「誰も集まらないコミュニケーションスペース」を考える:「場のある場所」のデザインの話

 昨日「ラーニングイノベーション論」で、妹尾大先生(東京工業大学)とご一緒させて頂きました。
 妹尾先生には「知識創造の場のデザイン」という内容で、エクササイズありの素晴らしいレクチャーを、いただきました。ありがとうございました。この場を借りて、心より感謝いたします。

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 妹尾先生は、「場」というものを「(複数の人々に)共有される動的なコンテキスト」であると捉えることができる、という話をなさっておられました。

「新しい知識」が生まれる「契機」になるものは、そうした「場」において、メンバー同士が「相互作用」を行い「知識転換」がはかられることにある、とのことでした(このあたりの詳細は、ブログには書きません。知識創造理論の原典にあたってください)。

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 しかし問題は、その「場」のデザインです。
 いいようのない、この「場」というものを生み出すためには、わたしたちは、何ができるのでしょうか。それがアポリアなのです。

 古典的で、かつ、今でも支配的な説明としては、「場の源泉は、リーダーシップである」と言われてきました。この観点からいうと、「場のデザインを行うのは、リーダーの振る舞いによる」ということになります。

 しかし、少し考えればわかることですが、場を生み出すものは「リーダーシップ」に限定されるわけではありません。物理的環境だって、そのひとつでしょう。
 最近は、「場」を「場所」とよみかえて、「物理的環境を組み替えること」で、「場」を生み出そうというアプローチも存在します。妹尾先生も、その観点から、「オフィスのデザイン」の先駆的な研究・実践をなさっております。
 
 その上で、妹尾先生は、下記のような「鋭い警鐘」を鳴らしていらっしゃいました。これが非常に興味深く感じました。

 曰く、

「場」とは「メンバーに共有されるコンテキスト」です。「場所」があっても「場」が生まれるとは限りません。しかも「場」がいったん生まれても、それが継続して存在するとは限らない。「場」の「賞味期限」は短いんですよ。「場所」はいったんつくってしまえば、1年でも、2年でももつんですけどね・・・

 なるほど。これは非常に示唆に富む言葉だと思いました。
「物理的環境を組み替えることで、場を生み出そうというアプローチ」は、「場所」を「場」と置換していることを、すっかり忘れがちだからです。

 別の言い方をするならば、

「場所」さえつくってしまえば、「場」は生まれる

 と考えてしまいがちだからです。

 私たちのまわり、オフィスには「コミュニケーションスペース」が溢れていないでしょうか。「弁当を食べるためのスペース」ではなく、「仕事や会議の変革をめざしたコミュニケーションスペース」が。

 せっかく高いお金をだして、オフィスにそうしたコーナーを設けても、「ナレッジどころか、コミュニケーションすら生まれないこと」を、経験しておられる方も少なくないように感じます。

 つまり、

「誰も集まらないコミュニケーションスペース」
「誰も話をしないコミュニケーションスペース」

 です。

 多いんだな、これが(笑)。
 僕のまわりだけでも、片手にあまるほどの「場所」をあげることができます。

「場所」はあるのです。
 しかし、そこには「場」が生まれていないのです。
「場のない場所」といってもいいかもしれません。
「場が死んでいる場所」というのかな。

 そこには「場を生み出す努力」がなされていないのかもしれません。
またまた、「あいつ、またコミュニケーションスペースで、油売りやがって。仕事をしろよ」というようなラヴェリング・社会的スティグマがなされることを忌避しているのかもしれませんね。

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「場」とは、いいようもない、それ自体が「暗黙知」のような概念です。
「確実に場が生み出せるかどうかは、完全に予測・統制できない」という観点からいうと、「場の理論とは結果論である」と位置づけられる方もいらっしゃるかもしれません。つまり、何らの「事業・試み」が成功し、その理由を考えるうえで、その「成功事象」を、後付け的に「説明可能」にする概念が「場」であるということです。

 しかし、「場」という概念定義自体が、そのようなものなのだから、そのことを嘆いても仕方がありません。そして、こうした性格上、「場の理論」は、一面では理解されつつも、そのフィージビリティに困難さを感じた実務家の方は少なくないと思います。

 コスト意識に厳しい企業人なら、

「そんな、ぬるくて、かったるくて、ふわふわしたものに、つきあってられるか」

 という話になるのかもしれません。

 確かに、完全なる役割分業が想定されるような組織構造をもつ観点からいうと、「組織を構成する人々同士の相互作用」とは「無駄」です。リダンダンシーがあり、取引コストが生じる。あまりにも効率が悪いシステムのように感じてしまいます。
 事実、「モノを大量生産して勝つ」という戦略が、自分の組織において、まだ有効ならば、「ぬるくて、かったるくて、ふわふわしたもの」を検討する必要がないようにも感じます。

 しかし、新興国などなどの追い上げによって「モノを大量生産して勝つ」という戦略が採用できなくなりつつある場合は、「ぬるくて、かったるくて、ふわふわしたもの」が頭をよぎります。
 つまりは、「追い上げてくる国々に、すぐには模倣されないような、高付加価値な大ホームランを生み出すことで勝つ」という戦略で事業拡張をめざすのならば、その「ぬるくて、かったるくて、ふわふわしたもの」につきあっていき、その中から「新たな付加価値」を生み出していくことが、どこかの局面で必要になるのだろうな、と僕は思います。

 あなたの周りの「コミュニケーションスペース」には、人が集っていますか?
 そこでのコミュニケーションは、どのようなものですか?
 そこから何が生まれましたか?

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■2011年6月23日 Nakahara Twitter

  • 23:20  成城ナーサリィスクールの皆さまには、先日取材で大変お世話になりました。素敵な学びの場ですね。感謝です!RT @makimuramaho 成城ナーサリィスクールHP更新。東北のお友だちに「みんなができること」を考えました。http://bit.ly/kDdW4G @snsmm
  • 23:17  楠田さん、ご出版おめでとうございます!@ponyohrb RT 最近Twitterはじめました。著者の楠田より@nakaharajun: 興味深い。これからの人事が担う役割とは何か?:楠田祐・大島由起子 (著)破壊と創造の人事. http://t.co/9F0c5UL"  [in reply to ponyohrb]
  • 23:07  すごい、衝撃ですね。こういうビデオを見て、TAKUZOには「世界って広いね、いろんなすごい人がいるね!」って知って欲しい。>RT@saoino Lady GaGaなら子どもにはこちらをぜひ。10歳娘は、ものすごく衝撃を受けてました。http://t.co/y5mPZzL
  • 21:08  (3)異なる社会背景をもった人々に、どのように同じ目標をもってもらい、どのように協働してもらうのか。それは、現代のマネジャーに必要な経験のひとつかもしれません。
  • 21:07  (2)ちなみに、「場をつくること」は、"研修・セミナーの内製化"にとどまらない話だと思っています。その智慧は、現場で仕事をすること、職場をつくることに役立つと思うのです。
  • 20:57  (1)「うちの会社は、研修・ワークショップは"内製"している。でも、それを企画したり、運営できる人が足りてない。あるいはスキルに差がありすぎる。どうしたらいいんだろう」・・・今日3名の方から、同じ問いを投げかけられました。シンクロニシティ。そういうニーズってあるのかなぁ。
  • 16:34  妹尾先生の言葉がとても印象的でした。妹尾先生ありがとうございました>「場」とは「賞味期限」は短いんですよ。「場所」はいったんつくってしまえば、1年でも、2年でももつんですけどね。
  • 16:20  (2)コミュニケーションスペースをオフィスに設けても、コミュニケーションが生まれない、新たなナレッジが生まれるわけではない。「誰も集まらないコミュニケーションスペース」って多いんだろうな。。。
  • 16:19  (1)「場」とは「メンバーに共有されるコンテキスト」である。「場所」があっても「場」が生まれるとは限らない。。場がいったん生まれても、それが継続して存在するとは限らない。(妹尾大先生の言葉)
  • 13:47  小生、おすすめの方法です。気が楽になります。論文が書き終えるかどうかは別問題ですが。RT @qurihara 習慣として身につけたいです。RT 例のごとく、「謝辞」から論文を書きはじめる。実際には、1文字も書いてない。みんなに感謝、うるうる。もうすでに書き終わった気がする(笑)。  [in reply to qurihara]
  • 10:42  また、例のごとく、「謝辞」から論文を書きはじめる。実際には、1文字も書いてないが。うーん、みんなに感謝、うるうる。もう、すでに書き終わった気がする(笑)。
  • 06:41  メイキング動画面白いですね。http://ow.ly/5od3G RT @sanu22 NHKBS「額縁をくぐって物語の中へ」(http://is.gd/hwR2yZ)を見るとどんな良いことがあるか妻と議論中。1.美術館に行くのが楽しくなる、2.美術を見る観点が増える・・・  [in reply to sanu22]
  • 04:30  ポスト311の家庭支出のあり方は>日常的な支出は節約する中でも、子どもの教育は重視(子供を持つ母親に対する生活意識調査2011・矢野総研) http://ow.ly/5o5W5
  • 04:24  政府「グローバル人材育成推進会議」中間まとめ:英語教育強化や留学推進。今後10年間で18歳人口の約10%にあたる11万人程度が、20歳代前半までに1年間以上の留学や在外経験を持つこと推進(日経)
  • 04:20  むむむ。「4年ぶりに減少した会員数回復を狙う」とのこと>ベネッセ、動画で「夏季講習」8月3日から10日 中学1年生から3年生向け。USTを利用。動画の閲覧は無料。会員以外でも受講できる。講師は社員が担当(日経)
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■2011年6月22日 Nakahara Twitter

  • 23:15  7月初旬に高尾先生にお逢いするので、そのときにスケジュールをあわせて、お伺いさせていただきます!よろしくです!RT @improlabo_2001 中原先生ぜひ1度おこしください RT 即興実験学校。インプロのテーマをTwitterで募集する方式。  [in reply to improlabo_2001]
  • 21:57  平野智紀君(@tomokihirano)の実践。鑑賞+対話。とても面白いですね>「対話型鑑賞 in 原美術館」 : http://ow.ly/5nFKQ
  • 21:54  WIREDに人事ネタが掲載されるのは希ですね>Facebook社も活用、従業員評価システム『Rypple』:従業員が大量のフィードバックを頻繁に受けることが、迅速で効率的な業務につながる(WIRED):http://ow.ly/5nFyL
  • 21:45  次回、中原研のカラオケに参加するときには「Poker face」いきます(笑)。「はっぴぃじゃむじゃむ」は3歳のソング、卒業したようです。RT @yumiwagatsuma たくちゃんカラオケでGAGA様ですかー。はっぴぃじゃむじゃむききたい。  [in reply to YumiWagatsuma]
  • 21:25  誰でもできるミュージアムワークショップ、いいね。こういうのが僕の思う「教育工学」ですね!>RT @tomokihirano ミュゼオバトル:誰でもできるミュージアム・ワークショップのすすめ! http://bit.ly/fTLJQV  [in reply to tomokihirano]
  • 21:23  Lady GaGaにハマるTAKUZO。ちょっと過激すぎるわな。 http://instagr.am/p/GLL0T/ : http://ow.ly/5nDO7
  • 06:57  ヒギンズの論文のいくつかは、米国NYのローファームの人たちが研究対象者ですが、たぶん、それも身近な「縁」なのかも、と勝手きままに想像しました。あと、彼女は今、ハーバード教育大学院で教えているのが印象的です>RT @tkanai1954 ヒギンズ「キャリア・インプリント」
  • 06:55  笑> RT @tkanai1954 ヒギンズは旦那がバクスターにいたので、キャリア・インプリントという本で、どうしてバイオベンチャーを起こすひとは、元バクスターの人が多いのかという問に、キャリアの刻印という考えで挑んだ。のろけの本だ!  [in reply to tkanai1954]
  • 06:50  「海外市場向けビジネスを支える人材の育成が課題」> 企業の経営及び人材のグローバル化対応に関する調査(東京都) http://ow.ly/5nfrr
  • 06:46  どのくらい利用が生まれるんだろう。興味深い>理化学研究所、世界一のスパコン「京」、企業に貸します 3日で1000万円超(日経)
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