日常に埋め込まれた「人をまとめ、人を動かすテクノロジー」!?:「日本型ちょめちょめ」を探して

 リーダーシップ(Leadership)
 チームビルディング(Team building)
 組織開発(Organizational Development)

 これらは誤解をおそれず、ディテールを無視して、ひと言ザクっとまとめれば、「人々をまとめ、動かすためのテクノロジー(言説)」です。
 組織論の教科書を見るまでもなく、これらのテクノロジーは、米国が中心になって発展してきました。その背景には、米国という国家が抱える社会的背景があるように感じます

「人々をまとめ、動かすテクノロジー」が発達するのは、逆説的にいえば、「ほおっておいても、人々がまとまり、動くことを期待できない社会的状況」が存在するからです。
 国家の成り立ち、そして、国家を構成する人々の考えが、多種多様で、モザイクのようで、テンデバラバラであればあるほど、その「あふれんばかりの多様性」をコントロールすることの社会的ニーズが高まります。

 かくして、「人を集めても、なかなか"組織"としてまとまらず、パフォーマンスをだすことができない社会状況」では、「組織をまとめるテクノロジー・アイデア」が、あえて言挙げされ、発達します。
 組織によっては、マネジャーになる前の、割合早い時期から、マネジメントの要諦として、これらのテクノロジーを、しっかり教えます。「人を動かすこと」「人をまとめること」を、きちんと教えるのです。それは、そうせざるをえない背景があることを見逃すわけにはいきません。

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 これに対して、日本ではどうか?

 細かいことをいうと、日本人とて非常に「多種多様」なのですが、ブログでは、その話はしません。一般的には、少なくとも米国ほどに、これまで日本の職場では、「人を集めても、なかなかまとまらない」ということが言説として流布することは、少なかったように思います。

 リーダーシップ、チームビルディング、ODといった諸機能が、日本の組織に存在しなかったか、というと、そうではないように思います。
 いいえ、むしろ、リーダーシップ、チームビルディング、ODといった、「バタ臭い概念」を使わずとも、それに類する機能は、組織・職場の日々の業務 / 組織・職場のコミュニケーションの中に、暗黙のうちに埋め込まれおり、それが敢えて顕在化することはなかったのです。

 敢えてノスタルジックに印象論でザックリ語りますが、日本の組織には、我が国に希有なものが、いろいろなかたちで発達しているのです。社内運動会があり、社内旅行があった。始業時は、朝礼があり、社是を唱和し、ラジオ体操からはじまる。社内ローンがあり、独身寮がある。
 新橋の赤提灯では、ビジネスパーソンが、会社を離れても、なぜか会社の話をしていた。そこには「会社は、いったい、何をしたいんですか?」という問いかけがあった。「みんなで頑張ったから、ここまでこれたよな、あともう少し頑張ろう」という会話があった。

 組織のどこに、どういう機能が何が埋め込まれているかは、その組織毎にさまざまなので、一概にはいえません。しかし、ここで、要するに言いたいことは、「組織・職場の日常」の中に、「リーダーシップ、チームビルディング、組織開発というテクノロジーでフィージブルになる効果」といったものが、埋め込まれていたのではないか、ということです。
 また、そうした諸機能が、日常の中に埋め込まれるものであったからこそ、日本では、マネジメントの要諦として、マネジャーにこれらのテクノロジーを、敢えて言挙げして、教えることは少なかったように思うのです。

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 しかし、時代は変わりつつあります。

 職場のダイバーシティが増し、様々な雇用形態、年齢、様々な国籍の方が働きはじめるようになる「現在の職場」では、これらのテクノロジーや考え方が必要になってくる局面は、おそらく増してくるのだと思います。しかし、問題は、それをどのように実現していくのか、ということです。

 先にノスタルジックに語った地平、その時分に、私たちは、もう後戻りすることはできません。
 とはいえ、一方で、わたしたちは「人を集めても、全くうまくまとまらないほど、多様である」わけでもありません。

 わたしたちには、わたしたちの「身の丈」、社会・文化的背景にあった「日本型りーだーしっぷ」「日本型ちーむびるでぃんぐ」「日本型おーでぃ」があるのだろうな、と思います。

 むしろ、ちょっと「なまって」、

 「りーだーすっぷ」
 「ちーむびるでんぐ」
 「おーでー」

 くらいがちょうどいいのかもしれません(笑)。
 なぜなまる必要があるか?
 うーん、明確な必要性か・・・むしろ、ないね(笑)。敢えていうなら、吉幾三的なニュアンスをだしたかっただけ。意味不明なので、真に受けないで下さい。

 迫り来るグローバル化の勢いの中でも、他国の概念をそのまま輸入することではなく、焦らず「日本型ちょめちょめ」ないしは「自社型ちょめちょめ」を模索することから逃げないことが、おそらく大切なのではないか、と思うのです。

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 昨日は、授業「ラーニングイノベーション論」に一橋大学の守島基博先生にご出講いただき、上記のような内容を含む、「日本型の人材マネジメント」についてご講義・議論させていただく機会を得ました。
 「日本型戦略人材マネジメント」についての先生の講義は、いつもながら、洞察と問いに富んでおられました守島先生にはお忙しいところご登壇いただき、心より感謝いたします。ありがとうございました。。僕個人は、昨日のご講義で、特に組織開発の項に興味をもち、上記のような感想を持ちました。

 そして人生は続く