リベラルアーツとは、学びほぐしである!?
せんだって、あるシンポジウムに登壇した際、パネラーのお一方が、あるセンテンスを数時間にわたって連呼しておられました。
曰く
'''「これからの時代は人間力!'''
'''そして人間力を向上させるためには'''
'''教養を勉強すること」'''
なのだそうです。
そうなんだ、へー。
「人間力」ね・・・「教養」を「勉強」ね。
なるほど。
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残念ながら、僕自身は、'''「人間力」という言葉を聞くたびに背筋が寒くなってしまう人間のひとり'''ですが、この言葉ほど、利用する人の恣意によって、多様に用いられる言葉はありません。
ある識者は、それを「コミュニケーション力」「問題解決力」「決断力」と定義します。
ある識者によれば、それは「学力とは対角線上にある、その人の中核的能力」なのだそうです。人によっては、それを「度量」といいかえる方もいらっしゃるそうです。
'''要するに、言ったもん勝ち、新春大放談よ!'''
'''誰だ、最初にこんな怪しい言葉を捏造したヤツは!'''
くどいようですが、僕には、'''「人間力」という「概念」が指し示すところは、さっぱりわかりません。'''
ただ、よくよく人の話をお聞きしていますと、どうも「人間力」という言葉で指し示されるものには、下記の共通点があるように思います。
'''1)学力やスキルといったものではないということ'''
'''2)でも、人が所有する「力」概念で理解されること'''
'''3)計測は不可能であるということ'''
人間力というコンセプトの「定義」の差異を論じることに興味はありませんので、ここではサラリと流します。皆さん、「人間力」の意味については、感じてください。
わかるんじゃなくて、感じるのよ。
要するに、人間力とは、その類の言葉です。
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ただし、「人間力」については、定義を論じることに興味はなくても、気にかかることはあります。それは'''「人間力という能力らしきものを向上させるために、教養を勉強することが重要だ」'''という指摘です。先の識者は、この言葉を数時間にわたって連呼しておりました。
どうも、僕は、ここに違和感を感じます。
前段「人間力という概念」についても怪しければ、後段の「教養についての理解」も怪しい・・・ここに僕は違和感があります。
結論からいうと、
'''「教養」とは「勉強」するものか?'''
と疑念をもちます。
言葉を換えますと、
'''教養とは、知識を頭に詰め込んで「能力を向上させる」的なメタファで語られるものじゃないんじゃないの'''
と思うのです。
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よく知られているように、'''教養(リベラルアーツ)の原義'''は、聖書(ヨハネ書)にあるワンセンテンス
'''「真理はあなたがたを自由にする」'''
という言葉にあると記憶しています。
もともと'''リベラルとは「自分に力をつける」ものではなく、「自分を解放する」という意味'''です。
つまり、'''日常生活で様々に獲得してしまった素朴概念、ステレオタイプ、思い込み、そして流行の言葉やコンセプトを解体し、疑い、、自分を自由にすることこそ、教養です。'''
もちろん、相対化しうる概念のひとつには、たとえば、「人間力」といった「意味不明な怪しげな概念」も含まれましょう(笑)。
'''教養(リベラルアーツ)とは、もともと、日常生活で獲得してしまった様々なドクサ(教条・因習・固定化した概念)を相対化し、ぶちこわしながら、「自己を解放すること」ができるということです。'''
一言でいえば、
'''教養とは、ステレオタイプをUnlearn(学びほぐし)、自己を開放すること'''
ではないかと思うのです。
あるいは、
'''教養とは"自省の学"である'''
といってもよいかもしれません。
ところが、'''世間では、教養とは何か「お勉強チック」なもの、「力(能力)を向上させる」で把握されているそうです。'''
博識などこかの経営コンサルタントが、「教養のお勉強」を全社で進めるべく指導をしているというから、驚きです。
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'''「教養ある人」とは、僕の持論によれば、「自由な人」です。'''
'''自由とは「教条的なもの」ーすなわち「凝り固まったまなざし」からの自由であり、解放です。'''
加えて、ルソーによると、自由とは
'''「自分の好きなことをすることではなく、自分のやりたくないことをしないこと」'''
だそうです。
「終わりなき日常の中」で、色褪せていく「自分」に抵抗する。そして、曇りのない目で物事を見分け、自分のやりたくないことを拒絶しつつ、志高く生きていく。
凡人小人野蛮人の小生としては、ため息がでてしまいますが、できることなら、かくのように、ありたいものですね。
そして人生はつづく
投稿者 jun : 2009年4月24日 07:49
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