「組織を変える」とは「ねちょねちょ小宇宙」の中でもがき続けること!?:「流れる水」と「燃え続ける火」を見つめながら!?

 専門家や学者を「簡単にやりこめる方法」というものを、皆さんはご存じでしょうか?

 別の言葉でいえば、

 その人が、「ある特定の領域」の専門家や学者であるかどうかを「簡単に見抜く方法」をご存じでしょうか?

 といってもよろしいかと思います。

 さて、何でしょうか?

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 それは「ある特定の領域」でもっとも重要だと思われる「概念」を素朴に問うことです。

 組織の専門家や学者を「困らせたい」あるいは「見抜きたい」と願うのであれば、こう問うてください

 「あのー、そもそも組織って何ですか?」

 あるいは、学習の専門家や学者を「やりこめたい」と願うのであれば、こう問うてください。

 「あのー、あなたのいう、そもそも学習ってなんですか?」

 そうすれば、その人が「真摯」な専門家や学者であれば、

 「うーん・・・いや、それは」

 と考え込むはずです。
 なぜなら、ある特定領域の、しかも、もっとも「中心的な概念」というのは、その定義からして論争があり、簡単に答えを出すことができないからです。真摯な人であれば、ここで、何と答えてよいのか、少しは悩むはずです。逆に、何の疑問も持たない人は、「どこかの誰かがつくった定義」で、唯一自分の知っている定義を述べるはずです。
 
「専門をもつ」ということは、そういうことです。
「専門をもつ」ということは、「わかること」が増えることであり、簡単に「答えられないこと」が増えることでもあります。

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 2日前から述べておりますように、今週の僕は「学習週間」のまっただ中におります。学んでいることは「組織変革」なのですが、結局、突き詰めて考えますと、

「組織とはどのように変わるのか?」

 という問いは、

「そもそも、組織をどのように見なすのか?」

 という、さらに深い問いと密接につながっていきます。結局、問われているのは、

「あなたは、そもそも、組織をどのように見たて、どのようなものとして見なすのですか?」

 ということです。
 昨日、学び、そして議論していたのは、2つの組織の伝統的な見方についてでした。下記にメモを示しますが、たぶん、これだけ見てもわかんないと思います(笑)。が、勇気をだして?、少しだけ下記に論じてみましょう。

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 左の見方は「組織を1対1の因果関係が集まる束」のように見立てるモデルです。こちらを敢えて「シンプル1対1モデル」とよびましょう。

 この場合の組織観にたてば、「組織が変わる」ということは、ある介入を行う前と後で、組織の状態を「スナップショット的」に切り取り、「プレのスナップショット」をもって「診断」をしたうえで、「介入」を行い、「ポストのスナップショット」をもって評価することができます。
 介入者は、組織の「外」から客観的にそれらに取り組みます。簡単に申しますと、介入者は「ぬりかべ」のようなものに喩えられるかもしれません。
 これが伝統的で、しかもメインストリームの組織開発手法が前提にする組織観です。

 しかし、一方で別の組織観があります。
 それが「右の図」です。
 それは主に3つの意味で伝統的な組織観とは異なります。

 まず、第一のポイントは、組織を「組織を1対1の因果関係が集まる束」といったような安定的なものとみなさず、

「複雑な要素がねちょねちょに絡み合っていて、ときどき、外部から視認できるパターンを示すような、小宇宙みたいなもの」

 とみまします。「シンプル1対1モデル」ではなく、名づけて「ねちょねちょ小宇宙モデル」です。「ねちょねちょ小宇宙」の中には、時折、

 「あれっ、これ、見たことあるわいな!」

 というような「組織の病理」や「組織の癖」が「パターン」として現れる(Emergent)する場合があります。しかし、それは現れては消え、消えては現れていきます。

 第二のポイントは、先ほどが組織を切り取るときに、スライスの数が2つと少なかったのに対して、こちらでは、それが多くなります。

 プレ・ポストの単純な比較ではなく、そのつどそのつど「組織のなかのねちょねちょが、ねちょねちょ?していくプロセス」を、より多い捉えようとします。

 野中郁次郎先生の言葉に、

 「川」を見るな、「流れる水」として見ろ!
 「太陽」を見るな、「燃え続ける火」を見ろ!

 という言葉がございますが、まさに、ここで述べられていることは、そういうことです。

 第三のポイントは、それは組織に対して介入をする主体の位置です。前者のモデルの場合は、組織の「外」に客観的に存在し、観察する位置を保つことができましたが、後者のモデルにおいては、その位置は「内部」に存在しています。要するに、介入者は「組織のねちょねちょ」の中で、「流れる水」「燃え続ける火」をまさにとらえながら、

 1.今、組織はどのような状態にあるのか?
 (What?:組織の描写)

 2.それはどういう意味をもっているのか?
 (So what?:組織の中で起こっていることの意味づけ)

 3.これから何をなすのか?
 (Now what?:今後のアクション)

 を、そのつど、そのつど状況において判断しながら、決めてアクションをとり続けなければならないということになります。これが、複雑性を前提にした組織開発のあり方です。

 これは簡単にサラリと述べますが、「恐ろしいほど」シンドイことでもあります。
 第一にわたしたちは、このような因果関係に歓迎されない複雑さを可視化する概念的道具や方法論を持ち合わせていません。また第二に、自分も、また複雑の系の中の主体のひとつとして「巻き込まれて」います。
 後者の組織観は「述べること」は簡単ですが、「それを表明し、実践すること」は腹をくくる必要があります。

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 以上、やや戯画的に極端に「2つの組織観」を描き出しながら、ここまで学んだことをざっと論じてきました。
 
 結局、問われているのは

「組織に対して、どんな手法や打ち手をつかって介入するか?」

 ということよりも、

「そもそも組織を何とみなすのか? そして、組織にかかわるあなたは、どんな存在なのか?」

 ということが問われているとおわかり頂けるかと思います。

 僕の学習週間は、まだ、しつこく続きます。
 また、ひまを見つけて、「学びのお裾分け」をさせていただきます。

 そして人生は続く

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追伸.
 人材開発の「最先端」と「最新の知識」を、半期13回の講義で学びきる。今年も、僕の主宰するコース「ラーニングイノベーション論」が慶應丸の内シティキャンパスで開催されます。もしご興味があうようでしたら、参加をご検討いただければ幸いです。

ラーニングイノベーション論 2015
http://www.keiomcc.com/program/lin/

ラーニングイノベーション論 2015
(ご登壇いただく講師の先生方:心より感謝いたします)
松尾 睦先生(北海道大学大学院)
難波克己先生(玉川大学)
木村滋樹先生(ヤマト運輸株式会社)
守島基博先生(一橋大学)
服部泰宏先生(横浜国立大学)
金井壽宏先生(神戸大学)
島村公俊先生(ソフトバンクモバイル株式会社)
髙木晴夫先生(法政大学)
高尾隆先生(東京学芸大学)
中村和彦先生(南山大学)
吉田毅先生(ヤフー株式会社)
曽山哲人先生(株式会社サイバーエージェント)
中原 淳(東京大学)