新刊「会社の中はジレンマだらけー現場マネジャー決断のトレーニング」(本間浩輔・中原淳著)AMAZON予約販売がはじまりました!

 新刊「会社の中はジレンマだらけー現場マネジャー決断のトレーニング」が4月19日、出版されます(パチパチパチ!)。ヤフー上席執行役員(人事責任者)の本間浩輔さんと、中原の共著で、光文社新書からの刊行です。

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 「会社の中はジレンマだらけー現場マネジャー決断のトレーニング」は、

1.現場マネジャーがふだん出くわす「あるあるのディレンマ状況」を冒頭にケースとしてとりあげ

2.それに対する現場経験の智慧、人材研究の科学的知見を、本間さんと中原がゆるゆると対話し、

3.本間さんと中原が、先ほどのディレンマ状況に自分がおかれた場合には、自分ならどうするかの「決断」をまずは述べさせていただき

4.読者の皆さんにも自分の「決断」をワークシート風の空欄に書き込んでもらう

 という本です。

 このプロセスを通して、「現場マネジャーなら、一度は出くわす、あるあるなジレンマ」に事前準備・事前トレーニングをすることができるように編まれています。

 扱われているディレンマは、

1.新人に仕事を任せるべきか、それとも、マネジャーが自分でやってしまうべきか?
2.産休社員に対するケアを誰に対して、どう行うか?
3.働かないオジサンの逃げ切りを現場マネジャーとして許すか、いなか?
4.現場マネジャーとしては新規事業に挑戦したいエース級を送り出すべきか、いなか?
5.自分はマネジャーとしてこのまま会社に残り定年を迎えるか? 転職するか?

 です。

 こちらは、以前、このブログで、読者の皆さんから悶絶ディレンマを募らせていただきました。ディレンマをお寄せ頂いた皆様に、心より感謝をいたします。ありがとうございました。
 お寄せ頂いたディレンマは50弱。それらすべてにお答えできているわけではないのですが、そうした読者の皆さんが悶絶している共通のディレンマを、本間さんと中原で議論させていただきました。

 現場マネジャー同士、人事部同志でディレンマを読みあい、ゆるゆる議論しても面白いと思います。
 あるいは、お一人でディレンマに向き合い、自分の軸を確認なさってもよいのではないかと思います。マネジメントをしていると判断に悩んだり、ブレたりしてしまうことがあります。自分の中でしっかりとした優先順番や軸をもっていることは、マネジメントを為す中で大切なことであると考えます。
 また新任のマネジャーの方にとっても、本書は事前トレーニングとして有益なのではないかと思います。なにせ、現役の人事責任者が論じているわけですから、事例はあるある、生々しくないわけがありません。そうした紙上トレーニングを通じて、現場に出られたときに、どう振る舞うかを決めて頂くことがよいかと思います。
 悶絶ディレンマをネタにした「ワークショップ」を受講したような読後感が得られるかもしれません。
 どうかご高覧いただけますよう、お願いいたします。
 

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「会社の中はジレンマだらけー現場マネジャー決断のトレーニング」では、まずは下記のように、現場マネジャーならば一度は向き合わざるをえないようなディレンマが各章冒頭で提示されます。

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 僕たちはこの本を「現場マネジャーが決断のトレーニング」をする本であると考えています。自らが相対するディレンマの深層を観察し、理解し、その上で決断を行い、振り返る。このことだけが、現場マネジャーの力量を向上させるのだと信じています。
 よって、本書のすべての記述は、下記のような現場マネジャーのディレンマ決断モデルに基づいています。

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 冒頭提示された悶絶ディレンマに対して、中原と本間さんは対談を行っています。中には、ヤフーの人事制度の説明があったり・・・

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 中原が、さまざまな人材開発の手法を説明している部分があります。下記はフィードバックの紙上レクチャー部分(図表)ですね。

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 対談のプロセスの中では、著者である僕たちも、自分の答えを考えています。各章最後には、まずは僕たちが悶絶ディレンマに対する、自分なりの回答を述べさせて頂きます。

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 最後には、読者である、皆さんが悶絶ディレンマに対する対処を書き込むことができるようになっています。ディレンマは、放置しておくことはできません。いつかは決めなければならないのです。こうしたプロセスを通して、現場マネジャーが問題・課題にぶち当たる前の、紙上・準備トレーニングを行うことができます。

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 現場マネジャー同士のワークショップや研修などでも、教材としてご利用いただけると思います。
 もちろん、これからマネジャーになられる方は、お一人でディレンマに向き合い、事前準備をなさっていただけるとうれしいことです。
 
 本書を編むにあたっては、ディレンマをお寄せ頂いた皆さんはもちろんのこと、光文社新書編集部 樋口健さん、古谷俊勝さん、そして構成をご担当いただいた秋山基さんには大変お世話になりました。心より御礼申し上げます。また本間さんとの対談は、いつも学びと発見に満ちていました。このプロジェクトでもご一緒できましたことを、心より嬉しく思います。

 僕個人としては、本書は「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)に続く、新任マネジャー本第二弾の挑戦でした。「駆け出しマネジャーの成長論」では論じきれなかった生々しい事例に踏み込んでいる本であると考えています。

「駆け出しマネジャーの成長論」は、最近発売されました中央公論5月号で、佐藤優さんに「ビジネスパーソン向きの新書」としてご推薦いただいている模様です。佐藤さん、御連絡をただいた中公新書ラクレの黒田さんにも心より御礼を申し上げます。駆け出しマネジャー本は、多くの企業で企業研修のテキストなどに用いられていると伺っております。こちらも同化ご高覧くださいますよう、よろしく御願いいたします。

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 さて、またひとつの旅が終わりました。
 今度は誰と、どんな旅に出ようか。

 そして人生はつづく

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(以下には、「会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング」の「はじめに」を掲載させて頂きます)

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はじめに
中原 淳(東京大学)

 世の中は「ジレンマ」に満ちています。

 ジレンマにはさまざまな定義がありますが、本書では「どちらを選んでもメリットもデメリットもあるような二つの選択肢を前にして、それでもどちらにするかを決めなくてはならない状況」をさして、以降、用いるものとします。

 簡単に言えば、「あちらを立てれば、こちらが立たない」「にっちもさっちもいかない」、そういったタフなシチュエーションのこととお考えください。

 企業・組織には様々なジレンマが生まれてきますが、最も深刻なディレンマに直面するのは、経営のフロントラインでありながら、現場のメンバーや顧客に相対せざるをえないラインのマネジャーです。

 マネジャーは、現場で人にまつわるあれこれを処理する存在であり、それゆえ「どっちを選ぶべきか」という判断を迫られることが多いのです。マネジメントの本質を「ジレンマのやりくり」と述べた研究者もいます。マネジメントの動詞である「Manage」は、もともと「やりくりする」という意味です。

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 たとえば、マネジャーが直面しやすい困難のひとつとして「部下育成」があります。部下育成においては、「コーチングとティーチングのジレンマ」というものがあります。

 例えば、部下育成の局面を思い浮かべて下さい。
 あるマネジャーが、部下育成に悩み、マネジメントの教科書のような本を読んだとします。たいてい部下育成の本には、部下にはティーチング(教え込むこと)ではなく、コーチング(部下に気づきをうながすこと)をすることが重要だと書いてあります。

 しかし、マネジャーが実際にコーチングを試してみると、部下は、自ら気づかぬどころか、自分のやり方を絶対として譲らない。それにコーチングばかりをしていると、メンバーごとに理解ややり方が独自なものとなってしまい、職場全体での仕事の標準化が進まない。思い直したマネジャーが、今度はティーチングをして部下を従わせようとすると、今度は職場にやらされ感が漂い、メンバーたちの活気が失われてしまう。

 そんなとき、「一体どうすればいいんだ」とマネジャーは自問自答します。
 そのような中で、マネジャーは最終的には「決断すること」を求められます。読者のみなさんが同じ立場だったら、どうしますか。皆さんは、煩悶の果てに、どのような決断をしますか?

 一方、企業というものがもともと内包しているジレンマもあります。

 たとえば、人材育成の分野では、しばしば、新卒採用と中途採用はどちらがいいのかという議論が繰り返されます。

 新卒を採って、白紙の状態から育成してコミットメントを高めてもらう方が人事戦略として有効なのか、それとも即戦力を期待して中途採用者を集めるのがよいのか。新卒を育てるのは多大なコストを要する。しかし、すでに色がついている中途は、期待したほど成果を出せない場合がある。

 こうしたケースも、まさに「にっちもさっちもいかない状況」ですが、こうしたジレンマに直面したとき、企業はメリットとデメリットを勘案して、新卒と中途、どちらを採るべきかを決断しなければなりません。ディレンマに向き合い、その後で沈黙するのではなく、最終的には対応策を「決断」しなければならないのです。

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 人は仕事をしていれば、一時的にジレンマに陥ることは多々あります。しかし、その場で私たちは、行き当たりばったりの対応をすることは許されていません。まして、沈黙を守ったり、逡巡したり、やり過ごすことはできません。「決める」ためにいったん立ち止まって考えるのはかまいませんが、ジレンマを前にして、長い間、ただただ立ち尽くすことは避けなくてはなりません。

 ジレンマに直面した場合、一般的にマネジャーは、以下のようなジレンマへの対処を行います。これを本書では「ジレンママネージングモデル」と呼びます。

■ジレンママネージングモデル

 1.ジレンマを観察する
 2.ジレンマを理解する
 3.決断する
 4.リフレクションする(振り返る)

 わたしたちがジレンマに陥ったとき、まず為すべき事は、動き出すことではありません。まずやらなければならないことは「1.ジレンマを観察する」です。

 ジレンマに陥ったら、いったん立ち止まり、状況をじっくりと「観察」することが求められます。その上で、ディレンマの構造を多方面から理解します。これが「2.ジレンマを理解する」の部分です。そのような観察と理解のはてに、わたしたちは「3.決断」を行い、前に進まなくてはなりません。

 当然「決断」の果てには、何らかの結果がともないます。「4.リフレクションする」とは、そうした「決断の果ての結果」を振り返り、さらに未来の一歩を構想することです。こうしたプロセスを日々わたしたちは辿りながら、ディレンマに対処していくことが求められています。

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 これから本書では、組織に満ちあふれるジレンマをたくさん取り上げ、それぞれについて実務家や現場のマネジャーはどう考えるか、アカデミックにはどう考えるか、ということを論じ合っていきます。

 ぜひ、読者の方々は各章の冒頭で提示されるジレンマを観察・理解し、筆者らの語りに耳を傾けつつ、お一人お一人が、そのような状況であれば、どのような決断を行うかを考えながら本書をお読みください。

 筆者のひとりである中原(僕のことです)は、「人材開発(人的資源開発)」を専門とする研究者です。僕は、これまで十数年以上にわたって、多くの企業とマネジャーやリーダーの育成のプロジェクトに従事してきました。
 また同時に、僕は、研究部門の部門責任者として十数名のスタッフを率いています。この本では、こうした研究と経験をおりまぜながらお話をしようと思います。

 もうおひとりの著者は、ヤフー株式会社執行役員(ピープル・デベロップメント統括本部長)の本間浩輔さんです。本間さんは、大学を卒業後、総合シンクタンクに勤務なさったのち、起業を経験し、現在はヤフー株式会社の経営陣のおひとりとして人事の責任者をなさっています。
 本間さんは、ヤフー株式会社でさまざまな人事制度の改革に携わり、人事パーソンの中でも一目置かれる存在のひとりです。この本では、本間さんの経験や智慧もお話し頂けると思います。

 僕と本間さんの出会いは、本間さんが慶應丸の内シティキャンパスで僕が主宰している授業「ラーニングイノベーション論(人材開発の基礎知識を学ぶ半年間の社会人向け講座)」の門を叩いて下さったことからはじまります。以来、いろいろな場面でお付き合いさせていただいています。

 二〇一四年からは、アサヒビール、インテリジェンス、電通北海道、日本郵便、そしてヤフーの社員が北海道美瑛町で実施する異業種コラボレーション研修「地域課題解決プロジェクト」をともに企画、運営してきました。
 私は、本間さんからの依頼を受けて、この研修の監修・ファシリテーターを務めており、このプロジェクトを推進しています。

 かくして、本書は、僕と本間さんが、現場のマネジャー層が抱えやすいディレンマと向き合い、それに対して本音の対談をすることによって、編まれました。
 
 本書では、各章の対談の前に、架空のマネジャーAさんが直面しているジレンマを取り上げ、関連する話題について著者のふたりが議論した後、章末で私と本間さんが「自分ならこうする」という決断を述べます。読者のみなさんにも、「自分ならどうするか」をぜひ考えてみてください。

 読まれた方々が、さまざまなジレンマの背後にひそむ問題を理解でき、読後に自分で決断を下せるように、できるだけわかりやすく、本音のトークを展開するように心がけたつもりです。読者の皆さんも、先ほどのジレンママネージングモデルにもとづき、ぜひ、各章の終わりに近づくときには、自分なりの「決断」をしていただければと思います。
  
 ディレンマを抱えても「大丈夫」
 向き合うこと、決断すること、そして、振り返ること
 きっと出口はあるから

二〇一六年 四月 春・本郷キャンパスにて
中原 淳