近況報告:科研+教育工学会課題研究のこと、などなど

 近況です。

 昨日から大学院の授業・ゼミがはじまり、またセンターの仕事も、吉見俊哉先生が新センター長に着任なさり、新体制でのスタートになりました。「忙しさ」に、さらに拍車がかかってきています。
 つい昨日まで、実は、僕は「最近、忙しいな」と思っていました。でも、それは「まやかし」でした。今日になってみると、いかに「昨日までが暇だったのか」を思い知らされます。

 さて、下記、教育・研究がらみの近況報告です。

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 ひとつめ。

 文部科学省科学研究費のプロポーザル(研究計画)が採用された、というご報告です。めでたいね。このプロポーザル作成には、大学院のゼミメンバー、特に木村君(M2)、吉村さん(M1)が深く関与してもらいました。ありがとう。すばらしい。

 研究題目は、

 学校のカリキュラム改善を規定するリーダーシップと社会関係資本に関する実証的研究

 という内容です。

「なに? 学校か? おまえは企業研究をやめたのか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことは1ミリもありません。わたしは企業研究をライフワークだと思っています。従来通り、企業の職場研究・人材育成研究は継続していきます。今年度も新たな定量調査・定性調査を実施する予定です。

 ですが、一方で、企業・組織研究で得た知見、あるいは、組織行動論の知見を、「学校」という「組織
」にも活かしていきたいと考えています。2年間の研究で面白い知見を出したいものですね。

 科研がらみといえば、神戸大学の金井壽宏先生らの研究グループの大型科研のプロポーザルも、採用されたそうです。おめでとうございます。こちらの研究テーマは「人材育成」そのものです。中原も、末席に加えていただいております。
 微力ながら、この研究に貢献させていただきつつ、これを新たな縁とさせていただき、自分自身も面白い新機軸の研究を生み出せればいいな、と考えています。

 2年目に入る科研研究である「ロボット共生科研」では、三宅なほみ先生が、本郷あたりに、いつでも子どもと子どもがふれあうことのできる環境を準備なさっているそうです。夏のロボットワークショップに向けて、こちらも、研究体制を整えています。

 外部の方々のお力や、研究室ゼミメンバーの力を借りながら、何とか成し遂げたいと思っています。

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 ふたつめ。
 
 日本教育工学会の大会委員長の東原先生からご連絡をいただき、僕が提出していた課題研究のプロポーザルが、大会企画委員会で正式に採録決定になったという通知を受けました。金沢大学の山田先生、学研の栗原さんらに、ご理解・ご支援をいただいたとのことです。この場を借りて御礼いたします。

 プロポーザルのタイトルは、

 組織・職場における学びの組織化

 です。

 趣旨分は、下記のとおりです。

 近年、病院、企業を中心に「組織・職場における人々の学習をいかに組織化するか」に関する研究が注目を浴びている。仕事に必要な知識や技術を、様々な他者の支援やコミュニケーションの中で、仕事の経験を通じて学ぶことを意図したものである。仕事の経験のみならず、顧客、上司、同僚、後輩など職場内外の人間関係、さらに異業種交流会といったインフォーマルな場での人間関係も、学習に影響を与える。

 しかし、このような組織における学習について、経営の観点では研究や調査が進められてきたが、教育・学習の観点ではまだ研究が始まったばかりであり、研究知見の蓄積、情報の共有、議論もまだ十分ではない状況にある。
 本セッションでは、組織における人々の学習・成長、および、組織内の知識獲得、知識共有、知識の制度化、学習棄却、組織社会化に関する研究に関する議論を行いたい。企業、病院、はてには大学や学校において(大学や学校等の教育機関も組織のひとつである)どのように人材育成を進めればいいのか、業務能力向上に資する組織要因は何なのか。組織の境界を越えた学習(越境学習論)など、組織と学習に関する幅広い研究の応募に期待する。

 教育工学会の大会において、組織の学習研究・組織の人材育成研究・組織デザイン研究などが、課題研究のテーマになったことは、これがはじめてではないかと思います。この「小さな小さな火種」を消さないためにも(笑)、ぜひ、皆さん、ご投稿をお願いできれば幸いです。

 山田先生らによる趣旨文をご覧いただければわかるように、

 1.組織は企業・病院・大学など、何でもOK(ひそかに入れてある)
 2.経験学習や職場学習も、何でもOK
 3.密かに組織学習論や人的資源開発論も視野に入れ込みつつ
 4.はてには「越境による学習」にも言及している

 になっています(笑)。
 これまで、「企業・組織における学習研究」は、日本教育工学会において、「生涯学習・企業内教育」という一般研究のカテゴリーで発表されていました。しかし、必ずしも、その研究が「生涯学習研究」と併置されることが適当だったのか、また、「企業内教育」というカテゴリーが適当だったのかについては議論が残ると思います。

 ぜひぜひ、こちらでのご発表を願っています。今年の学会は、9月18日・19日・20日、名古屋の金城学院大学です。僕もこちらのカテゴリーで発表します。
 
 一緒に発表しましょう!

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 人事の専門誌「JMAM人材教育」の新しい連載「学びは現場にあり!」の原稿がほぼ完成しました。編集の吉峰さん、ライターの井上さん、中原のコラボ作品です。初回は、獨協医科大学越谷病院 救命救急センターにお邪魔しました。同センターのセンター長の池上先生は大変お世話になりました。

獨協医科大学越谷病院 救命救急センター
http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-k/tcc/new/index.html

 獨協医科大学では、救命救急医と看護士の皆さんが、救命処置室の「横」にある、患者シミュレーターを使って、実践的な訓練を行っています。訓練のあとには、訓練自体を振り返る「内省の時間」が必ずもうけられます。ここでは、「シミュレーションとは何か?」「体験学習にとって必要なものは何か?」について深い洞察を得ることができました。

 次回の連載は、以前ブログでも紹介したことのある、鉄道整備株式会社です。ここでは、新幹線の清掃を行っているJR東日本のグループ企業です。ここでは、「モティベーションをどのように維持するか」「現場への権限委譲をどのように行うのか」などについて、深い洞察を得ることができました。同社の矢部常務取締役ほか、現場のマネジャーの皆さんには、大変お世話になりました。

鉄道整備株式会社
http://www.tessei.co.jp/

 その次は、某航空会社のCAの仕事の現場にお邪魔する予定です。
 非常に楽しみでございます。

 なお、ついこないだまで、人材教育で連載していた僕の「ゆるゆる、だらだらコラム」である「ラーニングイノベーション」については、JMAMのホームページで無料公開しています。PDF版も公開になりましたので、ぜひ、ご高覧ください。

ラーニングイノベーション
http://www.jmam.co.jp/column/column18/index.html

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【学生スタッフ急募】
 大学学部生・大学院生の方で、Learning barを手伝ってくれる方を、若干名、学生スタッフとして募集いたします。Learning barは、不定期開催で、次回は5月20日です。

Learning barとはどのような場か?(ビデオあり)
http://www.nakahara-lab.net/learningbar.html

次回5月20日のLearning bar
http://www.nakahara-lab.net/blog/2010/04/learning_bar_32.html

 仕事は午後5時あたりから、午後9時あたりとなります。仕事の内容は、会場の設営+飲み物や飲食物の運搬、配置+会場の誘導など、その他Learning barに付帯する業務です。

 特典としては、3点です。

 1つめは、Learning barは、通常4000円の入場料がかかりますが、それを無料とします。Learning barにはお食事+お酒がでますが、それが飲み放題+食べ放題になります。

 2つめは、バイト代を5000円支給します(交通費含む)。

 3つめは、「学びの場づくり」「学びのイベント」制作の実務について体験することができると思います。

 実際の仕事は、中原研究室の大学院生さんたちと、一緒に行っていただくことになります。「組織」「学び」などに興味をお持ちの方は、ご縁ができるかもしれません。

 もしご興味がおありでしたら、educejimu あっとまーく educetech.orgまでメールをいただけますよう、お願いいたします。