アカデミックな文章は「思いつき王子」と「直感姫」を許さない!?
中原ゼミには、今、7名の大学院生が所属し、日々、研究に邁進している(はず)です(笑)。
昨今は、そのうち5名の大学院生が博士課程に進学し、博士論文の執筆めがけて研究を進めております。
研究に邁進できる時間は「贅沢な時間」です。
小生からの「圧」は、かなりヘビー級だとは思いますが、ぜひ、素晴らしい研究生活を送って頂きたいものです。
かくして、僕の日常は、彼らが書く論文の添削(赤入れ)に明け暮れるわけですが、いつも指導をしていて、思うことがあります。
それは、
アカデミックの文章作法は「思いつき王子」や「直感姫」を許さない
ということです(笑)。
いくつかある選択肢の中から、ある特定の研究対象、研究方法などを選び取るときに、たとえ「思いつき」や「直感的」に選び取ってしまった場合においても、ひとつひとつ意味づけ、論理付けをして、文章を書かなくてはならない、ということです。
別の言葉を申し上げますと、こういうことですね。
アカデミックで必要とされる思考(文章作法)では、
1.いくつかの「選択肢」の中から、あるものを「選択」する場合
2.まずはすべての場合を書き出す
3.そのうえで「あるもの以外」を落とさざるをえない「ロジック」をたて、しっかり書く
4.そのうえで「あるもの」を選択した「積極的理由」を書く
5.あるものを選択した理由をふたたび「宣言」する
というようなことがおこなわれます。
ワンセンテンスで申し上げるとすると「かなりまどろっこしい」のです(笑)。
ひとつのものを選択するときに、
「いや、思いつきです、ペロ」
「いや、直感っす、てへ」
みたいなものを絶対に許しません、たぶん(笑)。
「思いつき王子」「直感姫」は、僕は個人的には愛すべきキャラだと思いますが、アカデミックの文章作法的にはアウトなのです。
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たとえば、今、仮に、複数ある研究方法のなかからひとつを「選択」するのだとします。
その際には、まずはいくつかの選択肢を網羅的にすべてあげつらいますね。
研究方法Aとは・・・・である
研究方法Bとは・・・・である
研究方法Cとは・・・・である
そのうえで、次に研究方法Cを選択するのだとしたばあい、研究方法Aと研究方法Bを「品格」をもって批判します。
研究方法Aは・・・の観点ではすぐれているが、今回に適するとは必ずしもいえない
研究方法Bは・・・に注力することができるが、今回、その観点は必ずしも適当ではない
そのうえで、さらに研究方法Cを、やや「控えめ」に称揚します。
対して研究方法Cは・・・研究方法Aと同じようにという欠点は持ち合わせているものの、それは今回・・・によって相殺できる範囲である。研究方法Cには、研究方法Aと研究方法Bにはない・・・・のメリットがある
そしてエイヤッ!
最後は「選択」と「宣言」です。
よって、本研究では、研究方法Cによって・・・・を探究するものとする
(めでたし・終了!)
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いかがでしたでしょうか?
今日は、アカデミックの文章作法は「思いつき王子」「直感姫」を許さない、という話題?を書きました。
最後に「最後っ屁」のように「ややこしいこと」を言いますが、ここでもっとも重要なことで、かつ、誤解を避けたいことのひとつは
僕は
「思いつき」や「直感」が不要である
とい言いたいわけではない、ということです
むしろ、言いたいことは逆。
研究をしていくうえで「思いつき」や「直感」が必要になる局面は、かなり多いと感じます。
思いつきや直感はとても大事なんです。
しかし、それをアカデミックの文章にしていったり、他の研究者に説明したりするときには、「たまたま、思いついたかのような書き方」や「直感で選んでしまったような書き方」は避けなければなりません。
むしろ、
すべてを論理的に精緻に考え抜いたうえで
「あるもの以外」を排除し、
「あるもの」を選ばざるをえない
というかたちで、慎重に慎重に論を進めていく必要があるのです。
要するに、ワンセンテンスで申し上げますと、
アカデミックな文章では「思いつき」や「直感」も「意味づける」必要がある
ということですね。
あなたの論文は「思いつき王子」「直感姫」になっていませんか?
そして人生はつづく
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投稿者 jun : 2016年6月30日 06:34
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