ツイートプロフェッサー:教師の方も学んでいる!
青山学院大学大学院、集中講義が終わった。「組織社会化論」「経験学習論」「職場学習論」「組織学習論」「越境学習論」という5つのアプローチから、「働く大人の学び」について考える、という内容であった。
今年は20名近くの社会人大学院生が参加した。民間企業につとめる方が最も多いけれど、現役の助産師さん、学校の先生などもいらっしゃって、非常に面白かった。
授業は、
1)冒頭10分程度で中原からのイントロダクション
2)基礎的文献のグループ発表
3)中原からの補足説明
4)グループディスカッション
5)教室内ディスカッション
というかたちで、講義を進めた。
今回の授業では、僕が授業中に思ったこと、気づいたことを「Twitterでつぶやく」というのをやってみた。
実は、教員の方も教えながら、「学ぶこと」「気づくこと」が少なくないのである。授業にのぞむとき、「Teacher as learner(学習者としての教員)として関わっている側面もある。
で、今回の授業では、その気づきをつぶやいてみることにした。「ツイートプロフェッサー:つぶやく大学教員」を体現するのである。
一般に、通常の授業で、教員は常に授業自体の進行を考えているために(僕の授業はインタラクションが中心なのでなおさら、、、学習者がどこから意見やアイデアがでてくるかわからないから、ものすごく緊張する)、そうやって考えたことは、忘却のかなたに消える。
あるいは、考えたこと、気づいたことは黒板に板書することはあっても、次の時間がはじまってしまえば、すべて消されてしまう。今回は、これらをツイッターでリアルタイム=ドキュメンテーションすることを試みた。
Twitterをつかって「つぶやいた」おかげで、それはすべて残っているし、どこからでもアクセスすることができる。さらには、授業を受けていなかった人にもそのプロセスが見え、時にはコメントなどをもらうことができて、面白かった。
僕のつぶやきの一部を見てみよう。
●大学院授業。私見では、組織学習論には2つの異なる理論系統が存在する。ひとつは、知識を"情報伝達プロセス"として見る組織学習論。ひとつは、知識を"社会プロセス"としてみる組織学習論である。
●元来、ウェンガーが提唱していたのは、Communities of practiceである。「Communities」という「複数」であることに注意が必要。人は、単一の組織Communityではなく、Communitiesという多層空間に生き学んでいる、という人間観がある。
●看護士さんの熟達。学生時代は、患者-看護師の1×1の看護しか行わず、また夜勤はない。しかし、現場にはいると、ナースコールが同時期に頻発し、1×nの多重課題を優先順位のもとこなすことが求められる。このリアリティショックを軽減させる取り組みがはじまっている。面白いなぁ、他人の職場は。
●「キャリア」という言葉は、アカデミアと実務の世界で定義が異なる。実務のそれは「昇進」「異動」「ポジション」。アカデミアのそれは「一生涯にわたる仕事の経験や活動や態度」(Hall 2002)。キャリアは第三者に認定されるものではない。あくまで個人が見いだし、考えるものである。
●大学院授業。文脈越境学習論。私見では、文脈越境による学習とは、「越境前の場所」と「越境先の場所」を行きつもどりつしながら、そのどちらの人にもならず、アイデンティティをうまく使い分けて、「越境前」でも「越境後」でもない、「第三の場所」を自らデザインすることである。第三の場所は、存在でも、認識でもない。越境するあなたが、デザインするものである。
結構いろいろ考えてる風だよね(笑)、、、我ながら。
とても面白いね。
▼
来年度の青学集中講義は、夏に実施されるそうである。
その頃、僕は何を「つぶやいている」のかな、、、と思う。