ベンチャー企業の「成功」を決めるのは何か?:ココロザシ社長とギラギラ社長!?

 先だって、中原研大学院生の保田さん(博士課程)が中心になって、東大で「中小企業HRD研究会」が開催されました。

 中小企業の人材開発に関する英語文献を「ザザザとみんなで読もうぢゃないの」という会で、研究者のみならず、実務家の皆様が、20数名ご参加頂きました。まずは、ご参加頂きました皆様に、心より感謝をいたします。ありがとうございました。

 ちなみに僕も英語論文をひとつ担当させていただきました。が、あまりに多忙で、途中、研究会から中座しなければならないことがあったのは残念なことでした。こんな「地に足のつかない参加」は「本意」ではないのですが、心よりお詫びいたします。
 しかし、かなりバタバタした参加になりましたが、自分にとって、いくつもの発見のある研究会になりました。ありがとうございました。

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 研究会で興味深かったことはいくつもあるのですが、「へー」と思ったのは、自分が一度も研究をしたことのない「ベンチャー起業の成功 / 非成功を決める要因」に関する分析の英語発表です(ご発表者のSさん、お疲れさまでした)。
 僕はベンチャー研究には全くの門外漢なので、ここで述べられていることは、その「筋」では常識なのかもしれませんが「へー」と思いました。

 ご報告いただいた論文(Hormiga et al 2010)は、130社のベンチャー企業の調査研究です。

 この論文では、

「ベンチャー企業の起業家の知的資本は、ベンチャー企業の成功にどのような影響を与えるか」

 というリサーチテーマのもと、このテーマに対して実証的な量的分析をおこなっていました。

 ここで論文の中核概念となっている「知的資本」とは、ベンチャー企業の社長の個人的資質、人脈、さらには企業のもっている中核的な能力や他企業との連携関係をふくめた「壮大な概念」として利用されています(個人的にはやや壮大すぎるかなと思っていますが、それは、また別のところで)。

 分析の結果、ベンチャー企業の成功を決める要因は、

・ベンチャー企業が初期にどの程度の良好な評判を、「周囲」から勝ち取ることができるか?

・ベンチャー企業をいかにサポートするインフォーマルグループが発達しているか?

・ベンチャー企業経営者の固い決意

 などであることがわかりました。

 一方、「これで一山あてて、金儲けがしたい!」といったような「ベンチャー企業・社長の外発的動機付け」は、成功に対してマイナスに寄与することがわかりました。

 要するに、
 
「これで一山あてて、金儲けがしたい!」という動機で起業しても、成功しない!

 ということです。

 これらの発見をつきあわせ「妄想」するに、要するに言えることは

 ベンチャー企業は「孤独な一匹狼」では成功しない

 ということになります。

 一般にベンチャー企業というと「一匹狼」などを想像しちゃいますけれども、その成功には、「周囲のサポートや良好な評判」が必要です。とくに、社長の固い決意、すなわち「ココロザシ」のもと、周囲のサポートや評判をえながら、何とか成功させるものであるということになるのでしょうか。

 やっぱり、周囲がついつい応援したくなっちゃう「志ある社長」ー「ココロザシ社長」が、よいのでしょうねぇ。
 皆さんの周囲には「ココロザシ社長」はいらっしゃいますか?

 一方、僕はベンチャーは全くの門外漢ですが、いろいろな方々からいただいたご意見・感想によりますと、ベンチャー企業の経営者の中には、「ギラギラ社長」とでも形容するにふさわしい方が、少なくない数いらっしゃるそうですね。

「ギラギラ社長」とは「ひと山あてて、金儲けをすることしか興味がない臭」が身体全体から滲み出ているベンチャー企業の社長で、虎視眈々といろいろなところに接近し、ギラギラとした目で、いかに、それらを「踏み台」にして自分が儲けるかを考えている社長のことです(笑・・・逢ったこともないし、知らんけど)。

 この研究の知見によりますと「ギラギラ社長」は、ダメみたいですよ。成功しない。研究事実としてわかっているのですから、もしお心当たりの方は、どうかリフレクションをなさってください。

 皆さんの周囲には「ギラギラ社長」はいらっしゃいますか?
 だったら、ぜひフィードバックしてあげてくださいね。

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 今日はベンチャー企業では、ギラギラ社長ではいけないかもよ、という話をしました(は?笑)。面白いですね。

 この研究、データも130と限られていますし、また、概念的にも議論が必要な部分や課題はあるとは思いますが、いろいろ「考えさせられる論文」でした。興味深いですね。

 最後になりますが、会を運営してくださった指導学生の保田さん、そしてご発表頂いたみなさまに心より感謝をいたします。貴重な学びの機会をありがとうございました。

 それでは今日も長い一日を、ともに生き抜きましょう。
 そして人生は続く

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追伸.
 それにしてもまことに喜ばしいのは、今回のような英語をガリガリ読むような研究会の参加者のうち、半数以上が、民間企業におつとめの実務家の方々であるということです。皆さん大変クオリティの高いレジュメをおつくりなっておられました。さすがですね!、お疲れさまでした。
 個人的には、リサーチマインドのある実務家の方々が、さらに増えていき、この領域で、どんどんと面白いことをなさってくださることを願っております。

 Have fun!
 どうぞ素晴らしい知的な旅を!