個人の「挑戦」にとって必要なものとは何か?:「腕ポッキリ、背中包丁的環境」の不条理!?
先だって、玉川大学TAPセンターを授業で訪問させていただき、ほぼ1年ぶり、僕にとっては4度目のアドベンチャー教育を、同センターの難波先生、村井先生、永井先生らのお力添えをえながら経験させていただきました。
玉川大学TAPセンターは、「アドベンチャー教育の理念と実践法」を研究・実践するセンターです。この場を借りて、まずは御礼申し上げます。
玉川大学TAPセンター
http://tap.tamagawa.ac.jp/
アドベンチャー教育に関しては、上記の実践事例をご覧頂ければイメージがつきやすいかと思うのですが、ロープ渡りや、集団でのシーソーなどの「アドベンチャー」を通じて、コミュニケーションや集団間の信頼などを考えるきっかけを提供しています。当日、わたしたちもいくつかのアドベンチャー教育を体験させて頂きました。
ハイエレメントとよばれるロープコースは、8メートルの高さに渡されたロープの上を歩いたりするコースです。それはそれは高く、男性でも、上にのぼって足がすくんだり、震えてしまう方もいらっしゃいます。
個人が、そうした「チャレンジ」をするためには、8メートル下で、個人のチャレンジを支える仲間が必要です。ビレイヤーとよばれる役割をもつ人、それを支える人なら、ほぼ5名が、命綱をしっかり保ちながら、個人の挑戦を支えます。そうした人々に「支援されながら」挑戦は可能になります。
▼
こうした関係を説明するために、アドベンチャー教育では、よく3つの心理的ゾーンの話が引用されます。
詳細は、拙編緒「人事よ、ススメ!」の中でも述べられているので、詳細をお知りになりたい方は、ぜひお読みいただきたいのですが、今、仮に学習者の心理状態を下記の3つにわけるとします。
1.Comfort Zone(快適空間:コンフォートゾーン)
2.Stretch Zone(背伸び空間:ストレッチゾーン)
3.Panic Zone(混乱空間:パニックゾーン)
の3つです。
1の「快適空間」とは、文字通り、学習者にとって何のストレスもない空間です。この空間では、学習者は、未知のものに出会うこともありませんし、挑戦もありません。
裏返して言えば、この空間では「学習」は起こりません。日常のオペレーションやルーティンがそこを支配し、かつ、生活は、昨日のように、かく流れていきます。
対して2つめの「背伸び空間」というものは、学習者が様々な未知のものに出会い、それへの適応や対処を求められる空間です。
ここは「ストレッチ」という言葉の示すとおり、学習者には「挑戦」が求められ、かつ、失敗するリスクが生まれます。
しかし、「挑戦」や「失敗」を裏返して言えば、そこには「学び」があるということです。ですので、この空間は、別名「Growth Zone(成長空間)」「Learning Zone(学習空間)」とよばれています。過剰な失敗を避けるためには、他者の助けを借りることも必要なことかもしれません。この空間の実現には、挑戦と支援の微妙な関係が必要です。
3つめの空間「混乱空間」では、未知のものに出会う頻度、対処の難しさ・複雑さが格段にあがり、学習者はいわばカオスに投げ込まれたもののようです。
高い不確実性、高い不透明性が眼前には広がっています。そこでは「失敗するリスク」が高すぎて、「恐怖」が支配し、とても、冷静になることはできず、学ぶこともできません。
さて、上記の概念図は、非常にシンプルな図ですが、この図は、先の「挑戦」と「支援」の関係を如実に物語ります。
リスクが高すぎては「混乱空間」になってしまい、人は恐怖におののきます。
とはいえ、低すぎては、つまり「快適」すぎてしまっては、人は日常のルーティンに流されていくだけです。両者ともに、いずれにしても、学ぶことはできません。
大切なのは、中庸である「成長空間」「背伸び空間」を実現することです。そのためには、挑戦を支える「支援」「心理的安全」をいかに他者の助けを借りて実現するか、ということが問題になります。
8メートル上空の挑戦は、8メートル下で、それを支えるチームの存在が必要不可欠であるということになります。
落下してしまったら、腕ポッキリの環境で、人は「挑戦」なんかしません。
また
背中に包丁をつきつけられて、てめー、飛び降りなきゃ、ブスリといくぜ、という環境で、人は「挑戦」はしません。
全力で戦うか、疾走するだけです。
挑戦とは、要するに、そういうことです。
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今日は玉川大学TAPセンターのことを書きつつ、学びとリスク、挑戦と支援について書きました。最後に同センターの先生方、またリスクを恐れず、挑戦してくださった学習者の皆様に、心より感謝をいたします。ありがとうございました。
そして人生は続く
投稿者 jun : 2015年5月29日 08:42
もう少し、スローに、場当たり的でいいぢゃないか?
40歳を迎える頃になって、植物を育てるのが楽しくなってきました。毎日毎日水をやる。ただ、それだけなのですけれども、日々、水をやるだけで、「日ごとの変化」が、なかなか面白く感じます。
葉が増える、芽が出る、花が咲く。そんなわずかな変化に、時の移ろいを感じたり、季節を感じたりして。
植物を育てることは「毎日コツコツ繰り返すのが好き」「成長や変化を見るのが好き」という僕の性格に、ぴったりあっているような気がします。
ところで、同じ植物でも、どうにも自分的には「苦手」なものがあります。正確に言うと、「植物自体は大変可愛らしい」のですけれども、僕のキャラにあわないのです。その名前は「多肉植物」!
多肉植物は、毎日毎日水をやるというよりは、土の表面が乾いたら水をやります。また、多肉は、通常の植物と違って、変化があまり早くなく、「気がついたら、なんか、伸びていない?」という感じです。
どうにも、この多肉植物の「場当たり感覚」と「スロースピード」には、いまだに慣れません。まことに可愛らしいのですけれども、なんか、このオリジナルな動きについていけないのです。どうも「シンクロ」しない(笑)
このように多肉植物はどうも僕と「シンクロ」しないのですけれども、毎朝、多肉植物に水をやりそうになって、「おっ、やべー。こいつは水かけちゃダメなんだ」と思い直しながら、考えることがあります。
「もう少し、場当たり的でいいぢゃないか?」
「もう少し、スローで、いいぢゃないか?」
そう多肉植物が語りかけている気がするのです。「そうそう、そうだよね」とたまに思います。しかし、やっぱり僕は、他の植物に、やや急ぎ足で水をかけながら、その変化に一喜一憂します。人間は、そう簡単に変われません(笑)。
スローで場当たり的に生きる多肉植物との対話が、毎朝、楽しみです。
そして人生は続く。
追伸.
夫婦揃って田舎出身・共働きの子育てというのは、何ともすさまじいものですね。毎日「祭り」、てんやわんやです。次男KENZOが生まれる前、まだTAKUZOが一人っ子だったとき、よく2人・3人子どもがいらっしゃる方から、「1人も2人も、同じよ、たいした変わらん」とよく言われましたが・・・・・・「めちゃ、変わるわ!(笑)変わらんわけないやろ!」。ま、気持ちはわかるけど、かなり違うね、少なくともうちの場合は(笑)。
カミサンと二人で、毎日「祭り」に翻弄されながら、日々過ごしています。TAKUZO、写真に入ってる!、そこどけー!(笑)
投稿者 jun : 2015年5月28日 07:38
「腰痛とは腰が痛い」的な「問題解決」していませんか?:問題解決に密かに潜むトートロジー!?
今年も研究室の活動が本格化してきました。
研究所属の学生個々人の研究もさることながら、いくつかの共同研究プロジェクトも成果をだすべく、それぞれが邁進しているところです。
すべてが順調?に進むことは・・・「ない!」と言い切ることができますが(泣・・・研究とはまことにうまくいかないものです)、最大限の成果をだすべく大学院生ともども爆走します。
▼
ところで研究をはじめるときには「研究を立案する=問いをたてること」に取り組まなくてはなりません。そして、この「問いをたてる」というのは大変難しいものです。
特に、経験が浅い場合には、この問いをたてる、というのがどうにもピンとこなく、それに対するアドバイスもどこか「衒学的」にさえ見えてきて、苛立ちを感じます。
「問いのフォーカスを絞れ」
とか言われても、「何を、どの程度、しぼんのよ?」と指導教員にぐるぐるパンチをかましたくなるはずです(笑)。
かくして、ともすれば、あさっての問いをたててみたり、たぶん1万6000年たっても解決できないような「フィージビリティゼロですけんのー」的な問いをたててしまいます。
よく言われることですが、
「問題解決」で最も難しいのは「問題設定」です。
問いが「あさって」ならば、問題解決で出てくる答えも「あさって」です。レールが「あさって」なのですから、そこを走る電車も「あさって」の方角にしか向かいません。悲しいかな、「筋の悪い問いをたてる」とは「あさっての方向にレールをひいて爆走するようなもの」です。
ですので、「問いをたてる」というものは指導教員ならば、もっとも力をいれることのひとつではないかな、と思います。
個人的な認識を開陳すれば、
問題設定8割、解決2割
と言い切ってもよいくらいです。そのくらい「問い」をたてる、というのは大切なことです。
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ところで、大学院生指導をそれなりにやってきて、問いをたてるときによく陥りがちな罠というのがいくつかあるような気がします。そのひとつが「トートロジー(同語反復:tautology)」です。
トートロジーとは、
無関心とは、関心がないこと
腰痛で、腰が痛い
とか、そういうのですね。
要するに同じ事を繰り返してしまって、負荷される情報量がゼロであるものをトートロジーといいます。
そして、このトートロジーを生み出しかねないような問いの設定が、特に経験が浅い場合には起こってしまいがちです。
要するに
「ちょめちょめの分析視座」にたって「ほげほげ」を分析したら「ほげほげの各要素」も「ちょめちょめ」でしょうね、、、やっぱり。
という感じです。
「ちょめちょめ」で見たんだから、「ほげほげ」をみたって「ふがふが」を見たって、「にょろにょろ」を分析したって、「ちょめちょめな結果」がでてくる可能性が高いのは、アタリマエですね。
喩えていうならば「赤いセロファンを張った眼鏡」で世界をみたら、「やっぱり、すべてが赤色に見えそうですよ」ってことです。
ここで必要なのは「ちょめちょめ」や「赤いセロファン」で物事をみたら、「今までは見ることができなかった、なんらかの発見事実がありそうだ」という「淡い期待」です。
この「発見」への「淡い期待」があって、それらを0と1の判別をつけるべく「仮説」にまで昇華できた場合に、それがはじめて「問い」になります。研究には「発見事実」がなくてはなりません。その「発見事実」を生み出すのが「研究」です。
改めて・・・問いをたてるのって難しいですね。
▼
今日は、問いをたてることの難しさについて書きました。
何もこれは経験の浅い研究者に言えることではなく、熟練の研究者が取り組む研究領域でも、起こりえます。自戒をこめて申し上げますが、そういうものです。ときには、研究者の一団が、そればかり繰り返している研究領域もあるから、まことに微笑ましいものです。
そういう領域では、何十年たっても、知見は前進しません。
なぜなら「誰かのつくったテーゼ(主張)」を手をかえ品をかえ、言葉をかえて繰り返すだけで、それ以上の「発見事実」を生み出すべく、問いが設定されていないからです。
ここで、試みられているのは「発見」ではなく「検証」です。どこかの誰か、第三者(多くは外国の研究)の知見が際限なく「こだま」のように繰り返されていきます。
問題解決は、課題設定が8割、解決が2割です。自戒をこめて申し上げますが、アイオープナーな問いの設定ができるようになりたいものです。
そして人生は続く
投稿者 jun : 2015年5月27日 07:18
「政治的な人」は「政治的に見えない人」?
「顕在化する能力」と「潜在化する能力」の間には「雲泥の差」があるものです。
たいした長い人生ではないですが、僕が、シャバ?の世界で、モミモミと揉まれながら学んだことのひとつに、このギャップがあります。
以下は、僕の「わたしの経験論」ですが、こういうことが言えます(今日の話題は何ら学術とは関係ありません!)。
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例えば、本当に「政治的な人」は「政治的に見えない人」です。いかにもオレオレで「政治的に見える」人は、実は「非政治的な人」です。「政治的である」とは「政治的な自己」を「非政治的に見せること」といっても、過言ではありません。
「政治を為す」のに「政治的に見えること」は邪魔をすることがあります。だから「政治的にしか振る舞えず、そうとしか見えない人」は、たぶん「政治に向かない人」です。
シャバで成果を残す、いわゆる「できる人」というのも同様の構造をもっています。「本当にできる人」は、一見「できるように見えない」のです。
ふだんは「フツーの人」なのですが、ここぞという時に現象に切り込んでくる「切り口」や「思考」、そして物事を成し遂げる「巻き込み力」や「行動力」がハンパではない。
それとは逆に「本当はできないのに、できるように振る舞う人」というのもいます。それは「できないこと」を覆い隠すパフォーマンスです。だから、本当は「できません」。
面白いものですね。
世の中で起こっていることは、いつも「天のじゃく」です。
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今日は思い切り「わたしの経験談」を書きました。
皆さんはいかが思われますか?
非政治的に見えるあなたは、実は、政治的な人?
そして人生は続く
投稿者 jun : 2015年5月26日 06:59
優れたリーダーは「ホワイトボード」の前に立つ!? : 考えを外化し、共同注意を集める
今年も、異業種のビジネスパーソンが北海道・美瑛町に集まって、地域課題解決を行うアクションラーニング型の研修がスタートいたしました。
僕は、発起人のヤフー株式会社の本間さん、池田さんからのご依頼で、この研修の監修者・ファシリテータを、2014年からお引き受けしております。チャレンジングな取り組みにお誘いいただいてありがとうございます。
異業種5社のリーダーが集まる研修をいかにデザインするのか!?
http://www.nakahara-lab.net/2014/05/post_2222.html
リフレクションをうながす「スパイシーなフィードバック」!? 美瑛町・地域課題解決研修2014が終わった!
http://www.nakahara-lab.net/blog/2014/10/post_2294.html
ところで、この研修では、異業種の各社(ヤフー・アサヒビール・インテリジェンス・日本郵政)の参加者の皆さんが、グループになって、半年間、美瑛をフィールドワークしつつ、地域課題の解決を行います。
昨年の提案のうち、いくつかはすでに実現ないしは実現の方向に動いているものもあります。
この週末は、参加者の皆様に、1)フィールドワークの方法論、2)アクションラーニングの愉しみ方、3)リフレクションの方法、4)チームビルディングの方法などを、レクチャーさせていただき、また、はじめてのフィールドワークに取り組んでいただきました。参加者の皆様、各社人事の事務局のみなさまにおかれましては、本当にお疲れさまでした。
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この研修の問題解決のプロセスは非常に厳しいものです。
それまで逢ったことのない、しかも、各社で何かをこれまでに成し遂げてきた方々が参加者ですから、意識や思いのすり合わせを行うところから、話はスタートいたします。チームは、のっけから「ダイバーシティの極み」のような状況からはじまります。
皆さんのご尽力に頭が下がる一方で、僕自身も全力でこれに取り組む覚悟を決めています。
今週のセッションでは、非常に印象深い出来事やお話、インテリジェンス・高橋社長を囲んでの車座など、書き切れないほどの面白い出来事が起こりました。インテリジェンスの高橋社長が語る、同社の「これまで」と「これから」には、勝手ながら、ワクワクを感じていましたし、美瑛町の役場の皆さんがかたる美瑛町の課題に関しましては、非常に示唆にとむものがありました。
一方、参加者の方々の「問題解決のやり方」を拝見していて、非常に印象的だったことがあります。
それは、
リーダーシップと「ホワイトボード」の関係
です。
問題解決をうまくすすめているチームのなかには、ホワイトボードを用いたり、付箋を用いたりして、まずいったん自分たちのなかにあるアイデアや考えを「外化」して、それらを「共有」していました。
頭の中から取り出され「外化」されたアイデアには、グループメンバーの「共同注意」が集まります。そうなれば、その後の分析や吟味などが効果的に進みます。
本間さんは、
リーダーは「白板」の前に立て!
とおっしゃっていましたが、なるほどな、と思いました。ダイバーシティあふれるチームのなかで、自分がひとり席をたち、ホワイトボードの前に立つことは勇気がいることです。しかし、なかなか「まとまらない」ものを、そのままにするのではなく、一歩先に進む勇気をもって、積極的に「外化」を促す。それによって生み出される効果は、確かにあるような気がします。
もちろん、白板やホワイトボードの前にたてば「必ず」リーダシップが生まれたり、問題解決が進むとは言い切れません。
が、チームがうまれたばかりの頃に、拡散しがちなアイデアを「外化」し、とにもかくにも共同注意を集めることは効果的であると思いました。
一部のコンサルティングファームでは「白板を制するものは問題解決を制する」とまで言い切るところもあるのだとか。まことに興味深いですね。
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ようやくスタートしたプロジェクトはさらに本格化していきます。フィールドワークで徹底して現地の聞き取りを行っていただき、獲得した一次データをもとに、イシュー度の高い課題を立案し、解決策を考えます。
参加者の皆様のほか、美瑛町役場、美瑛町民のみなさま、参加者の方々のご努力・ご尽力には頭が下がります。お疲れさまでした。
皆さんのワクワク感あふれる提案を、心の底から楽しみにしつつ、帰京しました。
そして人生は続く
投稿者 jun : 2015年5月25日 05:35
あなたの「勝ちパターン」は「寿命」がきていませんか?:痛みを伴う「勝ちパターン」のアンラーニング!?
先だって、僕が主宰する授業「ラーニングイノベーション論」に、北海道大学大学院・経済学研究科の松尾睦先生にご登壇いただき、「経験学習」について、参加者の皆様で議論をさせていただく機会を得ました。
毎年のことながら、松尾先生にはお忙しい中、貴重なお時間をたまわり、心より感謝いたします。本当にどうもありがとうございます。
▼
松尾先生には、示唆に富むたくさんの概念をご紹介頂きましたが、最も印象的だったのは「勝ちパターンを捨てることの難しさ」、いわゆる「アンラーニング(Unlearning)」に関することでした。
松尾先生は、米長邦雄さんの著書「不運のすすめ」から、米長さんの下記のような逸話を紹介し、このことを論じておられました。
それによりますと、米長さんが、かつて、とてつもないスランプに陥った際、若い棋士が、米長さんに下記のような助言をなさったそうです。
「先生と戦うのは非常に楽です。先生は得意技、十八番をいくつも持っていますね。でも、こちらのほうも先生の十八番は全部調べて、対策を立てているんです。勝つためには、先生は、自分の得意技を捨てることです」
なかなか、面白い指摘ですね。この若手は「よくぞ言った」という感じがしますが、皆さまはいかがお感じになりますか? 松尾先生には、興味深い事例をご紹介いただき心より感謝いたします。
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人は成長していけば、次第に、経験を通じて自分の「勝ちパターン」を身につけていきます。この領域ならば、こうすれば勝てる。これが「勝ちパターン」です。
しかし、この「勝ちパターン」は、実は本人が思うほど「安泰」ではありません。なぜなら、「勝ちパターン」は、常に自分のライバルに「見つめられ」、かつ「分析されている」からです。実際には、いつかの局面で、自分の「勝ちパターン」を無化するか、ズラして、全く異なる戦い方をしなくてはならなくなります。
しかし「勝ちパターンを無化すること」「勝ちパターンをズラすこと」は多くの場合、痛みや葛藤をともないます。
「負けているのは、実は偶然なんじゃないだろうか」
「もしかすれば、勝ちパターンで逃げ切れるんじゃないだろうか」
という思いが頭をもたげます。
また「勝ちパターン」を相対化した先に「新たな勝ちパターン」が生まれる可能性があるとは誰も言い切れないからわけですから、「既存の勝ちパターン」を相対化するのは「勇気」が必要です。
しかしやらなければ、それまで「伝家の宝刀」だと思っていた「勝ちパターン」が「負けパターン」に変わり果てます。
自分のライバルは、常に、相手の「勝ちパターン」を「重荷」にするような戦略をとり、勝ちパターンを凌駕しようとするからです。
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今日は経験を通じて獲得される「勝ちパターン」について書きました。このように経験を通じて学ばれるものとは、必ずしも、寿命が長いわけではありません。
要するに大切なことは、「経験を通じて学ぶことをチェックすること」であり「経験を通じて学び続けることをやめないこと」ですねだということになりますね。
あなたには経験を通じて獲得された「勝ちパターン」がありますか?
その「勝ちパターン」、実は、寿命がきていませんか?
そして人生は続く
投稿者 jun : 2015年5月22日 05:38
「人材開発の知識・スキル」が学べる専門教育機関!?
昨日、コロンビア大学大学院(Dept of organization and leadership)のAdult learning and Leadershipのコースに通われている桔梗哲也さんが、研究室に来られました。
ちょっと前のことになりますが、僕が、組織開発の泰斗であるWaner Burkeの本をツイッターで「いいなぁ、これ」とつぶやいていたら、その直後に、そこで通われている桔梗さんから連絡がきて、それ以来「ご帰国のおりはぜひ東大にお立ち寄りください」ということになったのです。それが実現したのが昨日ということになりますね。来研、ありがとうございます。
▼
Adult learning and Leadershipのコースは、かつて、ジャック・メジローが在籍していたり、先ほどお話ししたようにBurkeが教授職をつとめていたりしていて、僕の研究領域としては、世界でも最も大きな教育機関のひとつですね。
コースの内容を伺っていると、通われているのは「半分が企業人、半分が教育関係の学生」とのこと。
企業人は、戦略コンサル、人事コンサルの方が多いとのことでした。教育関係の学生は、大学の教員、職員、先生などが多いとのことでした。そういう人々が半々で学べる環境ってよいですね。
教えられている科目は、人的資源管理論、組織学習論といった組織論・経営学的内容から、教授設計理論、高等教育論といった大学教育に関係するものまで多岐にわたっているとのことです。
ファシリテーション、コーチング、アクションラーニングといった、ほぼほぼ実務の科目もあるそうで、非常に興味深くお話を伺っておりました。
話を伺っていくにつれて、これまでずっと思っていたことーすなわち、人材開発といいましょうか・・・学習の観点から人材をどのように育成していくか、ということに関連する専門教育機関って、やっぱり必要だよなと、改めて思うようになりました。
ビジネスと学習、経営・組織と学習のカリキュラムが、ビミョーなバランスを保ちながら、最先端の知識やスキルについて学ぶことのできる機関が、もっと必要だと思います。
研究者養成ではなく、実務家養成を行うのだけれども、しかし、大学・大学院レベルの教育内容を年単位でしっかりとみっちりと教えられる場所があると、より社会がよくなる気がいたします。
確かに需要はあるのですが・・・。
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今年もいよいよ慶應丸の内シティキャンパスでの僕の主宰する講座「ラーニングイノベーション論」がはじまります。
「ラーニングイノベーション論」は、人事・人材開発のプロフェッショナルをめざされる方々のための半年間のカリキュラムで、これまでに200名近い卒業生がこのプログラムを終えられて、活躍なさっています。2年前のカリキュラムは、「人事よ、ススメ!」という本にもなっておりますので、もしよろしければ、ぜひ手にとっていただければ幸いです。
人事よ、ススメ! ―先進的な企業の「学び」を描く「ラーニングイノベーション論」の12講 (碩学舎ビジネス双書)
http://ow.ly/Nd8bp
ラーニングイノベーション論は、今年もおかげさまで満員御礼30名となったようで、まことに嬉しく、またありがたく感じています。ご参加いただいた皆様、ラーニングイノベーション論をご紹介いただいた皆様、本当にありがとうございました。
こちらは半年・13回のリレー講座ですが、内容は最先端を「爆走」している自信があります。
登壇して下さる先生方のお知恵とお力をお借りしながら、人材開発の最先端の知識とスキルと経験をぐぐっと凝縮して学ぶことができるように主宰者として努力していきたいと思います。
今年からは「フィールドワーク入門」といったような実習も取り入れていきます。
現場をしっかりとフィールドワークして、適切な人材開発のあり方を模索できるようにカリキュラムを組んでいるつもりです。しかも・・・限られた時間で。
皆さんの反応をさぐりながら、何とかよい経験となるよう、努力していきたいと思います。
そして人生は続く
投稿者 jun : 2015年5月21日 06:28
あなたの仕事の「はじめての瞬間」!?:はじめての注射、はじめての学会発表!?
先だって、日頃からお世話になっている歯医者さん(サウジ歯科)で治療をしていた際、先生と「はじめての瞬間」についての話になりました。
僕は、前歯の一本が「永久歯がもともとなくて乳歯しかない」という状況なのですが、その日は、40年ちかく使用してきた乳歯が
「もう、いーかげん、お役目終えて、えーですかいの?(泣)」
という状況になり、いよいよ、抜かなくてはならなくなったのです(泣)。
「抜歯」をされながら、40年ちかくも人生をともにしてきた乳歯の苦労を慮りつつ、さりとて抜歯の瞬間はめちゃくちゃ緊張するので、ついつい自ら緊張をほぐすために、思いついた問いが、下記の問いでした。
「先生は、はじめて抜歯したときの瞬間を覚えていらっしゃいますか?」
先生は一瞬手を止められましたが、
「そりゃ、覚えていますよ。指導医の先生から患者さんをあてがわれてね。抜歯のときは、手が震えましたね」
とおっしゃっていました。
続けて、
「抜歯のときもそうですが、はじめて麻酔の注射をするときが最も覚えていますね。はじめて人の身体に傷をつける瞬間なのです。
学生同士、お互いにやるのですが、僕は2番目の順番だったんですよ。そしたら、めちゃくちゃ痛くて。患者さんの痛みがわかると、自分もうまくならなくてはな、と思いました」
とも。
面白いですね。どんな人にも、どんな仕事にも「はじめての
瞬間」ってあるよね。そういうの集めると、面白そうですね。
▼
アタリマエダのクラッカーですが(死語)、どんな人も、仕事をはじめた瞬間は「ノービス」です。僕の主治医の先生は「はじめて麻酔をする瞬間」のお話をなさっておりましたが、皆さんはいかがでしょうか?
ちなみに、僕は研究者ですけれども、もっとも思い浮かぶ「はじめての瞬間」というのは「はじめての学会発表」です。
僕の時代は、パワーポイントとかのプレゼンではなくて、OHPシートだったのですが、発表している最中にあまりの緊張に、OHPシートをすべて床にぶちまかしてしまいそうになってしまいそうになったことを、よく覚えています。
あと、院生時代は、よく会場から、ヘンチクリンな意地悪な質問を受けましたね。あれ、何だったんだろうね? うまく受けて返せばいいのに、真に受けて爆死していました。
ま、今から考えれば、ロクでもない発表したんだろうねぇ・・・。まぁ、今でもロクでもないけどね(笑)。
どんな仕事にも「はじめての瞬間」があります。
さて、あなたはどんな「はじめての瞬間」を覚えていらっしゃいますか?
そして人生は続く
投稿者 jun : 2015年5月20日 09:41
中小企業の人材研究に熱い血をたぎらしてみないか?:中小企業人材マネジメント勉強会のお知らせ
勉強会への参加募集のお知らせです。
6月8日、21日に「中小企業の人材マネジメント」に関する英語文献を、みなでザザザと読む勉強会(読書会)を、東大で開催します。研究室の大学院生・保田江美さん(D2)が中心になって企画してくれました(感謝です)。
最近の中心的文献をいっきに読みますので、全貌がおわかりいただけると思います。英語文献の要約をご担当いただく必要はございますが、参加費用は無料です。ふるってご参加いただけますよう、よろしく御願いいたします。
君も東大で
中小企業の未来の議論に
熱い血をたぎらしてみないか?(笑)
皆様とお会いできますこと、愉しみにしております。
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「中小企業の人材マネジメントに関する先行研究」をざざっと読もう!会
中小企業と大企業ではいったい何が違うのか?
==================================================================
■日時:2015年6月8日(月)10時~18時 & 6月22日(月)10時~18時
■場所:東京大学 本郷キャンパス 工学部2号館 92B教室
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_04_03_j.html
■人数:20名(2日連続で参加できることが条件)
■参加予定(敬称略):中原、保田、関根(中原研OB)
■費用:無料
■事務局:保田江美(中原研D2)
■ご協力:関根(中原研OB)
■お問合わせ先:保田江美:ホームページの「お問い合わせ」よりお願い致します。
http://www.yasu-lab.net/
■連絡:参加者が確定した時点で、連絡用のML(FreeML)を作成。
===
■参加条件:
1)英語文献1本を担当出来る方
日本語にて要約・レジュメを作成し、15分程度で報告。
(意見交換含め、当日は一人あたり30分~40分程度で共有)
2)要約した文献を、各自がプリントアウトし、参加者人数分を当日持参できる方
後日、PDF等で共有。
3)大学院レベルのアカデミックな議論に参加し、
多くの研究のバックグラウンドのある参加者に貢献できる型
4)事務局もボランティアで行われていることを理解し、場に貢献できる方
5)2日連続で参加できることが前提
申し込み後、当日欠席する場合、和訳レジュメは、MLにて提出。
===
■今後の流れ:
5月13日~ 担当文献の選定と申し込み
5月20日ころ 担当文献の確定
(事務局が皆さんの希望を踏まえて決定)
5月22日ころ 事務局から、文献の送信
各自で担当文献の読み込みとレジュメ作成
6月8日&22日 研究会の実施
===
■スケジュール:
・6月8日(月)10時~18時
・6月22日(月)10時~18時
※参加者の人数によって、時間変更の可能性あり
===
■お申し込み:下記フォームから申し込みを御願いします
(先着順。定員になった段階で募集を打ち切ります)
http://kokucheese.com/event/index/293932/
※その際、下記の23本の文献候補から、3つを選び、申込フォームに番号を記入(例(優先順位順に):1、20、23)
■文献候補:
1.Barringer, B. R., Neubaum, D. O., & Jones, F. F. (2005). A quantitative content analysis of the characteristics of rapid-growth firms and their founders. Journal of Business Venturing, 20(5), 663 - 687.
2.Edelman, L. F., Brush, C. G., & Manolova, T. (2005). Co-alignment in the resource-performance relationship. Journal of Business Venturing, 20(3), 359 - 383.
3.Chowdhury, S., Schulz, E., Milner, M., & Van De Voort, D. (2014). Core employee based human capital and revenue productivity in small firms: An empirical investigation. Journal of Business Research, 67(11), 2473-2479.
4.Wagar, T. H. (1998). Determinants of human resource management practices in small firms: Some evidence from Atlantic Canada.Journal of Small Business Management, 36(2), 13-23.
5.Saridakis, G., Muñoz Torres, R., & Johnstone, S. (2013). Do human resource practices enhance organizational commitment in SMEs with low employee satisfaction? British Journal of Management, 24(3), 445-458.
6.Døving, E., & Gooderham, P. N. (2008). Dynamic capabilities as antecedents of the scope of related diversification. Strategic Management Journal, 29(8), 841-857.
7.Rauch, A., Frese, M., & Utsch, A (2005). Effects of human capital and long-term human resources development and utilization on employment growth of small-scale businesses: A causal analysis. ENTREPRENEURSHIP THEORY AND PRACTICE, 29(6), 681-698.
8.Altinay, L., Altinay, E., & Gannon, J. (2008). Exploring the relationship between the human resource management practices and growth in small service firms. The Service Industries Journal, 28(7), 919-937.
9.Kotey, B., & Slade, P. (2005). Formal Human Resource Management Practices in Small Growing Firms. Journal of Small Business Management, 43(1), 16-40.
10.Bacon, N., & Hoque, K. (2005). HRM in the SME sector: valuable employees and coercive networks.(small and medium size enterprises). International Journal of Human Resource Management, 16(11). 1976-1999.
11. Sheehan, M. (2013). Human resource management and performance: Evidence from small and medium-sized firms. International Small Business Journal, 32(5), 545-570.
12. Rutherford, M. W., Buller, P. F., & McMullen, P. R. (2003). Human resource management problems over the life cycle of small to medium-sized firms. Human Resource Management, 42(4), 321-335.
13. Allen, M. R., Ericksen, J., & Collins, C. J. (2013). Human resource management, employee exchange relationships, and performance in small businesses. Human Resource Management, 52(2), 153-174.
14. Rogg, K., Schmidt, D., Shull, C., & Schmitt, N. (2001). Human resource practices, organizational climate, and customer satisfaction. JOURNAL OF MANAGEMENT, 27(4), 431-449.
15. Kok, J., & Uhlaner, L. M. (2001). Organization context and human resource management in the small firm. Small Business Economics, 17(4), 273-291.
16. Tocher, N., & Rutherford, M. W. (2009). Perceived Acute Human Resource Management Problems in Small and Medium Firms: An Empirical Examination. Entrepreneurship Theory and Practice, 33(2), 455-479.
17. Patel, P. C., & Conklin, B. (2012). Perceived Labor Productivity in Small Firms-The Effects of High-Performance Work Systems and Group Culture Through Employee Retention. Entrepreneurship Theory and Practice, 36(2), 205-235.
18. Garengo, P., Biazzo, S., & Bititci, U. S. (2005). Performance measurement systems in SMEs: A review for a research agenda. International Journal of Management Reviews, 7(1), 25-47.
19. Ostgaard, T. A., & Birley, S. (1994). Personal networks and firm competitive strategy--A strategic or coincidental match? Journal of Business Venturing, 9(4), 281-305.
20. Hayton, J. C. (2003). Strategic human capital management in SMEs: An empirical study of entrepreneurial performance. Human Resource Management, 42(4), 375-391.
21. Haber, S., & Reichel, A. (2007). The cumulative nature of the entrepreneurial process. Journal of Business Venturing, 22(1), 119-145.
22. Hormiga, E., Batista-Canino, R. M., & Sánchez-Medina, A. (2011). The role of intellectual capital in the success of new ventures. International Entrepreneurship and Management Journal, 7(1), 71-92.
23. Delmotte, J., Faems, D., Forrier, A., & Sels, L. (2006). Unravelling the HRM-Performance Link: Value-Creating and Cost-Increasing Effects of Small Business HRM. Journal of Management Studies, 43(2), 319-342.
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お申込フォームはこちらです!ふるってご参加をお待ちしております!
http://kokucheese.com/event/index/293932/
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投稿者 jun : 2015年5月19日 06:23
「宛先」のある研究とは何か?:他ならぬ、あの人に「届く」研究を模索する
いつも僕が、自分の大学院生に投げかけている言葉のひとつに、
「宛先のある研究をしなさい」
というものがございます。「宛先のある研究」とは、言葉を換えれば、
「誰か」のための研究をしなさい
ということです。研究をなす前に、まずは自分の研究をお届けしたい「誰か」をひとり(一群)決めてください。自分の研究を通して、「誰か」に付加価値をお届けするマインドで、研究計画をかき、研究方法論を検討し、研究をまっとうしてほしいと思うのです。
困っている「誰か」、何かを待っている「誰か」、何かを成し遂げようとしている「誰か」・・・そういう人を「決めて」、その顔を思い浮かべて、彼らに価値を返すことを願いながら、研究を組みたてて欲しいのです。
もちろん、これは僕の研究領域だからこその指導方法であり、また、僕の指導学生さえそうしてくれれば、僕はそれ以上は何も望んでいません。
分野によっては、全くあてはまらない領域もあるでしょうし、あてはまる必要のない基礎的な領域もあると思います。また、指導学生ではない他の大学院生の方が、どのような研究を為そうが、僕は感知するところではありません。
また、誰かに「お届けしよう」と研究をなしても、実際に現場の方々に「付加価値」をお届けできるかどうかはまったくの「未知数」です。「思えば実現する」ほど、現場と理論の間に潜む「死の谷」の深さは、浅いわけではありません。
自戒をこめて申し上げますが、「付加価値」をお届けしようと力むくらいが、丁度良いくらいとも思います。それだけ力んでも、現場にインパクトをもたらすことはなかなか難しいものです。いや、実際は「付加価値をお届けしよう」と顔を思い浮かべながら研究をなしても、届かないことの方が多いかもしれません。「思えば実現する」ほど甘くはないですが、「思わない」よりは「思った方」が実現する可能性は高まる・・・そういったところでしょうか。
▼
こうしたことを僕が述べるようになったのは、自らの「苦い経験」があるからです。経験の浅い頃は、とくに「宛先のない研究」「誰にも届かない研究」を積み重ねてしまいました。
「論文誌にのせること」「研究として成立させること」を「宛先を確保すること」「自分の研究のお届け先を決めること」よりも優越させてしまった経験というものが、僕にも確実に存在します。そして、自分としては、そのことを、あまり今は誇らしく思っていません。たしかに成果はあげられたけれども、心のどこかにひっかかりが残っています。
「あー、研究としては成立したからいいけど、あれでよかったんだろうか」
と。
▼
今日は「宛先のある研究」「誰かのための研究」のお話をしました。この価値は、おそらく、今後、僕の研究指導がどのような形態に変わろうとも、きっと変わることのないもののように思います。
中原研は、研究室の仕事も多く、大学院生は、いくつかの共同研究プロジェクトを掛け持つことが多いため、なかなか忙しい日々を過ごすことになりますが、ぜひ、こうした研究を続けていって欲しいな、と思います。
そして人生は続く
ーーー
追伸.
夏の京都の風物詩「大学生研究フォーラム」のチュートリアルセッションの募集がはじまりました。リーダーシップ開発、ファシリテーション、エンゲージメント、反転授業、リフレクション研究の最前線を1日で学ぶことができる集中・クローズド・ワークショップです。ぜひご参加頂けますよう、よろしく御願いいたします。
大学生研究フォーラム2015のチュートリアルセッションの募集開始
http://www.highedu.kyoto-u.ac.jp/apply_form/20150723WorkShop/index.html
投稿者 jun : 2015年5月18日 10:18
リーダーシップ開発、ファシリテーション、エンゲージメント、反転授業、リフレクション研究の最前線!?:夏の京都、チュートリアルワークショップで学ぼう!
今日は、おそらく、もう二度と実現しない?「世界初?幻の5つのチュートリアルワークショップ」のご案内です。
以前にもこちらでアナウンスさせていただきましたが、来たる7月23日、5つのテーマの学問的最前線をさぐるチュートリアルワークショップを開催させていただきます。御協力頂ける、各セッションの先生方に、心より感謝いたします。
チュートリアルとは、よく国際学会などでありますね。学会前日に、限られた短い時間で、最先端の内容を学べるワークショップをさします。
テーマは下記のとおり、
・リフレクション学
・反転授業学
・ファシリテーション学
・エンゲージメント学
・リーダーシップ開発学
の5つです。
いまだ「学」として名乗るには恐れ多い、歴史が浅く、かつ、学際的な研究領域に、敢えて挑戦マインドをもって腹をくくり「なんとか学」「ほにゃらら学」とつけるところがマイ・ミソです。「最高・最強に怪しい」ので、このネーミング、小生、気に入っています。
総合ファシリテーションは、中原研D2の保田江美さんです。裏方として、この5つのワークショップの参加者の方々のあいだに、いかにケミストリー(人的化学反応?)をつくるかが、彼女のミッションです。僕は、保田さんとともに、この企画をコーディネーションいたします。
●チュートリアル1 「リフレクション学」ワークショップ
山辺 恵理子(東京大学)
町支 大介(青山学院大学)
プロフェッショナル人材の育成のための中心概念「リクレクション」の理論と実践を3時間で学ぶミニワークショップ
●チュートリアル2「反転授業学」ワークショップ
森 朋子(関西大学)
デジタル×アナログの融合と連携・・・「反転授業」を3時間で学ぶミニワークショップ
●チュートリアル3 「ファシリテーション学」ワークショップ
中野 民夫(同志社大学)
対話を重視した参加型の場をつくる「ファシリテーション」の基礎を3時間で学ぶミニワークショップ
●チュートリアル4 「エンゲージメント学」ワークショップ
中澤 明子(東京大学)
我妻 優美(元・大阪市立大学)
アクティブラーニングなんて、もう古い? 学習者を巻き込む教授法「エンゲージメント学」を3時間で学ぶミニワークショップ
●チュートリアル5 「リーダーシップ開発学」ワークショップ
舘野 泰一(立教大学)
浜屋 祐子(東京大学)
次世代リーダーをいかに育てるのか。リーダーシップ開発研究を3時間で学ぶミニワークショップ
この「チュートリアルセッション」は、各セッション人数20名限定のプレミアセッションとなります。5つセッションがございますので、合計100名! しかも無料!
それぞれのセッションで最前線を学んだ100名の方々が、みなで集まり、学習内容を統合するセッション、その後の懇親会も準備しています。
参加者の方々は、7月24日の大学生研究フォーラムにもご参加頂き、それぞれの知見をもとに場をリードしていただければと思っています。そのあたりはどうか参加条件をお読み頂ければと思います。
大学生研究フォーラム2015のちらし(PDF)
http://www.highedu.kyoto-u.ac.jp/apply_form/20150723WorkShop/20150723.pdf
ご登壇いただくのは、今まさにときめいている若手研究者・実務家の方々に御協力をいただこうと思っています。みなさま、どうぞよろしくご検討をお願いします。
このチュートリアルセッションの参加申し込みは、5/18(月)9:00amだそうです。ということは、来週月曜日の9時ですね。たぶん、僕は、新幹線の中です(笑)。
こちらは、京都大学の溝上先生、岡本さんらが準備を進めて下さっています。まことにお疲れさまです。
参加申し込みは、下記のサイトではじまるそうです。どうぞ、ふるってご参加頂けますよう、お願いいたします。
http://www.highedu.kyoto-u.ac.jp/apply_form/20150723WorkShop/index.html
夏の京都で、みなさまにお会いできますこと愉しみにしております!
I can't wait! そして人生は続く
投稿者 jun : 2015年5月15日 05:52
「引き際」とは「舞台」を移動することである!?:アスリート化する職業世界をまえに求められる!?「引き際の研究」
「引き際」の研究って、近いうちにやってみたいな
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昨日の夜は、東京大学i.schoolと雑誌「AERA」がコラボして開催されたイベント「第1回未来フォーラムi.school×AERA :学び直す、学び続ける」に、不肖中原も、パネラーのひとりとして参加させて頂きました。
お声がけいただきました工学系研究科の堀井秀之先生、AERA編集長の浜田敬子さん、パネラーでご一緒させていただきました吉見俊哉先生、太刀川英輔さん、為末大さん、森健志郎さん、その他、会場にこしいただきました皆様には、この場を借りて感謝いたします。ありがとうございました。
▼
さて、このパネルセッションでは、様々な方からいろいろな角度で「学び」に関するお話をいただき、僕自身も、非常にインスパイアされました。個人的にもっとも印象深かったのは、アスリートの為末大さんの「引き際」に関するお話でした。
為末さんは34歳で陸上を引退なさったそうですが、
「そのとき、何がきっかけで引退を決意なさったのですか」
という緊張感あふれる質問が、会場から投げかけられました。
この問いに対して為末さんは、
「スタジアムに入ったときの歓声が自分以外に向けられる声の方が大きくなったこと」
そして
「自分が自信をもっていた第一ハードルのタイムを、後続する選手に抜かれたとき、引き際を感じた」
とおっしゃっていました。
ICレコーダをもっていたわけではないので、一字一句同じではないのですが、その種のことと感じます。
その後、為末さんは、試行錯誤をしながら、それまでのご経験を活かしつつ、まさに軸足を他に移しつつ、今は、スポーツコメンテーター・タレント・指導者としてもご活躍です。
研究にも深い関心をお持ちだとのことで、非常に印象深い活動をなさっていると伺っております。
この話を伺って、僕は、深い感銘を受けました。
アスリートとビジネスパーソン、他の専門職は全く異なるところもあるのですが、複雑化・大規模化する社会の中で、確実に「職業のアスリート化」は進んできており、ここで為末さんが経験なった「引き際」は、これからを生きる人々にとって、今までよりも身近になると感じたからです。
思うに「引き際」とは、それまで活躍していた舞台から「退くこと」を意味しません。
「引き際」とは、「次の舞台」を創り、「それまでの舞台」退くことなのです。「舞台を降りる痛み」と、「新たな舞台を創る痛み」をともに感じつつ・・。
引き際が「人生の引き際」ではない限り、引き際とは「舞台」の移動なのです。
そして「引き際」には、よく言われるように、誰もがホレボレするような「美しい引き際」と、「醜い引き際」があります。
最近、思うのは、そうね、、、一般論として言わせてもらいますけど、
世の中には「醜い引き際」が充ち満ちているよね(泣)
要するに「しがみつく」
もう使命を終えているのにもかかわらず、新しい舞台を創ることをさけて、スポットライトのあたらない舞台から降りようとしない。
深い自戒をこめて、いつか自分がそうならないように決意しながら、そう思います。
加齢は「誰かの問題」ではなく「みんなの問題」です。これは「誰かの問題」ではなく、いつかは「僕の問題」にもなる。
近いうちに、「引き際の研究」にも、ぜひチャレンジしてみたいなと感じています。ま、貯めている研究やら、書いていない原稿が「腐る」ほどある中で、「どの口が、新しい研究をやりたいって言ってっいるって?」と便所スリッパで「カンチョー」されそうだけれども。
よい引き際を迎えたいものですね。
そして人生は続く
投稿者 jun : 2015年5月14日 07:27
銭湯の「常連」さんたちの「背中流しネットワーク」から見えてきたものとは?:菅原和孝編「フィールドワークへの挑戦」を読んだ!
いや、カミサンが職場復帰してからというもの、時間がマヂでありません。夫婦共々田舎出身で、身寄りが東京におらず、2人の子どもを前に、右往左往して、何とか日々を過ごしているのが現状です。
これまでカミサンが果たしてくれていた役割に感謝するとともに、現在、決して「サスティナブルではない自転車操業状態」を、いかに「ルーティン」におとしこみ、効率化を追求していくか。
必要な場合は、家庭外のリソースを動員するか否かについて、本格的に「しくみづくり」をしていかなければならないと思っています。このままでは「サスティナブルではない」(泣)というか、たぶん、もたない。
▼
というわけではないのですが、今日は読書メモだけ(笑)。
先だって遅ればせながら、人類学者・菅原和孝さんの編まれた書籍をまとめてよむ機会を得ました。菅原さんの本はとても面白かったのですが、とりわけ個人的に興味深かったのは、「フィールドワークへの挑戦」です。研究者というよりも、いちおう教育者のはしくれとして感銘を受けました。
この本は、人類学者・菅原和孝さんの授業で学生達が成し遂げたフィールドワーク40本集めた書籍です。学生たちが為したフィールドワークは、どれも切り口が斬新でした。セックスワークからはじまり、棚田の研究まで。へぇーと思うような場所を丹念な観察を通して描き出しているところが興味深いところでした。
特に圧巻だったのは、第5章「銭湯の行動学」(佐藤せり佳著)です。街場の銭湯というローカルな場所を舞台に、そこに集う常連さん達による背中流しネットワークを分析し、最後はゴフマンでしめるという荒技を、学生ながらやってしまうのは、何とも素敵です。これまでにも増して、京都大学といいましょうか、同大学に流れると予想される硬派なアカデミズムの風土が好きになりました(笑)。
とまぁ、こんな慌ただしい日常です。
本当は菅原さんの最新刊「世界のてざわり」に収録されたフィールド哲学についても、書きたいところがあるのですが・・・綿密なフィールドワークと哲学的思考と自己に対する省察があわさったフィールド哲学には、なかなか心引かれました。でも、今日は涙をのんでここまで。
そして人生は続く
投稿者 jun : 2015年5月13日 06:56
回帰するリーダーシップ研究の最前線!? : どんなリーダー個人が成果を残すのか?
先だって、人的資源開発論(Human Resource Development:要するに人材開発)の最新のハンドブック(論文集)を読む会が、関根雅泰さん(中原研究室OB)と田中聡さんの主宰で、東大で開催されました。まずは参加して下さった参加者の皆様に心より感謝をいたします。
人的資源開発の基礎理論から、リーダーシップ開発・メンタリングなどの個別の育成手法についての論文をまとめて読む会でーーあまりに立て込んでいて、僕は中座しなくてはならなかったのですがーーとても勉強になりました。
▼
昨日、参加して下さったメンバーの方々で読んだ論文の中で最も興味をもったのは、保田江美さんのご報告なさったSashkin, M. (2010)の論文で、リーダーシップ開発論(Leadership Development Theory)の最前線を論じたものです。
よく知られていることですが、リーダーシップ研究には、「リーダーが何たるか?」を論じる、いわゆる「リーダー研究(Leader research)」と、そういったリーダーをいかに「育成」するか、というリーダーシップ開発論(Leadership Development Research)の2つがございます。
前者に比べて、後者の智慧は「圧倒的に足りておらず」、また「歴史が浅い」のですが、この論文は、後者の研究の展開をまとめたものでした。
▼
興味深かったのは、
近年のリーダーシップ研究・リーダーシップ開発研究においては、ふたたび、「リーダーの個人要因」に対して熱い視線が注がれている
という記述です。
少しリーダーシップ研究をご存じの方がいらっしゃったら「ははーん!」とくると思うのですが、この現象は、リーダー研究の歴史をひもとけば、「回帰」といわれる現象に近いことがわかります。
リーダー研究の歴史をひもとけば、その研究の方向性は、つねに変化してきました。古には「リーダーとは個人的資質・生まれながらの遺伝によって決まる」とされていた時代がありました。
それがのちに、「いや、そうではない!リーダーシップとは「行動」で決まる」という時代に突入し、さらに近年では、リーダとフォロワーの「社会的関係」によって決まる、とされるフォロワー研究、あるいは、「リーダーとメンバーの社会的交換関係」に着目する研究が増えてきています。
要するに、リーダーシップという現象を、リーダーの「個人的要因」で説明するのではなく、むしろ「リーダーとフォロワー」「リーダとメンバー」という社会的関係から説明しようとする動きです。ワンセンテンスで申しますと、ソーシャルな現象としてリーダーシップを把握しようとする研究群ですね。
しかし、先だって読んだ論文では、この動きに「回帰」とも解釈可能な状況が生まれているといいます。
たとえば、リーダーがもつ「モラル」や「倫理」の問題を扱う研究(たとえばAuthetic leaderhip研究)や、リーダー個人の脱線を扱う研究(要するに失敗するリーダーとは・・・・の個人的資質や経験をもつ)が再評価され、かつ増えているというのです。まことに興味深いですね。
おそらく、こうなってきますと、先ほどは「回帰」と書きましたが、これから起こるのは、そういう事態ではないのではないか、とも感じます。
ここからは、まったくの個人的予想ですが、今後は「個人的要因」×「フォロワーやメンバーとの社会的関係」の交互作用を扱った研究が増えてくるのかな、と勝手気ままに思いました。
さらに複雑なモデルを扱う研究が増えてきそうで、戦々恐々です(笑)。でも、結局そうだよな、と思うところがあり、僕にはしっくりきます。
▼
というわけで、今日はリーダーシップ研究の回帰の話をしました。
それにしても「読書会」というものはよいものです。会に出ながら、要するに「僕は学びたいのだ!」と思いました。今はその時間が圧倒的に不足しています。まことに困った事態です。
2週間後に、また読書会が開催されるようです。次回も、大学の用事でバタバタ走り回っており、フル参加とはいかないのですが、愉しみにしています。
そして人生は続く
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追伸.
「人事・人材開発の最先端」をご紹介している「人事よ、ススメ!」、好評発売中です。人事、人材開発の最先端の考え方、理論、実践についてご興味のお持ちの方には、おすすめの内容です。どうぞよろしく御願いいたします。
また、僕が主宰しております、こちらの書籍の舞台となった人事・人材開発者向けコース「ラーニングイノベーション論」(慶應丸の内シティキャンパス)も、受講生募集がマヂ最終局面に入っております。開講直前、本当にわずかに残席がございますので、ご参加希望の方がいらっしゃいましたら、ご検討をどうかお早めにお願いいたします。
「ラーニングイノベーション論」(慶應丸の内シティキャンパス)
http://www.keiomcc.com/program/lin/
最後に「教師の学びを科学する: データから見える若手の育成と熟達のモデル」が5月18日発売になります。こちらは脇本さん、町支さんが中心になって著し、中原は監修を担当しました。我が国は、これから未曾有の「教師入れ替わり時期」に突入します。経験の浅い教員の育成にご関心がおありな方はぜひご高覧いただけますと幸いです。
投稿者 jun : 2015年5月12日 05:52
大人が学ぶチャンスとは?:「勉強・感銘・刺激・メウロコ」にはプチ注意!?
うーんとうーんと自戒をこめて申し上げますが、自分として「この言葉だけは絶対に使っちゃいけない」と思いつつも、ついつい魔がさしちゃって、口にしてしまう「思考停止ワード」に、
勉強になりました
感銘を受けました
刺激になりました
というものがあります。
変形版に、
メウロコでした!
というのもありますが、こちらは、なぜか僕は使いません(笑)。ただ、世の中的な頻度は、勉強・感銘・刺激に続いて、第四位くらいかなと思います。
これらの言葉は、誰かの講演や授業を聞いていて、その感想を述べる際に、ついつい便利なので、使ってしまいがちです。
いやー、勉強になりました
刺激になりました
メウロコでした
という風に。
まー、こうはいいますものの、聞いたあとで、「モヤモヤとしたもの」や「ザワザワとしたもの」が頭に残ることもあり、その状態で、なかなか、「自分が見聞きしたもの」を「言葉」にできることは希かもしれません。
そういう場合はやむをえない場合もあるとは思うのですが、これを、そのままの状態にしておくことは、「思考停止」を招く可能性があるから注意が必要だと思っています。
モヤモヤを抱えたとき、ザワザワを感じたとき、そして、思わず「勉強になりました!」と述べたくなるときほどチャンスなのかもしれないな、と思うのです。
大切なのは、
「何」を学んだのか?
「何」に対して、なぜ「感銘」を受けたのか?
「何」を、なぜ「刺激」と感じたのか?
を「自分の言葉」にすることです。
若干の時間がかかったり、タイムラグが生じたりしても問題がないとは思いますが、ぜひ、そうした「言葉化」の機会を確保したいものです。「メウロコ」で「終わる」と、目落としたままになっちゃいますよ。自分で「ウロコ」を拾わないと・・・。
▼
今日は、自戒をこめて、「大人の学びのチャンス」についてのお話をしました。
GW、いよいよ終わり、今週からあらゆることがフルスロットルで活動です。何とか生き残りたいです。
そして人生は続く
投稿者 jun : 2015年5月11日 06:18
「お勉強の正解」と「リアルワールドの正解」のビミョーな「ズレ」!? : ズレを読み解き、笑い飛ばせ!
もうそろそろ調子が戻ってほしいのだけれども、いまだGWボケの中原です。このまま、週末に突入してしまいそうで怖いのですが、今日は、GW中に感じたひとつの出来事から。
一応?、僕も親なので、小学校3年生になるTAKUZOのお勉強をみてあげるのですが、彼が今やっている算数の文章題の問題というのが、まことに読んでいて面白い。
ワンセンテンスで述べると、
「文章題の正解」と「リアルワールドの正解」がビミョーに「ズレ」ていること
が興味深いのです。
たとえば、下記のような問題。
【問題】今、82ページの本を読んでいます。一日9ページずつ読んでいくと、何日で読み終わりますか?式と答えを書きなさい。
せっかくなので、皆さんもぜひ考えてみてください。これ、昨日、TAKUZOがやった問題です。
・
・
・
・
・
この問題はこたえを見ますと、こう書いてあります。
式は 82÷9=9日 余り1
で、このままだと「ひっかけ」に見事にひっかかり、ドツボにドンなわけですね。
余り1ページに関しては、もう1日かけて読まなきゃならないから(すごい理屈ですね)、
9日+1日=10日
解答書を読むと、答えは10日と書かなきゃならない、とあります。
これって、算数の問題としては「まー、わからなくもない」んだけど、よくよく考えてみると「わからなく」ないですか?
だって、リアルワールドなら、読書の最後の日は、
「あっ、TAKUちゃん、最後の日だけ、10ページだわ。いつもより1ページ多いけど、これで終わりだから、まとめて読んじゃいなよ!」
にならないですか?
で、答えは9日(笑)。
でも、9日って書いてたら、不正解だよね、算数的世界では。
TAKUZOも、この問題は意味がわからない、と申しておりました。
「なんで、最後の日は1ページだけ読むの? 最後の日に10ページじゃだめなの?」
親としてなんと答えたらいい??
▼
もうひとつだけ。
こないだTAKUZOが面白いことを言っていたのは、下記の問題。
【問題】今日、劇場には、昨日より81人多くお客さんが入りました。今日の入場者は4050人でした。昨日は何人でしたか?
この問題、皆さんは、どう感じられますか?
・
・
・
・
・
この問題を読んだTAKUZOは、こう一言、いっていました。
「あのさー、ふつーさ−、昨日のお客さんの数がわからない場合ってさ、どうしてそれより81人多いとか、わかるのかなぁ。。。」
要するに、この問題は「さんすうの問題」としてはわかるけど、TAKUZOが疑問に思っているのは、リアルワールドでこの問題の状況が「ありえなくない」?と聞いているのですね。
面白いね。
うーん。
確かに・・・今日の「お客さんの入り」と「昨日と今日の入りの差」を知っているけれど「昨日のお客さんの入り」については知らない劇場マネジャーって、なかなかシュールだよね。
▼
今日は、文章題とリアルワールドの違いについて書きました。
これに関する僕の立ち位置は比較的マイルドです。僕はこの問題には研究者としての立ち位置よりも、親としての立ち位置の方が先行してしまいます。
口角泡をたてて「文章題のナンセンスさ」に怒り狂う気にはなれないし、「それをリアルワールドに近づけろ」と言う気にもなれない。程度の問題はあるだろうとは思うけれど、そもそも文章題の世界とリアルワールドの世界は「違う」から。
むしろ、我が子には、文章題とリアルワールドが「違う」ということを批判的に読み解き、いったん「理解した」うえで、「文章題」をゲーミフィケーションして、笑い飛ばして欲しい。そのうえで、リアルワールドを「力強く」に生きて欲しい、と思います。この「文章題」と「リアルワールド」をメタにたって「批判的に読み解く力」には興味がありますね。
そして人生は続く
投稿者 jun : 2015年5月 8日 05:42
言葉とは「日常習慣」である!? : 「GWボケ」から「子どもの言語発達」まで
言葉とは「日常習慣」です。
見事なGWボケというやつで、ここ1週間何も文章を打っていなかった僕は、ほれ、このとおり、うまく言葉がでてこず、「言葉とは日常習慣である」というこの書き出しをつづるまでに、26分もかかってしまった(笑)
あれ、文章の最初って、「何」から書くんだっけ?
で、26分(笑)。
習慣を壊してしまうと、毎日書いていたブログも、書き出しすら、こうなります(泣)。
これに、ゆるく関連してーいや、本当は少しもゆるく関係していないけど、敢えて無視して・・・
言葉とは「日常習慣」である
思考とは「日常習慣」である
とは僕の強く信じている持論でもあります。
で、今日は、この持論を形成するのに影響を与えた研究を紹介しようと思います。
この研究では、研究者が、いくつかの社会階層に属する親子42組に密着し、その子どもの言語発達の様子を、数年にわたり丹念に分析した研究で、もはや古典中の古典といってもいいかもしれません(Hart, B. & Risley, T. R.著「Meaningful Differences in the Everyday Experience of Young American Children」)。
僕は言語発達も発達心理学も専門外なのですが、かなり前に(いつだったかな・・・)、この本を読む経験があって、それから、やっぱり
「言葉や思考にとって日常習慣って大事なんやな」
と思うようになりました。自らも親になってからはなおさらかもしれない(僕はあまりできていない・・・めちゃめちゃ禁止語だらけだけど・・・)。
書籍の詳細な説明は、詳しくは本を見て欲しいのですが、本書が明らかにしたのは「親のかかわり」と「子どもの言語発達」の関係です。
著者らは、いくつかの社会階層に属する「親の子どもへのかかわりかた」と「子どもの言語発達」の関係を丹念に観察・調査した結果、
1.ハイクラスの子どもの3歳の言語発達能力は、ロークラスの親の言語能力を超えていること
2.ハイクラスの親から子どもへの話しかけの頻度は、最も話しかけた親 が一定時間に800回であるのに対し、ロークラスの親は50回であったこと
3.一定時間に、ハイクラスの親は、ほめる回数は前者が30回であったのに対してロークラスは6回であったこと
4.子どもに投げかけられ る否定・禁止語の回数は、ハイクラスの親が1回に対し、ロークラスの親が5回であったこと
5.結局、このようなかかわりからロークラスの子どもとハイクラスの子どもには言語発達上、差が生じていること
6.ロークラスの子どもたちが、ハイクラスの子どもに追いつくためには、週で数十時間の集中的な学習を行う必要があること
などでした。ごめんなさい、古い読書メモを見ながら書いているので、もしかすると細かいところはズレがあるかもしれません。が、おそらく、そういうことです。
親の日常的な、しかし、長期の関わり方、その日常習慣によって、本当に決定的な言語の差ーそしておそらくは思考の差が生まれますね。
というわけで、言語は「日常習慣」なのよ(かなり無理矢理・・・笑)。
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今日は、「GWボケで日常習慣が退化しているために文章が書き出せない」という事実から、何だか知らないうちに、「子どもの言語発達に対して親の日常的かつ習慣化した関わり方がいかに影響を与えるか」という話題になっちゃいました(笑)。
前後は同じ「習慣」でも、まったく意味もニュアンスも、すべて異なるけど(笑)、この論理のぶっ飛び方も、GWボケということで、許してください。このロジック展開は、論文的には「不可」、ビジネス書的には「可」くらいかな。
でも、お話したいことはわかって?いただけましたでしょうか。
小生、熱烈GWボケ中です。
少しずつリハビリしていこうと思います。
そして人生は続く
投稿者 jun : 2015年5月 7日 05:57
スタンプラリー化するインターンシップ!?:「失われる実践性」と「社会科見学化」
「最近、インターンシップって、本当に形骸化しているところもでてきているんですよ。
スタンプラリーみたいに、インターンシップに「いくつ」か行くかを「目標」にする大学もでてきています。企業は3つは回って、スタンプをもらってきてね、という感じです。
やれ、じゃあ、実際にインターンシップに出かけてみたら、企業によっては1時間とか2時間で、少し企業説明をして、最後にお土産を渡して終わるインターンシップをやっているところもでてきているんです。まるで社会科見学ですね」
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ご迷惑をおかけするといけないのでお名前は差し控えますが、最近、「スタンプラリー化するインターンシップ」について、心ある方々との集まりで、話題になりました。
僕は採用の専門家でも、実務家でもないので、このような事態がどの程度生まれているのか、詳細なデータを持ち合わせていません。また現在提供されているインターンシップのすべてで、このような事態が進行しているとは思いません。中には教育的・実践的にも素晴らしいインターンシップが存在するのでしょう。
しかし、世の中の最先端の動きに敏感な方々が集まるその会で、そのような話題が共通して語られるということは、それなりの信頼性のある出来事なのかなと個人的には判断しています。
採用研究では、よく採用手法の弁別可能性が語られます。つまり、書類選考、面接、リクルーター制度などなどのあまたある採用手法が、どの程度、応募者の応募に正の影響を与えうるかを探究しているということです。
インターンシップは、採用活動として見た場合、いわゆる「Work Sample」ーすなわち、小さな仕事を前もって与えてみて、その成果をみて選抜を行うことの一種になると思うのですが、その弁別可能性が高精度であることが知られています。
ま、あたりまえですよね。実際に仕事をさせてみて、個別に判断するのですから。この「実践性」と「個別性」こそがポイントです。
しかし、こうしたインターンシップですが、ここ数年の日本の就職市場・採用の動きでは、全く異なったかたちで導入がなされます。
就職協定の見直しをふくむいくつかの要因によって、新卒一括採用が「部分的」に瓦解し始め、「採用時期」について「1億走抜け駆け状態」が先行する。
そうすると「採用」こそはしていないものの、「1億走抜け駆け状態を実現するための体のよい手法」として、インターンシップは注目を浴びるようになりました。
要するにワンセンテンスでいうと、こういうことかと思います。
「もう時期なんて守りませんよ。もちろん、うちは採用活動は行いませんよ。単にインターンシップを提供しているだけですからね」
このように「インターンシップ」が雪崩をうって「マス化」して導入され始めました。もともと「実践性」と「個別性」を大切にする手法であったのにもかかわらず、「マス」を裁かなければならないため、「短時間」で実施しなくてはなりません。
採用担当者の方々のご努力には頭が下がりますが、こうした状況で生まれうるのが、上記のような状況が起こるのかなと思います。もちろん、すべてがすべてそうしたインターンシップばかりではないことは付記しておきます。
しかし、マスで進行するインターンシップは、先ほど述べました「実践性」と「個別性」とは「対極」にある世界です。
かくして、
「スタンプラリー化するインターンシップ」
ないしは
「社会科見学としてのインターンシップ」
が生まれることになるのかなと思います。
このような動きの中で、大量にインターンシップを引き受けざるをえなくなった企業は、採用担当の負荷が増します。企業によっては大変なご努力をなさっている担当者もおられると伺っております。お疲れさまです。
かつて採用は「季節労働」といわれていました。その仕事が、「通年労働」と言われるようになったと、風の噂で聞きました。
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今日はインターンシップについて書きました。
インターンシップに関しては、大学別で提供機会に差が設けられており、ある一定以下の大学であると、インターンシップに参加することすら難しくなっているという話も伺います。
もしそうした会社が、採用では「学歴不問」をうたっている一方で、インターンシップでは「学歴有問?」を実施しているのだとしたら、まことにその矛盾は香ばしいですね。
就職は「矛盾だらけの世の中」が「鏡」みたいにうつっている場面にも思われてきます。
世の中も「矛盾だらけ」、就職も「矛盾だらけ」
その中をわたしたちは生き抜いていかなければなりません。
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あっ、TAKUZOとKENZOが起きてきました。GWだっていうのに、いつもと同じ、ぴったり6時30分だね。
今は7歳のTAKUZO、1歳のKENZOが、就職をする頃、この国の就職慣行はどのようになっているのでしょうか。親としては、そんなことも気になります。が、そんな先のことは、どうせ世の中は変わるので、うち捨てておきましょう。
ま、そんなことより、朝ご飯でしょうか。
そして人生は続く
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投稿者 jun : 2015年5月 2日 06:27