「理論」と「実践」のあいだで : 「実践的とはいったい何か」考?

「よい理論」ほど「実践的」なものはない
 Nothing is so practical as a good theory.

 とは、社会心理学者Lewin, K.(クルト=レヴィン)の言葉です。「アクションリサーチの祖」としても知られるレヴィンは、「研究」と「実践」のあいだを往還しながら、おそらく、そこに葛藤と可能性をおぼえ、自らの理論と実践を発展させていきました。

 Nothing is so practical as a good theory・・・しかしこのあまりにも有名なワンセンテンスのうち、「実践的」というワンワードが、いったい何を指し示しているのか。ここには「意味の多様性」を感じます。

 つまり、「よい理論が実践的である」ということが、具体的に、「理論と実践のあいだの、どのような関係を想定しているか」は、研究者・実践者によって、認識の違いがあるということです。

 つまり、

 よい理論どおりに実践家が何かを実行していけば、よい実践が生まれると考えるのか(Theory-based practice:理論に基づく実践)

 あるいは

 よい理論は、実践家のインスピレーションを喚起し、彼が実践を組み立てる際のヒントを提供する(Theory-imspired practice:理論からインスピレーションを受けた実践)

 と考えるのか。

 これら2つのあいだに関する認識のグラデーションは、各学問分野によっても違うのでしょうが、研究者によっても相当の認識の開きがあります。何がよいとか、悪いとかの問題ではなく。

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 経営と学習の研究においても、この2つの考え方をめぐって、様々な研究者が様々なことを主張しています。

 ある研究者は、「実践の変革に役立つ研究とは、研究現場で見つかった法則を、様々に組み合わせ、現場に適応し、現場を変革し、さらには理論的にも発展をめざすことある」と述べます。この主張は、実践は理論に基づくもの、すなわちTheory-based practiceの考え方が色濃く反映されていると考えられます。

 別の研究者は、「実践の変革に役立つ研究とは、様々な実践の諸特徴を把握し、それらを俯瞰する少しだけ抽象化した原則をつくりだすことで、実践家のインスピレーションを喚起するものだ」と考えます。この考え方の場合は、理論とは実践家のインスピレーションをかき立てるもの、という風に考えられます。

 中には、そもそも「理論と実践」というダイコトミー(二分法)を拒否する研究者もいます。そうした研究者は、実践の変革も、研究知見の産出も、研究者と実践家のコラボレーションと対話によって実現可能である、と考えます。

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 人文社会科学の研究領域の場合、何らかの理論や法則ができた場合、その理論や法則がいつも決まった結論を導く可能性、すなわち理論の信頼性や妥当性は、自然科学ほど高くはありません。「理論と実践のあいだに横たわる、上記のような認識のひらき」は、この人文社会科学の知の特性に由来するものと思います。

 僕個人としては、どちらかというと「二番目の研究者の認識」に近いです。くどいようですが、僕の学問領域における、僕個人の認識が二番目に近い、という意味です。

 僕は、「第一の考え」のように、研究に特権的な立ち位置を認めることには、僕には違和感があります。
 現場のことを知っているのは現場の人ではないだろうか、と僕は思います。また、現場といっても千差万別。結局、現場のことは現場の人が、その現場の状況に応じて判断するしかない、と思います。

「第三の考え」は、一見、研究者的には「理想的」なのかもしれませんが(一番美しく見えるはずです)、これまでの様々な共同研究の遂行の経験から、その実現可能性(フィージビリティ)と持続可能性(サスティナビリティ)には、少しだけ疑問を持ちます。いろんな経験をしてきました、僕も。

 もちろん、僕以外の研究者が、どの立ち位置で研究をなさっていようと、僕は何も言うべきことはありません。また、各学問分野によって、これらの立ち位置には、差があると思います。上記は、あくまで、僕がそうだ、というだけの話です。

 理論と実践・・・昔からある問いですが、これは「古くて新しい問い」です。

 インスピレーショナルな理論を、生み出したいものです。
 そして人生は続く

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■2012/05/12 Twitter

  • 10:05  (4)宴会とは「選択拘束性・目的志向性が強い集い」であり、めざすところは「主従盟約」である。パーティとは「選択自由性・プロセス志向性が強い集い」であり、めざすところは「一期一会」である。(井上 1995)
  • 10:05  (3)一方、パーティとは、19世紀以降の都市社会への移行後に実施されるようになったもので、共食・共飲は宴会ほど重視されておらず、祝祭性は弱く、日常性は高い。特に欧米におけるパーティは食への執着はない場合が多い。プライベートな人間関係を発達させることをめざす(小林 1995)。
  • 10:04  (2)そう考えると、宴会では「手酌」が忌避される理由がわかるような気がしますね。「酒を相互につぐ」とは「共同体構成員の紐帯の確認」の儀式であり、手酌とはそれを犯すタブーであるということになる。
  • 10:04  (1)宴会とは、もともと農耕社会のひとつの共同体における季節事の祭祀に端を発し、共食・共飲・遊興(芸能)を主軸とした祝祭空間である。その目的は、共同体の構成員の紐帯の確認、帰属意識の強化をめざす。故に、意識的にハレをつくりだす(小林 1995)。
  • 07:03  自己メモ>新入社員意識調査「今の会社に一生勤めようと思っている」とする回答が過去最高60.1%。過去最低2000年20.5%と比較すると約40pt上昇、「社内で出世するより自分で起業して独立したい」過去最低(12.5%)(JPC): http://t.co/xHggxBKv
  • 06:58  自己メモ>「IT人材白書2012」(IPA) : 現状に満足、将来には強い不安を感じているが、自主勉強などの行動を起こさない: http://t.co/suQZ6N2d
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■2012/05/11 Twitter

  • 22:13  いつ聴いても泣ける。ナウシカレクイエム : http://t.co/bG9bLLGO
  • 22:00  ギックリ後1週間経過。今週、なんとか「腰痛」を乗り切った。まだ腫れているらしい。慢性化しないことを願ふ。
  • 15:54  「メディカルラーニングバー」第1回ダイジェストビデオ(Youtube): http://t.co/FDUoQ2q9
  • 10:44  札幌でもできるといいですね。ともに愉しめる仲間を募って RT @xtzyuji これは興味深いです。札幌でも出来るかな? RT お医者さんが医学的スキル以外も学べる環境を提供する「メディカル・ラーニング・バー」 http://t.co/SXDirwpS  [in reply to xtzyuji]
  • 09:23  あと、ラーニングバーの理論的背景をマニアックに知り、さらに読書をなさりたいのなら、こんな本棚をひそかに創っています。「Learning bar(ラーニングバー)理論的背景の本棚」 http://t.co/4flbwoEY
  • 09:23  ラーニングバーの「場づくり」のプチノウハウに関しては、小さな本を、以前、書きました。「知がめぐり、人がつながる場のデザイン」http://t.co/ZpEufsSG
  • 09:20  医療の世界でもラーニングバー!素敵な場ですね。様々な専門領域で、多種多様な場が生まれるといいですね。めざせ「学びの縁日」!>お医者さんが医学的スキル以外も学べる環境を提供する「メディカル・ラーニング・バー」 http://t.co/SXDirwpS
  • 06:54  「営利をめざすe-learning」にはデジャブ(既視感)がある。1990年代後半から2000年代前半にかけて。あの時代は「バーチャルユニバーシティ(VU)」と言われていました。
  • 06:52  「良い教育に必要なものは学友たちからの刺激と、世界的な頭脳を持つ教師と、実際の問題解決に時間を使うことだ」スタンフォード大学メディカルスクール、講義を廃止するという提案: http://t.co/oYYPrUm8
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■2012/05/10 Twitter

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■2012/05/09 Twitter

  • 22:33  7/6(金)小西貴士さんをお招きして「実践を記録すること、物語ること」研究会を実施しますが、小西さんのブログはこちらです。実践記録として素晴らしい写真がつづられています。 実践の記録を、実践に参加していない人に、いかにして伝えるのか? http://t.co/Qn90PxQA
  • 21:28  RT @tatthiy 5/22「プロフェッショナル人材の育成を考える」について抽選結果をメールいたしました!メールがまだ届いていないという方は、私(舘野)にご連絡ください。(数名ですがアドレスが間違っている方がおりました) http://t.co/aOaJKlqQ  [in reply to tatthiy]
  • 21:05  乙。番田先生にお世話になったのですよね。ありがとうございました>番田先生 RT @tatthiy 今日は学芸大学の「学芸カフェテリア」で講座 / この場所・仕組みは面白いなと思いました。学生さんもたくさんきていてびっくり。 http://t.co/hEPnQIIF  [in reply to tatthiy]
  • 21:02  (笑)お疲れ様です!RT @j_center これから残業なので、『ブタ入りヤサイマシニンニク少な目』で押さえることにした。中原先生と高尾先生の本にあった『大人は萎縮した子供』という言葉が頭をよぎった。  [in reply to J_center]
  • 18:29  7/6(金)小西貴士さんをお招きして「実践を記録すること、物語ること」に関する研究会を東京大学で開催します。募集人数は50名限定。小西さんからスライドを見せていただいたあとで、皆さんで対話できるとよいですね。どうぞお楽しみに。http://t.co/qsw8hHmH
  • 18:17  今年お引き受けしている研修の中には、民間企業のものに加えて、初等・中等教育の管理職の先生方を対象にしたものがあります。明日は、横浜市で今年副校長になった先生方に500名に対する研修です。ただいま最終準備中です、頑張ります。
  • 14:51  大学院授業「経営学習論」。今日はFang, Duffy and Shaw(2011) 組織社会化と社会関係資本。
  • 11:41  大学院中原ゼミ(@nakaharalab)Smith et al(2009) Authetic Leadership、ポジティブ心理資本、マネジメントに対する信頼、パフォーマンスの関係、実証的探究。#nakaharalab
  • 11:31  全3巻。2巻目「場づくりとしての学び」に、僕も1章書いています>「ワークショップと学び1 まなびを学ぶ」: http://t.co/HQTsmdcG
  • 11:11  大学院・中原ゼミ(@nakaharalab)木村君の研究課題。今後の研究計画。定性的なヒアリング調査の設計。#nakaharalab
  • 11:10  (2)僕の経験では、ヒアリング調査は、準備しすぎても、しすぎることはないです。事前に聴きたいことをしっかりまとめ、45分をデザインする。ただし、実際にヒアリングが始まったら、事前に考えてきたことは意識はしつつも、やりとり自体は、インプロヴィゼーションにまかせます。
  • 11:09  (1)社会人を対象にしたヒアリング調査でいただける時間は平均1時間。冒頭での挨拶と関係づくりの会話、最後の会話をのぞけば、実際にヒアリングできる時間は45分。この45分をどのように活かし、どのようなリアリティある話を聞き取れるか。勝負だね。
  • 10:15  大学院・中原ゼミ(@nakaharalab)島田さんの研究報告「日本企業に入社した元留学生の組織適応と定着に関する研究」データ分析結果の発表。上司は職場の元留学生にどう関わっているのか? #nakaharalab
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■2012/05/08 Twitter

  • 17:05  お読み頂きまことに感謝です!RT @munyon74 今更になりますが、「東大発2012」を読みました。面白かったです。@shigejam くんのブログに【解説】EPUB電子書籍「東大発2012」の楽しみ方」 http://t.co/3pdiRzYK  [in reply to munyon74]
  • 14:02  組織はストーリーテリングによってつくられる。リーダーとストーリーテリング>ステファン・デニング著・高橋正㤗・高井俊次(訳)「ストーリーテリングのリーダーシップ http://t.co/GA81gckU
  • 13:46  僕のブログ、NAKAHARA-LABに、iPhone・アンドロイド用にページができました。これらでアクセスすると、スマホ用のWebが表示されるはず。表示されてますか?http://t.co/bGYa5Dnp (@wakitake君、感謝!)
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■2012/05/07 Twitter

  • 17:39  新構想愉しみ>RT @yukianzai 東京大学新図書館構想 -新しい知の拠点、アカデミックコモンズとして- http://t.co/ChNLJieF  [in reply to YukiAnzai]
  • 17:38  GWの静かな生活が、「夢」のように感じるほど、休み明けバタバタしています。夢から醒めたくなかったなぁ。長期休暇は、休み前後に「日々の忙しさ」を「シワ寄せ」しますね。すんごいシワを生き残れ!>自分
  • 07:12  ブログ更新「かかわることの熟達、学習者を見る目、物語をつづる力」:http://t.co/BSC0mUzi
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