岩崎夏海著 「もし高校野球の女子マネージャーが、ドラッカーの"マネジメント"を読んだら」を読んだ!

「よかったですよー。ぜひ、中原さんも読んでみてください!」

 話題の本、「もし高校野球の女子マネジャーがドラッカーの"マネジメント"を読んだら」を読みました。この本を読んだ何名かの人々が、よかったですよー、とおっしゃっていたので。

 本書は、ピーター・ドラッカー63歳の頃の名著"マネジメント"の要諦を、「もし高校野球の女子マネジャーがドラッカーの"マネジメント"を読んだら」というかたちで、物語のかたちで紹介しています。ダメな野球部の女子マネジャーをつとめる「みなみ」が、ドラッカーの「マネジメント」に出会い、女子マネージャー、選手一人一人、監督、野球部に変化をもたらしていくといった、おはなしです。

 一読して思ったのは、そのわかりやすさ、です。ドラッカーの「マネジメント」はきわめて実務的な本であるが、たとえそうであったとしても、ドラッカーの託宣をブレークダウンするには、それなりの経験と識見が必要です。しかし、本書では、「女子マネジャーみなみが、マネジメントを駆使して、勝てない野球部を甲子園に連れて行く」という物語になっているので、そのあたりの心配はありません。

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 読んでいて、つくづく思ったのは、「顧客」についてです。教育研究と企業活動を重ねて考えるんじゃない、と怒られるのは覚悟をして、あえて問いますが、教育研究の「顧客」とは、いったい「誰」なのか、ということです。これは、一般的な答えが存在するわけではなく、ひとりひとりで答えが違うでしょう。

 別の言葉を用いるならば、

「あなたが研究を積み重ねることで、将来、いったい、どういうプロフィールをもった、どこの誰が救われる?」

 のでしょうか。

「あなたの研究が、もし、明日なくなってしまったとしたら、将来、どこの誰が、困るのでしょうか?」

 そのことについて、僕は考えました。
 もちろん、研究は一朝一夕に成果がでるべきものではありませんし、その成果が世の中に認められるには長い時間がかかります。誤解を恐れずいいますが、ほとんどの研究は、失敗に失敗を重ね、成果をだすことが難しいのもまた事実です。ですので、くどいようですが、上記の問いが、研究活動にそのままあてはまる、とは思っていません。
 しかし、あえて、「自分の研究を振り返る意味」で、この問いを考えてみることは、僕は意義がないことではない、と思っています。

 企業の目的と使命を定義するとき、出発点は1つしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される。
(中略)
 したがって、「顧客は誰か?」との問いこそ、ここの企業の使命を定義する上で、もっとも重要な問いである。

 これはシンプルな問いですが、非常に難しい問いです。そのことはドラッカーもわかっていて、

 やさしい問いではない。まして、答えのわかりきった問いではない。しかるに、この問いに対する答えによって、企業が自らをどう定義するかがほぼ決まっている。

 と答えています。

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 ちょっぴり涙ありの、さわやかな野球部の物語に、考えさせられました。