Connected Learning - グローバリゼーションの内側で「学習論」を考える!?
先週土曜日は、東京都市大学の岡部大介先生のところで主催された「Connected Learning」の研究会にお邪魔しておりました。
Okabe blog : 東京都市大学 環境情報学部 情報メディア学科 岡部大介 研究室
http://okabelab.net/blog/
Connected Learningは、この概念自体、いまだきっちりとした定義も、日本語訳もあるわけではないのですが、敢えて、ざっくりと説明するならば、
1) ある特定の興味関心をもつ個人たちが
(Interest-powered, Shared purpose)
2) 自らの自発的意志によって参加するオープンな学びの機会であり
(Openly Networked)
3) そこでは同じ志をもつ仲間のサポートを得ながら、
(Peer-supported)
4) 何かをつくりだす活動に継続的に従事し、
(Production-centered, Doing constantly )
5) そのことが、結果として、当人の能力形成・キャリア形成につながるような学習
(Academically-oriented)
のことだといえそうです。
Connected Learning Research Network
http://clrn.dmlhub.net/
この概念は、状況的学習論が勃興してきた1980年代後半に、大学院生であり、Cole, M.やSuchman, L.などののちに状況的学習論をリードしていくベイエリアの研究者のもとで薫陶を受けていたMizuko Itouさんらの研究者グループが、某財団の支援を得ながら、現在進行中でまとめている研究群だそうです。
今回、研究会では、この概念の理解、および、事例の検討など、多岐にわたる方面で議論がなされ、まことに興味深いことでした。
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研究会では、多方面にわたる議論がなされましたが、僕個人が非常に興味深かったのは、この概念と状況的学習論の言説空間の相違についてです。それらの概念はルーツは似ているにせよ、細かいところでいえば多々差がありますが、それを列挙することに、個人的にあまり意味があるとは思えません。
しかし、最も興味深かったのは、この概念が、グローバリゼーションや所得格差など、現在先進国をおそっている社会経済的な要因を背景にして主張されてきている概念であるということです。
つまり、
「学校における達成が、そもそも個々人の家庭の経済格差ゆえに、不平等になっている現状に対して、どのような学習環境が存在するべきなのか」
はたまた
「たとえ学校的学業成績に成功したとしても、それが必ずしも、就業や昇進などの社会的成功につながらない世界において、どのような能力形成空間が存在しうるべきか」
という問いを背景にして、学問的議論の方向性が示されていることです。そういうとき、個人はどのように振る舞うか、どのように学ぶか、そして生き残るか。アカデミックな議論の背景には、こうした生々しい現実がすけてみえます。
ともすれば、これまで「学習論の世界」「学びの科学の世界」は、現代社会論や社会経済的な要因とは「独立」して、Purely, Academically and Independentlyに探究されてきた傾向がなきにしもあらずなのです。つまり、非常に簡潔に述べると、社会経済がどんなかたちであろうと、それとは「独立」して、「学びのあり方」や「学びとは何か?」が探究されてきた。
今回の一連の議論をきいていて、それが変わりつつあるんだな、ということを今さらながらに感じましたし、そうなるべきだよな、と思ってきた、ここ10年くらいの僕自身の思いをさらに強くしました。
今回の研究会では、個人的には、約15年-20年前の理論の語られ方の違いに、隔世の感を感じました。今後、この概念、また、こうしたアカデミックな変化について、注視していきたいと考えています。特に、自分が探究したいと思っている「経営学習論」のあり方を考える(妄想・夢想!?する)うえで、今回の研究会は、とても大きな勇気をもらったな、という印象です。
間違っても、おそらく、やってはいけないことは、
「Connected Learningとよばれる、あらたな教育手法が生まれて、世界的に注目を浴びている」
とか
「Conncted Learningが変える学びの世界」
とかいう、「紋切り型の枕」や「キャッチーな言説の語られ方」を「避ける」ことなのかもしれません。その本質は「Connected Learning」が云々というよりも「現代社会の進展に呼応しながら、いかに学ぶ環境を整えるかを考える必要がある、という至極あたりまえのことであるような気がします。もしかしたら、Connectの「接続するところ」は、「Learningのあり方」と「社会のあり方」のConnectなのかな、とも邪推しました。
この概念の意味するところ、あるいは、その背景を冷静に、しかも、パッションをもって考えていきたいと思います。
最後になりますが、岡部先生、松浦さん、そして研究会に参加した皆様には、大変お世話になりました。また、週末に研究会に参加するというのは、家族の理解がなければ可能にはならない贅沢なことです。
心より感謝いたします。
ありがとうございました。
そして人生は続く
投稿者 jun : 2013年4月 8日 18:05
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