家庭と仕事の「ポジティブな関係」をいかにつくるか?:ワークファミリーエンリッチメントか、コンフリクトかを分ける「絶妙の線引き」!?

 大学院・中原ゼミも残すところ、わずか1回。

 先だっては、M1(修士1年)・浜屋祐子さんの英語文献発表がございました。
 浜屋さんのテーマは、「仕事と家庭のポジティブな関係」!今回取り上げたのは「ワークファミリーエンリッチメント:Work Family Enrichment」の測定に関する研究でした(Carlson et al(2006) J. vocational Behav. 68(1))。

(アタリマエダのクラッカーですが、院ゼミでは、かなり真面目にガチに議論しています。大学院での僕の顔と、外での僕の顔が、相当異なると、コソコソ噂になっているようですが・・・。たぶん正確にいうと、大学の顔も2つあるように思います。リサーチ顔とアドミ顔。嗚呼)

 僕は、その道の専門家ではないので、以下は浜屋さんからの「受け売り」ですが、ワークファミリーエンリッチメントとは「仕事と家庭の双方がいかに他方に便益をもたらすかに関する概念」だといいます。

 これまで、この種の研究は、「仕事と家庭がいかにコンフリクトをおこすのか?」というネガティブな側面に着目する研究、すなわちワークファミリーコンフリクト研究(Work family Conflict研究)が多かったのですが、ワークファミリーエンリッチメントにおいては、それが「逆」になります。

 むしろ、「仕事生活が、いかに家庭によい影響をもたらし」、かつ「家庭生活が仕事にいかによい影響をもたらすか」が注目されます。

 実際のところは、仕事と家庭の関係は、ワークファミリーエンリッチメントもおこりうるし、ワークファミリーコンフリクトも起こりえるのですが、ワーク・ファミリー・コンフリクト研究と比べて、ワークファミリーエンリッチメントに関する研究は、理論的にも実証的にも遅れているといいます。

 浜屋さんによりますと、近年この研究群には、もうひとつの概念「Boundary Selection」が注目されているといいます「Boundary」とは「境界」ですので、要するに、「仕事と家庭の線引き」ということになりますね。

 すなわち、家庭と仕事のあいだに「どのような線引き」を行えば、エンリッチメント(ポジティブな関係)につながるのか、あるいはコンフリクト(ネガティブな関係)を引き起こしてしまうのか、ということに関する研究が進んできているといいます。
 とても興味深いですね。

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 僕なぞは、おそらく完全に「線引き」に失敗していて、、、というより、、、家庭も仕事も「ごった煮」になって「渾然一体としすぎて」いて、「あのー、意味不明な汁、できあがっちゃいました」状態ですので、この手の研究から学ぶことは多々多いです。

 仕事のことは家庭にダダ漏れだし、家庭のことは仕事にダダ漏れだし・・・まぁ、そういう「線引き」というか、「線無し」もありうるんでしょうか。一度も、この手のことを考えたことがありませんでした。
 いやはや、靴下ポイポイ男として生まれ、もうすこし、シャンとしなくてはならぬな、と思っているのですが、気づけば、そう思ったときから30年以上が経過しています。

 皆さんはいかがですか?
 仕事と家庭の「線引き」うまくいってますか?
 そして、
 あなたはワークファミリーエンリッチメント?
 それとも
 ワークファミリーコンフリクト?

 来週のゼミは感動のフィナーレ。なんと、研究報告の順番は「僕」なんだそうです(笑)。そりゃ、そうですよね。自分もきちんとやらなきゃね。
 さて、来週は、大学院生にご指導いただくことにしましょう。「中原君、あちゃー、ここロジック跳んでるよ」なんて、浜屋さんや田中さんに、ご指摘を受けるんでしょうか。

 さ、準備、準備。
 そして人生は続く

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追伸1.

【関連記事】「あれか?、これか?」の働き方か「合わせ技で、あれも、それも」か?:生きることと多重役割
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakaharajun/20140711-00037283/

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追伸2.

 今年のM1さんたちは、浜屋祐子さんと田中聡さんともに、よく1学期をサバイブなさいましたね。本当にお疲れさまでした。お二人共に順調に研究をすすめていらっしゃいます。もちろん、博士の大学院生さんたちも、それぞれごとに、今学期は収穫があったのではないでしょうか。このまま順調に進まれることを願います。
 夏には「源流合宿=古典を読み、概念の起源を辿る合宿」があるようですので、また頑張ってくださいね。