生活」のなかに、
 正直、今は、僕の「意志」はありません。
 
「意志のない生活」というと陰鬱な気もしますが、
 あまり「悲観」するべきことでもないのかな、と思います。

 長い人生。
 人生の一場面において、
 他者の成長を願い、
 生きる時間があってもいいと言い聞かせます。

 目の前にあるものは自分で「選んだこと」なのだ、
 と深呼吸します。

 今、目の前で狂喜乱舞しておふざけしている
 この息子達が「大人」になるまで、
 そう長い時間はかからないから。
 今は、息子たちのおふざけを笑い飛ばしましょう。

 妻と協力できているから、
 この時間は乗り越えられるのだと思います。

  ▼

 今日も、そんな時間が過ぎます。
 
 気がついたら、朝、起きる時間。
 気がついたら、子どもの宿題をみる時間。
 気がついたら、保育園にいく時間。
 気がついたら、お迎えの時間。
 気がついたら、お風呂の時間。
 気がついたら、夜、もう寝る時間。

 明日の朝、起きたら、
 「昨日」という「一枚の絵」を
 食卓の上で目にすることでしょう。

「時間軸」がない生活は、もう少し続きそうです。
 今日も、精一杯、一日を生ききることにいたしましょう。
 息子達の成長を祈りながら。

 そして人生はつづく

投稿者 jun : 2016年7月 8日 06:13


人がなぜ「仕事」を辞めるのか?:「仕事のシンドサ」と「離職」の間にあるもの!?

 人は「仕事がシンドイ」から離職するのではない
「既にもっている仕事イメージ」と「現実」が異なっているから離職する

  ▼

去年から、中原はテンプホールディングス株式会社(新ブランド・パーソルグループ)さんからお声がけをいただき、同社と「アルバイト・パート人材の採用・育成」に関する共同研究を開始しています(お声がけ心より感謝いたします!)。

 この共同研究の中から、浮かび上がってきたことのひとつに、上記のテーマがあります。

 人は「仕事がキツイ」から離職するのではない
「既にもっている仕事イメージ」と「現実」が異なっているから離職する

 絵にかくとこんな感じでしょうか。
 上の図式は「仕事がシンドイ(現象)」から「辞める」パターン。
 に対して、研究から浮かび上がっているのは下の図です。
 下の図には「仕事のシンドイ」と「離職」の間に、「面談などで形成された仕事のイメージ(認知)」が入っています。
 そして、どうやら後者の方が問題だよね、ということがわかってきています。

tobotobo2016.png 

 どんな仕事でも、仕事そのものは忙しかったり、しんどかったりする場合があります。もちろん、そういう現象が離職につながるケースもある。
 だけれども、「離職の引き金」になるのは、どうもそればかりではない。

 むしろ、面接などで仕事をはじめる前に聞いていた仕事のイメージと、「仕事の現実」がギャップがあることが、離職の引き金になる。

 こんなことが研究でわかってきました。
 
  ▼

 そうすれば、大切なことは、仕事をはじめる前の初期イメージをいかに形成するのか、ということになります。
 このことは1970年代からいわゆるエントリーマネジメントの研究群で膨大な蓄積があります。が、実証的に、仕事の現場で変革を起こして、その効果を検証している研究は、そう多くはありません。おそらく国内では、初の試みになるのではないかと思います。

 アルバイト・パート人材の多くは、「仕事現場の下見」にいくこともわかっておりますので、仕事をはじめる前に、どのように仕事現場を見せるのか。
 面接にきた人を、一番最初、どのように対応し、ファーストインプレッションを形成するか。
 そして、面接などで、仕事の初期イメージをどのように伝えるのか、ということになります。

 こうした問題関心に基づき、今年は2本のワークショップを開発し、実証実験をおこなうことになりました。
 既に、ワークショップの開発は進んでおり、秋頃に実際に店長さんにご参加いただき、効果を検証していきたいと考えています。

 12月には研究成果を大公開!しちゃうフォーラムもやりますよ。
 どうぞお楽しみに!

 この研究は、テンプグループの渋谷和久さん、櫻井功さん、小林祐児さん、井上史実子さん、岩崎真也さん、稲田勇一さん、北本裕史さん、田中聡さん、ダイヤモンド社の藤田さん、ライターの井上佐保子さんとご一緒につくりあげているものです。

tempholdings201607.png
アルバイトパートの成長創造プロジェクト(テンプグループ)
http://www.temp-holdings.co.jp/corporate/growth/

 出口に向けて頑張ります。
 そして人生はつづく
 

投稿者 jun : 2016年7月 7日 06:11


他人からどんなに指摘を受けても「成長しない人」の7つの特徴!?

「他人からの耳の痛いフィードバックを正しく受けること」

 は、当人の「学習」や「成長」にとって、非常に重要なことであると思います。

 ここで、フィードバックとは「耳の話を他者から指摘されること」と「他者からのコーチングを受け手立て直すこと」とします。
 きちんと「事実」を突きつけられ、その上で、他者の支援を受けて自分を立て直す。こうしたことがフィードバックの本質です。

 人は誰しも、自らの力だけで、「正しい方向」に飛べるわけではありません。
 特に経験の浅いうちは、他者の指摘や支援を受けて、「正しいと思われる方向」に軌道修正をおこなう必要があるのです。

 工学系のある研究者にそのことを話したら、かつて、こんなことを指摘されました。

「それはロケットと同じだね。中原君、まっすぐ正しい飛びつづけることのできるエンジンロケットは存在しないの。ロケットってのは、飛んでいるうちに傾いてくるので、そうしたら自分の傾きを検出して、ジェットの吹き出し口の傾きをかえるためのフィードバック機構がついてます。そういうフィードバックがなくては、正しく飛べないんだよ・・・」

 人間の学習や成長も、要するに、この「ロケット」と同じなんだろうね。
 まっすぐ正しい方向に飛べるロケットは存在しない。
 フィードバックループを得て、まっすぐ正しく飛ぶのでしょう。

  ▼

 フィードバックをうけることは、当人の成長にとって大切なことではあるものの、この世には、せっかくもらったフィードバックを全く「消化」しようとしなかったり、「拒絶」してしまったりする人もいます。

 すべてのフィードバック情報が「正しい」わけではありませんので、取捨選択も大切なのですが、せっかくもらったフィードバックが全く活かされないというのは、まことに残念な状況です。

 フィードバックが活かされない状況で、よく「あるある」なのは、下記の7点です。

1.根拠なきポジティブ病
「他人から見ると、全く何ともならない深刻な状況」なのに、本人は全くそう認知していない。どんなフィードバックをうけても「悲観的すぎますよ、何とかなりますよ」と言い切ってしまう。
 多くの場合「全く何ともならない」。若い人が罹患しやすい。たまにオッサンもかかる。

2.「すぐに大丈夫です」病

 どんなフィードバックをしても、「僕は大丈夫です!」「ありがとうございます。大丈夫です」と言い切ってしまうことで、フィードバックを「拒絶」する。学生がもっとも罹患しやすい症状。

3.「とはいいますけどね」病
 うけたフィードバックにもれなく「いやいやいや、とはいいますけどね・・・」といいかえして、反論する。多くの場合、「反論」ではなく単なる「言い訳」であるが、のらりくらりと言い訳を重ねて、フィードバックをかわす。オッサンが罹患しやすい。

4.まるっとまるめちゃう症候群
 相手からもらったフィードバックを、自分の都合のいいように解釈したりする。自分の都合のよい部分だけを抜き出して、フィードバックの趣旨や内容、その精度を故意に薄める。大人に多い深刻な状況。

5.相手の解釈が悪いんだよ病
 相手が自分の状態を解釈するところからそもそも間違っているので、そこからつくられたフィードバック情報は、妥当性がない、とする。要するに「このフィードバックは、うけるに値しない」とするので、いくらフィードバックされても、全く刺さらない。大人に多い高度な症状。

6.こちらの表現が悪かったんだよね病
 相手から受けたフィードバックは、「自分の伝え方が悪かったせい」で起こったのであり、自分の「本質」に問題はない、と位置づけてしまう。
 自分の「本質」が悪いのではなく、「相手への表現方法」に問題があったということならば、うけたフィードバックは「伝え方」の問題でおこったのであるから、自分の「本質」を変える必要はない、とする。大人がかかりやすい高度な病気。

7.地蔵病
 フィードバックの最中は神妙な面持ちで聞いているような、反省しているような顔をしているが、実は、右からはいって、左。いわば「地蔵」。びくともせず、全く聞いて折らず、そして、行動を変えることもしない。

 こういう人には、いくらフィードバックをしても、刺さりません。
 だから「成長しない」のです。

 ▼

 今日はフィードバックについて書きました。

 フィードバックの受け方や、送り方は、「教科」でもなんでもないので、学校で教えてくれることではありません。でも、これほど大切なことはないのにな、とも思ってしまいます。

 自戒をこめて申し上げますが、正しい方向に成長するために、フィードバックは「よく受けたい」ものです。

 そして人生は続く

ーーー

追伸.

研修開発の決定版、「研修開発入門」。人事部の書棚においてあるところもあるようです。どうぞご笑覧ください!

企業内教育のスタンダード「企業内教育入門」。16刷・約3万部です。研修開発入門は「実践編」。こちらの理論編もあわせてお読み頂けると幸いです


投稿者 jun : 2016年7月 4日 06:45


欲しいものは「親子プレゼンテーション」を通じてゲットせよ!?

 昨日は、TAKUZOが「習いごと」を変えたい、というので、親子で話し合う時間をもちました。

 TAKUZOも気づけば小学校4年生・9歳(笑)。
 学童保育の時間も短くなり、友達と自由に遊びたくて遊びたくてしゃーない年代に突入しています。

 幼い頃は、あれだけ「パパ、ママ、一緒に遊ぼう」と言っていたのに、小学校4年生にもなりますと「自分の時間的自由」を欲します。
 これまでTAKUZOはいくつかの「習いごと」に通っていたのですが、辞めるものは辞める、新たに行くものは行く、という整理がそろそろ必要になってきているのです。

  ▼

 昨日は「習いごと」を変えたいというので、敢えて「5分間のプレゼン」をさせました。
 TAKUZOは、どちらかというと、はっきりと物事を伝えられないところがあります。
 全く自分の意見を言えないわけではないのですが、時に「ごにょごにょ」と言ってみたり、伝わらない場合には「ごね」たりするところがあるのです。
 僕としては、常日頃から、何とか、それを変えたいと思っていました。

 そこで、今日は計をめぐらし、

 「習いごとをどのように変えたいのか」
 
 親の前でプレゼンテーションすることを求めました。

 いくら親子の間とはいえ、「他人」なのです。
 寅さん風に述べるならば、
 
 僕が芋を食って、
 TAKUZOのケツから屁がでるわけではありません

 二人は別々の人間なのです。

 他人であるならば、しっかりと考えを伝え、説得する。
 親子プレゼンテーションは、そのためのトレーニングです。

  ▼

 5分間のプレゼンにあたっては、まず下記にしたがって、自分の考えを整理しなさい、といいました。
 自分一人では無理なので、いくつか僕から質問をしながら、下記のように考えを整理させます。

1.とにもかくにも自分のやりたいことを、真っ先にはっきり述べること
 (やりたいことを一番最後に言うのではなく、最初に結論を述べること)

2.その後に「理由」を複数述べること
 (理由を様々な観点から用意しておくこと)

3.その選択肢を採用した場合、
  自分と聞き手にどんなメリット・デメリットがあるかを述べること
 (相手に判断の基準を渡すこと)

4.最初に述べた「やりたいこと」をもう一度繰り返してはっきり述べること
 (もう一度、だめ押しをすること。相手の行動が変えるように説得する。最後は相手に時間をもらったことを感謝する)

 まずは僕との会話で下記を整理しました。
 しどろもどろになりながらも、上記を自分の言葉で整理することはできました。

 そして、いよいよ「本番」です。
 今まで整理した内容をきっちりと相手に「伝える」段になります。

 正直に申し上げますと

 「できるかなぁ・・・途中でごにょごにょ言い出すんじゃないかなぁ」

 と思っていました。
 が、時折、しどろもどろになりましたが、何とかプレゼンを終えました(笑)。
 自分の考えを伝えることができました。

 その後は「質疑応答」です。
 質疑応答時間は3分間とりました。
 質疑応答では、僕から、かなり「スパイシーな質問」をぶつけます(笑)。

 時折、やはり、しどろもどろにはなっていましたが、それでも、何とか答えることができました。
 まぁ、ロジックは飛び飛びなところもありますが、「承諾」することにいたしました。

 かくして「親子プレゼンテーション」は終了です。
 
   ▼

 今日は「親子プレゼンテーション」のお話をいたしました。
 こんな育て方が「よい」とか1ミリも思いませんし、誰にもおすすめしませんが、個人的には、なかなか興味深い時間でした。

 欲しいものは「プレゼン」せよ!
 変えたい場合には「プレゼン」せよ!

 まぁ、準備をさせたり、本番をさせたり、なかなか大変なのですが、しばらく、ちょっと試してみたいなと思っています。

 そして人生はつづく
 
 

投稿者 jun : 2016年7月 1日 05:43