Academic TribeとAcademic Territory
経験をくぐり、対話を通して、内省する
持論と棄論を繰り返して、越境する
中原淳×金井壽宏 「リフレクティブマネジャー」光文社新書!
▼
ちょっと前のことになるけれど、オックスフォード大学のSさんとお逢いした際、「Academic tribe」「Academic territory」というコンセプトを教えてもらった。大元は、社会学の考え方だそうだ。詳しいことは、僕は知らない(笑)。でも、Sさんのお話しは非常に面白く感じた。以下、元ネタに加え、さらに想像力をふくらませて書く。
▼
「Academic tribe」「Academic territory」という考え方にたった場合、世の中、競争しているのは、企業や個人だけでない。マクロな視点から眺めたとき、「学問」と「学問」の間にも競争があり、淘汰がある、ということになる。
つまりは、ある学問を「Academic Tribe(民族)」とみなして、その学問が扱う問題領域を「Academic Territory(領土)」とみなした場合、そこには学問間の競争、いわゆるサバイバルゲームが存在する、という見方である。
こういうと、「私たちは真理を追究しているのである。Tribe、Territoryという概念は不謹慎だ」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれないけれど、あくまで「見立ての問題」である。それ以上でも、以下でもない。
▼
Academic Tribe間の競争は激烈である。
アプローチ(武器)が古くなってしまい、問題領域に切り込めなくなってしまった学問は、他の学問との戦に負けて、領土を失っていく。次第に後継者がいなくなり、Tribeを維持できなくなる。Tribeの人口の年齢構成が上がっていけば、いつかは、Tribe自身は消滅する。
時には革命的な変化も訪れることもある。パラダイムが変化し、アプローチ自身に急激な変化がおとずれることもある。
昨日までの問題領域は、もう、今日はない。新しい問題領域を見つけるために、新たな狩りにでなければならない。
競争は内部にもある。
アプローチによって、誰が統治者にふさわしいかを、Tribe内部において競争している。時には民族内紛争によって、競争力が失われることもある。愚かな統治者が王になることもある。そんな様子を、他の民族は、じっと見つめている。
▼
もし、あなたが研究に関係しているのなら、一度、自分の専攻する学問を「Academic Tribe」「Academic Territory」という観点から、見つめ直してみると、「気づき」があるかもしれない。
1.あなたの所属しているTribeは、どのTribeを相手に、どんなTerritoryをかけて、闘っているのか?
2.その闘いを有利にすすめるために、あなたのTribeが有している武器は何か? その武器はいつまで有効か。
3.あなたの所属しているTribeが、最終的に到達するゴールとは何か。そのゴールは明るいのか。未来を明るく描くために、あなた、或いは、あなたのTribeが、為さなければならない決断とは何か。
中には「どのTribeを相手にしているのか」「自分のTerritoryとは何か?」「自分のTribeの有している武器とは何か」を見失っているTribeも存在しているかもしれない。
はたまた、「他のTribeに攻められ、もう四面楚歌の状況にありながら、そのことにすら気づいていない」ような「頭がお花畑系のTribe」もあるかもしれない。
そんなTribeを「相手」にするのはいいけれど、決して自分が「所属」はしたくない。
▼
ライオンは夜ごとジャングルで眠りにつく。夜があけ、朝が来て、いちばん足の遅いガゼルに追いつかなければ、うえてしまうことを知りながら。
ガゼルは夜ごとジャングルで眠りにつく。夜があけ、朝がきて、いちばん足のはやいライオンに勝てなければ、誰かの朝食になってしまうことを知りながら。
だが、ひとつだけ眠りに落ちるライオンとガゼルの、どちらも知っていることがある。夜があけて、朝になったら、すぐに走り出した方がいいことを。
(Freedman, T.)