なぜ、日本の大学教員には「メンター」がいないのか? 国全体に潜む「一国一城の主」信仰!?

 ご迷惑をおかけするかもしれないので、お名前をあげさせていただくことは、この場では差し控えますが、先だって、米国の有名総合研究大学で教鞭をとっておられる先生と、ランチをご一緒する機会を得ました。

 おかげさまで、ランチでは、ここ最近あったことなどをお互いに情報交換させていただき、よい時間を過ごすことができましたが、その際、話題になったことのひとつに

 なぜ、日本の大学には「メンタリングの制度」がないのか?
 なぜ、日本の大学教員には「メンター」がいないのか?

 ということがありました。

 日本の大学にしかつとめたことがない僕自身は、「大学教員にメンターが必要である」という議論は初耳でしたが、その先生からしてみると、このことは「とても不思議に見える」そうです。

 曰く、

 米国の研究大学で、テニュアトラック制度を引いている場合、たいていの経験の浅いファカルティには「メンター」が割り当てられるそうです。
 
 すでにテニュアを取得した職位の上の教員が、「メンター」になり、テニュアの審査がおこなわれる4年前ー5年前から、どのような研究を為していけばいいのか。どのように業績をつめばいいのかを指導するそうです。

 そうした指導は、テニュアトラックにのり、正規のプロフェッサーになったあとでも、続く場合があるとのことです。

 その先生には、現在、数名のメンティがいて、指導をおこなっているとのことでした。

 へー。
 世界は広い。
 勉強になります。

  ▼
 
 なぜ、日本の大学には「メンタリングの制度」がないのか?
 なぜ、日本の大学教員には「メンター」がいないのか?

 この問いに対する答えは、「短絡的」に答えようとすれば「テニュアトラック制度がないから」になってしまいそうです。

 もちろん、その答えでもよいのだけれども、その奥底を掘り返してみると、そこには日本人に共通する、ある「固有のメンタリティ」も見えてきそうです。
 そして、その「メンタリティ」は、大学教員ならず、ビジネスパーソンでも、医療の現場にも、程度の差こそはあれ、染み付いているような
気がします。

 ワンセンテンスで申し上げますと、それは「一国一城の主信仰」とでも言えるものです。

 要するに、「ある程度の職位にある大人」は、もはやメンタリングや助言の必要の無い「一国一城の主」であり、かつ「完成された人間」である。
 「完成された人間」なのだから、これから学ぶべきことや、他人から指導を受けるようなことは、そうない。
 すでに「一国一城の主」である彼 / 彼女に対して、外部からの働きかけを為すなんて恐れ多い

 という考え方です。

 実際に、「一国一城の主さん」が、「完成された人間」で、もはや学ぶ必要が無く、最大限のパフォーマンスを発揮できているのならば、まったくそれでも問題がないのですが、実際はそうはいかないことの方が少なくありません。

 筋のわるい意志決定をおこなったり、そもそもの目標設定を誤ったり、一人では「気づくこと」のできないもので、しかし、とてつもなく重要な物事を見落としてしまうことは、そう少ないことではありません。
 
 そのような場合には、大学教員のみならず、成り立てホヤホヤの課長や部長や執行役員、やはりそれなりの職位にあったとしても、必要な場合には、メンタリングなどのかたちで「外部からの働きかけ・支援」というものが必要なのではないかと思います。

 いかがでしょうか?

  ▼

 今日は「大学教員のメンタリング」という内容について書きました。今回の記事は聞き書きなので、この現象がどの程度一般性のあることか、僕は知りません。

 また、大学から割り当てられるようなオフィシャルなメンタリングは、日本の大学には少ないとは思います。
 が、個々の大学教員は、インフォーマルにメンタリングをおこなってくれる先達教員を、持っているような気もします。
 少なくとも、僕の場合は、判断に迷ったときなどは、いつもお世話になっている先生方がいます(ありがとうございます!感謝です!)

 あなたの組織には「一国一城の主」信仰が蔓延していませんか?
 本来、「耳の痛いことをいうべき瞬間」をやり過ごしていませんか?
 あなたの組織の「一国一城の主」は「裸の王様」のようになっていませんか?

 そして人生はつづく

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