3行127字のマネジメント:株式会社サトーさんの"三行堤報"、そして「病児保育代支援」

 昨日は早稲田大学で講演でした。オーディエンスは、企業の役員層・部長層200名程度でしょうか。「伝わらない組織」というテーマで、企業内のコミュニケーションの問題を学習論の立場からお話ししました。コーディネータの根来龍之先生(早稲田大学)、早稲田情報技術研究所の加藤さんには、大変お世話になりました。この場を借りて感謝いたします。ありがとうございました。

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 講演でご一緒したのは、株式会社サトー 取締役経営顧問 藤田東久夫 氏さんでした。藤田さんの講演では、サトーさんが実施している"三行堤報"の試みがご紹介されました。

 "三行堤報"は、一言でいえば、社内版Twitter。トップが、社員からの様々な要望、気づき、不満等を聞くために行われています。社員の方は、日々の気づきを三行127字で、毎日提出する義務があるそうです。提出率は、99.96%。何らかの障害が生じない限り、全社員が提出しているそうです。

 1900名の社員の方々から提出された"三行堤報"は、社員の中の数名によって構成されているスクリーニングチームによって、スクリーニングされ、50通程度に減らされます。社長には毎日、その50通が送られるとのことでした。スクリーニングチームは、持ち回りで交代します。性別・役職・年齢などが偏らないように、「多様性」を重視することが重要である、とのことでした。

 社長以外にも、社員の書いた"三行堤報"は、全社員が見ることができます。自分の部門が、他の部門からどのように見られているのか。他の部門が察知した様々な情報で、自分の部門に関係するものはないか・・・DBを検索して"三行堤報"を見ている方も少なくないそうです。ナレッジマネジメントグループの野木りえ子さんは、そんなことをおつしゃっていました。

 "三行堤報"がきっかけで、女性社員の制服が替わったり、様々な日々の非効率なオペレーションが廃止されたこともありそうです。また、日本各地の社員から、様々な情報が寄せられるため、世の中の他社の動きがわかり、それがきっかけで数十億の「特需」を産んだこともあるとのことでした。

「トップがほしいのは、加工されていない生きたボトムの情報です。幹部の動きは経営会議でわかります。死んだ情報ではなく、生きた情報がほしいです。もしボトムの声がわかっていたら、経営会議で幹部が発言したときに「でも、現場は違うって言っているみたいだよ」と経営者が言えます。その言葉を経営者が口にできるかどうかは、非常に大きな意味があります」

 という藤田さんの言葉が印象的でした。

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 実は、この話、Twitterでも盛り上がりました。下記に「@heartlogicさん」がつくってくれた「まとめサイト」がありますので、もしよろしければご覧ください。他の方が行ったヒアリングでは「三行提報があるからサトーにマーケティングは必要ない」という言葉も聞かれたそうですよ。

まとめサイトです
http://togetter.com/li/16075

 また、同種の試みをしている企業としては、六花亭(お菓子)、マンダムさんなどがあるそうでした。また、最近では、企業のイントラネット内で運用するTwitterライクなコミュニケーションツール「Yammer」などが注目されています。ヒアリングでお邪魔したいくつかの会社で、僕も目にしたことがあります。

Yammer
https://www.yammer.com/

 企業・組織の中のコミュニケーションを見直す・・・いくつかの成功事例の背後には、形骸化して硬直化した、多くの企業の「週報」「日報」があるとは思いますが、興味深い試みですね。

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追伸1.
 ちなみに、藤田さんは"三行堤報"で博士号を取得なさったそうです。素晴らしいことですね。Ciniiで検索すると、様々な論文がでてきました。

経営者の意思決定と経営戦略 : リーダーシップ主導型の戦略論アプローチ(一般:投稿論文)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004741080

経営トップの能動的な末端情報の収集と選別及び処理について
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002973513

 また、下記のようなご著書も上梓なさっています。

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追伸2.
 実は、昨日はサトーさんのことで、非常に印象深いもうひとつの出来事がありました。なんと、サトーさんでは「社員の病児保育代金、会社が持つ」という試みをはじめるそうです。Twitterのフローレンス・駒崎さんのタイムラインで目にしました。
 これまで、サトーさんでは、看護休暇・病児休暇などが整備されていたそうですが、今回の試みは、それに加えて、さらに制度を拡充するそうです。

 働く女性、共働きの家庭にとって、最も障害になるのは「子どもが病気になったとき」です。我が家も、これにこれまで苦戦苦闘してきました。仕事場と家庭のあいだを、何度も往復したことが、数え切れないほどあります。「子どもが病気になったとき」に必要な支援は、その家庭の労働環境、職種、経済状況によって様々に異なるでしょう。経済的な支援を受けられる、というオプションの追加は、非常に意味のあることのように感じました。

プレスリリース
http://www.sato.co.jp/topics/release/2010/document/20100226.pdf