「誰も意見をいわない会議」はなぜ生まれるのか?:リーダーの「何気ない一言」と「学習された無気力」!?

 会議が活性化しない
 会議で意見がでない

 このような悩みを抱えているリーダーや管理職の方々は、全世界に360万人くらい?いらっしゃいます。

 その中には、

「うちのメンバーは無気力だ」
「うちの職場のメンバーは、モティベーションが低い」

 と結論づけて、「会議で意見がでない原因」をメンバーの問題として帰属してしまう方もいらっしゃいます。
 もちろん、そのようなことが原因になることも多いのかもしれませんが、一寸たちどまって考えてみたいことは「意見がでないことの真因はリーダーその人にある」という可能性です。

 このことを考えるとき、以前、かかわらせて頂いたある職場を思い出します。その職場では、管理職であるAさんが、やはり「会議で意見がでないこと」に悩んでおり、また同時に「意見が出ないこと」をメンバーの個人的資質として原因帰属していらっしゃいました。

「うちのメンバーは、会議で発言しない。主体性がまったく足りない」

 しかし、Aさんの部下たちに話を伺うと、それとは異なる現実が浮かび上がります。ICレコーダを持っていたわけではないので、一言一句同じというわけではありませんが、部下たちがもっている不平不満は、下記のとおりです。

「だってAさん、会議で、私たちが何か言うと「ていうかさー」てすぐに言うじゃないですか?」

「Aさん、「絶対、答えはもってる」じゃないですか。会議で何かわたしたちが発言すると、すぐに「いい線いってるじゃん」ていいますよね。答えをもってるなら、Aさんが最初からやればいいじゃないですか?」

「Aさん、すぐに、「要するにさ」っていって、自分の意見を通しますよね。Aさんの「要するに」は、「要するに」じゃないんですよ。全部、意見捨ててるじゃないですか」

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 要するに、メンバーは、リーダーの管理職の何気ない一言の蓄積をとおして「無気力」を学習していたのです。いにしえの研究で、心理学者マーティン・セリグマンが明らかにしたのは、学習性無気力という新たな学習対象の次元でした。
 人は、どんなに努力をしても反応が得られないとき、何をやっても浮かばれないとき、やってもやらなくても結果が同じとき、「無気力」を学習してしまいます。そして、いったん学習された無気力は、解除するために恐ろしいほどの労力がかかるものです。

 日々繰り返される「ていうかさ」「いい線いってるじゃん」「要するに」の果てに生まれた地平は、

「どうせ、わたしたちが何を言っても、意味がない」
「わたしたちは会議でどんな発言をしても、すでに答えはでている」
「会議での発言はポーズであり、リーダーは、すでに結論を決めている」

 ということです。かくして、意見のでない会議は生まれていたのですね。

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 さて、今日は、「会議でメンバーが発言しないこと」について書きました。
 この問題について個人的な信念を書かせていくのだとしたら、

 会議で意見がでる環境をつくるのは、リーダーの責任

 ということになります。
 しかし、どうやら、この世には、繰り返される無意味な会議のやりとりの果てに、「無気力を学習」してしまった方々が、少なくないようにも思います。

 あなたの会議は、意見がでますか?
 あなたの何気ない一言が、メンバーのやる気を阻害していませんか?
 あなたのメンバーは、無気力を学習していませんか?

 そして人生はつづく