ヒアリングの鉄則:「その日のうちに記録すること」の意味

 ヒアリングの「鉄則」というのがあります。フィールドワーカーの「鉄則」でもあるので、特に経験のある方は、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

 そのひとつは「ヒアリングをさせていただいたお話は、その日のうちに、必ずフィールドノートに記録する」ということです。
「その日のうちに」というところが、「死守するべきポイント」です。その日一日あまりのハードワークで、死にかけ人形になって「はひー」とタワゴトをのたまっていても、それは「死守」せねばなりません。
「たったそんだけのことかよ、さっさとやれよ」とおっしゃる方がいらっしゃるかもしれませんね。
 でもね、一度やったことのある方は、絶対にわかると思います。ヒアリングやフィールドワークでただでさえ、頭をフル回転したあとで、さらに記録することが、どれだけハードワークなのかを。

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 このことは、学部時代から、厳しく指導を受けました。当時、僕は、2時間かけてフィールド先に通っていたのですが、一日の観察を終え、帰宅する頃にはもう夕方になっていました。
 で、そこからその日1日、見たもの、耳にしたことの記録がはじまるのです・・・そう「深夜丑三つ時」まで(笑)。

 やっているうちに「意識モウロウ子」ちゃんになったり、「居眠り狂死郎」になったりする経験を多々積みました。それでも、何とか、今まで生き残っています。人間、やればできるものです(笑)。

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「その日のうちに記録すること」

 このことがなぜ大切かというと、少なくとも僕の経験上、1日おいてしまうと、伺った話の50%は詳細が思い出せなくなるからです(ということは、厳しい教えを破ったことがあるということですね・・・自爆)。2日おくと、90%はお亡くなりになります。3日たてば「ご臨終」でしょう。

 もちろん「箇条書き」にできる程度の「粒度」でよいのなら、思い出せるかもしれません。

「現場では・・・て言っている人がいました」

 その程度の「粒度」しか求められないなら、3日寝かしても、大丈夫です。

 しかし「データ」として「意味のあるレベルの詳細さ」は、確実に復元はできません。「データにする」と言うことは、その場でどのような会話がなされ、どのような反応があったかを事細かに示す必要があるのです。そのレベルのディテールは、少なくとも僕の場合は3日で「死滅」です。

「死滅」ということは、「フィールドに出向いたとしても出向かなかったとしても、何もしなかったのと同じ」ということです。「ヒアリングをしても、しなくても、意味はない」ということです。
 これは、フィールドとして僕を受け入れて下さった方々、貴重な時間を費やしヒアリングに応えてくださった方々にとっても、失礼なことですね。

 ちなみに、この「死滅」レートは、ほぼ僕の記憶力が、やや機能不全に陥っているせいかもしれません。が、人は意外に思い出せないものですよ(泣)。どうかな? 僕だけじゃないと思うけどな。

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 というわけで・・・小生、今まさに、それをやっている最中なのでございます。
 今日は2名の方々に貴重なお時間をいただき、ヒアリングをさせていただきました(感謝です!)。これを、今、記録している最中です。

 というわけで、このブログ記事の意味がおわかりですね。そろそろ「現実逃避のブログ執筆」から、本来、今、小生が取り組まなければならないことに戻りたいと思います。

 ついつい「大切なこと」、「今やらなければならない貴重なこと」に取り組み始めると、人は「現実逃避」したくなるんですよね。

 僕は「弱い人間」です。

 貴重な現実を、記録に刻む。
 そして人生は続く。