M&Aと学習
日本企業と米国企業M&A(Mergers and Acquisitions)、企業再生などを手がけてこられたコンサルタントの船川淳志さんと、先日、お逢いする機会をえました。
きっかけは、僕が、ある方(一緒に仕事をしていた生方さん)に「M&A後(Post Merger Integration)におこる学習って、実際、どんなものなのでしょうね・・・きっとそれは学習という言葉では表現できないくらい生々しくて、エグイものでしょうね・・・」とつぶやいたことにあります。
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一般的に、組織学習論において、「M&A時におこる学習」は「知識の移植・移動」と考えられています。
要するに、ある知識Aを有する会社A'と、ある知識B'を有する会社Bが合併した場合には、知識A'と知識B'を有する会社が生まれる、ということです。
この説明において知識は物象化されています。知識が、あたかも「移動」するかのように、PMI時の学習が説明される傾向があります。非常に「綺麗な説明」ですね。
しかし、M&Aや企業再生の現場に居合わせたことはないので、僕はよくわかりませんけれど、それは、そんな「綺麗な学習」だけではないような気になるのです。
確かに、組織のレベルでは、組織的知識の移動という側面はあるのかもしれない。
でも「働く大人」の視点にたった場合、そこにはまた違ったパースペクティブが広がります。そこには、激しい不安、恥辱、葛藤、喪失感を伴うような学習、学習棄却が存在するような気がします。
昨日まで自分が働いていた職場は、もう、ない
昨日まで自分が働いていた仕事のやり方は、もう、通用しない
昨日まで自分は、もう、通用しない
新たな職場への文化適応の問題も噴出してきます。職場のネットワークも強制的に寸断されることもあるでしょう。そうしたPMI時の非常に生臭くて、リアリティがあって、アクチュアルな学習、実態が、非常に気になりました。そのような経緯があって、船川さんとお会いすることになりました。
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船川さんとはいろいろな話をしました。PMI時には、人はどのような反応をするか。明確な敵意をもった人を対象に、どのようなワークショップをするのか。
僕らが仕事をするのは、いつも、アフターマッキンゼー(AM)でした
(戦略コンサルのマッキンゼーが、戦略・ストラクチャーを決めて企業を去ったあとに、現場で統合の仕事をすること)
という言葉が印象的でした。僕の予想通り、それは、非常に生臭くて、リアリティがあって、アクチュアルな現場でした。そのすべてを理解できているわけではまったくありませんが、少し感じることはできた気がします。
学問は、そのアクチュアルさに、どの程度、肉迫しているのかなと思いました。
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話は全く変わりますが、船川さんとの話の中で、もうひとつ印象的だったことがありました。
それは、船川さんのやっておられる講座に、柔道・金メダリストの山下泰裕さんがゲストとしてこられたときのエピソードです。
「金メダリストの山下」「五輪監督の山下」は何を語るのか。皆がかたずを飲んで見守る中、山下さんが発した一言は、期待を超えるものだったそうです。
「自分が死んだときに、ロサンゼルスオリンピックで金メダルをとったシーンをテレビで流されているのだったら、残念ですね。それは過去のことですから。
これから私がやろうとしていることを取り上げてもらえるように、私は精進していきたいのです」
(グローバル社会と柔の心)
1984年、山下さんはロス五輪柔道無差別級で金メダルをとられました。エジプト・ラシュワン選手との決勝戦は、誰もが見たことのある映像ではないでしょうか。
現在、山下さんは東海大学で教鞭をとられる一方、NPO法人柔道教育ソリダリティを組織し、柔道の普及、柔道を通した文化交流、青少年育成をめざされているそうです。
いやー、背筋が伸びますね。
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最後になりますが、このような機会をいただいた船川さん、生方さんに感謝いたします。ありがとうございました。
そして人生は続く。