アルバイト・パートの離職は「ギャップ」からはじまる!?
※4月29日から5月9日まで、原則として、ブログ執筆を休ませて頂きます。もしかすると、書きたくなって書くかもしれませんが(笑)慌てない、慌てない、ひとやすみ、ひとやすみ! みなさまも、よきGWを!
ちなみに・・・先だって、中原がゲスト出演させていただいたNHK BS1経済フロントライン「新人研修特集」がWebの記事になっていました。どうぞご高覧いただければ幸いです。
NHK BS1経済フロントライン「新人研修特集」
http://www.nhk.or.jp/keizai/frontline/20160416.html
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昨日のブログに引き続き「アルバイト・パート人材の採用・育成」に関する共同研究から小話(!?)をひとつ。
このプロジェクトでは、アルバイト・パート人材の働く職場の環境を向上させ、採用・育成の促進につなげることを目的とし、様々な調査をおこなっておりますが、調査から見えてきたことのひとつに、個人的には、とても興味深いことがありました。
それは、先だっての会議の際に、分析職人・小林祐児さんから報告されたことなのですが、
(アルバイト・パート人材の)離職は「もともと抱いていた仕事のイメージ」と「現実」のギャップがありすぎるときに起こりうるのではないか
という仮説です。調査の結果から、それが検証されました。
まー、こう書いてしまうとアタリマエなんだろうけど、僕的には、非常に面白いなと思いました。
世間一般的に、離職は
「仕事が辛いから」
「賃金が安いから」
「職場環境が劣悪だから」
という理由で直接的に引き起こるのではないかと考えられているように思います。
もちろん、それも「十分ある」「改善の余地がある」のですけれども、調査からわかってきたメインの理由で改善しうるポイントは、どうもそれだけじゃない。
それをワンセンテンスで申し上げるなら、
「ギャップ」がありすぎて辞める
ということになるのかなと思います。
つまり、「もともと聞いていた職場、仕事の内容」「もともと抱いていた仕事の内容」と、「現実の仕事の様子」が異なりすぎて、ギャップがありすぎているから辞める。
もしこの仮説が「真」だとするならば、アルバイト・パート人材の離職防止は、エントリー部から、すなわち、アルバイトを希望する方々が求人広告にエントリーし、面接を受けるところからはじまることになります。専門用語でいえば、エントリーマネジメントこそが、離職防止の一丁目一番地であるということですね。
「もともと抱いていた仕事のイメージ」は、仕事をするはるか以前から形成される可能性があるためです。
ちなみに、もっと申し上げますと、今回の調査で、業種によっては
アルバイト・パート人材の約半数が、「店舗の下見」に行ってから採用にエントリーしていること
がわかってきました。
ということになると、そもそも「店舗をいかに魅力的するか」「生き生きとした仕事を普段からしているか」ということが、最大のエントリー増大、離職防止になるという仮説も成立します。
つまりですね、
離職防止は「職場づくり」である
ということです。
「職場学習論」(東京大学出版会)の著者としては、まことに嬉しい結論です(笑)。
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アルバイト・パート人材の採用・育成研究は、今年度中に、一区切りがつくものと思われます。それまで、テンプグループのみなさま、渋谷和久さん、岩崎真也さん、稲田勇一さん、北本裕史さん、小林祐児さん、井上史実子さん、田中聡さんと中原で爆走していきたいと考えております。
5月2日には、ダイヤモンドオンラインで、APカンパニーの大久保伸隆社長と渋谷和久さん、中原の鼎談が開始されます。アルバイトの採用、育成に関する実践知がつまっている鼎談となりますので、どうぞお楽しみに。
ちなみに、このプロジェクトは、異業種7社(総従業員規模50万人以上)の企業に五三角頂いているプロジェクトですが、今年は勉強会などを異業種でおこないながら、お互いのベストプラクティスを共有しつつ、コンソーシアム風に運営していく予定だそうです。より多くの方々にご興味をもってもらえると嬉しいなと感じています。
研究成果をまとめる段では、ダイヤモンド社の藤田さん、ライターの井上佐保子さんにもご参画いただき、テンプグループの皆様、中原とで今年の秋頃に、ダイヤモンド社さんから「アルバイト・パートの人材育成」という書籍を出版させて頂く予定です。どうぞお楽しみに!
人手不足時代を背景に、アルバイト・パート人材の人材育成を、
「よりよいかたち」にするお手伝いができればと思っております。
そして人生はつづく
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新刊「会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング」が4月19日発売されました。おかげさまで、発売1週間で増刷決定。AMAZON「経営学・キャリア・MBA」で1位、「光文社新書」で1位、「マネジメント・人材管理」で1位を瞬間風速記録しました(感謝です!)。
「働かないオジサン」「経験の浅い若手」などなど、現場マネジャーなら必ず1度は悩むジレンマを解き明かし、決断のトレーニングをする本です。どうぞよろしくご笑覧いただけますよう、御願いいたします。
4月15日発売、新刊「アクティブトランジション:働くためのワークショップ」もどうぞよろしく御願いいたします。
投稿者 jun : 2016年4月28日 05:34
店長さんは「演じながら」店を切り盛りする!? : 外食3社・店長覆面座談会を終えて
昨年から、僕はテンプホールディングス株式会社さんと「アルバイト・パート人材の採用・育成」に関する共同研究を実施しています。
このプロジェクトは、「未曾有の人手不足時代」に突入した現在、いかにアルバイト・パートの人材を新たに確保して、育成していくかを、実証的に研究するものです。
都市部の一部の地域では、すでに10万円かけても、アルバイト1名すら採用できない状況が続いているといいます。
この状況がいつまで続くかはわかりませんが、こうした人手不足をレバレッジとして、アルバイト・パート人材の働く職場の環境を向上させ、採用・育成の促進につなげることが、このプロジェクトの目的です。
先だって、このプロジェクトに絡み、外食3社の現役の店長さんにお集まりいただき、「覆面座談会」を実施され、中原もインタビュアーとして参加させて頂きました。
その内容は、後日、ダイヤモンドオンラインの方で、記事として公開されるとは思いますが、非常に情報密度の高い会になりました。3社の店長さんにおかれましては、ご多忙中、ご参加頂き心より感謝をしております。
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座談会は2時間にわたっておこなわれましたが、つくづくも感じたのは、店長さんのお仕事は「人にまつわる仕事」に占められている、ということです
つまり、
アルバイト人材をどのように採用するのか?
アルバイト人材をどのように育成するのか?
お店のリーダーをどのように登用するのか?
お店のリーダーにどのように権限を委譲するのか?
お店のチームワークをいかにつくりあげていくのか?
問題のあるメンバーの行動をいかに抑制するのか?
3名の店長さんの悩みや工夫は、上記のような内容に、ほぼ限られていた、という印象をもっています。
ダイヤモンド社の編集者・藤田さんは、会の一番最後に、店長さんたちに対して、
「人にまつわる課題よりも、業績にまつわる悩みの方が、多いのではないですか?」
とご質問になされていました。
が、我々の予想に反し、業績にまつわる悩みをあげられる店長さんは、一人もいらっしゃいませんでした。
なぜなら、「チェーン店の場合、業績をもっとも左右してしまうメニューや戦略などは、すべて本部で決まってしまうので、そこに店長の裁量の余地はあまり多くないから」だとおっしゃいます。
むしろ、上記のように「人にまつわる課題」が店長さん達を悩ませ、それに日々苦闘なさっている、ということを店長さんたちはおっしゃっていました。
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興味深いのは、これらの課題に対して、店長さん達がとられる「戦略」は、それぞれ大きく異なっていることでした。
店舗の状況、店舗の商圏、業態、人材需給などの変数によって、戦略が異なってきます。
たとえば、近くに大学が多いエリアに店をかまえる店長さんは、店舗を悪い方向に牛耳っていたお店のリーダー格の権限を少しずつへらしつつ、店のメンバーの新陳代謝をはかり、新たに大学生にターゲットを絞ってアルバイト採用活動をおこない、彼らの人づてで採用を行い、店を安定化させていらっしゃいました。
この戦略の実行には、一時的に痛みが伴います。
一時は、本来4名いなければならない時間に、いるのは自分一人だけ。
店長さんは、一時は「閉店」も覚悟した、とおっしゃっていました。
ところで、興味深いのは、店長さんのお話の中には、何度か「演じる」という言葉がでてきていることです。
つまり、店長さんたちは、自分のたてたそれぞれの「ひとにまつわる戦略」に応じて、ある役割を「演じながら」仕事をし、人を動かしているのだと思いました。
たとえば、先ほどの事例の場合ですと、
「大学生と同年代か、ちょっと上くらいの先輩」
ないしは
「大学生のよき相談相手となる先生」
を演じながら、彼らと同等の目線で仕事をおこない、彼らを動かしているのでした。非常に面白い視点だと感じました。それが証拠に、その店長さんは、学生さんから「先生」と呼ばれることがあるそうです。
店長の仕事に付随する「演じる」という側面が、非常に興味深く感じた夜でした。
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今日は、先だっておこなわれた店長覆面座談会のお話を少しだけさせていただきました。覆面座談会の模様は、後日、ダイヤモンドオンラインにて公開されるようです。どうぞご笑覧ください。
ちなみに、この座談会には、店長さんの他に、テンプHDの小林さん、井上さん、ダイヤモンド社の藤田さん、ライターの井上さんが参加なさいました。ありがとうございました。またこの場をつくっていただいたテンプHDのIさんには心より感謝いたします(ご迷惑がかかる可能性があるのでお名前は差し控えさせて頂きます)。
どうもありがとうございました。
そして人生はつづく
※ちなみに、店長さんたちが、他の会社の店長さんと、こうして出会い、お話しをすることは、まずないとのことです。ビジネス上はライバルなのでしょうけれども、店長という役割においては、共通の同志観のようなものも感じます。店長さんたちが横につながる場ができたとしたら、興味深いなと思いながら、座談会を過ごしておりました。また考えてみます。
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投稿者 jun : 2016年4月27日 06:02
なぜ、日本の大学教員には「メンター」がいないのか? 国全体に潜む「一国一城の主」信仰!?
ご迷惑をおかけするかもしれないので、お名前をあげさせていただくことは、この場では差し控えますが、先だって、米国の有名総合研究大学で教鞭をとっておられる先生と、ランチをご一緒する機会を得ました。
おかげさまで、ランチでは、ここ最近あったことなどをお互いに情報交換させていただき、よい時間を過ごすことができましたが、その際、話題になったことのひとつに
なぜ、日本の大学には「メンタリングの制度」がないのか?
なぜ、日本の大学教員には「メンター」がいないのか?
ということがありました。
日本の大学にしかつとめたことがない僕自身は、「大学教員にメンターが必要である」という議論は初耳でしたが、その先生からしてみると、このことは「とても不思議に見える」そうです。
曰く、
米国の研究大学で、テニュアトラック制度を引いている場合、たいていの経験の浅いファカルティには「メンター」が割り当てられるそうです。
すでにテニュアを取得した職位の上の教員が、「メンター」になり、テニュアの審査がおこなわれる4年前ー5年前から、どのような研究を為していけばいいのか。どのように業績をつめばいいのかを指導するそうです。
そうした指導は、テニュアトラックにのり、正規のプロフェッサーになったあとでも、続く場合があるとのことです。
その先生には、現在、数名のメンティがいて、指導をおこなっているとのことでした。
へー。
世界は広い。
勉強になります。
▼
なぜ、日本の大学には「メンタリングの制度」がないのか?
なぜ、日本の大学教員には「メンター」がいないのか?
この問いに対する答えは、「短絡的」に答えようとすれば「テニュアトラック制度がないから」になってしまいそうです。
もちろん、その答えでもよいのだけれども、その奥底を掘り返してみると、そこには日本人に共通する、ある「固有のメンタリティ」も見えてきそうです。
そして、その「メンタリティ」は、大学教員ならず、ビジネスパーソンでも、医療の現場にも、程度の差こそはあれ、染み付いているような
気がします。
ワンセンテンスで申し上げますと、それは「一国一城の主信仰」とでも言えるものです。
要するに、「ある程度の職位にある大人」は、もはやメンタリングや助言の必要の無い「一国一城の主」であり、かつ「完成された人間」である。
「完成された人間」なのだから、これから学ぶべきことや、他人から指導を受けるようなことは、そうない。
すでに「一国一城の主」である彼 / 彼女に対して、外部からの働きかけを為すなんて恐れ多い
という考え方です。
実際に、「一国一城の主さん」が、「完成された人間」で、もはや学ぶ必要が無く、最大限のパフォーマンスを発揮できているのならば、まったくそれでも問題がないのですが、実際はそうはいかないことの方が少なくありません。
筋のわるい意志決定をおこなったり、そもそもの目標設定を誤ったり、一人では「気づくこと」のできないもので、しかし、とてつもなく重要な物事を見落としてしまうことは、そう少ないことではありません。
そのような場合には、大学教員のみならず、成り立てホヤホヤの課長や部長や執行役員、やはりそれなりの職位にあったとしても、必要な場合には、メンタリングなどのかたちで「外部からの働きかけ・支援」というものが必要なのではないかと思います。
いかがでしょうか?
▼
今日は「大学教員のメンタリング」という内容について書きました。今回の記事は聞き書きなので、この現象がどの程度一般性のあることか、僕は知りません。
また、大学から割り当てられるようなオフィシャルなメンタリングは、日本の大学には少ないとは思います。
が、個々の大学教員は、インフォーマルにメンタリングをおこなってくれる先達教員を、持っているような気もします。
少なくとも、僕の場合は、判断に迷ったときなどは、いつもお世話になっている先生方がいます(ありがとうございます!感謝です!)
あなたの組織には「一国一城の主」信仰が蔓延していませんか?
本来、「耳の痛いことをいうべき瞬間」をやり過ごしていませんか?
あなたの組織の「一国一城の主」は「裸の王様」のようになっていませんか?
そして人生はつづく
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投稿者 jun : 2016年4月26日 06:17
懇切丁寧に「教えなければならない」新入社員、それに「白ける」新入社員!?
先だって、ある方から、「新入社員の二極化」が近年進んでいるような気がする、というお話を伺いました。
その方は責任のある方でご迷惑をおかけするかもしれないので、お名前は敢えて差し控えさせて頂きますものの、大変興味深いお話でしたので(感謝です!)、思わず、質問をさせていただきました。
その方曰く
「新入社員の二極化とは、新入社員のなかに、企業側が丁寧に丁寧に教えていかなければ動けないし、動こうとしないグループがある一方、それとは対照的にあまり企業側が手をかけなくても、自分から動き出して成果をあげたいと思うグループがあって、その差が、最近、どんどん開いているような気がすることです」
こうした格差ができた場合、困るのは、企業側はどこに照準をあわせて、新入社員に目標をもたせるかです。
前者のグループに水準をあわせて、新入社員だからあまり目標をあげず、よかれと思って丁寧に育てようとするとすると、後者のグループは、白けてしまうのです。新入社員だからな、と思ってよかれと思っておこなった丁寧な対応が、逆に、優秀な人材をウンザリさせてしまうというのが問題です」
ICレコーダーを持っていたわけではないので一言一句同じではないですが、その方がおっしゃっていたような内容は、そんな内容でした。
なるほどなぁ、と思います。非常に興味深い事例をありがとうございます。
▼
ここから読み取れることのひとつには、「新入社員」と一口にいうけれど、その内実は、相当に異なっているということですね。
もちろん、採用段階や面接などで、企業・組織側は、一定のフィルタリングをおこなっているとは思うのですが、それをやってしても、新規参入してくる人には、相当の「差」が存在してしまっている。
そして、その差がもっとも顕在化するのは、彼らが一斉に集められ、均一な学習機会を提供される「新入社員の育成プロセス」において、ということになるのでしょう。
「新入社員の育成プロセス」において、どこに照準をあわせ、それをどこまで引き上げるのか、という課題は、それこそ難問かもしれませんね。経営的な観点からすれば、優秀な人材に照準をあてたくなるのでしょうけれど、そうすれば、底上げが難しくなる。とはいえ、底上げばかりをおこなっていて、優秀な人材が離れていくのは、もっとも避けたい。これは「悶絶系のジレンマ」かもしれません。
▼
今週は、連休直前。
はやい企業では、もうそろそろ新入社員研修は終わり、職場への配属がなされた頃でしょうか。
新入社員の方々が、なるべく早く組織になじみ、成果をあげられることを願っております。
そして人生はつづく
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投稿者 jun : 2016年4月25日 05:59
「赤まむしドリンク」みたいなワークショップや研修、どこかに、ないですか?
僕が、随分長いこと、「人材開発の世界」で研究を続けていますが、3か月に1回くらい、こんな会話に出会うことがあります。
・
・
・
「なんか、最近、メンバーが元気ないんですよね。。。先生、なんか、いいものないですか? 赤まむしドリンクみたいなワークショップとか、そういうの(笑)。参加したら、やる気がでて、元気になっちゃうようなワークショップとか、ないですかね」
・
・
・
おぉ、また出会ってしまった。
名づけて「赤まむしドリンクワークショップ信仰」。
「メンバーに元気が出ない理由や真因」を探究しようとせず、それらの「対処療法」を「ワークショップ」に求めようとするのですね。「メンバーに元気がない」のは、そもそも、こういう「思考」がまかりとおっているから、のような気がしますが・・・嗚呼。
これ、少しだけ面白いのは、メタファに使われるのは「赤まむしドリンク」ばかりではなく、そのときどきで変わりますね。
最頻出は「ユンケル」と「レッドブル」かなぁ・・・(笑)ごくごく希に、リポビタンDとかありますけど(笑)
「赤まむしドリンク」みたいなワークショップや研修、どこかに、ないですか?
そんなもの、ありません(笑)。
マジメに「真因」を探究しなさいな。
▼
こんなとき、人材開発の世界では、よく「氷山モデル」というメタファがだされます。氷山には、「目に見える先端部分」の下に、「目に見えない大きな氷の塊」が存在していることが多いものです。
氷山モデルは「目に見える先端部分=問題事象」に着目するのではなく、その下に存在する「目に見えない大きな氷の塊=真因」を探究していくことの大切さを教えてくれます。
目に見えている上部は「ほんのすこし」でも、実は、深い海の底には、隠された真の課題があるかもよ。
▼
いつだって、職場には様々な「問題事象」があふれています。
場合によっては、「問題事象のモグラ叩き=対処療法」も必要なときがありますが(血が吹き出ているときは対処療法しかないでしょう・・・)、自戒をこめて申し上げますが、やはり「真因の探究」に向き合っていきたいものだと思います。
そして人生はつづく
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投稿者 jun : 2016年4月22日 06:25
公務員の人材開発:管理職のなり手が「枯渇」する!?
先だって、東京23区の、ある区長さんと人事関係者の方が、研究室に来られました。ご縁があって、僕の著書をお読み頂いたようで、一度、某区における職員の人材育成のあり方、人材開発の問題点を相談させて欲しい、とのご要望でした。
僕は、「公務員の人材育成」は研究したことはないのですが、いろいろなご縁からのご紹介でしたので、ご相談をお引き受けし、ディスカッションをさせていただきました。
曰く、
【全般】
・住民のニーズが多様化し、高品質のサービスが求められている
・業務量が増えている
【中堅】
・シニア世代の大量退職が迫っている
・30代ー40代の中間管理職が不足している
・管理職にはなりたがらない
・中間管理職不足を埋めるために、民間企業の退職者を中途採用している
・中途採用した民間企業退職者のなかには定着に難がある方もいる
【若手】
・若手を大量採用している
・経験の浅い10年未満の職員が職員の約半数になっている
【人材開発】
・OJTと目標管理は形式的には存在しているもののWORKしているとは言いがたい
・多忙なため管理職が研修に極端なほど「後ろ向き」
・エース級を育てようにも管理職はエースを出さない
だいたい伺った問題点はこんな感じでしょうか。
この課題、どっかで聞いたような気もするし、デジャブ感がありませんか?
ていうか、日本全体の組織に、以外と「共通」する話題じゃない?
当日は、そんなに時間がなかったので、このような状況を、まず「放置」して5年たった場合のワーストシナリオは何かをだしあっていきました。まずは敢えて「暗い方」から(笑)
お話を伺っていて、僕個人が、もっとも深刻だと感じたのは、5年間何もせず放置しておけば、
「管理職のなり手が枯渇し、本来管理職にしてはいけない人まで管理職にしなければならなくなること」
だと僕は感じました。要するに「選抜が機能しない」ないしは「選抜が無効化する」ということです。
これは僕の信念ですが、
「管理職にしてはいけない人」を管理職に登用した場合に現場にもたらされる悲劇と、その対処のために組織や個人が支払わなければならないコストの総計は、「管理職を育てるコスト」の100倍である
と思います。
その上で、十分な時間がとれたとは言えませんでしたが、どこがレバレッジポイント(最初にてこをいれる場所)になるかをディスカッションさせていただきました。
今後は、まずはすべての人事データ、現場のデータを分析し、正確にどのような施策を打っていくかを考えて頂くことをおすすめいたしました。
時間も限られていたので、十分ではなかったとは思いますが、区長さんたちは研究室をあとにされました。まことにお疲れ様でした。
▼
「会社組織の研究」だけで手一杯なので、僕が「公務員の研究」をすることはおそらくはありません。
ですが、お話しを伺っていると、これも「日本の人材育成の社会課題のひとつ」なのかな、という思いがしてきます。きょうの話が、どの程度一般性のあることなのかは、僕にはわかりません。
門外漢なので、様々な研究や実践がすでに存在しているのかどうかわかりませんが、この領域にも、さらに「現場にかえる調査研究」と、「ワクワクするような実践」が必要であると、思いました。
そして人生はつづく
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投稿者 jun : 2016年4月21日 06:27
「女性リーダーをいかに育成したらよいのか?」研究をはじめます!
「女性リーダーをいかに育成したらよいのか?」
この問いに対して知見を提供する、実証的な共同研究を開始させていただくことになりました(正式なプロジェクトスタートはもう少しだけ後です)。
この研究は、過去2年間にわたり、「中小企業の人材開発の実態」をともに共同研究で明らかにしてきたトーマツイノベーション株式会社様からいただきました「ご縁」となります(現在、こちらの研究は書籍として編むために分析中です)。
トーマツイノベーションさんと東京大学 中原淳研究室は、今後1年、このテーマに基づいた共同研究に取り組まさせていただきます。まずは、このご縁に心より感謝いたします。
プロジェクトには、トーマツイノベーションの眞﨑大輔社長をはじめとして、田中敏志さん、井手真之介さん、国崎晃司さん、山﨑彩子さん、伊藤由紀さん、村上美奈子さん、星原安希さん、長谷川弘実さんにご参画いただける予定だそうです。お忙しいところ本当にありがとうございます。中原研側は、中原と保田江美さんが参加する予定です。
5月以降、様々な取り決めがなされ、プロジェクトが本格化すると思いますが、愉しみで一杯です。どうぞよろしく御願いいたします。
▼
「女性リーダーをいかに育成したらよいのか?」
準備期間である今は、この問いを考察するため、管見ながら、国内で出版されているおおよその研究知見、書籍に目を通させて頂きました。
もっとも僕が興味深かったのは、おおよそ、女性リーダーを論じている言説空間の論理構造は、下記のようになっていることです。
女性リーダーについて論じている既存の言説空間は、ほぼ2つの種類に大別されます。
1.かつて活躍していた女性リーダーの経験談
かつて企業で輝かしい女性リーダーが、回顧をおこない、自らの経験談を語っているもの
2.「女性リーダーのための」という枕詞のついた一般的なマネジメント原則
「これって一般的で、男性にも言えるマネジメント原則でもあるんじゃないの」とも解釈できる「一般的なマネジメントの原理・原則」に、しかし、「女性リーダーのための」という枕詞がついており、中身は、若干、女性向けにコーティングされているものの、しかし、内容は「一般的なマネジメント原則」であるもの
1は「貴重な先人のご経験」に耳を傾けるとして、特に興味深いなと思ったのは2です。
ここでフツフツとわいてきた疑問を、ワンセンテンスで申し上げますと、
本当に「女性リーダー」と「男性リーダー」は違うんでしょうか?
いや、「女性リーダーの研究をする」と先に自分で述べておいて、ほとんど、「自分が乗っているちゃぶ台を自分でひっくり返す」みたいな問いを投げつけていますが、繰り返して申し上げますと、
本当に「女性リーダー」と「男性リーダー」は違うんでしょうか?
もし、その行動や認知に本当に「差異がない」だとすれば、「女性リーダー育成論」という言説空間は「存在しなくなる」し(このプロジェクトは論理上「女性リーダーの育成論という言説空間がなくなる」ことをも覚悟したプロジェクトであるということになります)、もし「違う」のだとすれば、「何」が「どの程度」違うのかを、しっかりとしたデータ、エビデンスに基づき明らかにすることが大切だと思うのです。
現在流通している「女性リーダー向けにコーティングされた一般的なマネジメント原理原則」では、前半部で「女性リーダーと男性リーダーが違うこと」を前提としながら、しかし、後半部では「それらが一緒であることを前提に一般論を語る」という「論理矛盾」を内包しているように感じるのは、僕だけでしょうか。
そもそも、「女性リーダー」と「男性リーダー」は何がどの程度違い、何が同じなんでしょうか?
今回のプロジェクトは、この問いを明らかにするため、いくつかの「群」をつくり、徹底的に行動の違い、出会う葛藤の違い、認知の違い、キャリア意識の違いに、焦点を宛てていきたいと思っています。非常に基礎的な研究になりますが、しかし、いろいろな知見が生まれうるのではないかと期待しています。
管見ながら、こうした研究はいまだなく「世界初?」だと思います。
ごめん、いつものようにハッタリかまして(笑)
でも、そうやって自分を追い込んで、40年生きてきたんです(笑)
▼
トーマツイノベーションさんからこのたびいただいたご縁は、わたしにとっては、かなりのチャレンジです。
ぜひ同社の皆様と「同じ船」にのりながら、よき航海をおこない、面白い知見を生み出して行ければと考えています。
どうぞお楽しみに!
そして人生はつづく
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新刊「会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング」が4月19日発売されました。おかげさまでAMAZON「経営学・キャリア・MBA」で1位、「光文社新書」で1位、「マネジメント・人材管理」で1位を瞬間風速記録しました(感謝です!)。
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投稿者 jun : 2016年4月20日 06:08
本日発売!新刊「会社の中はジレンマだらけー現場マネジャー決断のトレーニング」(本間浩輔×中原淳著)どうかご笑覧ください!
本日4月19日、新刊「会社の中はジレンマだらけー現場マネジャー決断のトレーニング」が発売になります(パチパチパチ!)
会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング (光文社新書) はこちらで購入できます!
http://ow.ly/10xZpX
こちらの書籍は、ヤフー上席執行役員(人事責任者)の本間浩輔さんと、中原の共著で、光文社新書からの刊行です。
▼
「会社の中はジレンマだらけー現場マネジャー決断のトレーニング」は、
1.現場マネジャーがふだん出くわす「あるあるのディレンマ状況」を冒頭にケースとしてとりあげ
2.それに対する現場経験の智慧、人材研究の科学的知見を、本間さんと中原がゆるゆると対話し、
3.本間さんと中原が、先ほどのディレンマ状況に自分がおかれた場合には、自分ならどうするかの「決断」をまずは述べさせていただき
4.読者の皆さんにも自分の「決断」をワークシート風の空欄に書き込んでもらう
という本です。
イメージとしてはそうですね・・・「対話型のワークショップ」を受けているような感じですかね。
各章最後には、現場マネジャーがよく現場で相対するディレンマに対して、自分で決断しなくてはならないのですけれど、その前に、いろんな視点や理論や考え方を、僕と本間さんが対話しているような感じでしょうか。
いずれにしても、このプロセスを通して、「現場マネジャーなら、一度は出くわす、あるあるなジレンマ」に事前準備・事前トレーニングをすることができるように編まれています。
扱われているディレンマは、
1.新人に仕事を任せるべきか、それとも、マネジャーが自分でやってしまうべきか?
2.産休社員に対するケアを誰に対して、どう行うか?
3.働かないオジサンの逃げ切りを現場マネジャーとして許すか、いなか?
4.現場マネジャーとしては新規事業に挑戦したいエース級を送り出すべきか、いなか?
5.自分はマネジャーとしてこのまま会社に残り定年を迎えるか? 転職するか?
です。
現場マネジャー同士、人事部同志でディレンマを読みあい、ゆるゆる議論しても面白いと思います。
あるいは、お一人でディレンマに向き合い、自分の軸を確認なさってもよいのではないかと思います。マネジメントをしていると判断に悩んだり、ブレたりしてしまうことがあります。自分の中でしっかりとした優先順番や軸をもっていることは、マネジメントを為す中で大切なことであると考えます。
また新任のマネジャーの方にとっても、本書は事前トレーニングとして有益なのではないかと思います。
なにせ、現役の人事責任者が著者に加わっているわけですから、事例はあるある、生々しくないわけがありません。そうした紙上トレーニングを通じて、現場に出られたときに、どう振る舞うかを決めて頂くことがよいかと思います。
どうかご高覧いただけますよう、お願いいたします。
▼
僕たちはこの本を「現場マネジャーが決断のトレーニング」をする本であると考えています。自らが相対するディレンマの深層を観察し、理解し、その上で決断を行い、振り返る。このことだけが、現場マネジャーの力量を向上させるのだと信じています。
よって、本書のすべての記述は、下記のような現場マネジャーのディレンマ決断モデルに基づいています。
冒頭提示された悶絶ディレンマに対して、中原と本間さんは対談を行っています。
対談の中には、ヤフーの人事制度の説明があったり・・・
中原が、さまざまな人材開発の手法を説明している部分があります。
下記はフィードバックの紙上レクチャー部分(図表)ですね。
対談のプロセスの中では、著者である僕たちも、自分の答えを考えています。各章最後には、まずは僕たちが悶絶ディレンマに対する、自分なりの回答を述べさせて頂きます。
最後には、読者である、皆さんが悶絶ディレンマに対する対処を書き込むことができるようになっています。ディレンマは、放置しておくことはできません。いつかは決めなければならないのです。こうしたプロセスを通して、現場マネジャーが問題・課題にぶち当たる前の、紙上・準備トレーニングを行うことができます。
現場マネジャー同士のワークショップや研修などでも、教材としてご利用いただけると思います。
もちろん、これからマネジャーになられる方は、お一人でディレンマに向き合い、事前準備をなさっていただけるとうれしいことです。
本書を編むにあたっては、ディレンマをお寄せ頂いた皆さんはもちろんのこと、光文社新書編集部 樋口健さん、古谷俊勝さん、そして構成をご担当いただいた秋山基さんには大変お世話になりました。心より御礼申し上げます。
また本間さんとの対談は、いつも学びと発見に満ちていました。このプロジェクトでもご一緒できましたことを、心より嬉しく思います。
本書が多くの方々に読まれることを願っています。
どうぞご笑覧いただけますと幸いです。
そして人生はつづく
会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング (光文社新書) はこちらで購入できます!
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投稿者 jun : 2016年4月19日 05:08
組織開発は「企画8割、実行2割」!?
先だっての大学院ゼミで、D3の吉村さんが、
「組織開発としてAI(アプリシエイシブ・インクアイアリー)を、ある集団で実行したときの効果」
に関する論文を英語文献発表してくれました(Calabrese et al(2010) 、International Journal of Educational Management, 2010 24(3))。今年度の大学院中原ゼミでは、自分の関心のある研究領域の実証研究を相互に紹介し合うという内容をやっています。お疲れ様です、感謝です。
先だってみなで読んだ論文は、組織開発の事例研究という部類に入る論文になるのでしょうか。
あるエリアのステークホルダー(利害関係者)を集めて、数週間にわたって組織開発の外的な働きかけを行ったところ、さまざまな効果があらわれた様子を定性的に明らかにしている論文です。
組織開発は、「構成員メンバーがもつ意味の変容」や「組織メンバーのもつ関係性の変化」を扱いますので、そもそも実証研究や定量研究にするのは難しいと思われるのですが、本論文は、これを定性的に記述しておりました。
個人的には、組織開発を「定性的なまとめる場合」、どのようにまとめるのかな、と思って、論文を拝見しておりました。
▼
ところで、この論文を読んでいて、個人的に思ったのは、
組織開発の論証において、その営為を他者に対して「説明」するときに、「どこ」から「どこ」までを、その範疇に含めれば良いのか?
ということです。
先だっての論文は事例研究でもありましたので、様々な情報が網羅されておりましたが、やはり論文の記述、中心的なテーマは、いわゆる「4Dサイクル」と「4Dサイクルをやったあとの効果」に置かれていました。
4Dサイクルとは、よく知られているように、アプリシエイシブ・インクアイアリー型の組織開発ワークショップで、よく実行される手順です。
1.Discover
個々人の「過去」や「現状」における「成功体験」や「強み」などにスポットライトをあて、その共有点をさがし、組織の「成功体験」や「強み」をあぶりだす。
2.Dream
あらわれでてきた個人・組織の「成功体験」や「強み」をベースにして、組織のビジョンを描く
3.Design
2でつくりあげた組織のビジョンを、具体的な組織図や実行に落とし込む
4.Destiny
2でつくりあげた組織のビジョン、3でつくりあげた具体的なアクションプランに従い、組織改革を実行していく
論文では、こうした「4Dサイクル」の実行にともない何がおきて、それがどのような効果をもたらすかを論証しておりました。もちろん、そうした記述は貴重なことなのですが、個人的には、そこに不足感を感じました。
といいますのは、
組織開発は「4Dサイクル」に入る「前」ー組織開発の前になされる企画や握りがとても重要だと思うからです。
ここで「前」と申しますのは、当該組織に組織開発を試みていこうとする場合、その組織の組織長や経営陣、あるいはキーパーソンと、いかに事前に「目的」や「思い」や「アジェンダ」を事前に「握るか」ということです。
このプロセスは、専門用語では「エントリー」ないしは「コントラクト」と言われています。組織開発に関して、僕は、南山大学の中村和彦先生、および、中村先生が招聘なさったNTLの先生方に多くを学びました(心より感謝です)。
個人的な経験を開陳させていただきますと、僕個人は、
このエントリーやコントラクトで組織開発の効果の、決して少なくない部分を決めてしまうのではないか
と考えています。
よく「企画8割、実行2割」といいますね。
何か物事を実行していくときに、「事前に企画を練っていく部分」と「計画された企画を実行していく部分」がある。
「企画8割、実行2割」とは、そうした場合、「事前に企画を練っていく部分」の方が「計画された企画を実行していく部分」よりも影響力をもっていることを表現した言葉です。
そしてこのことは、組織開発においても言えることなのかなと思います。
ワンセンテンスで申し上げるのであれば、
組織開発は「企画8割、実行2割」
要するに、組織開発を為す「事前」に、組織のなかで政治力や影響力をもっている個人と、いかに出会い、いかに「契約」を行うか。
いかに「同じ船」にのって組織開発の実際のワークショップ等の「企画」を練っていくか。
その上で、組織開発の「企画」に深くコミットしてもらい、オーナーシップをもってもらえるかどうかが、決定的に大切である気がします。
しかし、多くの実証研究には、この部分は、あまり記述されることがありません。
おそらく、それを記述しようとすれば、それはものすごく「政治的なプロセス」になりますし、おおよそ論文が特徴とするであろう「客観性とは対極の世界」ードロドロ血的世界が現れているような気がします。だから、論文には、なかなかなりえない。しかし、キモはそこにある、というのが僕の数少ない経験から言えることです。
▼
今日は組織開発の論文について個人的な感想を書かせて頂きました。組織開発は、論文であれば事例研究なのでしょうが、最近の論文には「文字数」も決まっております。やはり「書籍」などで起こった出来事をコッテリと書いていく方が、向いているのかなぁと思いました。
ま、実際、書き始めると別の問題が起こりえますね。
もうひとつの難問は、
組織開発のコンサルタントやファシリテータを自ら行いながら、そこで起こっていることを客観的に記述していくっていうのは、ものすごく難しい
ということですが(笑)。
そして人生はつづく
ーーー
追伸.
先週土曜日にNHK BS1「経済フロントライン」にゲストとして出演させて頂きました。番組の途中に新人研修の特集があった関係で僕にお声がけいただいたものと思われます(心より感謝です)。
当日は、新人研修部分だけではなく、番組全般へのコメントもを行わせて頂きました。番組の様々なコーナーに対してもコメントするというのは、僕にとってはタフチャレンジでしたが、結論から申し上げますと、とてもタフで愉しい時間を過ごさせて頂きました。
このたびお声がけ頂いたNHKの浜由布子さん、特集担当ディレクターの高林さん、そしてキャスターの野口修司さん、竹内優美さんに心より感謝いたします。ありがとうございました。
投稿者 jun : 2016年4月18日 06:44
「意味喪失」と「経験格差」に向き合うNPOカタリバ!? : カタリバ理事会に参加して
理事を仰せつかっているNPO法人カタリバの理事会が、先だって、都内某所で開催されました。
NPO法人カタリバ
http://www.katariba.net/
今回の理事会は、今村さん、岡本さんらのファシリテーションによって、「いつもとは異なるかたち」で行われました。
これまでの理事会は、各事業部からの報告を理事が伺い、コメントをするというかたちー「論文指導」のようなかたちーで行われていたのですが、これをお二人が「変革」なさったのです。
今回、今村さんや岡村さんをはじめとして執行部の皆さんは、カタリバのルーツである「対話」と「語る」ということに立ち戻られました。理事も語る、カタリバ執行部のメンバーも語る、というかたちで、「対話型の理事会」を構成なさったのです。雰囲気は下記のような感じです。
様々なトピックに関して、皆で意見を言い合う雰囲気ができ、理事は「各事業部から報告を受けて厳しくフィードバックする指導教官のような存在」から「事業の方向性をともに考える存在」に少しだけ変化したような気がします。
僕個人としては、非常に嬉しいことですし、前回の理事会のフォローアップの際、お二人にお願いしていたことでもありました。大学の外に出てまで、「指導教員」ではいたくありませんので(笑)・・・というより、「指導教員」スタイルで、よいコメントができるとは思えなかったので(笑)。
(それにしても、これまでの理事会で僕は「怖い存在」だったようです。カタリバのみならず、最近の僕は「怖い」というイメージをもたれることが多くなっています。偉そうになってきたのか、フィードバックをする役回りが増えてきたのか不明ですが、ありゃりゃりゃりゃ、という感じです。前者だとしたらまことに申し訳ないですね。そういえば、ちょっと前に慶應MCCの保谷さんから「貫禄つきましたね」というご指摘を受けました。年齢なのかなぁ・・・)
▼
このことは何度も申し上げておりますが、NPOカタリバは、他者に対して「対話」と「サンプリング」と「語り」を促す存在です。それならば、その「鋭い要求」は「自己」「自分たち」にも向けられるべきではないか、というものが僕の一貫した主張です。
もちろん「折りに触れて」でよいのです。カタリバが「アクションオリエンティッドな団体」であり、「前のめりな志あふれる人々」が参加している団体だからこそ「折りに触れて」、きっちりと対話と内省を繰り返していくことが大切であるような気がしています。
確かに、様々な時間的困難はあるかと思います。が、ぜひ、こうした行動を繰り返し、習慣化し、組織文化として大切にしていっていただきたいなと思います。
▼
現在、カタリバは、多方面に、かつ、多角的に事業展開しています。
従来からの「カタリバ事業」ー高校生に対して大学生がキャリアを語る場をつくる事業ーは、未来に不安を感じる高校生に「学ぶ意味」「働く意味」をつむぐお手伝いをする事業展開を行ってきました。
さしずめ、その様相は、現代社会の特徴である「不確実性の拡大」と、そこで生きる人々の「意味の喪失」という事態に対して向き合う事業だったのではないかと思います。現代、わたしたちは「学ぶ意味」「働く意味」「生きる意味」を紡ぐことが、なかなか見えにくい社会を生きています。カタリバは、高校生の「意味喪失」にあらがい、彼らの「意味構築」を支援してきました。
昨今はそれらに加えて、
1.東北での「コラボスクール運営事業」
東北被災地に、子どもが放課後過ごすことのできる居場所・学びの場をつくる事業
2.中高生が集える場をつくる事業ーblab、雲南などの拠点で展開
そして昨今では
3.高校生ひとりひとりがプロジェクトをもつことを推奨する「マイプロジェクト事業」
などを今村さん、岡本さんほか、各ディレクターののリーダーシップのもと展開しつつあります。
昨日の理事会でも申し上げましたが、カタリバは、今、「対話することを通して未来をつくる」という従来のカタリバ事業をルーツにしつつ、「もうひとつの軸」に向かって、様々な事業展開を行っているように見えます。
その軸こそが「未来を拓く経験格差を子どもたちのあいだに生み出さない」ということです。別の言葉で申し上げるのだとすれば、「未来に希望を感じる経験を、多くの子どもたちに提供する」ということです。
昨日の理事会でも申し上げましたが、僕は、昨今、世の中には「経験格差」というものが生まれているような気がします。といいましょうか、カタリバの面々とお会いする度に、この言葉が僕の脳裏に思い浮かぶのです。
経験格差とは、
「ある社会階層の子どもは、子ども時代に多様な経験を行うことができて、ある層はそうでない。それら両層との間の経験値の格差が開いていき、それが入試や就職などの指標として用いられていく」
ということです。
箇条書きにすれば、要するに、こういうことですね。
1.従来の入試のように標準テストで測定しうるような基礎的学力は「あってあたりまえのもの化」「相対化」される方向に動いている。それ以上の「社会的成功」をなすためには、さらに「上位の指標」が意味を成すようになってきている。
2.基礎学力とは異なる「上位の指標」のひとつにあるのが「他人とは異なる差異化の記号となるような経験を成し遂げて」、そこから「どのようなことを学び」、「何を今後していきたいのか」?という「ストーリー」がある。それらが「評価指標」として用いられるようになってきている。それらは従来の標準テストで測定されるのではなく、まったく異なる「定性的な評価手法」によって測定されはじめようとしている。
3.「定性的な手法」は、多くはヒアリングや面接として具現化される。よって、それに挑戦する子ども達は、自分の経験を振り返り、ストーリー化し、他者に対してアカウントする能力が求められる。文化的コンテキストを共有しない他者とコミュニケーションし、自らの経験を伝えることが求められる。
4.しかし「成長に資する経験」「社会的成功につながる学習経験」の獲得は、生まれた家庭の経済階層・文化的資本に強く影響を受ける。また、言語的コミュニケーションの質も同様に、再生産の範疇になりえる。このような中で、いわゆる「格差」がさらに拡大していくことが予想される。
5.「生まれながらの格差」の根源は、指摘するのは簡単だが、なかなか埋めようがない。ならば、「生まれながらの差」をいかに「縮小」する政策や施策を社会にどのようにデザインしていくかが求められるようになる。
ということです。
もちろん、このことはこれまでもそうだったのですけれども、入試が「多様化」し、選抜手法もよりコミュニカティブな方向に向かっているなかで、こうした物事が幅をきかせることが以前より多くなっているように感じるのです。このことは、以前にもブログで何度か申し上げていたことです。
今、カタリバは、事業を多角化していく中で、もともとルーツとしてもっていた「対話の経験」をコアにして、さまざまな「問題解決の経験」「創造の経験」「葛藤の経験」を高校生などに提供する方向に事業展開を行っているような気がします。
特に、行政とともに「子どもたちの居場所と出来事(コト)をつくる事業」や、今村さんが率いておられるような高校生に「マイプロジェクト」をもたせることを推奨する事業は、その最たるものでしょう。今はまだ規模はそれほど大きくなるかもしれない。しかし、ビジョンは、「すべての高校生にマイプロジェクトを推進すること!」です。これらは、子どもに「経験」と「振り返り」の機会を与える契機になるような気がします。
全国の高校生にマイプロジェクト
http://myprojects.jp/
▼
今日はカタリバの理事会について書きました。
カタリバの皆さんには、いつも本当によくお仕事をなさっているように思います。
今村さん、岡本さんを筆頭に、カタリバ事業・東北事業、その他経営部門を引っ張っておられるディレクターの方々、見事なフォロワーシップを発揮なさってフロントラインで努力なさっているスタッフの方々に「お疲れさま!」を申し上げたいと思います。
最後に、ぜひ社外取締役的な理事として、皆さんにお願いしたいことはこういうことです。
カタリバのメンバーは、まずは「語る」のです。
どうか、もともと持っていたルーツを大切にして欲しいと思います。
ルーツを、自分たち自身にもしっかりと課してください。
どうか「語ること」や「向き合うこと」から逃げないでください。
そしてその上で
心ゆくまで暴れてください。
皆さんのアクションによって生み出される「問題解決の経験」「創造の経験」「葛藤の経験」を、多くの子ども達が待っているような気がいたします。
繰り返します。
語ることから逃げないでください。
そして、心ゆくまで暴れてください。
またお逢いしましょう!
そして人生は続く
ーーー
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投稿者 jun : 2016年4月15日 06:40
新刊「アクティブトランジション:働くためのウォーミングアップ」のワークショップを無料体験できるそうです!
新刊「アクティブトランジション:働くためのウォーミングアップ」でメイン編者&プロジェクトリーダーをつとめてくださった立教大学・舘野さんが、下記のようなワークショップを企画してくださいました。
このたび舘野さんが企画なさったのは、4/22(金)、新刊「アクティブトランジション-働くためのウォーミングアップ」(舘野泰一・中原淳編)に収録されているワークショップを、なんと、無料で体験できるワークショップです。
当日体験できるのは
「カード de トーク いるかも !? こんな社会人」ワークショップ
です。どんなワークショップか???
詳細は、舘野さんのブログをぜひご覧下さい。
この日、実際にワークショップを体験していただくことで、実際にどのようにワークショップを運営すればよいのかを理解することができると思います。当日は、著書を購入していない方でもご参加頂けます。
今回は、新刊発売を機会につくられたワークショップであるため、無料なのにもかかわらず、軽食+ドリンク飲み放題がつき、かつ、社会人カードもお土産でもらえてしまうそうです。
詳細は、ぜひ舘野さんのブログをご覧頂き、お申し込みいただけますと幸いです。
当日は、わたくしめ、不肖・中原も、ひょっこり会場をウロウロしていると思います。
そして人生はつづく
ワークショップのお申し込みはこちらから
tate-lab : 立教大学・舘野泰一さんのブログ
http://www.tate-lab.net/mt/2016/04/activetransition_workshop.html
投稿者 jun : 2016年4月14日 06:08
アルバイト・パート人材の採用は「選んでいるつもり」で、逆に「選ばれている」!?
去年から、中原研究室はテンプホールディングス株式会社さんと「アルバイト・パート人材の採用・育成」に関する共同研究を開始しています。
このプロジェクトは、「未曾有の人手不足時代」に突入した現在、いかにアルバイト・パートの人材を新たに確保して、育成していくかを、実証的に研究するものです。
共同研究は2つのフェイズにわかれています。
第一の調査フェイズでは、小売・運輸・外食などの大手7社、従業員規模50万人を超える企業へのご参画をいただき、
1)求職者を対象にした調査
2)各企業の離職者に対する調査
3)各店舗の職場・マネジメントの実態を明らかにする調査
などを通して、現在のアルバイト・パート人材の働く職場がどのようになっているかを「見える化」することをめざします。「見える化」できないものは「打ち手」を選びようがありません。ですので、最も重要なのは、このフェイズです。
▼
第二フェイズは、打ち手の「開発フェイズ」です。
「見える化」できたはよいのだけれども、で、アンタ、どうするの?(笑)
という実務のニーズに答えるために、こちらのツールでは、研修や各種の情報環境など、ツールを開発し、実証実験を行っていく予定です。
こちらのプロジェクトをともに推進しているのは、テンプグループの皆様、グループリーダーをつとめるテンプHD(HITO総研)の渋谷和久さん、テンプスタッフラーニングの岩崎真也さん、テンプHDの稲田勇一さん、北本裕史さん、HITO総研の小林祐児さん、井上史実子さん、そして、田中聡さんと中原が研究室から参画しています。
現在、分析職人の小林さんのご尽力で、第一の調査フェイズを終えました(お疲れ様です)。
こちらの研究に参画しているのは、小売・運輸・外食などの大手7社、従業員規模はすべてあわせますと50万人を超えます(五三角、まことにありがとうございます)。
現在、研究メンバーが調査でわかったことを、各社にフィードバックさせていただいますが、都合のつくところには僕も参画して、議論をさせていただいております。
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今回、研究をはじめて得られたファインディングス(発見事実)は、いくつもありますが、興味深いもののひとつに「面接のプロセスに関する知見」があります。
これは、会社によってもこれは数字が異なりますが(詳細は秋頃でてくる書籍・レポート・イベントなどでご覧下さい)、
1.人はアルバイトを選ぶ際に、その「職場」を下見している
2.面接にくる人の中には、複数の会社に同時に履歴書をだしている人も少なくない
3.面接での対応や職場の様子からネガティブな印象をもった場合、
面接で合格しても辞退する人が少なくない
というファインディングスは、個人的に非常に興味深いことでした。
20年前になって恐縮なのですけれども、僕自身のアルバイトの経験からすると、これらは全く逆で
1.アルバイト先を下見したことはない
2.履歴書は1社に出して面接で受ける
3.面接で合格したら、当然働くものだと思っていた
ものだと思っていたからです。
えっ、僕だけ??。
人手不足という背景もさらに後押ししているせいもあるんでしょうけれど、現在、アルバイト・パート人材の採用とは「選んでいるつもり」が、逆に「選ばれている」という状況が生まれている気がいたします。
しかし、面談をする側は、「かつての感覚」が、まだ残っています。
自分は「選ぶ方」であり、よもや「選ばれている」とは思っていない。
そして求職者が働き口を選ぶときのポイントは、「選んでいると思っている店長等の対応」であり、「そうした店長が創り出す職場の現状」なのです。
「職場学習論」の著者としては、やっぱりそうだよね、という感じです。
ほら、職場でしょ(笑)。
このあたり、非常に興味深いことですね。
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アルバイト・パート人材の採用・育成研究は、今年度中に、一区切りがつくものと思われます。
研究成果をまとめる段では、ダイヤモンド社の藤田さん、ライターの井上佐保子さんにも参画頂いており、今年の秋頃に、ダイヤモンド社さんから「アルバイト・パートの人材育成」という書籍を出版させて頂く予定です。どうぞお楽しみに!
人手不足時代を背景に、アルバイト・パート人材の人材育成を、
「よりよいかたち」にするお手伝いができればと思っております。
そして人生はつづく
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【新刊ご案内】
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投稿者 jun : 2016年4月13日 05:48
新刊「会社の中はジレンマだらけー現場マネジャー決断のトレーニング」(本間浩輔・中原淳著)AMAZON予約販売がはじまりました!
新刊「会社の中はジレンマだらけー現場マネジャー決断のトレーニング」が4月19日、出版されます(パチパチパチ!)。ヤフー上席執行役員(人事責任者)の本間浩輔さんと、中原の共著で、光文社新書からの刊行です。
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「会社の中はジレンマだらけー現場マネジャー決断のトレーニング」は、
1.現場マネジャーがふだん出くわす「あるあるのディレンマ状況」を冒頭にケースとしてとりあげ
2.それに対する現場経験の智慧、人材研究の科学的知見を、本間さんと中原がゆるゆると対話し、
3.本間さんと中原が、先ほどのディレンマ状況に自分がおかれた場合には、自分ならどうするかの「決断」をまずは述べさせていただき
4.読者の皆さんにも自分の「決断」をワークシート風の空欄に書き込んでもらう
という本です。
このプロセスを通して、「現場マネジャーなら、一度は出くわす、あるあるなジレンマ」に事前準備・事前トレーニングをすることができるように編まれています。
扱われているディレンマは、
1.新人に仕事を任せるべきか、それとも、マネジャーが自分でやってしまうべきか?
2.産休社員に対するケアを誰に対して、どう行うか?
3.働かないオジサンの逃げ切りを現場マネジャーとして許すか、いなか?
4.現場マネジャーとしては新規事業に挑戦したいエース級を送り出すべきか、いなか?
5.自分はマネジャーとしてこのまま会社に残り定年を迎えるか? 転職するか?
です。
こちらは、以前、このブログで、読者の皆さんから悶絶ディレンマを募らせていただきました。ディレンマをお寄せ頂いた皆様に、心より感謝をいたします。ありがとうございました。
お寄せ頂いたディレンマは50弱。それらすべてにお答えできているわけではないのですが、そうした読者の皆さんが悶絶している共通のディレンマを、本間さんと中原で議論させていただきました。
現場マネジャー同士、人事部同志でディレンマを読みあい、ゆるゆる議論しても面白いと思います。
あるいは、お一人でディレンマに向き合い、自分の軸を確認なさってもよいのではないかと思います。マネジメントをしていると判断に悩んだり、ブレたりしてしまうことがあります。自分の中でしっかりとした優先順番や軸をもっていることは、マネジメントを為す中で大切なことであると考えます。
また新任のマネジャーの方にとっても、本書は事前トレーニングとして有益なのではないかと思います。なにせ、現役の人事責任者が論じているわけですから、事例はあるある、生々しくないわけがありません。そうした紙上トレーニングを通じて、現場に出られたときに、どう振る舞うかを決めて頂くことがよいかと思います。
悶絶ディレンマをネタにした「ワークショップ」を受講したような読後感が得られるかもしれません。
どうかご高覧いただけますよう、お願いいたします。
▼
「会社の中はジレンマだらけー現場マネジャー決断のトレーニング」では、まずは下記のように、現場マネジャーならば一度は向き合わざるをえないようなディレンマが各章冒頭で提示されます。
僕たちはこの本を「現場マネジャーが決断のトレーニング」をする本であると考えています。自らが相対するディレンマの深層を観察し、理解し、その上で決断を行い、振り返る。このことだけが、現場マネジャーの力量を向上させるのだと信じています。
よって、本書のすべての記述は、下記のような現場マネジャーのディレンマ決断モデルに基づいています。
冒頭提示された悶絶ディレンマに対して、中原と本間さんは対談を行っています。中には、ヤフーの人事制度の説明があったり・・・
中原が、さまざまな人材開発の手法を説明している部分があります。下記はフィードバックの紙上レクチャー部分(図表)ですね。
対談のプロセスの中では、著者である僕たちも、自分の答えを考えています。各章最後には、まずは僕たちが悶絶ディレンマに対する、自分なりの回答を述べさせて頂きます。
最後には、読者である、皆さんが悶絶ディレンマに対する対処を書き込むことができるようになっています。ディレンマは、放置しておくことはできません。いつかは決めなければならないのです。こうしたプロセスを通して、現場マネジャーが問題・課題にぶち当たる前の、紙上・準備トレーニングを行うことができます。
現場マネジャー同士のワークショップや研修などでも、教材としてご利用いただけると思います。
もちろん、これからマネジャーになられる方は、お一人でディレンマに向き合い、事前準備をなさっていただけるとうれしいことです。
本書を編むにあたっては、ディレンマをお寄せ頂いた皆さんはもちろんのこと、光文社新書編集部 樋口健さん、古谷俊勝さん、そして構成をご担当いただいた秋山基さんには大変お世話になりました。心より御礼申し上げます。また本間さんとの対談は、いつも学びと発見に満ちていました。このプロジェクトでもご一緒できましたことを、心より嬉しく思います。
僕個人としては、本書は「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)に続く、新任マネジャー本第二弾の挑戦でした。「駆け出しマネジャーの成長論」では論じきれなかった生々しい事例に踏み込んでいる本であると考えています。
「駆け出しマネジャーの成長論」は、最近発売されました中央公論5月号で、佐藤優さんに「ビジネスパーソン向きの新書」としてご推薦いただいている模様です。佐藤さん、御連絡をただいた中公新書ラクレの黒田さんにも心より御礼を申し上げます。駆け出しマネジャー本は、多くの企業で企業研修のテキストなどに用いられていると伺っております。こちらも同化ご高覧くださいますよう、よろしく御願いいたします。
▼
さて、またひとつの旅が終わりました。
今度は誰と、どんな旅に出ようか。
そして人生はつづく
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(以下には、「会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング」の「はじめに」を掲載させて頂きます)
ーーー
はじめに
中原 淳(東京大学)
世の中は「ジレンマ」に満ちています。
ジレンマにはさまざまな定義がありますが、本書では「どちらを選んでもメリットもデメリットもあるような二つの選択肢を前にして、それでもどちらにするかを決めなくてはならない状況」をさして、以降、用いるものとします。
簡単に言えば、「あちらを立てれば、こちらが立たない」「にっちもさっちもいかない」、そういったタフなシチュエーションのこととお考えください。
企業・組織には様々なジレンマが生まれてきますが、最も深刻なディレンマに直面するのは、経営のフロントラインでありながら、現場のメンバーや顧客に相対せざるをえないラインのマネジャーです。
マネジャーは、現場で人にまつわるあれこれを処理する存在であり、それゆえ「どっちを選ぶべきか」という判断を迫られることが多いのです。マネジメントの本質を「ジレンマのやりくり」と述べた研究者もいます。マネジメントの動詞である「Manage」は、もともと「やりくりする」という意味です。
▼
たとえば、マネジャーが直面しやすい困難のひとつとして「部下育成」があります。部下育成においては、「コーチングとティーチングのジレンマ」というものがあります。
例えば、部下育成の局面を思い浮かべて下さい。
あるマネジャーが、部下育成に悩み、マネジメントの教科書のような本を読んだとします。たいてい部下育成の本には、部下にはティーチング(教え込むこと)ではなく、コーチング(部下に気づきをうながすこと)をすることが重要だと書いてあります。
しかし、マネジャーが実際にコーチングを試してみると、部下は、自ら気づかぬどころか、自分のやり方を絶対として譲らない。それにコーチングばかりをしていると、メンバーごとに理解ややり方が独自なものとなってしまい、職場全体での仕事の標準化が進まない。思い直したマネジャーが、今度はティーチングをして部下を従わせようとすると、今度は職場にやらされ感が漂い、メンバーたちの活気が失われてしまう。
そんなとき、「一体どうすればいいんだ」とマネジャーは自問自答します。
そのような中で、マネジャーは最終的には「決断すること」を求められます。読者のみなさんが同じ立場だったら、どうしますか。皆さんは、煩悶の果てに、どのような決断をしますか?
一方、企業というものがもともと内包しているジレンマもあります。
たとえば、人材育成の分野では、しばしば、新卒採用と中途採用はどちらがいいのかという議論が繰り返されます。
新卒を採って、白紙の状態から育成してコミットメントを高めてもらう方が人事戦略として有効なのか、それとも即戦力を期待して中途採用者を集めるのがよいのか。新卒を育てるのは多大なコストを要する。しかし、すでに色がついている中途は、期待したほど成果を出せない場合がある。
こうしたケースも、まさに「にっちもさっちもいかない状況」ですが、こうしたジレンマに直面したとき、企業はメリットとデメリットを勘案して、新卒と中途、どちらを採るべきかを決断しなければなりません。ディレンマに向き合い、その後で沈黙するのではなく、最終的には対応策を「決断」しなければならないのです。
▼
人は仕事をしていれば、一時的にジレンマに陥ることは多々あります。しかし、その場で私たちは、行き当たりばったりの対応をすることは許されていません。まして、沈黙を守ったり、逡巡したり、やり過ごすことはできません。「決める」ためにいったん立ち止まって考えるのはかまいませんが、ジレンマを前にして、長い間、ただただ立ち尽くすことは避けなくてはなりません。
ジレンマに直面した場合、一般的にマネジャーは、以下のようなジレンマへの対処を行います。これを本書では「ジレンママネージングモデル」と呼びます。
■ジレンママネージングモデル
1.ジレンマを観察する
2.ジレンマを理解する
3.決断する
4.リフレクションする(振り返る)
わたしたちがジレンマに陥ったとき、まず為すべき事は、動き出すことではありません。まずやらなければならないことは「1.ジレンマを観察する」です。
ジレンマに陥ったら、いったん立ち止まり、状況をじっくりと「観察」することが求められます。その上で、ディレンマの構造を多方面から理解します。これが「2.ジレンマを理解する」の部分です。そのような観察と理解のはてに、わたしたちは「3.決断」を行い、前に進まなくてはなりません。
当然「決断」の果てには、何らかの結果がともないます。「4.リフレクションする」とは、そうした「決断の果ての結果」を振り返り、さらに未来の一歩を構想することです。こうしたプロセスを日々わたしたちは辿りながら、ディレンマに対処していくことが求められています。
▼
これから本書では、組織に満ちあふれるジレンマをたくさん取り上げ、それぞれについて実務家や現場のマネジャーはどう考えるか、アカデミックにはどう考えるか、ということを論じ合っていきます。
ぜひ、読者の方々は各章の冒頭で提示されるジレンマを観察・理解し、筆者らの語りに耳を傾けつつ、お一人お一人が、そのような状況であれば、どのような決断を行うかを考えながら本書をお読みください。
筆者のひとりである中原(僕のことです)は、「人材開発(人的資源開発)」を専門とする研究者です。僕は、これまで十数年以上にわたって、多くの企業とマネジャーやリーダーの育成のプロジェクトに従事してきました。
また同時に、僕は、研究部門の部門責任者として十数名のスタッフを率いています。この本では、こうした研究と経験をおりまぜながらお話をしようと思います。
もうおひとりの著者は、ヤフー株式会社執行役員(ピープル・デベロップメント統括本部長)の本間浩輔さんです。本間さんは、大学を卒業後、総合シンクタンクに勤務なさったのち、起業を経験し、現在はヤフー株式会社の経営陣のおひとりとして人事の責任者をなさっています。
本間さんは、ヤフー株式会社でさまざまな人事制度の改革に携わり、人事パーソンの中でも一目置かれる存在のひとりです。この本では、本間さんの経験や智慧もお話し頂けると思います。
僕と本間さんの出会いは、本間さんが慶應丸の内シティキャンパスで僕が主宰している授業「ラーニングイノベーション論(人材開発の基礎知識を学ぶ半年間の社会人向け講座)」の門を叩いて下さったことからはじまります。以来、いろいろな場面でお付き合いさせていただいています。
二〇一四年からは、アサヒビール、インテリジェンス、電通北海道、日本郵便、そしてヤフーの社員が北海道美瑛町で実施する異業種コラボレーション研修「地域課題解決プロジェクト」をともに企画、運営してきました。
私は、本間さんからの依頼を受けて、この研修の監修・ファシリテーターを務めており、このプロジェクトを推進しています。
かくして、本書は、僕と本間さんが、現場のマネジャー層が抱えやすいディレンマと向き合い、それに対して本音の対談をすることによって、編まれました。
本書では、各章の対談の前に、架空のマネジャーAさんが直面しているジレンマを取り上げ、関連する話題について著者のふたりが議論した後、章末で私と本間さんが「自分ならこうする」という決断を述べます。読者のみなさんにも、「自分ならどうするか」をぜひ考えてみてください。
読まれた方々が、さまざまなジレンマの背後にひそむ問題を理解でき、読後に自分で決断を下せるように、できるだけわかりやすく、本音のトークを展開するように心がけたつもりです。読者の皆さんも、先ほどのジレンママネージングモデルにもとづき、ぜひ、各章の終わりに近づくときには、自分なりの「決断」をしていただければと思います。
ディレンマを抱えても「大丈夫」
向き合うこと、決断すること、そして、振り返ること
きっと出口はあるから
二〇一六年 四月 春・本郷キャンパスにて
中原 淳
投稿者 jun : 2016年4月12日 05:56
経験で終わるな、メタに上がれ!:大学生研究フォーラム2016は「8月25日」です!
「経験」で終わるな「メタ」に上がれ!
わたしの「メタラーニング宣言」
という半分冗談みたいなテーマのカンファレンスが(めちゃ本気)、今年も開催されます。京都大学×東京大学×電通育英会の3者共催で毎年開催しているもので、今年で9回目になります。名前を「大学生研究フォーラム2016」といいます。
今年の日程が8月25日と決まり、主催者のおひとりであられる京都大学の溝上さんの方では3月に広報をなさっているとのことなので、こちらでも日程をお知らせいたします。
「経験」で終わるな「メタ」に上がれ!
わたしの「メタラーニング宣言」
大学生研究フォーラム2016は、今年は8月25日、京都大学です!
ぜひスケジュール帳にメモをお願いします!
毎年のことながら500名近くの大学関係者、企業関係者、高校関係者にお集まりいただき、大まじめで、しかし、愉快な会になるものと思われます。大学生研究フォーラムも、もう、今年で9年目。いつまでもあるわけではありません(笑)。ぜひ、夏の京都におこし頂けますと幸いです。
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先にも述べさせて頂きましたように、今年のカンファレンステーマは、
「経験」で終わるな「メタ」に上がれ!
わたしの「メタラーニング宣言」
です。
「大学から企業への学生のトランジション」を扱う大学生研究フォーラムでは、このテーマに基づき、大学・企業から様々な事例報告、最新の研究知見をお届けします。「1日で最先端!」が密かなカンファレンスのウリです(笑)。
今年は、盟友・溝上慎一さんと中原で、「仲良く基調講演」というセッションをすることになりました(笑)。溝上さんが、どんな玉を投げてくるかが楽しみです。また村上正行先生の名司会も今年も炸裂するでしょう(笑)。
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ところで、大学と企業のうち、中原が主に担当しているのは企業パート。
今年の事例セッションでは、昭和電工株式会社の安藤直人さんと、大阪ガス・行動観察研究所の松本加奈子さんにご登壇いただくことになりました。ご多用中、ご登壇いただけますことを心より御礼申し上げます。
昭和電工株式会社様では、「経験学習」をキーワードに、全社の人材開発指針を見なおし、それを評価項目の中に入れるというお取り組みをはじめておられます。
評価が経験学習ならば、研修も経験学習がキーワード。入社してから2年間にわたって行われるトレーニー期間では、新入社員の皆さんが先輩社員の皆さんと2年かけて、社内の課題解決を行うということをなさっています。
経験の浅い社員に、いかに経験を付与し、いかに振り返りをさせるのか。昭和電工様の事例から、わたしたちは多くのことを学べそうです。安藤さんに心より感謝です。
▼
一方、大阪ガス・行動観察研究所の松本加奈子さんには、新規事業、製品、サービスの開発のお話をしていただける予定です。
行動観察研究所様では、人々のリアルな行動を、参与観察・フィールドワーク等の定性的手法を踏まえて観察し、それらの地に足のついた知見から、事業・製品・サービスの開発をなさっているといいます。
経験や現象といったものを子細に観察し、インサイトを導くその知的生産のサイクルは、大学であろうが、ビジネスの現場であろうが、その本質に変わりがあるわけではないことを思い起こさせてくれます。
松本さんには、松本さんがこれまで数多く取り組まれてきた、「経験で終わるな!メタにあがれ的」な新規事業、製品、サービスの開発についてお話しをいただけるものと思います。松本さんに心より感謝です。
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「経験」で終わるな「メタ」に上がれ!
わたしの「メタラーニング宣言」
今年は8月25日、京都大学です!
ちなみに、こちらは教育現場の教職員限定のワークショップになってしまいますが、前日、8月24日には
教師におけるアクティブラーニングの身体技法
というテーマで、音楽座ミュージカルの皆様にプレワークショップをしていただけることになっております。音楽座ミュージカルの皆様にも心より御礼を申し上げます。
こちらも楽しみですね。
カンファンレンスの参加お申し込みは、もうしばらくすると、電通育英会様のホームページではじまります。今日は日程の御連絡だけ。
また、はじまりましたら、このブログなどでお知らせいたします。
どうぞお楽しみに!
そして人生はつづく
投稿者 jun : 2016年4月11日 05:55
新入社員におすすめする「違和感メモ」の3つの効果!?:うちの会社の「変な習慣」を笑い飛ばせ!
春、新年度です。
首都圏は、桜も葉桜にかわってきました。
まぁま、新年度なんだからでしょうか、本当に最近、息つく暇もなく、桜も、ちゃんと立ち止まって鑑賞できていません(笑)。
せめて週末くらいは、家族とピクニックにでも行きたい気持ちです。
ところで、春といえば「新入社員」。
テレビをつければ、入社式、新入社員研修など、新入社員にまつわる、様々なニュースが聞こえてきます。
入社から1週間。まだまだ落ち着いているとは言えないとは思いますが、最初の一週間が終わる頃でしょうね。
▼
ところで、新たに社会人として組織で働く学部生などに、僕が、ときおりおすすすめしていることが、「違和感メモをつけること」です。
「違和感メモ」とは新入社員の皆さんが、自分の組織に入って感じる「違和感」を、ほんの数文字でもいいので、どこかに書きつけておくことです。
毎日やっていれば、それがかなりの分量にもなるでしょう。
例えば、
うちの会社では会議で自由に発言して良いよ、と言われるけれど、発言しているのは「課長」と「係長」だけ
とか(笑)
うちの会社では、傘立てに、各人が傘を入れる場所まですべて決まって最適化されている
とか(細かい!)
そういう日頃感じている「違和感」を書き付けておくのです。これは新入社員だけが多くの場合感じるものです。そうした「違和感」をどこかにメモしておくと、あとで見返したときに結構面白いものです。
それらの違和感の中には、多くの場合、新入社員の皆さんが入った「組織の文化」をあらわしていることが多いものです。
▼
「違和感メモ」は3つの意味でよいことがあります。
ひとつめの違和感メモの効用。
それは、違和感メモを新入社員で見せ合えば、結構「愉しい!」ということですね。
へー、あんた、そんなの発見したんだ・・・・
みたいな会話で盛り上がることができます。新入社員というのは「未開の大地」におりたったフィールドワーカーのようなものです。「未開の大地にいる原住民の生態」をぜひ観察してみてください。変な人、変な習慣、変な癖、結構たくさんありますよ(笑)。
もし、少したって気の合う先輩を見つけたら、先輩にも見せてあげると面白いものです。
確かに言われてみれば、そうだよね
と、多分なるでしょう。
そうした機会を使いながら、ぜひ、はやく自ら社会化を成し遂げてください。
▼
ふたつめ。
それは、違和感メモを「あとあと」見なおすと、成長を実感できる、ということです。
「違和感メモ」に書かれていることは、おそらく3か月後には、まったく違和感を感じなくなるはずです。
組織の中にいれば、組織に固有のルーチン(毎日繰り返されているもの)や文化は、毎日「アタリマエ化」しているからです。
しばらくして、そうした組織参入時の違和感を見詰めると、
へー、こんなこともわかんなかったんだ
と成長を実感できます。
また、1年たち、組織の中で働くことにくたびれ始めた頃には、初心を思い出すことができます。
成長実感は、他人がなかなか与えてはくれません。
ぜひ、成長実感を自分で感じる工夫をなさってください。
▼
みっつめ。
それは、組織新規参入したときに感じるストレスや違和感を「耐える」のではなく「笑い」に変えるということです。
これは、社外の気の合う友人ーできれば同じ新入社員の境遇にある社外の友人などに違和感メモを見せてあげることで達成されます。
そうすると、結構盛り上がるのではないかと思います。
へー、オマエの会社、へんじゃねー
とか
うわっ、やべー。おれ、オマエの会社がいいな
とか
そういう会話で盛り上がれるのではないかと思います。
この含意は、
どんな組織であろうと、外の人からみれば奇異に思える慣習や文化は存在する
ということであり、それをストレスとして貯めるのではなく、笑い飛ばす、ということです。
組織なんて、どこだって、たいした変わらないから(笑)
新たな組織に入って、「隣の芝生」が青く見えたときには、ぜひ、一寸だけ思いとどまってみてください。
▼
今日は新入社員におすすめする「違和感ノート」について書きました。これは中途採用社員の方にもおすすめの方法です。
大丈夫、その「違和感」も、きっと何にも感じない日がくるよ。
あそこでハナクソほじってる課長だって、仕事できそうにしている先輩だって、最初は、みんな、違和感メモで一杯だったんだから。
そして人生はつづく
ーーー
皆さんの学生さん、御社の社員は、働くための「ウォーミングアップ」できていますか?
行き当たりばったり「出たとこ勝負」で、社会や職場に出ていませんか?
働く前に、働くイメージがもてていますか?
舘野泰一・中原淳編「アクティブトランジションー働くためのウォーミングアップ」の予約販売がAMAZONではじまりました!「アクティブトランジション:働くためのウォーミングアップ」は、教育機関を終え、企業・組織で働き始めようとする学生が「働きはじめる前」にやっておきたいウォーミングアップを論じた本です。
どうぞご覧頂けますと幸いです。
投稿者 jun : 2016年4月 8日 05:46
上司は「部下のネガティブ感情」をいかにマネジメントすればいいのか?
昨日は大学院中原ゼミ、2016年度のスタートでした。
僕のゼミでは、毎回のごとく大学院生の皆さんに研究の進捗報告を伺うほか、英語の文献(実証研究)を読むことにしています。昨日の英語文献は、伊勢坊綾・ゼミ長によるLittle and Williams(2016)の研究報告でした(お疲れ様です!)。
Little and Williams(2016)は
リーダーは「部下の感情」をいかにマネジメントするか?
ということをテーマにした論文です。The leadership quarterly. Vol.27に所収されている論文になりますね。
▼
伊勢坊さんの報告を引用しつつ、同論文の要旨をかいつまんで説明させていただくと、リーダーは、自分の部下のネガティブな感情をマネージ(やりくり)するとき、4つの戦略(IEM 戦略:Interpersonal emotion management strategy)があるのだといいます(Williams、2007)。
部下がしんどそうなときに
それが下記の4つです。
1.状況変化(Situation modification)戦略
部下が持っているネガティブな感情の原因そのものを取り除く! すごい!
2.注意再配置(Attention Deployment)
注意をそらす。原因は何一つかわっていないのだけれども、注意をそこに向けさせないようにする。「屁を香水でごまかす」みたいなもんでしょうか。ちょっと違うね・・・育ちの悪いのがバレる。「既存の痛みを、新たな痛みで忘れさせる?」・・・とにかく注意をそらす。
3.認知変化(Cognitive change)
部下のネガティブな感情を誘発する「認知」そのものを変化させる。原因は何一つかわっていないのだけれども、部下に「状況の再解釈」を促し、ネガティブな感情を持たないようにするということでしょうか。
4.感情調整(Modulating the emotional response : 自分で管理しなよという)
「自分で感情くらい管理しなよ」という風に求める
の4つです。
論文では、これらリーダーが行っている感情マネジメント戦略と、上司部下の関係性(Leader Member Exchange)、そして、組織市民行動(Organizational Citizenship Behavior)の関係を実証的にさぐっておりました。専門的に興味があられる方は、詳細は論文の方をご覧下さい。
▼
個人的には興味深いなと思ったのは、論文そのものというよりも、この4つの戦略です。
「この4つの戦略は、あるよなー、ある、ある」
と思ってしまいました。
皆さんはいかがですか?
僕の場合、個人的印象深いのは「1.状況変化」と「3.認知変化」です。
これはマネジメントにだけ当てはまることではないのですが、僕には「決めていること」があります。
僕が、いつも困難にぶつかったときには、
冷静に考えて、その困難は
自分の力で「変えられる」ものなのか?
自分の力では「変えられない」ものなのか?
をまずは考えるという「思考の癖」です。
ま、あたりまえっちゃ、アタリマエなのですが、僕は、それをいったん「整理」してから悩むことに決めているのです。
これを上記の4つの感情戦略にひきつけて考えますと、「1.状況変化」とは、「自分の力で変えられるもの」に対して、その原因を思い切って対処するというようなものでしょう。
しかし、世の中には、自分の力で変えられるものはそう多くはありません。
そこで採用されるのが「3.認知変化」なのかなと思います。多くの人々がそうであるように「自分では変えられないもの」に出会った時には、僕は、「3.認知変化」をとるような気がします。
これは「認知行動療法」的な説明になりうるのかもしれませんが、
ある人が、「ある現象」に相対して、「心理的にネガティブな感情」をもっているとき、その「現象」そのものが、「心理的にシンドイ状況」をもたらしているのではない
という考え方があります。
そうではなく、
ある人が、「ある現象」に相対して、「心理的にネガティブな感情」をもっているとき、その「現象」そのものというよりも、その「現象の解釈」と「それによって構築された意味」そのものが「心理的にシンドイ状況」をもたらしている
と考えるのです。
そうであるならば、とるべき戦略は「3.認知変化」ということになるでしょう。
ただし、この場合、問題はなにひとつ解決していないので、時には「権力の温存」や「問題の隠蔽」につながってしまうリスクもゼロではないのですが・・・。
神よ
変えることのできるものについて
それを変えるだけの勇気を
われらに与えたまえ
変えることのできないものについては
それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ
そして
変えることのできるものと
変えることのできないものとを
識別する智慧を与えたまえ
(ラインホルト・ニーバーの祈り・全文訳)
▼
今日は、上司が部下のネガティブな感情に出会ったときに採用する4つの戦略のお話をさせていただきました。
皆さんはいかがでしょうか?
オフィスでは、今日も、明日も、明後日も、様々な出来事が起こります。
あなたが部下の感情、そして自己の感情をマネージしようとするとき、どんな戦略をとっておられますか?
あなたの上司は、あなたがネガティブな感情をもっているとき、どんな戦略をとってきますか?
そして人生はつづく
投稿者 jun : 2016年4月 7日 06:14
機械化によって生まれる「ブラックボックス」をどうするか?:トヨタ自動車の新人研修を見学させていただきました!
新人研修の季節です。
仕事柄、毎年、どこかの新人研修を見学させていただいたり、話をうかがう機会に恵まれますが(ありがとうございます)、今年は、トヨタ自動車さまの新人研修を見学させて頂きました。
こちらは雑誌プレジデントの取材で、ライターの井上差保子さんと、同社の佐藤 智洋さんとのお仕事です。この様子は、5月の雑誌プレジデント「職場の心理学」にて掲載されます。どうぞお楽しみに!
▼
今回うかがわせていただいた新人研修は、一年間続く新人研修カリキュラムのうちの1つです。新人数名が1グループになって、「エンジンの組み立て」を行うというものでした。技能職や技術職のみならず、スタッフ
新人指導には、エンジン組みたてにかかわって、この道40年というTさん、そして、アシスタントとして数名の技術者の方がつかれていました(ご見学をご許可頂き、同社のすべての方々に心より感謝いたします)。
わたくしめはエンジンのドシロウトなために(笑)、その様子をお伝えすることも難しいのですが、ひとつひとつのエンジン組み立ての工程を、指導者の方が説明し、それにともない、ひとつずつ部品を組み合わせ、エンジンを組みたてていきます。
組みたてる部品やツールが、置かれる位置や向きさえも決まって、置かれている様子が印象的です。さすが、トヨタのカイゼン!
作業を見ているだけでも、エンジンとはとても精密にできていること、しかも、それに膨大な工夫がなされていることが見て取れます。
大変興味深い光景でした。
ご指導をいただいた先生方、新人のみなさま、今回の取材をご許可いただいたトヨタインスティテュート、TPC推進センターの皆様、広報の皆様、本当にありがとうございました。
▼
帰り道、いろいろなことを考えます。
ヒアリングさせて頂いたところによりますと、現在、日本の工場で、このように手でエンジンを組みたてているところは「ない」といいます。要するに、すべての作業は機械、ロボットによって行われており、人間が、手でエンジンを組み立てることがなくなっているのです。
しかし、オートメーション化、機械化は「効率」である反面、生産工程に巨大な「ブラックボックス」を創り出してしまいます。
人の手による関与がなくなった途端、その工程が何たるかを理解している人がいなくなってしまう、という問題です。
一方、海外にいけば、まだまだ機械化が進んでいない工場も少なくないそうです。
そのような場所では、日本人が現地で指導をできることが大変重要で有り、そのような人をいかに養成するかは課題とのことでした。
「現地で教えることができること」は、現地での「リーダーシップ」の発揮に直結してきます。
まことに興味深いことです。
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今日はトヨタ自動車様の新人研修についてご紹介させていただきました。
後段プチ考察の部分では、オートメーション化の部分のみ書かせて頂きましたが、この研修では、その他にもいくつか大切なことが、新人の皆さんに伝達されていたように、僕には思えます。その部分は、雑誌の部分でお話しさせて頂こうと思っています。
どうぞお楽しみに!
そして人生はつづく
投稿者 jun : 2016年4月 6日 06:24
世界初!? アクションラーニング型・組織開発促進プロジェクト!?
中原研究室の研究は、ほぼ90%が「民間企業様との共同研究」です。
(同時にひそかに10%の個人的趣味的研究も持っています)
新年度、教育・事業のキックオフもさることながら、今年からはじまる研究プロジェクトの方も、打ち合わせやキックオフなど、大変忙しくなって参りました。
現在、中原研では、いくつかの企業様と、現在、様々な共同研究、共同プロジェクトにあたっています。
その中でも、今年から中原が取り組むプロジェクトに製薬企業・ベーリンガーインゲルハイム様とのプロジェクトがあります。
▼
ベーリンガーインゲルハイム様とのプロジェクトは、ワンセンテンスで申し上げますと、「各部門に組織開発を展開する足がかりをつくること」です。
このプロジェクトでは
1.各部門・現場で働いていらっしゃる、いわゆる「部門人事」の方々が
2.自分の所属組織の組織課題を分析し、
3.現場が求める「組織開発」を現場の人々とともに実践し、その結果を持ち寄る
4.アクションラーニング型プロジェクト
を今年から実施させていただきます。
自称「世界初のアクションラーニング型・組織開発促進プロジェクト」です(笑)。
「世界初」は言ったもんがち(笑)、いいじゃん、自称なんだから。
▼
先だっては、このプロジェクトのオーナーである同社の相原修さん、コアメンバーである原田学さん、川崎恵理さん、そして、部門人事の方々の組織開発を支援してくださる来海敬子さん、泰道明夫さん、中嶋香奈子さん、大野宏さんらとで、プロジェクトのキックオフミーティングを開催させていただきました。同会では、プロジェクトの目的確認、意識あわせをさせていただきました。
短い時間ではありましたが、プロジェクトの推進に対しては、乗り越えなければならない挑戦課題があることを確認し、それらに対して熱心な議論がなされました。
様々な挑戦課題はありつつも率直に話しあい、お互いの認識あわせをさせていただいたことは、僕としては「希望」を感じました。
今後、皆様とのコラボレーションが楽しみに思っています。先だっては、本当にお疲れ様でした。
▼
思うに、組織開発のプロジェクトでも、アクションラーニングでも、要するに、わたしたちは、これらのプロジェクトにおいて、「大の大人」に対して
「組織としてWORKできるよう、お互いの関係を調整しましょう!」
「成果を生み出せるよう、アクションラーニングでチームワークを発揮しましょう!」
と求めます。
ならば、わたしたちが為すべき事は、第一に、それを「仕掛ける側」が「同じ船に乗ること」です。
「組織開発を提供する側の組織」が、そもそも「組織として機能していない」
(他人に組織開発をしろ、というのなら、まずはアンタのチームを何とかしろ!)
「アクションラーニング」を求める側の「組織」が、そもそもチームとして機能していない
(チームワークを人に求めるのなら、まずは、アンタのチームはどうなんだ?)
というのは「紺屋の白袴」どころか、「激しい論理矛盾」です。
それだけは避けなくてはなりません。
これまで僕はいくつかの共同研究でご一緒させていただく企業様とは、キックオフで「同じ船にのること=バタくさい言葉を使うのなら、エントリーのコントラクトですね」を大変大切にしてきました。
何事も「最初が肝心」ですね。
▼
今回のプロジェクトにかかわるすべての人々、そして、その末席にいる僕も含めて、すべての人々のご尽力が奏功し、今回の試みがもし成功することができたのだとしたら(お忙しい中、ご尽力いただける方々には心より感謝をいたします)、個人的には、3つの社会的意義があるものと思います。
1.昨今、人事が「戦略パートナーとしての役割」「現場にインパクトをもたらすこと」を果たすことが求められているが、部門人事はその「一丁目一番地」であり、ここがこれまで以上に高度な付加価値を現場にもたらすことが、世界的に注目されていること
2.職場の多様性、組織のダイバーシティが向上するなか、組織開発の必要性が昨今求められているが、これをいかに実践していくかを、きっちり伴走したプロジェクトはそう多くない。本プロジェクトは、いかに組織開発の実践を向上させていくか、ということに一定の答えを提供する
3.組織開発を促進していくときに、アクションリサーチのプロセスをアクションラーニング型で実施していく事例は、そう多くはない。アクションラーニング型でこれを行うときに、どのような課題や可能性がひらけるかを明らかにすることは、社会的に意味がある
特に1と2。
今ほど、部門人事(ただでさえお忙しい中、心より感謝いたします!)、組織開発が注目されている時代はないと僕は思います。
そして、これから、自称!?「世界初のアクションラーニング型・組織開発促進プロジェクト」はじまります。
ぜひ、同社のみなさまと連携し、社会の多くの実務家の方々に対しても、大きな成果を残せるよう、頑張っていきたいなと感じています。
どうせやるなら、世界初!
お忙しい中ご尽力いただける皆様に、心より感謝いたしますとともに、自称「世界初」をご一緒させて頂きたいと感じています。
またご報告させていただきます。
どうぞお楽しみに!
そして人生はつづく
投稿者 jun : 2016年4月 5日 05:27
4/15 新刊発売「アクティブトランジションー働くためのウォーミングアップ」のAMAZON予約がスタートしました!
皆さんの学生さん、御社の社員は、働くための「ウォーミングアップ」できていますか?
行き当たりばったり「出たとこ勝負」で、社会や職場に出ていませんか?
働く前に、働くイメージがもてていますか?
▼
ついに、ついに、新著「アクティブトランジションー働くためのウォーミングアップ」(舘野泰一・中原淳編)の予約販売がAMAZONではじまりました!パチパチパチパチ!
■■■アクティブトランジションAMAZON予約注文ページへGO!■■■
「アクティブトランジション:働くためのウォーミングアップ」は、教育機関を終え、企業・組織で働き始めようとする学生が「働きはじめる前」にやっておきたいウォーミングアップを論じた本です。
本書でめざすは企業で働くまえにやっておきたいウォーミングアップ・・・それは
就職活動はいったいどのようなものなのか?
働くことのイメージをちゃんと持てているか?
将来、職場に配属された日には、どんな人々に出会うのか?
自分が働くうえで、重視したい価値観とは何なのか?
などを知ることです。
これらのウォーミングアップは、いわば「ワクチン」として、学生から社会人へのトランジションを支援します。
本書は、そうした大学生に必要な「働く前のウォーミングアップ」を本書はワークショップレシピとしてご提供します。それらのワークショップ開発の背景・根拠になった研究論文も収録されています(こちらは縦断調査研究の知見を紹介しています)。
「アクティブトランジション:働くためのウォーミングアップ」は、就職・採用などにかかわる大学関係者の方々、企業などで人事関連のお仕事をなさっている方に、ぜひご高覧いただきたい内容です。
本書は舘野泰一さんメイン編者をつとめる本で、執筆には、中原研究室OB・メンバーの有志、木村充さん、浜屋祐子さん、吉村春美さん、高崎美佐さん、田中聡さん、保田江美さんがかかわっています。第一編者をおつとめになった舘野さん、皆様、本当にお疲れ様でした。中原も共編著者として加わり、舘野さんのサポートを勤めさせて頂きました。
また、ワークショップ部分のライティングを担当頂いた井上佐保子さん、レイアウトをご担当頂いたデザイナーの三宅由莉さん(トロワメゾン代表)、イラストをご担当いただいたいわた花奈さん(アトリエ・カプリス)に心より感謝をいたします。本書の素晴らしいレイアウト、デザイン、そしてイラストは、三宅さん、岩田さん抜きでは語れません。編集者の三省堂の安藤美香さん、石戸谷さんにも大変お世話になりました。
調査の実施に関しましては、2010年、京都大学・溝上慎一さんと電通育英会様の実施なさった調査データをもとに2013年に東京大学・中原研究室で追跡調査をさせていただきました。
また、調査およびワークショップの開発に際しましても、公益財団法人電通育英会様より多大なるご支援をいただきました。心より感謝いたします。この場を借りて重ねて御礼申し上げます。ありがとうございました。
▼
本書の詳しい解説です。
まず、書名でもある「アクティブトランジション」とは、
1)「教育機関を終え、仕事をしはじめようとしている人々が、働きはじめる前に、仕事や組織のリアルをアクティブに体感し、働くことの準備をなすこと」
その結果として
2)教育機関から仕事領域への円滑な移行(トランジション)を果たすこと
をさす概念です。
トランジションとは、ここではさしずめ、「最終的な教育機関を卒業して、安定的なフルタイムの職業につき、働き始めること」とお考え下さい。
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思うに、教育機関と仕事領域の間には、多くの場合、「クレバス」のような「断絶」があります。クレバスを渡りきり、乗り越えた先には「広大な仕事の世界」が広がっていますが、少なくない学生が「広大な仕事の世界」に参入する前に、何らかの「つまづき」を経験します。
そもそも就職戦線にたつことができず、クレバスの存在すら知ることもないまま逃走してしまう学生。
厳しい就職戦線を乗り越えて、せっかく内定を確保したのにもかかわらず、「クレバスの存在」を前にして立ちすくんでしまう学生。
クレバスは渡りきるものの、「広大な仕事の世界」にコンパスをもたず冒険をしてしまい、闇の中に紛れ込んでしまう学生。
みんながうらやましがるような就職先に内定がでたのにもかかわらず、うまく組織に適応できず、早期に離職してしまう学生。
そのような学生を前にして、今、わたしたちは何ができるのでしょうか。
本書では、この問いに対して、わたしたちができることを探究しています。
本書を通じて、わたしたちが読者の方々に行っていきたい「問題提起」の核心とは、
今後の大学や教育機関は、今後、卒業生を社会に送り出す前に、それぞれの校種・状況にあったかたちで「アクティブトランジション」の支援をなすことが求められるのではないか
ということにつきます。
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本書では、この問題に対して、2つの要素で解決策を提案しています。
ひとつは、働くまえのウォーミングアップとして、学生・内定者・新入社員などが取り組んでみるといいワークショップを3本開発し、そのレシピ、タイムライン、ツールを掲載し、実践していることです。
開発した一本目のワークショップは「ヒッチハイクワークショップ」です。
こちらのワークショップは、就活前の学生を対象に開発されたものです。「就活」が「ヒッチハイク」に喩えられており、このメタファのもと、学生達は「自分の意のままにならない就職活動に翻弄されることなく、就職活動のプロセスを楽しみながら乗り切るためのヒント」を学びます。
二本目のワークショップは「カード de トーク いるかも !? こんな社会人」ワークショップです。
「カード de トーク いるかも !? こんな社会人」は、一般的な組織にいる「典型的な社会人」の価値観へのエンカウンター(出会い)から、はじまります。
このワークショップは内定者向けに開発されており、これから自分が社会で働く上で、どのような「就業観・職業観」をもったらよいのかを考えるワークショップです。
ワークショップを通して、仕事生活に向けて前向きな一歩を踏み出すヒントを獲得することを目的にしています。
三本目のワークショップは「ネガポジダイアローグ」ワークショップです。
このワークショップは、就業前の学生を対象にしたものであり、社会人に日頃の仕事生活の写真をとってきてもらい、それらをモティーフとして、社会人と深い対話を行おうというワークショップです。
本書では、これらのワークショップのレシピを収録しています。
掲載されているレシピは、後述しますが、実際に大学生の方々にご参加いただき実践検証がなされたもので、安心(?)です。本書には、その際の実践報告も掲載されています。こちらは井上佐保子さんによる大作です。
レシピの中には、タイムラインも含まれています。多くの大学では、授業時間は90分だと思うのですが、それを単位として実践可能なワークショップを、筆者らは開発いたしました。適宜、これをカスタマイズすれば、授業やワークショップを自ら創り出すことも可能化と思います。
また、本書には実践でそのまま利用頂けるようツールもあります。
コピーすればご利用いただけるカードなどもあります。可愛らしいイラストは、いわたさんの作品です。
ちなみにワークショップの実践にあたっては、立教大学経営学部ビジネスリーダーシッププログラムの協力を得て、同大学のキャンパス、同大学の学生を対象に実践させていただきました。
同大学同学部のみなさまには、この場を借りて、感謝申し上げます。立教大学の学生の皆様にも、わたしどもの挑戦的ワークショップにご参加頂きました。心より御礼を申し上げます。こうした素晴らしいレイアウト、デザインは、職人・デザイナー三宅さんのなせる技です。
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なお、これは本書のメインの主張とは異なりますが、本書では「学術的に厳密な調査研究」と「実践現場ですぐに利用できるツール」を両方ひとつの書籍で提供する、という知的挑戦も行っています。私たちとしては、いわゆる「実践と研究のつながり」という問題に対して、下記のモデルをたてて、この書籍を編んでいます。
「現場において生起した様々な現象」を研究者は「分析」し、「理論にインスパイアされた実践」を組みたてます。そこでは研究者は「分析者」ではなく「パフォーマー」です。これらの「理論にインスパイアされた実践」は、いわばモデルケースとして実践者に提示されます。実践者は、それらのモデルケースに鼓舞され、また新たな実践を組みたてる」というモデルです。
まぁ、これだけじゃ、何を言っているかわかんないと思うんで(笑)、こういうマニアックなことにご興味をお持ちの方も、ぜひ、「アクティブトランジション」をお手にとっていただければ幸いです。
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皆さんの学生さん、御社の社員は、働くための「ウォーミングアップ」できていますか?
行き当たりばったり「出たとこ勝負」で、社会や職場に出ていませんか?
働く前に、働くイメージがもてていますか?
どうぞご高覧いただけますよう、よろしく御願いいたします。
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追伸.
本書にはオンラインコミュニティもFacebook上にご用意させていただきました。出版後には、これらに関する様々なイベントが開催される予定です。どうか、皆さん、こちらに読後の感想をお寄せ下さい。「いいね!」をよろしく御願いいたします!
アクティブトランジション・Facebookページ(いいね!をどうかよろしく御願いいたします)
https://www.facebook.com/activetransition/?fref=ts
投稿者 jun : 2016年4月 4日 07:00
新年度初日、「ビジョン」をメンバーに伝えるときの3つのポイント!?
ビジネスの現場でよく用いられる言葉のひとつに「ビジョン」という言葉があります。
「うちの組織には、ビジョンがない」
「うちの課長は、ビジョンをもってない」
のように・・・。
たいていは、あまり望ましくない事態が生じたときに、この言葉が用いられます。しかし、一般に広く用いられている、この言葉も非常に曖昧に用いられています。
先ほど、
「うちの組織には、ビジョンがない」
「うちの課長は、ビジョンをもってない」
という2つのセンテンスを出しましたが、これはニアリーイコール「ビジョンがない=イケてない」くらいの意味しかないような気もするのです。
つまり、
「うちの組織は、イケてない=ビジョンがない」
「うちの課長は、イケてない=ビジョンをもってない」
ということですね。
この場合、「ビジョンそのものについては、まーよくわかんないんだけど、ダメ出しワードとして用いてみよか」くらいの意味しかないようにも思えます。
ところで、皆さん、そもそも、「ビジョン」とは何ですか?
皆さんだったら、ビジョンという言葉の意味するところを、どのように説明なさいますか?
今日は新年度、様々な場所で、今年度のビジョンが語られることと思います。
ビジョンって、そもそも何?
今日はそのことについて考えてみましょう。
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このことを考えるとき、最も僕にしっくりくる答えをいただけたのはサイバーエージェント人事の曽山哲人さんのお言葉です。曽山さんは、講義の中でビジョンのことをこう定義なさっていました。
ビジョンとは「映像(ビジュアル)をみせること」なんです。
ビジョンを「未来をみんなの目の前にビジュアライズすること」と考えたら、わかりやすいのではないでしょうか?
おっしゃるとおり、ビジョンの語源とは「Vision : 見ること」であり、そこから派生して、ビジョンには「視野」とか「先見」とかいう意味が存在します。
要するに、ビジョンの本質とは「見ること」であり「見せること」です。つまり「目に見えること」「可視できること」。
こう考えると、「ビジョンを示す」とは
「メンバーの心に、未来の映像を見せること」
と考えることもできそうです。
さすがは曽山さんです。いつもご指導をありがとうございます。
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ところで、それでは次に、わたしたちはどのようにビジョンを描けば良いのでしょうか。
メンバーを巻き込むビジョンとは、どのようなものなのでしょうか。
メンバーを巻き込むという観点からすれば、ビジョンには僕は3つの点が必要なのかなと思います。
ひとつめは「ゴールが明確であること」
すなわち「未来の映像で描き出される到達点が明確だ」ということです。
映像とは、そもそも「時間軸」が存在します。それは「現在ある場所」から、「将来到達する地平」までの時間軸が、描き出されるはずです。
いわゆる単館映画で上映されるような「到達点がない映像=ハッピーエンドが描けない映像」というのはポストモダン的でシュールなのかもしれませんが、多くの人々を巻き込むという点では、難しい点もあるようです。
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ふたつめは「映像にメンバーが登場すること」です。
ビジョンとは「メンバーの心に、未来の映像を見せること」なのですが、ここで描き出した未来の映像に、「明晰さ」にメンバーが登場人物として描かれているのか、どうかということが、メンバーを巻き込む上では大切かなと思います。
いくら明瞭に描き出されたビジョン映像であっても、「そこに自分がいない」「自分が登場しない」というのでは、ビジョンはうまく機能しません。
「あのー、ビジョンは明確なのでしょうけれども、、、あのー、わたくしめがおりませんが・・・」
というビジョンは、人をモティベートするどころか、3週間分のモティベーションを失わせるでしょう。
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最後みっつめは、ここが前段2つと矛盾するのですが
「描き出された映像そのものにスキがある」
ということです。
ここで「スキ」とは、描き出された映像に対して、メンバーが意見を述べたりしながら、自分自身が「映像づくりに荷担できる余地がある」ということです。
人は、いくら明瞭なビジョンを示されても、
「はい、どうだー!」
と提示されるだけではなかなか気乗りしません。
描き出す映像づくりそのものに加わること、そこに意見したり、コメントしたりして、若干の軌道修正を行えることが、ビジョンには必要です。
要するに、
自分もビジョンづくりに関与したんだ
あのときに、自分もビジョンづくりに関わったのだ
スキだらけのビジョンを提示しやがって、オレが、書きたしてやったがな、しゃーないヤツやな
という感覚をもってもらうことが重要であるということです。
こういう感覚をもってもらえれば、人は自分が関与したビジョンに、おいそれと反論はしにくいものです。
この意味では、
ビジョンとは「明瞭であること」を一方で求められ、
一方で「スキがあること=ある程度曖昧であること」が求められる、
ということですね。
嗚呼、矛盾だらけですね。
でも、人の世そのものが矛盾だらけです。
ビジョンも矛盾だらけなのは、やむをえません。
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今日はビジョン構築について書きました。
新年度、今日はさまざまなところでビジョンが語られることと思います。
自戒をこめて申し上げますが、どうか人を巻き込めるよきビジョンが世の中に多数生まれることを願っております。
そして人生はつづく
投稿者 jun : 2016年4月 1日 06:44