経験学習を考えるときの2つの重要キーワード:「リスク」と「知覚されたリスク」とは!?
経験学習理論の中には、
・Risk(リスク)
・Perceived Risk(知覚されたリスク)
という言葉がございます。
前者の「Risk(リスク)」とは文字通りの「危険」。
「Risk」とは、ワンセンテンスで述べますと、
「物理的に存在する脅威であり、挑戦者の存在を実質的に脅かしてしまうもの」
です。
対して、後者の「Perceived Risk(知覚されたリスク)」とは、これとは「全く異なります」。
Perceived Risk(知覚されたリスク)とは、
「実質的・物理的にはリスクは存在していないのだけれども、そこにはじめて挑戦する挑戦者の立場からすると、自分のサバイブを脅かしている「かの」ように感じてしまうもの」
のことをいいます。
端的に申し上げるのだとすれば、
Risk(リスク)とは「物理的に、実際的に存在する脅威」
Perceived Risk(知覚されたリスク)とは「挑戦者が主観的に感じた脅威」
と解釈することも可能です。
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2つのリスクは、たとえばバンジージャンプを事例にして考えてみるとわかりやすいかもしれません。
バンジージャンプは、「命綱」や「セーフティネット」などの生命維持の仕組みが有効機能しているとき、「リスク」は低いと考えられます、、、専門家の立場からすれば・・・。
だって、どんだけ落ちたって、「命綱」ついてんだから、リスクは少ないのです。命綱が機能しないバンジージャンプって「自殺幇助?」です。
しかし、飛び降り台の端っこに立たなければならない挑戦者からすれば、この様相はガラリ変わります。
挑戦者の方からすると、バンジージャンプの「知覚されたリスク」は非常に高く感じるものです。だって「数十メートルの高さ」から飛び降りるのですから。それは、清水の舞台から飛び降りるようなものでしょう。どんなに命綱があろうが、下に網をはってようが、怖いものは怖い。「知覚されたリスク」はマックスです。
バンジージャンプには、このように「リスク」と「知覚されたリスク」のあいだに距離が存在しています。
つまり、
バンジージャンプは、
「リスク」と「知覚されたリスク」の心理的距離を利用した遊戯施設である
と結論づけることができます。
僕はバンジージャンプの専門家ではありませんけれど、僕の専門からいえば、こういえます。
ここに距離があるからこそ、エンターテインメントになりうるのです。
だって「知覚されたリスク」と同様に「リスク」のほうも本当に高いのであれば、それって、自殺を促してるってことだよ。。。
これに似たことことは、経験の浅い人が「経験から学ぶとき」においても起こる事があります。
経験学習では、経験の浅い人に「背伸びのあるストレッチの経験」を付与して学んでもらうわけですが、それをすでに経験した人からみれば、いくらストレッチといっても、「リスク」が少ないものを与えるはずです。
だって、その人がコケれば、全部、尻ぬぐいをしなきゃならないのは自分だから。
おそらく業務を付与する管理者は、こんな風に考えるのではないでしょうか。
はじめて、この人に、プロジェクトを任せるけど、このプロジェクトは、彼にとってはチャレンジに見えるんだろうな。だけれども、実際は、この程度のプロジェクトで、コケようがない。やりさえすれば、結果がでる。
このような状態は、「リスク」は実際には低いけれど、「知覚されたリスク」が高いといえます。
経験の浅い人は、リスクは低いけれど、知覚されたリスクが高い仕事に挑戦し、それを成し遂げ、かつ、振り返ることで、成長を実感します。
このように経験学習には、「リスク」と「知覚されたリスク」のあいだに距離が存在しています。別の言い方をすれば、
経験学習とは
「リスク」と「知覚されたリスク」の心理的距離を乗り越える学習
である
ということもできそうです。
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今日は、
・Risk(リスク)
・Perceived Risk(知覚されたリスク)
という2つの概念を解説しながら、経験学習に関して論じてみました。なんか、大学の講義?みたいになってしまいましたが、いちおう、なんちゃってですけど、大学教員なので、お許し下さい。
これにゆるく関連して。
実は、せんだって、TAKUZOをフィールドアスレチックに連れて行ったのですが、まぁま、我が息子ながらTAKUZOは「ヘタレ」です。
高いところや、穴が空いているところなど、「知覚されたリスクが高い場所」では、急にへっぴり腰になってしまいます。実際はセーフティネットがきっちりはっているので、大人の目からみれば「リスクは低い」のですが、TAKUZOの心の中の「知覚されたリスクはマックス」です。
そんなとき僕は、へっぴり腰になって挑戦しようとしないTAKUZOに対して、
「あのさー、フィールドアスレチックって、リスク低いよ。おまえが知覚するリスクは高いかもしれないけど。怖いと思うから、怖いだけだよ。たとえ、落ちたって、セーフティネットあんじゃん。いうたら、ノーリスクよ。」
と説明したのですが。。。
親の言葉は1ミリも子どもには届きませんでしたとさ。
パパ、ごちゃごちゃうるさい!
嗚呼。
そして人生はつづく
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投稿者 jun : 2016年5月11日 05:44
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