「飲食店退店後の5メートル以内の本音」を探る!? : ヒアリングとアンケートの違いとは何か?

 飲食店を出て
 五メートル以内で
 ポロって出てくる
 「本音」を耳にしたい

 仕事柄「ヒアリング調査」というのをよく行います。ヒアリング調査というと、聞こえはいいですが、要するにやっていることは、組織の中で働く人々、マネジメントやリーダーシップに苦闘する人々に、貴重な情報をうかがい、その方のお話をひたすら伺うことです。それは非常に生々しい作業であり、言ってみれば、泥臭い作業です。

 先だっても、ある会社の方々の4名のマネジャーの方々に話を伺う機会をいただきました。
 アレンジしてくださった同社・人事のHさん、貴重な生の経験を話してくださった皆様に、本当に心より感謝しています。

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 ヒアリングに出かける際、いつも願っているのは、「対象の方々の住んでいる世界観」、「対象の方の創っている意味空間」に、短い時間ではありますが、ほんの少しでも、「振れること」ができれば、という思いです。

 ヒアリングは一回45分。
 忙しいビジネスパーソンに時間をいただくことは、あまりにも心苦しいので、一般的な聞き取り調査では平均ざっくり1時間なのでしょうが、僕は、最近、45分間に絞るようにしています。
 研究者としては、「できれば、あと15分!」と言いたいところなのですが、そこは現場の方々中心で行かなければなりません。ですので、45分間で、いかに、対象者の方のリアルに迫ることができるか、が僕の勝負です。

 しかし、この真剣勝負、僕の技量がなく、うまくいかないことも決して少なくないものです。ヒアリングの出来不出来は、「100%、聞き手の責任」です。
 本当は、その人のもっとも深いところにあるリアルな声」を僕がうかがえればいいのですけれども、そこは僕も修行中、なかなかうまくいきません。
 
「うかがいたいひと言」をあらわすメタファとして、それを喩えてみれば、それは

「わたしたちが、飲食店を出てから、五メートル以内でポロっと出てくるような本音のひと言」

 とも言えるのかもしれません。

 皆さんが、飲食店を出るとき、そんな「一瞬」はないですか?
 飲食店を出る。1歩、2歩歩き、店から少し離れたなと思うとき、もっともリアルな「店への本音」を皆さんは語りませんか?
 そして、今まで一緒に食事をしていた相方に、ふっとひとこと話しかける。

 「美味しかったね・・・あのハンバーグは・・・だねぇ」

 とか

 「いまいちだなぁ・・・何が惜しいのかなぁ・・・」

 ここで出てくるひと言というのは、決して、質問紙調査(サーベイ)をやって出てくる知見とは違うような気がするのです。

 それは「5・4・3・2・1」「はい / いいえ」のスケールでは、捉えきれないひと言。「飲食店を出たあとの五メートル以内の本音」は、店内にある店が用意した「お客様満足度調査」では捉えきれない本音が含まれています。

 もし自分に本当に技量があったら、そんなひと言をうかがえるようにインタビューにのぞみたいものです。

(サーベイや質問紙には、よいところも多々あります。それが捉えるリアリティは聞き取りの捉えるリアリティとは異なりますが、僕にとってはなくてはならない手法です。僕は方法論に関しては「恥知らずの折衷主義」をとっています。いいよ、何と言われても、恥知らずで!)

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 今日はヒアリング調査のお話をしました。
 自分としても「ガッツポーズ」を思わずとりたくなるヒアリング調査は、なかなか実現しませんが、それは「100%、聞き手の責任」。今日も修行を重ねるしかありません。

 しかし、難しい時間ではありますが、研究上のアイデアの80%を思いつくのは、僕の場合は、このヒアリングの時間です。現場の方々の「生の声」の聞き取りを重ねることで、「これだ!」と思える一般化可能な命題が浮かびます。

 お話を伺わせていただける方々に、今日も感謝です。
 そして人生は続く