数字と物語で評価せよ!:ASTD2008リアルタイム報告
ブリンカーホフさんのセッション「シニアマネジャーが利用できるかたちで、トレーニングインパクトを評価する」に出ました。
結論から言いますと、彼の主張には、とても共感できました。僕が、「企業における教育評価」について、ここ数年で言い続けていたこととまさに符号していて、「おー、こんなところにも同士がいたぜ」と嬉しくなってしまいました。
ブリンカーホフさんの言いたいことを要約しますと、下記のようになります。
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1.研修の効果は、研修や教材の出来「だけ」に左右されるのではない。
「実施される研修をマネジメントがいかに位置づけて、人を送り出してくれるか」といったような「事前準備」が40%、そして「社員が学んだことをマネジャーが理解し、いかに仕事にむすびつけてあげられるか」といった「適応」の部分が40%、残りの20%が、研修や教材の出来になる。
2.効果測定の際には「研修」だけを評価してはいけない」。
「あなたの組織で、トレーニングがどのように結果にむすびついたのかを評価するべきである」といいます。この二つの差、わかりますか?
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そこで提唱されているのは、先日もご紹介した、サクセスケースメソッドという方法です。方法といっても、非常に単純。簡単な量的データをもとに、「あなたの組織で、トレーニングがどのように結果にむすびついたのかを評価するべきである」に関する質的データ(ストーリー)を収集する方法です。
具体的には下記のようになるでしょうか。
研修終了後に、簡単な質問紙調査を行い、「うまくビジネスインパクトをだせた群」と「だせなかった群」を同定します。ここで得たデータは定量データとして利用します。
そして、両群に対して、
・研修ではどんなアクションプランをたてたのか?
・研修が終わったあとには何をしたのか?
・学んだ結果を
・いつ
・どこで
・どんな風に用いて
・どんなインパクトを与えたのか
・その際、誰(マネジャー)が、どのように、それを助けてくれたのか?
に関するストーリーを電話などで収集する、ということです。
そして、そこで収集したデータ(数字)とストーリー(エピソード)をもって、マネジャーやトップマネジメントを説得するべし、と言っているのですね。
ブリンカーホフさんは、こんな冗談を言っていました。
「クリスピードーナツを研修の合間にだしたり、プレゼンテーションを派手に演出したりするのもいいけど、同じ1$、1時間があったら、現場のマネジャーとコミュニケーションをとり、ネットワーキングをしたほうがいい」
踊る大捜査線の名台詞でいうならば、
「事件は研修室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ!」
ということになりそうですね。
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企業内教育の効果というのは、アカデミックのそれとは性質が異なります。あるLearning intervention(介入)の効果を、純粋に測定することが目的ではありません。
それは、第一に「よい教育を持続させるためのデータ」をもって、教育の担い手、つまりは、予算権限者を説得するプロセスにおいて利用される道具だということです。
また第二に、それは「よい教育」を提供する側が、次に、どのような学習を誘発するべきかを知るためのものです。つまりは、モノゴトを前にすすめるための、「Driver」としての側面をもっています。
比喩的にいいますと、「企業内教育における評価」は、「学習効果を知る」だけが目的ではありません。「学習効果をもって、未来をつくること」が目的なのです。
この評価の問題も、企業内教育を担うのは誰なのか、という問題と密接に関連していて、とてもオモシロイですね。
そして人生は続く。
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追伸.
下記はブリンカーホフさんのご著書です。僕も早速注文しました。