「向かい同士」の仕事、「背中同士」の出会い:アサヒビール株式会社・福地茂雄相談役にお逢いしたときのこと

 先だって、北の街・美瑛を舞台に繰り広げられている異業種地域課題解決研修で、アサヒビールの福地茂雄相談役(アサヒビール株式会社元社長、会長、元日本放送協会会長)にお逢いする機会を得ました。

異業種5社のリーダーが集まる研修をいかにデザインするのか!?
http://www.nakahara-lab.net/2014/05/post_2222.html

 セッションは、本間さん(ヤフー自執行役員)のもと進行し、福地さんから、同社の改革にかかわる、様々なリーダーシップを伺う機会を得ました。
 非常に興味深いセッションで、僕自身、非常に多くのことを学ばせて頂く機会になりました。この場を借りて、心より感謝いたします。

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 福地さんのお話は、どれも興味深いものでしたが、その中でも、印象に残ったものがあります。

 そのひとつに

 昼は「向かい同士」で仕事をしろ
 夜は「背中合わせ」で飲みにいけ

 というお言葉がありました。

 この言葉の意味するところは、要するに、昼は「向かい同士」、職場のメンバーで切磋琢磨して、仕事に全力で向き合うことが大切だ。でも、夜は、敢えて職場を離れ、「ふだん、あまり会話をしないような人同士=背中合わせ」で接点をもて、ということだと思います。

「飲みにいく」云々は、アサヒビールさんらしいメタファであり、その骨子をワンワードでのべるならば「異種混交のネットワークの中に自分を置くことの大切さ」をおっしゃっていたのだと思います。「向かい同士」ばかりいると「固まっていく」。そうじゃなくて「背中同士の出会いをいかにつくるか」が大切だ、とおっしゃりたかったのだと想像します。

 事実、福地さんは、また別の機会に

「関係のない仕事」なんてない
「関係がない」と思いこんでいるだけ

 ともおっしゃっていました。
 想像力を働かせるに、昼間は「背中同士」の、一見「関係がない」と思っている仕事同士を「つなげること」ができれば、新たな経済価値や市場付加価値が生まれうるということをおっしゃりたかったのだと想像します。

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 夜、懇親会では、福地さんとお隣の席に座る幸運を得ました。
 福地さんは、僕から見れば、一回り以上異なる年齢であり、かつ、比類なきリーダーでありながら、僕の話を、そして同席した皆さんのお話を、じっくりと耳を傾けておられました。

 その様子は、まことに「自然体」で(大経営者に対して形容する言葉として不適当かもしれません)、

 リーダーとは「聞き上手」であること

 という福地さんの持論を地で行くような様子でした。アサヒビールを美味しそうに飲んでおられました。

 また福地さんは、多いときには1年に数百冊を読まれるような読書家だそうです。本屋さんで自分にとって今必要な本を読んでいると、自分の視野が狭まってしまうのを嫌らっており、敢えて、図書館に出かけて、本を借りて読まれているのだそうです。

 このことは、ヤフー株式会社の宮坂学社長に先だってお逢いしたときも、心底感じていたことですが、偉大な経営者はやはり様々なことを本から学び、語彙が豊かだな、というのが感じました。

本を「1トン」読め!?:1ヶ月に1冊も本を読まないスマホ時代!?に「多読」することの意味
http://www.nakahara-lab.net/blog/2014/07/111.html

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 今年になって、経営者の方々にお会いする機会をいただくことが多くなりました。組織の荒波をくぐりぬけ、経営のトップになられた方には、その言葉に重みやオーラを感じることがあります。僕自身、多くを学びたいと思います。

 そして人生は続く