自分に手紙を書くこと
アンジェラ・アキの名曲(だと僕は思っている)に「手紙」というものがある。かつて、彼女自身が「未来の自分に対して手紙を書いた経験」が歌のモティーフになっている曲だ。
歌の中では、「15の頃の自分」と「将来の自分」がお互いに対して手紙を書く。15の頃の自分には「誰にも話せない
悩みの種」があり、「苦しい中で今を生きている」。
「将来の自分」は「自分とは何でどこへ向かうべきか 問い続ければ見えてくる」ことを「15の自分」にアドバイスしつつも、「大人の僕」でさえ「傷ついて眠れない夜はある」ことを吐露する。
そうだ、そうなんだよな。ちょっとホロリと来てしまう内容の歌である。
拝啓 この手紙
読んでいるあなたは
どこで何をしているのだろう
十五の僕には誰にも話せない
悩みの種があるのです
未来の自分に宛てて書く手紙なら
きっと素直に打ち明けられるだろう
今 負けそうで 泣きそうで
消えてしまいそうな僕は
誰の言葉を信じて歩けばいいの?
ひとつしかないこと胸が
何度もばらばらに割れて
苦しい中で今を生きている
今を生きている
(中略)
拝啓 ありがとう
十五のあなたに伝えたい事があるのです
自分とは何でどこへ向かうべきか
問い続ければ見えてくる
荒れた青春の海は厳しいけれど
明日の岸辺へと 夢の舟よ進め
今 負けないで 泣かないで
消えてしまいそうなときは
自分の声を信じ歩けばいいの
大人の僕も傷ついて
眠れない夜はあるけど
苦くて甘い今を生きている
(中略)
拝啓 この手紙読んでいるあなたが
幸せなことを願います
アンジェラアキ 作詞・作曲
▼
「未来の自分に手紙を書く」というのは、なかなか、どうして、ロマンティックなものだな、と勝手に感じ入る(実は、同時にリスキーなことでもあるけれど)。
そういえば、昨日、ある方と話していたとき、「自分に対して手紙を書く」という話題がでた。
ワークショップの最後に、6ヶ月後、1年後の自分に対して「手紙」を書く。今、自分は何を感じているのか。数ヶ月後、数年後には、どうなっていて欲しいのか。どうありたいと、今、願っているのかを、素直に綴る。
終わりなき日常の中で、きっと、人はワークショップのことなど忘れてしまうに違いない。そこで得た気づき、教訓、関係・・・そうした重要なものは、日々の雑事に紛れて、いつしか、色あせていく。
忘れた頃に、過去の自分が書いた手紙を受け取る。
嗚呼、そうだったんだよな
そう考えていたんだよな
そうありたいと、僕は、願っていたんだよな
仕組みは簡単。6ヶ月後、1年後まで手紙を預かって、それをポストに入れるだけである。
とても単純なことだけれども、ワークショップの経験が印象に残るものであったとしたら、結構、ホロリと来そうな気もする(思い出したくもない話だったら、結構、キツイね)。
▼
閑話休題
いつものごとく、想像力をたくましくして、歌の世界に勝手に入り込む。「過去の自分」から「将来の自分」に対する手紙も印象的だけれども、その逆も、またなかなかディープである。
今の僕が、「15の頃の僕」に手紙を綴るのだとすれば、何を語りかけるだろうか。今の自分は、「あの頃の自分」がなりたかった自分なのだろうか。
あなたなら、どうか? あなたは過去の自分に何を語り得るか?
そして
今のあなたは、「あの頃のあなた」がなりたかったあなたですか?