「大丈夫?」という気遣いの言葉が、「大丈夫じゃない相手」を追い込む可能性!?

 相手を気遣い、よかれと思って口にする言葉ひとつひとつが、必ずしも、相手のためにならない事態というのは、少なくないものです。

 最近、臨床心理学がご専門の倉光修先生(東京大学)と、ある仕事でご一緒させていただいているのですが、倉光先生とのやりとりの中から学ばせて頂くものは、誠に多いものです。心より感謝しております。

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 たとえば、昨日は、倉光先生との会話の中で、こんなことに気づかされました。

 たとえば、あなたが、今、なんだか浮かない顔をしている部下が気になって、声をかけるとします。あなたなら、上司として、どんな声をかけるでしょうか。素朴にもっとも瞬間的に脳裏に浮かんだ言葉は何でしょうか・

 僕だったらどうするかと一寸考え、脳裏に浮かんだ言葉は、ベタベタのセリフでした。

「ねぇ、大丈夫?」

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 でも、よく考えてみますと、このセリフは、奏功する場合もある反面、相手を追い込んでしまう可能性もないわけではありません。

 なぜなら、権力があり、ジャッジする側の人間から、「大丈夫?」と聞かれると、権力がない人間としては「大丈夫としか答えられない」という可能性もあるからです。
「本当は、大丈夫じゃない」としても、「大丈夫?」と迫られると、つい「大丈夫です!」と口にしてしまう。たしかに、そういう局面があるような気がします。なるほどなぁ、と思いました。

 相手を気遣うこと、相手の助けになること。
 本当に難しいことです。
 一片の言葉が、人を安心させることも、人を追い込むこともあるのだから。

 そして人生は続く。