なぜ、ブログを書くのですか?
先日、僕より数歳年下の知り合いの方に、こういう質問をもらいました。
「正直、聞いてみたいんです、中原さんは、なぜブログを書くのですか? "自分のマーケティング"のためですか? なぜ毎日毎日書いているのですか?」
素晴らしい! 質問がダイレクトですね。「自分のマーケティング」か! なるほど。
よろしい。ぜひ、お答えしましょう。
答えはいくつかあります。とてもひとつに絞ることはできません。下記思いつくかぎり書いてみましょう。
---
理由その一:知的生産性をあげるため
僕は、すべての情報はデジタルにして、自分のノートパソコンに保存してあります。そして、その情報の中でも、コンフィデンシャル性がなく、自分が重要だと思うものは、ブログにあげることにしています。僕は「紙」は持ちません。
これらのデジタルデータはグーグルと組み合わさったとき、とてつもないパワーを発揮します。一言でいえば、「いつでも、どこでも、自分が重要だと思っていたことが検索可能になる」ということです。
特に、ブログの場合、自分のノートパソコンをもっていなくても、喫茶店や他人のパソコンからでも検索ができます。
例を示しましょう。
下記のリンクをクリックしてみてください。
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&rlz=1T4RNWN_jaJP231JP231&q=%E3%83%8A%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B8%E3%80%80site%3Ahttp%3A%2F%2Fwww.nakahara-lab.net&lr=
すると、「ナレッジ」について僕のWebにあるすべての情報がでてくるはずです。記事、論文、事例・・・ありとあらゆるものがひっかかります。
僕は「探すこと」には、あまり時間はかけたくありません。「考えること」「つくりだすこと」に時間を費やしたいのです。
ブログは僕にとって、いわば「外部脳」です。ここには、僕の研究活動の「経験」が詰まっています。
しかも、この外部脳は、僕以外の方でのご利用いただけるものですね。グーグルで検索をかけるときに、「site : www.nakahara-lab.net」を追加すればいいだけです。なんか、「脳みそを覗かれている感じ」もしないわけではありません。
でも、ぜひ、見ちゃってください。ヤバイものも、しょーもないものも、しまりのないものも出てくるとは思いますが、どうぞ、どうぞ。怖いものみたさで、ご利用ください。
---
理由その二:
自分の研究や活動、そして、それを生み出すプロセスを、いろいろな方々に、知ってもらいたいです
今では結構早くなりましたけど、学術論文はたいてい世に出版されるまでに1年以上はかかります。僕の経験でもっとも長かったのは掲載まで3年かかった事例です。おぉー、長い。しかも、読んでいただけるのはその道の専門家の方々に限られます。
もちろん、学術論文の執筆はとても重要です。僕はそれを軽視しません。そして、査読、修正、査読、修正・・・専門家集団が読むに耐えるクオリティを担保するためには、ある程度、長期にわたるプロセスが必要ですね。それは致し方ないことです。
でも、できれば、自分の研究や活動を、より多くの人々に、リアルタイムで知ってもらいと、僕は同時に思います。
研究とは、「100試みて、1成功すればよいほう」です。そういう「回り道」や「寄り道」の過程も見ていただけると、なぜか嬉しくなってしまいます。
---
理由その三:
自分に関連が深い仕事に、すぐに
つながる可能性があがる
「私塾のすすめ」で、確か、梅田望夫さんが「人の人物像を理解するにには、履歴書ではなく、その人の書いたブログを読むのが一番いい」といったようなご趣旨のことをお書きになっていたと思います(手元に本がないので確認できていません・・・この本、今回の海外出張で読んでスーツケースに入れて持って帰ってきたはずなのですが、なんと、昨日、ロストバゲージにあってしまいました)。
僕のところにも、お仕事のご依頼やお問い合わせ - 共同研究の打診、講演依頼など - 僕のブログを読んでいただいてお問い合わせいただいた方からのご提案やご依頼は、僕の研究に、より関連が深く、自分の貢献できるところが多い気がしています。
自分の人となり、自分の仕事のプロセスを、ブログで伝えることで、自分に関連が深い仕事、自分がやりたいと思っていた仕事に、素早く近づくことができる気がしています。
---
理由その四:
ブログを通して「人がつながること」がなぜか嬉しい
僕のブログをお読みいただいた方の中には、直接メールを送ってくださる方が結構いらっしゃいます。
そのすべてにお返事することはできませんが、面白いのは、「こないだメールをくれた人と、今日メールをくれた人がつながったら、オモシロイコトができるのに」という事が結構多いことです。
そういう場合は、「実はこんな人がいるんだけど・・・」とご紹介することも、ないわけではありません。場合によっては、僕も「クワダテ」に混ぜていただくこともあります。お互い、もちろん顔はわかりません。共通点は、「僕のブログを読んでいただいている」ということだけです。
僕のブログは、ややマニアックですから、読んでくれる方も、必然的に同じような方になってしまうのでしょう。
「人をつなぐ」といってしまうと、なんだか偉そうに聞こえてしまいますが、ブログにはそういうパワーもあるようです。自分のブログがきっかけで、「出会い」が生まれることに、僕は、「なぜか」喜びを感じてしまいます。
---
理由その五:
志の高い人々と一緒に仕事がしたい
東大で開催している公開研究会「Learning bar」、そして年に一度のイベント「Workplace learining200X」、東京大学大学院 学際情報学府中原研究室。
僕は、志の高い人々や学生さんと、出会い、何かをなしとげたいと願います。よって、そういう方に自分が出会えるよう、情報を出し続けているのかもしれません。
Learning bar
http://www.nakahara-lab.net/learningbar.html
東京大学大学院 学際情報学府 中原研究室
http://www.nakahara-lab.net/nakaharaken.html
---
だいたい、以上でしょうか。
「自分のマーケティング」か、と問われると、なんか違う気もしますが、そういう側面がないわけでもないような気になってしまいます。正直、僕自身、大変多くのベネフィットをそこから受け取っています。自分へのメリットがないものを続けられるほど、僕は「できた人間」ではありません。
でも、「自分のため」だけか、と問われると、そうでもないような気がします。しょーもないことをたくさん書いていますが、もしかすると、これを利用してくれる方もいないわけではないでしょう。
「ブログを書くことの意味」は、結局、「自分のためか、それとも、他者のためか」という「二分法」を超えたところにあるような気もします。
もちろん、それで「嫌な思い」をすることもないわけではありません。でも、そこから受け取るベネフィットと比べると、僕は「書くこと」を選択してしまうのです。
うーん。
そもそも、人は、なぜ「書く」のでしょうね?
これは案外深い問いなのかもしれません。