「転職」と「学び」の関係!?

 先日、キャリア関係の研究をなさっている先生と「転職の成功要因」について話しました。転職しても、新しい仕事にうまく適応できる人と、そうでない人がいる。

 特に、同業種への転職というのは、通常、うまくいく可能性が高いと考えられがちですが、不思議とそうでもないそうです。たとえ「同業種への転職」であっても、失敗する人はかなり多い。「異業種への転職」の方が、予想に反して、うまくいく場合も多い。これはなぜなのか、という話でした。

  ▼

 これにはたくさんの仮説が考えられると思います。僕の仮説は「学習阻害説」というコンセプトでまとめることができます。(僕は転職についてはほとんど先行研究を知りません・・・もしかすると、そういう研究があるのかもしれませんが、素人なのでお許しを)

 まず、話の前提として、「同業種への転職は、通常、必要とされるスキルが同じであると考えられていること」が多いと思うのですが、これは「誤解」ではないか、というところから、議論をはじめたいと思います。
 「誤解」というのは強い言い方かもしれません。仕事で必要とされるスキルには多種多様なものがありうるとは思いますが、そのうち、「ある特定の状況の中でしか発揮できないスキル」というのが、意外に多い、ということです。

 ある状況A(会社A)において通用したスキルや知識といったものが、異なった状況B(会社B)においては発揮できないことは、ままあるものです。専門用語を使うのなら、「転移しない」ということになるのかもしれません。

 異なった状況にいくとこれまでのスキルが、なかなか発揮できないから、本来、新しい状況Bにおいては、「学び直さなければならない」のです。つまり、これまでの自分の仕事のある部分をを学び壊し、新たに学び直す必要がどうしても生じるはずです。

 しかし、ややこしいのはここからです。

 同業種への転職を志す人は、「同業種だから必要とされるスキルは同じ」だいう信念を素朴に信じている場合が多いと思います。特に、長い間、仕事の経験を積んできた人になればなるほど、その傾向は強いのかもしれません。つまり、私たちの多くは「素朴な転移の信奉者」なのです。
 僕の仮説の骨子はここにあります。こうした「信念」とこれまでの経験が足し合わされ、新しい状況に入ったら本来必要ななってくるような「学び」を阻害してしまうのではないか。
 つまり、信念と経験があまりに強いために、「これまでのやり方を学び壊すこと」「新しいことを学ぶこと」阻害してしまう可能性というのはないでしょうか、ということです。

 つまり、

「○○のことだったら、オレは、前の会社でやってきたんだ。だから、ここでも同じようにできるはずだ。何?やり方が違う。前の会社では、こうだったんだから、ここもこうなるべきじゃないのか・・・プンプン」

 ということですね。

 それに対して、「異業種への転職」の場合は、そもそも「新しい領域に入る」と思っているので、これまでのスキルは担保しつつも、「異業種にきたのだから新たにスキルや経験を積まなければならない」と思う傾向がある。つまりは、転職を志す人の身体が、「新しい学びに拓かれている」。だから、予想に反して、うまくいく場合が多いのではないだろうか。

 こうして考えてみますと、転職がうまくいかないのは、その人が悪いのではなくて、「学べないから」だということになります。それを可能にするためには、「スキル観」や「学び観」も脱構築しなくてはならないのかもしれません。
 
「転職」と「学び」の研究というのも面白そうですね。
ここにも面白い世界が広がっている予感がします。
 ---

追伸.
 最近気になる言葉に、ビジネスパーソンの方が使う「会社を超えて使えるポータブルなスキル」という言葉があります。ポータブル!?、、、ここにも強い問題があるようにも思います。