「他人の仕事術」とは何か?

 雑誌「BRUTUS」の特集「真似のできない仕事術」を興味深く読みました。

BRUTUS
http://magazineworld.jp/brutus/674/

 この特集で、仕事術を紹介くれている方の中には、ぜひ、一度お逢いしたいと思っている方々もおりました。「なるほど、この人の仕事の魅力の背後には、こんな仕事術があったのか、ふむふむ」と、勝手に一人で妄想をふくらませておりました。なかなか愉しい時間でした。

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 一方、この特集を通して「他人の仕事術を読むとはどういうことか」をとても考えさせられました。

 通常は「他人の仕事術」は「コピーするもの」「模倣するもの」と考えられていますね。「あの仕事をなしとげた有名な○○さんの仕事術は~~だから、みんなメモれ、コピれー」みたいなノリです(古い・・・わかる人にはわかる)。

 世の中では「よく仕事のできる人」が、その「仕事のクオリティ」を担保にして、自分の仕事術を語ることが求められます。

 もちろんのことですが、「語られた仕事術」は、統制された実験によって、その効果を検証されたものではありませんし、そんなことは限りなく不可能に近いことです。あくまで、その人の「仕事のクオリティ」がその人の「仕事術」に「正統性」や「信頼性」を与えているということです。もちろんですが、仕事術には「一般性」は確認されていません。
(一般性ないものには意味がないと言っているのではないですよ、、、誤解なきよう)

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 でも、よくよく考えてみますと、この「仕事術」というのは、その人が、自分の仕事を円滑にするために苦心のすえ生み出した、あるいは、結果として生み出されてしまった「産物」であることが多いと思います。

 その人が、仕事の中でどのような人とかかわり、調整をしなくてはならないのか。その人の仕事の中で、最もプライオリティを求められるのは何か。そうした、その人の「仕事のコンテキスト」のなかで、それにフィットとした原則として「仕事術」とは生み出されたものである、ということです。
 つまり、「仕事術」は、決して、その人がやっている「仕事のコンテキスト」から分けて考えることはできない、ということになります。

 それなのに、なぜか、通常、仕事術は「コピーするもの」「模倣するもの」と考えられています。「仕事術の語り」を、大量消費の商業ベースの媒体に乗せようとした瞬間に、この種の言説転換が行われることが多いのかもしれません。
(そういう意味では、BRUTUSの「真似のできない仕事術」というコピーは秀逸ですね)

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「仕事術を読む読者」は、「仕事術を語る仕事人」とは全く違うコンテキストの中で仕事をしていることが多いと思います。会社も、職種も、職場も、プロダクトも違っているのが当然です。

 そうであるならば、読者にとって、まず大切なことは、「語られている仕事術」をクリティカルな目で読み解くことではないでしょうか。
 その上で、「語られた仕事術」を「素材」として、自分の仕事を「内省」し、「自分で自分の仕事術をつくりだすとき」こそ、最も重要なことなのではないでしょうか。このとき、他人の仕事術は、自分の仕事を内省するための「鏡(reflecting mirror)」として機能します。
 あるいは、場合によっては、そのまま模倣できるとこもあるかもしれません。しかし、その場合でも、いったん他人の仕事術を模倣しつつ、窮屈になったら、それを敢えて壊し、つくりかえることも、また重要なのかもしれません。

 いずれにしても、「自分で考えて、自分の仕事術をつくること」、それこそが仕事人にとっての「学び」であり、「成長」であると僕は思います。

 アタリマエダのクラッカーかもしれませんが(また古い・・・)、いずれにせよ、他人の仕事術を読むときに最も大切なことは、「自ら考えること」ではないでしょうか。
 他人の仕事術は「思考停止を導く原則」ではありません。むしろ、他人の仕事術とは、「自ら思考するための素材」なのではないか、と僕は思います。
 そう考えると、仕事術を読むとは、なかなか骨のある作業になりますね(笑)。

 あなたは、誰の、どんな仕事術に魅力を感じますか?
  そして、
 あなたは「自分の仕事術」つくっていますか?

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追伸.
 今年最後のLearning barは、12月4日開催されます。

 みんなで「よい仕事」を考える、ことから考える!?
 三井物産における組織理念マネジメント
 組織理念をどのように共有するのか!?

 三井物産 渡辺雅也さん×神戸大学 金井壽宏先生

 という内容になります。木曜日、金曜日あたりから募集を開始できると想います。お楽しみに。
(予定が繰り上げになりました・・・本日夕方には募集要項メールがでます・・・すみません)

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●働く大人の学び論・成長論
 仕事の経験を積み重ね、内省する
 リフレクションをアクションにつなげる
 経営学と教育学の交差するところに何が生まれるのか?

中原淳×金井壽宏 「リフレクティブマネジャー」光文社新書!