これまで「日本人の海外勤務」を支えてきた3つの要因:学習・適応能力、強力な人事権、配偶者の理解

「経営学習論」の校正ゲラがかえってきたので、夜な夜な、あるいは、早朝に時間をとって、校正をすすめています。
フツーの時間(フツーてなんだ?)なかなか時間がとれず、大変苦労していますが、あと、もう少しですので、頑張ろうと思います。
てなわけで、はっきり言って、最近「眠い」です。もしかすると、目を開けながら寝ていることもあるかもしれません。指摘して下さい(泣)。

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 ところで、経営学習論の8章では、「海外勤務中の学習」がとりあげられているのですが、これに関連して先行研究を読み込んでみると、興味深いことがわかります。

 実は「海外勤務研究」の基本的パラダイムとして「海外勤務・成功失敗 / コスト分析パラダイム」というのがあり、各国のビジネスパーソンの海外赴任の分析を行っているのですが、それらの知見によると、海外赴任する日本人マネジャーと米国人マネジャー、どちらが「適応失敗・成果未達成」する確率が高いか、というと「後者の米国人」だとする研究が圧倒的に多いのです。

 米国人マネジャーというと、一見、インターナショナルな感じがしますが、どうも、イメージは異なりますね。むしろ、米国は、努力して、ノンネィティブが「(米国に)適応してくれる国」なんですよね。あるいは、徹底的に「米国」を「他の国に持ち込む国」といってもいいかもしれません(FacebookでNさんが教えてくれました、感謝!)。米国人が、努力して「他の国に適応する」ということの方が珍しいのかもしれません。

 ちなみに、ある研究知見によると、米国の多国籍企業のうち、海外勤務の失敗率(適応失敗・成果未達成)が30%を下回る企業は、全体の7%しかないといいます。場合によっては、業績を残せない海外勤務者が70%を上回る企業もあるといいます。7割が失敗って・・・ものすごい失敗率ですね。

 で、だからこそ、海外勤務時における様々な人事施策が、米国企業の場合、発達しています。海外赴任者に対するメンタリングはもちろんのこと、配偶者・家族に対する様々なサービスも充実しています。

 というより、やむをえず、それらを発達させざるをえなかったんでしょう。てなわけで、1990年代以降、急速に米国企業の「海外勤務時の人事施策」は発達しました。それによって、状態がかなり改善されており、むしろ、日本企業も安穏としてはいられない状況のようにも思います。

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 ところで、これは私見になりますが、日本企業の場合、海外勤務に関しては、「日本人の高度で優秀な適応・学習能力」と、「会社が発動する強力な人事権への諦め」と「配偶者と家族の協力」という3つに、これまで「甘えてきた側面」もないわけではないような気がします。

 ひとつめ「日本人の高度で優秀な適応・学習能力」はそのまんまですね。ある日突然、海外赴任が決まり、それまでの仕事を抱えながら準備をすすめ、飛行機に飛び乗る。現地では、日本での経験をレバレッジとして、現地人に溶け込み、彼らを指導する。これらが、どんなに大変なことかは、想像にあまりあります。このことは、もっと誇るべきことでしょう。

 ふたつめ「会社が発動する強力な人事権(異動)への諦め」というのは、たとえば、僕の調査結果によりますと、海外勤務の最初の打診があるのは、3割の方が「海外赴任から1ヶ月前」です。これは「内定」ではないですよ「最初の打診」です。内定はもっと後(泣)。

 かくも、日本企業の人事権(異動)は絶対的で、強力なんですね。まぁ、会社員である以上、「異動はしゃーない」にしても、もっとはやく打診できていれば、準備ができると思うのですが・・・。何とかなりませんかね?

 みっつめ「配偶者と家族の協力」は、場合によっては「犠牲」といってもいい場合もあるような気がします。ある日突然、「言葉も通じない外国」で住むことが決まる。「会社のいうことだから仕方がない」と配偶者と家族が、強力な人事権を受け入れ、時に我慢し、海外生活に適応してきた。その影響を見逃すわけにはいきません。

 ちなみに、手持ちのデータで分析すると「海外における適応×配偶者の海外適応」の間には、r=.484 p<.001の統計的優意な正の相関、「海外における業績・成果(7件のリッカートスケールによる主観的評価)×配偶者の海外適応」の間には、r=.275 統計的優意(p<.05)な正の相関が認められます。もちろん、これだけで「配偶者の海外適応」の要因を関連づけるわけにはいかないのですが、関連がないとも言い切れませんね。

 経験上、海外勤務を経験なさった方の約5%くらいは、配偶者・家族の「現地適応」の問題を抱える、と思っています。

 夫は仕事場で忙しく働きますが、配偶者は、家に閉じこもりきりになってしまう。子どもは現地の学校になじめず、不適応を起こしてしまう。そういった悲劇は、何も特別なケースとは言い切れません。
 そして、これまでのヒアリング調査の結果から、僕が現段階で言えるのは、「配偶者の不適応+子どもの不適応+現地において信頼できる他者が見つからない」の3つの重なると、海外勤務の失敗はかなりの確率で起こると思っています。

 以上、海外勤務を支えてきた「3つの要因」をあげました。組織によっては今後もこれらに頼っていくというのもありえるのかもしれませんが、僕個人としては、ここを仕組みとして整備することの重要性を感じます。「場当たり的な海外勤務」から、もう少し「仕組み化」する方向に、もっていけないのかな、というのが、研究者としての実感です。

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 ここ数年、(時間を見つけては)ホソボソと、海外勤務者のヒアリングをさせていただいておりました。そうしますと、皆さん、会社からの支援もあまりなく、ものすごく苦労なさっていることに気がつきます。
 
 本社からの支援もあまりなく、突然海外に行けと言われて、何とか仕事をこなす。慣れてきて、ようやく一仕事できそうだと思った頃に、突然日本に呼び戻される。そういう事例をよく聞きます。

 一方、海外勤務は「仕事の裁量が上がり」、「日本にいては逢えないハイクラスの人々との交流」があり、かつ「修羅場の宝庫」でもあります。それは見方をかえれば「リーダーシップの開発の機会」としてとらえることもできます。

 業績を出す海外勤務者をなるべく増やす。リーダーシップ開発の機会として海外勤務を活かす、そうした視点で、海外勤務の諸制度を整備していくことが、大切なことなのではないでしょうか。

「必要なのは海外で活躍する人材」「グローバル人材」と声高に叫ぶのなら、そして、社員に様々な挑戦とを求めるのであれば、組織がやるべきことが多々あるような気もします。

 今後、日本人の海外勤務は、さらに「若年化」し、しかも赴任地が「米国やイギリス」などの先進国から、「アジア・アフリカ・南アメリカ」といった「非英語圏の新興国」にかわり、さらには人数も増えていくことが予想されます。意図的かつ戦略的に支援施策、人事施策を整備していくことが、個人的には大切だと思います。

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■2012/06/11 Twitter

  • 21:56  共感>RT @hiroki_komazaki 更に、歴史上一度として、「親だけで子どもを育てた」時代など存在しません。近代化以前はムラや地縁共同体の中に病児保育機能が埋め込まれたいた。戦後も近くに住む近親者によって病児保育。それが都市化と核家族化で失われたのです  [in reply to Hiroki_Komazaki]
  • 21:54  全く共感ですね> RT @hiroki_komazaki 子どもが熱を出したら、親は看病してあげたいので、休める職場が良い。それはその通りでしょう。けれど、同時に親が看病できない時も、信頼できる保育のプロが側にいて、子どもと家族を支えるセーフティーネットは、あるべきなのです。  [in reply to Hiroki_Komazaki]
  • 21:52  夕方に行った「海外勤務」に関する連投ツイートですが、今、Facebookで議論が盛り上がっています。
  • 21:03  RT @shigejam: MITの心理学者シェリー・タークル曰く、Facebookは子供たちには「重すぎる」 http://t.co/1wP8fFVY
  • 18:06  (6)でも、海外勤務者のヒアリングをしていると、皆さん、会社からの支援もあまりなく、ものすごく苦労なさっていることに気がつきます。「必要なのは海外で活躍する人材」と声高に叫ぶのなら、やるべきことが多々あるような気もします。というわけで、海外勤務に関する連続ツイートでした。
  • 18:05  (5)日本企業の場合、海外勤務に関しては、「日本人の高度で優秀な適応・学習能力」と、「会社が発動する強力な人事権への諦め」に、これまで「甘えてきた側面」もないわけではないような気がします。
  • 18:05  (4)だからこそ、海外勤務時における様々な人事施策が、米国企業の場合、発達しています。1990年代以降、急速に米国企業の「海外勤務時の人事施策」は発達しました。それによって、状態がかなり改善されており、むしろ、日本企業も安穏としてはいられない状況です。
  • 18:05  (3)米国の多国籍企業のうち、海外勤務の失敗率(適応失敗・成果未達成)が30%を下回る企業は、全体の7%しかないとする研究もあります。場合によっては、業績を残せない海外勤務者が70%を上回る企業もあるといいます。
  • 18:05  (2)米国マネジャーというと、一見、インターナショナルな感じがするが、イメージは異なりますね。むしろ、米国は、努力して、ノンネィティブが「(米国に)適応してくれる国」なんですよね。米国人が、努力して、他の国に適応する、ということの方が珍しいのかも。
  • 18:05  (1)海外赴任に関する先行研究を読み込んでみると、興味深いことがわかります。海外赴任する日本人マネジャーと米国人マネジャー、どちらが「適応失敗・成果未達成」する確率が高いか、というと「後者の米国人」だとする研究が圧倒的に多いです。
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■2012/06/10 Twitter

  • 15:21  パーマをかけに行ったカミさんから、「サザエさんになった」とメールあり。なんと声をかければよいのか。。。そんなことないんじゃない? おーウリふたつ?
  • 12:42  久しぶりのお休み。しかもTAKUZOは保育園のハイキング企画へ。ということは、小生、夕方まで自由時間。というわけで、朝から激しく動いてます。さすがに午前中だけで、スポーツクラブ+美容院+温泉とハシゴしたら疲れた。でも、ここぞとばかりに動き回りたくなりますな。
  • 09:51  「ぼくは、こうしなさいとか、こうすべきだなんて言うつもりはない。僕だったらこうする、と言うだけだ。それに共感する人、反発する人、それはご自由だ」「他人が笑おうが笑うまいが、自分の歌を歌えばいいんだよ」(岡本太郎)
  • 08:37  情報感謝です!チェックしてみます、鼻眼鏡以外。>RT @hattosan フランスのラフォンのやつが、ツルの仕様とかユニーク @Reina_MORI コルビジェ眼鏡、にあうと思う RT @muryon74 この際、鼻メガネとかにしようよ!  [in reply to hattosan]
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■2012/06/09 Twitter

  • 23:52  僕含め参加者の方々は、皆さんの活動に新たな時代の夜明けを感じました。ぜひそれを深め、さらに次へ伝えて下さい!RT @wkm_xx: 橋本先生から電話、中原先生がムービーの件で褒めて下さったよとのこと。キックオフイベントはボランティア何かじゃない!沢山のことを学ばせて頂いた。
  • 23:41  今日実はお昼の休み時間に、研究室の院生さんたちと眼鏡を見に行きました。ゴールドのキラキラフレームを買う寸前で、躊躇し、結局買わず。ひよってしまった(笑)RT @munyon74 この際、鼻メガネとかにしようよ!RT パンチのきいた眼鏡を、そろそろ新調したい。  [in reply to munyon74]
  • 23:33  パンチのきいた眼鏡を、そろそろ新調したい。
  • 21:10  「危険だ、という道は必ず、自分の行きたい道なのだ。ほんとうは そっちに進みたいんだ」(岡本太郎)
  • 17:29  大学院入試説明会終了。中原研説明会・ブース展示におこしいただいた皆様、ありがとうございました。お疲れ様でした!
  • 06:33  今日は大学院の入試説明会です。16:00-17:00の各研究室のブース展示では、小生も、中原研についてご説明差し上げます。大学院生に率直な意見もぜひお聞き下さい。お待ちしております。 http://t.co/dlCPTBVY
  • 06:20  深刻な事態>法科大学院、撤退ドミノ、合格率低迷による負の連鎖「法科大学院修了生を企業や役所が採用するだろうという見通しは甘く実態は就職難」(日経)
  • 06:15  正社員の概念が「国境を越えた異動を受け入れる人」に変わるのかも。>ファストリ、人事制度世界で統一。正社員の評価基準統一・店長レベルまで国境を越えて柔軟に人事異動(日経)
  • 06:11  興味深い記事>人と人がつながる コミュニティーデザインの試み: http://t.co/n83M3uWH
  • 06:09  ほほー>ユニクロ、大学1・2年生に内々定、約10人に「大学が休みの時に店舗で仕事を経験し、卒業と同時に店長になることを目指す」: http://t.co/HyIb7aTv
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■2012/06/08 Twitter

  • 22:40  近刊「経営学習論 ー 人材育成を科学する」のゲラ原稿が、あがってきました。気合いをいれて校正します。8月、東京大学出版会より刊行の予定です! http://t.co/cEkspoyf
  • 16:04  「管理職になりたくない症候群」が加速。でも、全職種で賃金低下>下がり続ける部長と課長の賃金。部長クラスは平均54.8万円、課長クラスは42.2万。一般職クラスはほぼ横ばい(日本生産性本部) http://t.co/vV55ahO0
  • 12:52  2/16-17 都内での開催予定です!ぜひご参加を!RT @munyon74 おー。RT 学会の「冬の合宿」の企画をやることになった。思考を促すツール、対話を促すツールなどが一同に集まって、その意義を議論する「ワークショップツールコレクション」をやろうかな。  [in reply to munyon74]
  • 12:12  大学院コース会議。早く終わった。なぜか得した気分ですな。
  • 11:47  保田さん、ありがとう!(感謝)明日、入試説明会にお越しの皆様、お会いできますこと愉しみにしております!>RT @emiyasuda 本年度中原研の研究室ぽすたーかんせーい! 明日は入試説明会です!! http://t.co/0NGhXXnO  [in reply to emiyasuda]
  • 10:54  学会の「冬の合宿」の企画をやることになった。2月週末土曜日・日曜日、都内で開催。「ワークショップツールコレクション」というのをやろうかな、と思っています。思考を促すツール、対話を促すツールなどが一同に集まって、その意義を議論するみたいな感じです。
  • 09:19  密かに欲しい。なんのスタンプつくろうかな>色々使えそう!無印良品「写真で作れるスタンプ」 NAVER まとめ http://t.co/WVo0JR1N
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■2012/06/06 Twitter

  • 15:15  大学院授業「経営学習論」Fenwick(2010) Beyond individual acquisition. 職場学習論と人的資源開発.
  • 11:51  大学院・中原ゼミ:学習空間>RT @tatthiy 論文はこれ。Space matters Experiences of managing static formal learning spaces http://t.co/y5Hkb1cO
  • 11:50  大学院・中原ゼミ(@nakaharalab): Montgomery, T.の学習空間に関する論文。「理想的な学習空間がある、なんて憧れにすぎない。理想的ではないフツーの教室(学習空間)を、どのように扱うか」という問いのたてかたが面白い。#nakaharalab
  • 11:01  大学院・中原ゼミ:@shigejamさんご発表。ワシントン大学の研究:社員教育における、伝統的レクチャーベースの教育と、チャレンジ学習の学習効果の比較。後者が記憶保持・参加者間のコミュニケーションに優れる http://t.co/c0KOO15X
  • 11:00  大学院・中原ゼミ(@nakaharalab) : 重田先生(@shigejam)のご発表。チャレンジ学習 1)自分たちで解決可能な実世界の課題を、2)テクノロジーを活用しつつ学び(情報収集・情報獲得・情報公開)、3)問題解決法を発見し、実行すること #nakaharalab
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