鉄がまだ熱いうちの仕事経験、時が止まっているシニア!?

「入社してからはじめて出会った上司、3年目くらいまでにした若いときの経験って、意外に、その後、ひきずると思うんですよ」

 ちょっと前のことになりますが、あるビジネスパーソンにヒアリングさせていただいた際、そんなことをおっしゃっていたことが、とても印象的でした。

 僕の研究領域では、やはり同じようなことが言われていて、たとえば、例をあげるとすると、

1)入社したときにどの上司に出会うかによって、その後のキャリアや給与が、ある程度、決まってしまうこと

2)入社から3年目くらいの仕事経験が、マネジャーになるかならないかを、ある程度、予測してしまうこと

3)3年目までの仕事経験によって培われた仕事の信念が、のちの業績成果に影響を与えてしまうこと

 などという研究が存在します。

 若いときの仕事上の苦労、「鉄がまだ熱いうち」の経験や出会い、そしてそれに基づく信念の形成は、その後の仕事人生に少なくない影響を与えてしまうものである、ということなのかもしれません。

 そういえば、これはまた全く異なる研究会で、先だって面白い話を伺いました。

 某研究会で、シニアの人材開発に関する話題を議論していた際、ある方が、こんなことをおっしゃっていましたのです。
 ICレコーダを持っていたわけではないので正確ではないですが、ほぼこのような主旨であると記憶しています。

「ご年配の方々の中には、"時が止まっている方"がおられるんです。何を語るのでも、自分がまだ若かった頃のことが頭に離れない。今の組織が「自分が入社ときの状態」であると本当に思い込んでいる。だから、これから組織をどうしていきましょうよ、という話をしても、いっこうに話がかみあわない。"時が止まっている"んだから。」

 若いときの仕事経験、「鉄がまだ熱いうち」に自分がみたもの、感覚したものは、かくのごとく「永続」し、環境がその後どのように変わろうとも、同じ光景を眼前に展開させてしまうこともあるようです。
 ここで「時が止まっている」というのは、環境が変わっているのにもかかわらず、自分が若い頃、自分が入社したときの組織の状況を「相対化」できないことをさしていると思われます。
 まぁ、そうはいっても、そのような事態が起こりうるのは非常に限定的で、多くの経験ある人々は、環境を敏感にサーチし、常に適応を果たしているのでしょうけれど、「時がとまっている」という事態もあながち起こりうるなのかなと思って、お話を伺っておりました。

 入社初期をいかに過ごすかは、その後にとって大切。
 しかし一方で
 入社初期をいかに「相対化」し、場合によっては発展させ、アップデートさせていくかは同様に大切。

 やれやれ・・・
 人と仕事にまつわる課題は、いつも煮え切らないもののようです。
 嗚呼、ややこしい。

 あなたは、最初の社会人3年間をどのように過ごしましたか?

 あなたは、時が止まっていませんか?
 今みている光景は、本当に「今」ですか? それとも「自分がまだ若かった頃の過去」ではありませんか?

 そして人生は続く