オーケストラの「リハ」を聴き、「リーダーシップ」を考える!?

 先だって、"オーケストラに聴くププロフェッショナルの学び"という、全く実験的な世界初!?のワークショップが開催されました。

 このワークショップは、坂口慶樹さんと山岸淳子さんが中心になって企画なさったもので、日本フィルハーモニー交響楽団の全面的な協力のもと、実現したものです。サポートには、いつものように、松浦李恵さんら学生スタッフが入って頂きました。坂口さんの安定的なファシリテーション、山岸さんの専門的解説は、非常に素晴らしいものでした。ご参加いただいたみなさま、そして坂口さん、山岸さん、松浦さんら学生のみなさまに、この場を借りて、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

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 "オーケストラに聴くプロフェッショナルの学び"は、巨匠指揮者アレクサンドル・ラザレフさんが行うリハーサル(バックステージ)を見学しつつ、さらには、本番のコンサートも見て、その二日間の変化を愉しもう、という、まことにラグジュアリーで、まことに実験的なワークショップです。

 ワークショップには、40名以上の方にご参加いただき、まずはリハーサル部分を体験しました。曲目は、マーラーの交響曲9番です。

 マーラーの交響曲9番といえば、マーラーの最高傑作にして、彼が死を予感して書いたものではないか、という逸話がたえない、何ともストーリーフルな曲です。

 最終楽章で繰り返される旋律は、何とももの悲しく、荘厳で、しかも終楽章の最終小節には、マーラー自身が「死に絶えるように」と楽譜に残していると言われています。

 先だっては、ラザレフさんの行うリハーサルを参加者の方々とともに鑑賞させて頂きました。このワークショップでは、「音楽をきっかけに、組織のことを考えること」が目的とされていましたが、僕が、リハーサルを見ていて、真っ先に感じたことは、

 指揮者を「理想的なリーダー」とすることは「妥当」なことか? 指揮者と楽団員のあいだの「リーダーシップ」を、一般的な会社に適用して考えることは「妥当」なことなのか?
 
 ということです。

 この背景には、よく巷間に流通するリーダー論、リーダーシップ論で、「指揮者」が「理想的なリーダー」として語られがちであることを示しています。

 オーケストラとは、いわずもがな「プロフェッショナル組織」です。オーケストラに入団する前も、入団テストのときも、そして入団後も、完璧な演奏をできるよう自らスキルを高めることが求められています。

 楽団員の方々は、世界的に著名な方もいて、そういうプロフェッショナルを指揮者は相手にしなくてはなりません。彼らは、常に指揮者の力量をチェックしています。常に駆動しているのは「力関係」です。この力関係のバランスが悪いと、指揮者<楽団員という構図がすぐに生まれてしまうそうです。
 ラザレフさんのリハは、時間ぴったりにはじまり、時間ぴったり、1秒たりとも遅れずに終わりました。どれだけ「関係」に気を遣っているかが、わかる印象的な光景でした。
 ちなみに、力関係がこれだけ微妙なのにもかかわらず、日本フィルさんの場合には、指揮者には、人事権はありません。

 このたびは、その様相を短い間でしたけれど、垣間見させていただいて、感じたことは、一般の企業・組織とは、すこし異なるリーダーシップのあり方でした。

 研究テーマ的にいえば、おそらく

「プロフェッショナル組織におけるリーダーシップのあり方」

 に関する研究になるのでしょう。先行研究もたくさんあるのでしょうが、まことに面白いテーマだな、と思いました。

 次回のワークショップは、日曜日です。
 コンサートを見て、皆さんで、対話を深める場をもつそうです。非常に愉しみにしております。