突然、「君はどう思う?」って聞かれてもね
「コーチング研修ですか。研修終了後、何もやらず、そのままにしておけば、もれなく、研修参加者は、元に戻りますね。早い人なら、即日で戻る。これは数年間の経験で確信があります。
職場に帰った瞬間に、何事もなかったかのように、これまでどおり、仕事をすると思います。研修は研修、仕事は仕事、という感じですね」
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先日、インタビューのため訪問させていただいた某企業A社。巨大な工場と装置を動かす、伝統あるA社では、上司部下のコミュニケーションは、指示・命令のカルチュアが支配的であった。
このカルチュアでは、あまりにも「社員の成長」にムラがでてしまう。このことを問題視したA社では、「管理職向けのコーチング研修」を導入した。
単にコーチング研修を導入するだけではなく、その効果をあげるため、参加者を研修終了後1年間弱にわたって支援する。
具体的には、日々の活動をレポートしてもらったり、職場環境の調査を実施したりして、データを把握する。そのデータにもとづき、本人と対話をおこない、フィードバックやアドバイスをしたりする支援組織をつくっていた。
研修で学んだことを、いかに現場にいかすか。
ワークプレイスラーニングの好事例として、非常に興味深い試みだった。
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それにしても、印象的だったのは、担当者の方の下記の言葉だった。
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コーチングを性急に根付かせようとすることは、避けた方がよいですね。
今まで、上司から指示・命令で、ネチネチとやられていたのに、ある日突然、コロッと変わって、「君はどう思う?」って聞かれてもね。そりゃ、部下だって、面食らってしまいますよ。
「あー、どうせ、研修受けてきたんだろ?」「どうせ、やらされてるんだろ」って。それも、上司がみんな判で押したように「君はどう思う?」を繰り返すのですよ。職場が混乱する可能性もでてきますね。
それも緊急時にも、TPOをわきまえず「君はどう思う?」ってやるわけですから。
上司にとってもストレスですよね。今までの自分のあり方とは、違うスタイルをやらなくてはならない。中には、深刻にまいってしまう人もでてくるのです
ですから、性急に事を進めず、「じっくり」と「こってり」と時間をかけて、長い目で支援していく必要があると思います。本人の話を聞いたり、職場の環境を調べたりしながら、具体的なフィードバックをかえし、支援していく必要があるのです。