「過去の経験を活かす」とはいったいどういうことか?:「過去のあてはめモデル」という「思考停止」を超えて!?
先日、Yahooニュースで「若手に負けぬための秘密の習慣」と題された羽生善治さんの記事を読みました(プレジデント提供)。
羽生善治さんといえば、7つの永世称号の保持している希代の将棋棋士でらっしゃいますね。おそらく知らない人はいないほど有名な方でしょう。
若手に負けぬための秘密の習慣
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141207-00014033-president-bus_all
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インタビューで、今年44歳になった羽生さんは、年齢を重ねるなかで、着手のあり方が変わってきていると、述べられています。
一連の記事の中で、個人的にもっとも興味深かったのは、本記事の底流をなしている「経験知を活かすとは何か?」ということに関する記述です。
以下、少し長くなりますが、記事を引用してみましょう。
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羽生:よく「経験知を活かす」といわれますが、それは経験してきたことが「そのまま活かせる」ということではないと思います。世の中も、自分を取り巻く情勢も変わりますから。
(中略)
羽生:経験知が活きるのは、そういう場面での対処ではないでしょうか。つまり「こうすればうまくいく」というより「これをやったらうまくいかない」ということを、いかにたくさん知っているかが大切であるような気がします。
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羽生さんの、この指摘は非常に面白いなと思いました。一般には「経験知を活かす」というと、
「今生まれている問題状況に対して、自分の頭の中に蓄積された経験の中から、もっとも似たものを選び出し、そのままあてはめて、問題を解決すること」
であると考えられがちだからです。
要するに、「経験知」というものは、「そのままあてはめられることが可能な処方箋」であり、それをもっている人であればー多くは年長者であればあるほど、賢い問題解決ができる、とされがちです。この考えかたにたつのであれば、経験を通じた問題解決とは「パターンマッチング」であるということになりますね。
羽生さんの上記の指摘は、これに対して、カウンターディスコースとして機能します。
僕が少し言葉を補わせていただくとすると、曰く、「経験知」とは「こうすればうまくいく」的な、そのまま適用可能なノウハウではなく、むしろ、「これをやったらうまくいかないこと」を棄却するためのリソースであるということになります。
どんなに年齢を重ねても、どんなに経験を重ねても、「自己」にとって「問題状況」とは、いつんも全く同じではない。
相も変わらず、「自分」と「問題状況」は「のっぴきならないかたち」で相対している。なぜなら、「世の中も、自分を取り巻く情勢も変わる」からであり、「自己」にとって、問題状況とは、「過去と同じもの」ではない。
だとすれば、過去の経験とは何の役に立つのか。
それは、「今、与えられている状況」に対して、「何をしたらいいのか?」という「そのままあてはめ可能な処方箋」は残念ながら提供するリソースにはなりえない。
むしろ、そうではなく、「今、何をしてはだめなのか」という「しないこと」を棄却するためにこそ、役に立つ、ということなのでしょう。
要するにね、もっともっと踏み込んで言うと、「問題状況に相対したときの自己の思考」は、「過去の経験」によって「停止しない」ということです。どんなに経験を積んでも、年を重ねても、やっぱり問題状況に向かえば、自分の頭で考えなければならない。
さらに妄想力をたくましくしてかんがえるのだとすると「過去の経験をあてはめるモデル」は、ヘタをすれば、思考停止を生み出してしまうよ、ということでしょうね。過去の経験は、思考しなければならない選択肢の幅を減らしてはくれるものの、選択肢を選んではくれないよ、ということですね。
非常に興味深いことです。
研究的に考えると、推論研究になるよね。
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週頭から暑苦しくて恐縮ですが(笑)、上記の羽生さんの記事を読んでおりますと、人材業界に広く流布している「経験学習モデル」は、「非常に素朴すぎる」と。自戒をこめて、感じざるをえません
そこでは「経験」とは「概念化」され、外部の問題状況に適用可能なリソースと位置づけられているからです。しかし、「経験が、新規の問題状況にとって役立つ」というとき、いったい全体、「どのような役立ちかた」をしており、
問題解決プロセスに対して、どのような貢献をなしているのか。
Kolbによって創始された経験学習サイクル論をいったん脇におき、僕たちは、もしかすると、そのあたりから考え直すべきときなのかもしれません。
そして人生は続く
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追伸.
KENZO、図書館で本探し。
投稿者 jun : 2014年12月 8日 06:47
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