OJTとは「何」の略語? おまえら(O) 自分でやれ(J) 頼るな(T)!? : OJTが成立する諸条件と脆弱性

 4月1日の朝、新年度、新学期です。

 今日から新しい学生が、キャンパスに通うようになります。
 ついこないだまで高校生だった方々が、大学生として通ってくる様子は、非常に新鮮です。今日は、駒場キャンパスで、たくさんの新入生と僕は出会うでしょう。

 会社では、新入社員の内定式、研修などがスタートする日でしょうか。皆さんも、真新しいスーツに身をつつんだ、新社会人を駅などで目にすることが増えるのではないでしょうか

  ▼

 これから数ヶ月間、日本列島は「組織社会化」の渦になります。
 新規参入者をいかに受け入れ、いかに組織に定着・順応させていくのか。特に一刻も早く「戦力化」をなしとげたい組織にとっては、智慧の働かせどころです。

 組織社会化といえば、研修もさることながら、OJT(On-the-job Training)も主要な試みのひとつです。
 しかし、OJTが奏功するためには「諸条件・制約」があるということを、これまで何度か論じてきました。また、パワフルなOJTの教育効果は、反面、脆弱性も有していることも、これまで論じてきました。

「OJT信仰・手放しのOJT礼賛」を超えて : OJTの脆弱性・成立条件を考える
http://www.nakahara-lab.net/blog/2012/09/ojtojt_ojt.html

 上記の記事においてOJTの脆弱性は、下記にまとめています。

1)OJTの学習効果は「師」に依存する
2)師の能力を超えることは、学べない
3)学習の起こるタイミングが「偶然」に依存する
4)OJTはともすれば「単なる労働」に変わり果てる

 ですが、もっとも深刻なことは、それが「単なる労働」になり果ててしまうことです。このことは、OJTが「働く現場」「仕事」の中に埋め込まれた埋め込まれた学習であることの証左でもあり、また制約でもあります。
 メタファを使って言うならば、OJTは「Learningful Work」でなければならないのですが、それが容易に「Learningless job(学びもクソもへったくりもない、単なる労働)」になってしまう、ということです。

  ▼

 畢竟、現場で実践されるOJTには、様々なアイロニカルな略語がついてまわります。
僕が知っているだけでも、こんなものがありますが、皆さんは、もっとご存じでしょうか?

 お前が(O) 自分で(J) トレーニング(T)
 おまかせ(O) ジョブ(J)トレーニング(T)
 おまえら(O) 自分でやれ(J) 頼るな(T)
 教える(O) 自信がないので(J) テストばかり(T)
 俺に聞くな(O) 自分でやれ(J) 頼むから(T)
 怒られる前に(O) 自分で何とかしろ(J) 頼む(T)
 お前(O) 邪魔だよ(J) 立ってろ(T)

(他にもあったら、お知らせ下さい!)
   ・
   ・
   ・

 現場は「殺伐」「殺気」だっていますね(笑)。

 上記の略語には「新人が能動性を発揮することへの期待」がかけられている?ように見えますが、「新人の能動性」とは、まず、組織・新人に関与する側の「社会化」があってこそ、生まれ、奏功するものであることが、近年の研究からわかっています。

 そして「組織・新人に関与する側の社会化」と、「新人の能動性」が組み合わさったときに、社会化が成功し、ひいてはチームにメリットが生まれます。

 あまりの忙しさに・・・

 おまえら(O) 自分でやれ(J) 頼るな(T)
 お前(O) 邪魔だ(J) 立ってろ(T)

 という思ってしまう気持ちは痛いほど、わかりますが、どうか大目に見てあげて下さい。新人は、何かをしたくても、全く右も左もわからない、暗闇の中にいるようなものなのですから。まさに「ひとりダイアローグインザダーク」状態、泣。

 どんなベテランでも、誰しも最初は「ノービス」であった
 そして
 人は誰かに支援されているか、他者を支援しているか
 そのどちらかしかないものです。

 そして人生は続く

 ---

追伸.
 OJTに関しては、下記のような記事も書きましたね。

最近、OJT(On the job training)が機能しないのはなぜか?
http://www.nakahara-lab.net/blog/2010/02/ojtxtute.html

---

追伸.
 先週末は、岐阜県・養老公園にお邪魔していました。滞在中、温泉につかりまくり、ゆったりとした時間を過ごしました。
 新年度、新学期、僕自身には、あまり変化はないのですが(笑)、2013年度も頑張りたいと思います! 引き続き、応援のほどいただけたとしたら、嬉しいことです!

Yoro Park from Jun Nakahara on Vimeo.