お寺カフェ、勉強カフェ、そしてラーニングバー

  松本圭介さんというお坊さんのお書きになった「東大卒僧侶のお坊さん革命」という本を読みました。

 松本さんは、東大をご卒業になったあと、「赤門から仏門へ」という言葉どおり(笑)、神谷町光明寺に入り、現在は休職して、インドのビジネススクールに留学なさっている方です。

東京ソース:松本圭介さん
http://www.tokyo-source.com/interview.php?ts=25

 松本さんは、光明寺で、お寺の音楽会『誰そ彼』、無線LAN完備の寺院内カフェ『ツナガルオテラ 神谷町オープンテラス』を企画・運営にかかわり、「死者の場所:誰かが亡くなったときに行く場所としてのお寺」だけでなく、「生者の場所:生きる人のための場所としてのお寺」のあり方を追求なさっているです。
 そのほか、超宗派の僧侶達が集うブログサイト『彼岸寺』などを企画・運営にかかわっています。

誰そ彼(ちなみに次回は4月10日)
http://www.taso.jp/

神谷町オープンテラス
http://www.komyo.net/kot/

彼岸寺
http://www.higan.net/

 本書では、こうした取り組みを紹介する一方、後半では、仏教界のあり方に様々な問題提起をしていらっしゃいました。

 宗派とは何か?
 僧侶とは何か?

 掲げているテーマはウルトラハードです。そして、新聞界と仏教界をメタファとして重ね合わせ、それをどのように変革していくか、を述べています。おそらく、本書で本当に述べたかったことは、前半で述べている内容ではなく、後者ではなかったか、と思います。

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 本書を読んで非常に印象深かった記述は、下記の3点です。

 1点目。
 曰く、

 お坊さんとは、世の中の常識に疑問を投げかけることによって、人に「気づき」のきっかけを与えるのが仕事だと思う
(同書より)

 それは、僕の言葉でいうならば、それは「ラーニング(learning)」なのかな、と思いました。分野も扱っている内容も全く違いますが、非常にシンパシーを覚えました。

 2点目。
 曰く、

 私たちがお寺で何かイベントを開催するとき、いつも意識していることがある。それは、プログラムの中に、必ず、仏教コンテンツを盛り込むこと。コンサートを開くだけなら、会場はお寺でなくてもよいはずで、せっかくお寺でやるからには、お寺としてやるべきことを忘れてはいけない。
(同書より)

 共感します。このことは、「場」や「イベント」にかかわる人は、重要だけれども、見落としがちになることではないか、と思います。

 つまり、場を構成するときに、

 「これを、自分がやるのは、なぜなのか? 」
 「その場は、自分のどんな強みやオリジナリティを体現している場なのか」
 「この場で自分がやるからには、絶対にコンテンツに入れなければならないものは何か?」

 の問いに答え得るようにしておかなければならないのかな、と思いました。

 ということは、結局、「場を構成する側の人自体が、常に自省的にならなければなりませんし、自分を研ぎ澄ませていかおかなければならないこと」を意味しているのだと思います。

 3点目。それは2点目とリンクしています。
 曰く、

 お坊さんのスタンダードからはずれて、新しいことをやろうとするならば、なおさら高いレベルで基本をしっかり押さえることが重要だ。そうしなければ、だんだんと先へ進めなくなる。
(同書より引用)

 共感します。
 「基本のない創作」というのは、僕は、あまり信じていません。それは、日本料理の基本を押さえていない創作和食の中には、「結局、何の料理なんだかよくわかんないもの」があるのと似てるのかな、と思います(笑)。
 新しいことをなすためには基本を高めなければならない。そう考えるならば、結局、「新しいこととをなす」とは、基本を否定することではなく、「さらに基本に丁寧に向き合うこと」と同義になるのではないか、と思いました。

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「誰そ彼」の方は、4月10日、「オープンテラス」の方は4月中旬から開催されるようです。僕も暇を見つけて出かけてみようと思います。

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追伸.
 そういえば、先日、ある雑誌を読んでいたら、「勉強するためのカフェ」ではなく、「勉強仲間を見つけるためのカフェ」があると目にしました。その名もズバリ、「勉強カフェ」というそうです。
 畢竟、勉強は最後は一人です。つまり、あなたが学びたいかどうか、あなたがわかりたいかどうかです。
 しかし、人間は弱い、僕も弱い(笑)。自律的に勉強することは、そうそうできることではありません。勉強する仲間がいれば、あるいは、同じ志をもった人が傍らで同じように勉強していれば、もしかすると、それははかどるかもしれません。
 とにかく、「勉強仲間を見つけるためのカフェ」というコンセプトが気に入りました。こちらも、ぜひ、近いうちに出かけてみたいな、と思っています。

勉強カフェ
http://benkyo-cafe.net/

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追伸2.
 5月20日のラーニングバーの申し込みがはじまっています。ぞくぞくと申し込みが押し寄せています。ありがたいことです。もっとも質問が多いのは、宿題に関することです。「140字」じゃなきゃだめですか、ということですね。

 答えは、いいえ!
 140字書かなくてもOKです。

 あれは、Twitterにもじって、あえて140字以内としたのであって、あまり根拠のある数字ではありません。すでに申し込まれた方の中には、答えが20字程度の方もいらっしゃいますし、中には139字の方もいらっしゃいます。

 完璧な答えをもってくることが「宿題の目的」ではありません。会場にきて、皆さんでお話をすることが一番重要なことです。気軽に答えを書いて、お申し込みいただければ嬉しいです。 

▼▼5月20日のラーニングバーのお申し込みはこちらです▼▼
http://www.nakahara-lab.net/blog/2010/04/learning_bar_32.html

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追伸3.
人事専門誌「JMAM人材教育」で、僕が連載していた「ラーニングイノベーション」の過去記事が、下記のWebサイトで公開になっています。ゆるゆるコラムです、、、真面目なものを期待しないように。

ラーニングイノベーション
http://www.jmam.co.jp/column/column18/index.html

 なお、8月から、本誌の方では、新しい連載「学びは現場にあり!」がはじまります。

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追伸4.
 昨年、富士ゼロックス総合教育研究所、中原、松尾睦(神戸大学教授)は、「職場における人々の成長」に関する共同研究(事例研究)を行い、その成果は同社発行の「人材開発白書2010」に結実しました。
 このたび、同社の坂本雅明さんが、その内容の要点をまとめ、人事専門誌「企業と人材」に投稿なさいました。原稿は、下記Webサイトにて公開されています。もしよろしければ、ご高覧ください。

企業と人材の記事

http://www.fxli.co.jp/co_creation/archives/000421.html