専門家になるための「長い闘争」の歴史!?

 昨日は、大学院・中原ゼミでした。

 中原ゼミでは、今年から博論の執筆にかかっている / とりかかる寸前のメンバーが多く(みんな一緒に頑張ってください!)、昨日は、D3の保田さんが、博論の1章にあたるような小論を書いてきてくれました。お疲れ様です。

 保田さんのご専門は「看護師の育成」。

 1章は「看護師」という職種が、どのようにして生まれ、現在にいたるのかを論じておられました。大変よく整理されており、よく書けておりました。この調子で2章も「すいすい、すらすら、すーだらだった、すいすい」と書いて頂きたいものです(笑)

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 看護師論の詳細は、ご専門である保田さんの論文に譲るとして、彼女の1章にあたるような論文を読んでいて、つくづく思ったことがあります。

 それは

 ある職業が「専門職」になっていくプロセスというのは「闘争の歴史」である

 ということです。

 別の言葉でいいかえますと、いくつかの恵まれた職業をのぞいて、

 最初から「専門職」として認知されていた職業はありません

 自らの「職業」が「専門職」に値する職業であるとの主張を、その職業につく人々が集まり、意識をあわせ、活動を開始していく。そこには、「内部の関係者の闘争」がまずは存在するはずです。

 それが終われば、次は「外部の闘争」です。今度は、自らの「職業」が「専門職」に値する職業であるとの主張を、社会に対して声高におこない、倫理綱領、知識体系などを整備して、専門職団体をつくり、ポリティカルパワーを行政・政治に誇示いきます。

 かくして

 「ある職業」は「専門職」になっていく

 のです。

 専門職論の基礎的知識をよみときますと、「ある職業が専門職といわれる基準」には、さまざまな識者が、さまざまなことをいっております。
 ただし、その共通点を「ざくっ」とまとめますと、たいがいこんな感じです。

 1.明瞭な知識体系・技能体系が存在すること
 2.長期にわたって、知識体系・技能体系を学ぶ場が確保されていること
 3.資格認定制度など、能力の保持を明示化する社会的装置が準備されていること
 4.その仕事自体に自律性が存在すること
 5.その仕事自体に行動準則と倫理規定が存在すること
 6.専門性を担保するような専門職団体が存在すること
 7.知識をアップデートするための生涯学習の仕組みが存在していること

 このような物事・諸事を、長い時間をかけて、内部の意識統一をおこない、整備して、社会にそのことを声高に主張し、ようやく、

 あの仕事は、「ちゃんと」しているね
 あの仕事は、「専門家じゃなきゃできない仕事」だね

 という認知されるようになります。
 それは、いわば、長い長い「闘争の歴史」です。

 まことに興味深いことですね。

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 世の中には、さまざまな職業があります。その中には、専門職や準専門職をめざしているもの、待遇の改善をめざしている職業など、さまざまなものがあります。

 しかし、ある職業を社会に認知させ「専門家」たらしめるのは、まずは「内部の力」です
 まずは、そうした「内部の意識」を統一し、力を結集できるかどうか。
 内部の力の結集さえできない職業に、社会的認知の向上はありえません・・・少なくともいくつかの恵まれた職業をのぞき、歴史のうえでは。

 闘争の第一段階は、まずは「内部の闘争」からはじまります。
 「内部の闘争」が終われば、次は「外部の闘争」です。

 専門職という認知は、かくして「獲得」されるものです。
 そして、
 ある職業の専門性を向上させ、待遇をあげていくのは「他人」ではありません

 まずは、その職業についている人達が動き、集まり、考え、活動を開始していく他はありません

 専門性を主張し、待遇を改善していくのは、まずは、その職業についている「内部の力」である

 ということです。
 
 保田さんの小論を読ませていただきながら、僕は、そんなことを考えていました(ぜひ引き続き頑張って下さい!)。
 そして人生はつづく

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