最近、会議や打ち合わせの時間が長くなっている、ひとつの理由

 最近、僕のまわりに起こってきた「変化」のひとつに、「会議や打ち合わせの時間が長くなったこと」があります。

 311以前はひとつの打ち合わせで、平均1時間程度を確保していたものが、時によっては1時間30分程度の時間を確保するようになりました。研究室で打ち合わせをしていても、なかなか1時間では終わらないのですね。ですので、場合によっては1.5倍、通常時は1.2倍くらいの時間を確保しているのです。

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「会議や打ち合わせ時間の長時間化」という現象が起きるのは、なぜでしょうか。
 もちろん、一義的には、「震災をいかに乗り越えるのか」という難題に対して、皆が、智慧を絞っている機会が多いから」ということになるのでしょうが、「もうひとつの意味」もあるように思います。

 会議や打ち合わせで、具体的な仕事の話に入る前に、「震災のこと」「原発のこと」「余震のこと」など、この1ヶ月私たちを襲ってきた様々なものごとに関して、「語る時間」が増えているように思うのです。

 別に「ねー、震災について語ろうよ」という感じで、誰彼が促しているわけではありません。むしろ、自ずから、何となく、その話につながっていくところが多いように感じます。

 まず、私たちをおそった「出来事」を、いったん「棚卸し」して、お互いに語り、整理し、慰めあってからでないと、なかなか「仕事の話」にたどり着かない。「日本を復興するためには、経済を回す必要がある」ということを誰もが承知していながら、この突然あらわれた危機を乗り越えるには、「少しだけ時間がかかっている」ということなのでしょうか。
 もちろん、無理して、すぐに仕事の話に入ることはできますけれども、何となく落ち着かない気もする、という不思議な感覚でしょう。何て言ったらわかるかな。。。

「311のとき、わたしは高層ビルにいましてね・・・窓から外を見ると、他のビルが、ゆらゆら、揺れてるんですよ。」
「原発はどうなるんですかね・・・」
「昨日の余震のとき、わたしは・・・をしてたんですよ」

 今もなお、災中にいる人々の口からは、様々なストーリーやエピソードが語られます。その物語は、非常に多種多様で、ひとつとして同じものはありません。それぞれの物語に、時には慰め、時には驚き、時には共感する。そして、徐々に、日々の仕事の話題に徐々にスライドしていくのです。
 すべてとは言わないまでも、こうしたプロセスを含む会議や打ち合わせが多くなっているため、今までよりも、より多くの時間がかかっているような気がします。もちろん、どこまで一般化可能なのかは知りません。また、そのことがよいことなのか、悪いことなのか、という価値判断を、僕はしません。

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 震災は、東日本にいる多くの人々が共有可能な出来事です。そして、今なお、「災中」に生きている私たちは、その中で、ともすれば「正解がなく、後戻りできない、多くの場合二項対立的な意志決定」を迫られることも少なくありません。
 私たちは、「見えないもの」に苛まれながら、今、「様々な不安」を軽減するために、「淡々」と仕事をしています。その様子は、外部から見ると奇異なものに見えるかもしれません

 人によっては「こんな状況で、よく淡々と仕事できますね!」とおっしゃる方も少なくありません。しかし、「こんな状況だからこそ、淡々と仕事をせざるをえない」のだと僕は思います。
 自分の仕事に集中することは、過剰な不安を軽減し、「自分にできるかたちで経済に貢献しているのだ」という意識を持つことができるという意味で、二重のメリットをもっているように感じます。実際、震災そのものも予断をゆるさぬ状況ですが、同時に日本の経済にも、余裕はそれほど残されていないでしょう。

 しかし、一方で、「淡々と仕事に向かう」ためには、時には、「311」や「見えないものへの不安」を、時に意味づけたり、消化する必要があるのだと思います。そのひとつの機会が「長時間化する会議・打ち合わせ」に見てとれるような気がしています。

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 けだし、今はまだそういう時期なのかもしれません。
 生産性のことは気になりますが、「会議・打ち合わせに時間をかけて取り組むのも悪くないな」と最近は、思います。しかし、一方で、こういう「語り」のプロセスを「踏まざるをえない」ような「深刻な状況」が、なるべく早く、よい方向に向かうことを願います。
 自ずからはじまるストーリーテリングの機会によって、私たち一人一人の震災ストーリーが、リストーリー(Re-story)され、気分が晴れやかに、仕事に迎える日がくることを願ってやみません。

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■2011年4月12日 Nakahara Twitter

  • 14:09  と思ったら、揺れてる。結構強い。連続してますね。研究室の本棚が揺れてる。
  • 14:09  アクセンチュア高森さん、重本さん来研、共同研究の打ち合わせ。吉村さん、論文指導。吉村さんのテーマは「校長のリーダーシップが、学校のソーシャルキャピタル・学校改善に及ぼす影響過程」。
  • 13:15  注目の取り組みですね。先日被災地をおとずれた方が、被災地の情報環境復旧が急務であることを教えてくれました>震災の支援に役立つ情報関連活動:情報支援プロボノ・プラットフォーム:http://www.ispp.jp/
  • 10:45  (2) 「東大発2011」でインタビューに伺ったのは、チームラボの猪子寿之さん、横浜副市長の山田正人さん、社会起業家の山本繁さん、「リストラなう」のたぬきちさんなどです。お忙しいところありがとうございました。どうぞお楽しみに。
  • 10:44  (1) iphone電子書籍アプリ「東大発2011」では、「働く。」というテーマのもと、学生がインタビューを行い、テクストと映像を制作しました。アプリは近々無料公開させていただく予定です。
  • 10:35  「メディア創造ワークショップ」の学生作品(電子書籍:iphoneアプリ)をチェック中。@shigejam先生とやってるよ。
  • 09:36  東京は震度4だったんですね。大学研究室は本が少し落ちてたくらい。ANNEX303、302も無事を確認。少しものが落ちた程度かな。
  • 09:00  笑。焦ったんでしょうね。僕も車内でドキドキしてました。願わくば、本当に地震をとめていただけると、助かるのですが。RT @CHNPK: 銀座線の車内アナウンス「ただいま地震が発生しましたため、地震を止めております」 落ち着けw
  • 08:22  注意しなきゃね、なんて、ついさっき、朝食のとき、話していたばかりなんですよね。まだまだ、私たちは「災中」を生きてますね。ご安全に!RT @pomepoku: 最近また頻発してますね。> QT @nakaharajun: 揺れた。電車緊急停止。
  • 08:11  揺れた。電車緊急停止。
  • 07:10  確かに自宅での娯楽消費が増えた気がする>東日本大震災後、遠出を控えて「お部屋でエンターテインメント」:自宅でDVDや配信映像の鑑賞などをする人が増加(日経新聞)
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■2011年4月11日 Nakahara Twitter

  • 17:18  まだ揺れてる・・・ずっと揺れてる気がする。
  • 16:55  なんか、急激に忙しくなってきた・・・。
  • 12:09  大変勉強になりました。関係論的発達論の専門書。それにしても、最近、慶應義塾大学出版会の本を読むことが多いなぁ。元気ですね。 > 鯨岡竣(2011)「子どもは育てられて育つ:関係発達の世代間循環を考える」(慶應義塾大学出版会)http://ow.ly/4xeMo
  • 12:04  第一段階の分析終了。大枠でいい感じ。研究会メンバーの皆さん、愉しんでね > ALL
  • 12:02  興味をもってくださってありがとうございます。個人的には、いわゆる「イノベーション研究」と「人材育成研究」の架橋を行いたく思っています。RT @rnarisaw 大変興味があるテーマです。RT 「イノベーション志向の職場風土」と「個人の学習」の関係をさぐる  [in reply to rnarisaw]
  • 10:09  日本生産性本部さんとの共同研究。データ分析開始。「新しいことをやっていこうぜ」という「職場風土」は、「個人の学習」に対して、どのようなメカニズムで、どのような影響をもたらすのか?
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■2011年4月10日 Nakahara Twitter

  • 11:57  はい頑張ります。これから公園に行きます。道中、また一波乱ありそうだけど(笑)。RT @kaz_hase 長年子ども達に接してます。TAKUZOくんのようなお子さん、大好きです!!4歳頃は、母語運用能力が飛躍的に伸びるときなのですね。頼もしいです。がんばってください。  [in reply to kaz_hase]
  • 11:56  「親は、ベスト盤を、子どものために、よかれと思って選んでしまう。そして、子どもの本当に聴きたい曲に限って、ベスト盤には入っていない」(重松清「小さきものへ」)
  • 11:51  いやいや、参ります。特に、僕との間に「距離感」らしきものがあります。言うときは「ガツン」と言うので、僕を避けてる(笑)。RT @ayatana 第1次反抗期と呼ばれるものです。すでに「自我」が芽生えているのですね。RT TAKUZO、いっちょまえに「反抗期」?  [in reply to ayatana]
  • 11:47  TAKUZOをプール教室へ連れて行く。いやー、それにしても、最近のTAKUZOは扱いが難しい。「あー言えば、こう言う」「ふくれる」「いじける」「腐る」・・・。いつも、そうだという訳ではないのですが。。。4歳で、もうはや、「反抗期」か? やれやれ、どうしたもんか。
  • 09:06  (森有正にとっての「体験」と「経験」の違い2)「(経験とは)"経験の内容"が絶えず新しいものによって壊されて、新しいものとして成立し直していくもの」(森有正・哲学者)堀他(2006)「生涯学習と自己実現」より引用
  • 09:06  (森有正にとっての「体験」と「経験」の違い1)「(体験とは)経験の中にある一部分が、特に貴重なものとして"固定"し、その後の、その中のすべての行動を支配するようになってくる」(森有正・哲学者)堀他(2006)「生涯学習と自己実現」より引用
  • 09:06  (森有正の経験論1)「(経験とは)抽象的に知っている言葉に、本当に"内容"を与え、"本当にそれを定義するもの2を、私たちに与えてくれる"場所"」(森有正・哲学者)堀他(2006)「生涯学習と自己実現」より引用
  • 08:30  パパはこちらを見てる Concert for Japan, Japan Earthquake Relief Fund : http://ow.ly/4wQGp 息子TAKUZOは、ゴーカイジャー。
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■2011年4月9日 Nakahara Twitter

  • 21:38  子どもたちへのメッセージ RT @shinkeguri いいですね RT @misamatsuda: 息子がもらってきた「新学期を迎える皆さんへ」by 文部科学省 http://bit.ly/enjNe6 いい。誰が書いたのかな。  [in reply to shinkeguri]
  • 21:08  上田信行先生とスカイプ大放談中。
  • 17:14  「君たちは社会に出て、良き職場や良き上司に恵まれて、社会生活を送るかもしれない。しかし、多くの場合はそうではない。有能だとは思えない上司。自分にあわない仕事内容。さて、どうする? 本当に"かしこい"というのは、そこから始まるのだ」(甲田和衛氏の言葉「生涯学習と自己実現」より引用)
  • 07:46  2012年度新卒採用人数、震災後も92%が「当初の計画通り」、ただし選考スケジュールを何らかのかたちで「延期」は53.1%。2011年度入社予定者の受け入れ体制特に変化はなし93.6%:『採用活動に関する緊急調査』(ディスコ・日本の人事部) http://ow.ly/4wsZq
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■2011年4月8日 Nakahara Twitter

  • 22:56  サントリーCM「上を向いて歩こう」、希望の歌のバトンリレー:http://ow.ly/4w1XM
  • 16:57  夏真っ盛りの七月、八月、どのように教育研究を維持するか。。。研究室の事業継続計画づくりを急がなくては。
  • 08:25  面白そうな本発見 > 生田久美子・北村勝朗編「わざ言語」慶應義塾大学出版会:本稿の目的は、わざの伝承活動において目指されている学びがいかなるものかを、わざ言語の意義を論じながら解明することにある(p3)http://ow.ly/4vEcL
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■2011年4月7日 Nakahara Twitter

  • 23:50  長かったので、ちょっと焦りました。震源は宮城県沖深さ40キロ、マグニチュード7.4だそうです(NHK)。宮城県が震源ですので、被災地が気になります。。。
  • 23:35  揺れてる
  • 23:31  これまでにも増してクロネコヤマトを利用させて頂きます>東日本大震災復興支援に向けた寄付について・ヤマトホールディングス株式会社「国内の宅急便の取扱い1個=10円寄付」、昨年度実績の場合「約130億円」の寄付の見積もり。 http://ow.ly/4vdT2
  • 18:36  被災した子どもが「ハタチ」になるまで、「子どもたちの学びと心のケア」をめざす「ハタチ基金」(カタリバ×日本財団)。その趣旨に僕も賛同しサポートしています。RT @hatachikikin 「ハタチ基金」ぜひ皆様のご支援を! #hatachi http://ow.ly/4v1kY
  • 16:22  ブログ更新しました。ポスト311:「見えないもの」と「見えてしまったもの」です。311は、これまで「見えなかったもの」を「見えるよう」にしてしまいました、というお話です。 http://ow.ly/4uY55
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