進む人材育成の内製化
人材育成は絶対にやめるな。もうバブル以降の後遺症は避けたい。しかし、外注するものは、なぜ外注しなければならないのかを教えて欲しい。その価値は、なぜ、外注によってしか得られないものなのかを考えてほしい。もしそれに答えられないのなら、何とか工夫して、社内で実施する方法を考えてほしい。
「コスト削減だから人材育成はしない」という認識は当社はとらない。規模は縮小するものの、人材育成は実施する。ただ、人材開発部なのだから、知恵をしぼって「お金をかけないで育成の場をつくること」も考えて欲しい。
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最近、僕のところに寄せられる問い合わせで最も多いのは、上記のようなことを会社から求められた方からです。皆さん、非常に悩んでおられるようですね。
こういうご時世です。
「教育・研修の内製化」
「社内リソースを使ったインフォーマルな場づくり」
というものが、各社においてはじまっているように思います。
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最初に断っておきますが、「教育にはお金がかからない」という認識は100%間違っています。教育は「見通しがゼロ」の将来に対する「投資」であり、そのことは不況であろうが、好況であろうが、変わりません。
以前、この国は「教育に多くのことを期待しつつ、教育には最も金をかけない国のひとつだ」と述べました。その認識がナンセンスであるという僕の認識は、今も変わっていません。
そのことは、典型的に公教育にかけられている教育費の問題にあらわれます。日本の国内総生産(GDP)に占める教育公財政支出割合は(要するに国がどの程度教育に金をかけているかという程度)、2005年、さらに減少し、3.4%。OECD加盟国28か国内ワースト1。高等教育に対する支出に関しても、GDP割合の0.5%。これもワースト1。
GDPの伸び率の問題もあるので、これだけのデータをもって、即、「日本は教育に金をかけない」という判断はできないですが、深く考えさせられるデータであることは間違いありません。
これは明らかに低すぎる数字です。
申し訳ないけど。
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しかし、その上で、「不遜な言い方」になることを覚悟していいますが、現在、企業人材育成で進んでいる事態は、長期的な視野にたった場合、決して悪いことばかりではないな、とも思います。
ある会社では、社内に「カフェ」を設置し社員が自由に集まれる場所をつくったそうです。
ある会社では、人事教育部が主体となって、ミドルの人々を集め、彼らが日常の仕事を内省するワークショップを開催するようになりました。
教育のサプライサイドも変わってきています。
ある民間教育ベンダーは、この時期にあわせて、研修内容をすべて見直し、インストラクターの再教育を行いました。
ある民間教育ベンダーは、ワークプレイスラーニングの支援に向けて、体制を整えているそうです。
教育の受け手も、そして、教育のサプライサイドも、この時期をきっかけに、学びつつ、新しいことにチャレンジしているように思えるのです。
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今、本当に問われていることは、
人材開発部には、社内で「何」ができるのか? どんな「付加価値」をもたらすことができるのか?
教育ベンダーには、社外からどんな「付加価値」をもたらすことができるのか?
なのかもしれません。
さて、今だからこそ、あなたの会社では「何」をしていますか?
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