「個人と組織の関係」、そして「学習」:ASTD2008リアルタイム報告

 キャタピラ社の人材育成担当者による、「エンゲージメントに関する発表」を聞きました。

 エンゲージメントとは様々な定義がありますが、一言でいえば、「組織と個人の相互貢献的な関係性」のことをさします。

 似たような言葉に「ロイヤリティ」とか「コミットメント」があります。「ロイヤリティ」といえば、個人が組織に対して滅私奉公するイメージですよね。「コミットメント」といえば、個人が組織に対して貢献するイメージです。どちらも、一方向ですね。

 これに対して、エンゲージメントとは、「組織が個人の成長に、どの程度貢献・関与しているか」「個人は組織の業務達成のために、どの程度貢献・関与しようとしているか」ということが問われることになるそうです。

 話を戻して、キャタピラ社は建設機器の製造メーカーで、Fortune100企業ですね。同社では、1998年に「学習する組織になること」を経営戦略のひとつにかかげ、環境の整備を行ってきました。
 2001年には、1)ラーニング、2)組織文化マネジメント、3)リーダーシップ、4)知識共有などを統合して取り扱う企業内大学「CAT University」を整備しました。

 そういえば、キャタピラといえば、Community of Practice(実践共同体)の活動を積極的に推進している企業としても有名ですね。

 社内の情報技術部門で

「なんか、同じ問題に悩んでねー、おれたち。ノウハウはみんなで共有しようぜ」

 という感じではじまったCoPの試みが、爆発的に普及し、その後、社外の取引先まで巻き込んだコミュニティ活動に発展しているという話だったと記憶しています。

 ところで、エンゲージメントサーベイですが、今、アメリカの72%の企業は毎年これを実施しているそうです。ただ、これは「去年もやったら、今年もやろかーという状況でやられている状況」がほとんどで、せっかく活用されたデータが「やられっぱなしの状況」で放置されているのですね。で、キャタピラ社の担当者は、それを分析してみた。

 そうすると、質問紙結果の分析から、「自己のプロフェッショナル度向上のため、時間とお金をかけている」という項目と、「組織へのエンゲージメント」を問う項目のあいだには、強い相関関係が見いだされたそうです。「それがなぜか?」については、言及はなかったことが残念でしたけれど。

 でも、想像力をたくましくすると、この結果からは、いろんな「雑念」がひろがります。

 自己のプロフェッショナル度をあげている人は、通常、転職などに準備している人と考えられ、あわよくば"あいつ、組織をでていくんじゃねーの"と思われがちですが、なぜか、組織との相互公権的な関係性は良好なのですね。
 
 もしかしたら、自分のプロフェッショナル度を向上させている人は、今いる組織との関係性も良好なものを築けるし、また「別に、今、自分のつとめている組織に不満はないけど、もしかしたら数年以内にいい機会があったら職かわるかもねー、なんて漠然と思っているんだよねー」というなのかもしれません。想像力を、めちゃくちゃたくましくすると。

 いずれにしても、このデータだけからは、何とも解釈できませんけれど。「組織と個人との関係」、そして「学習」。このあたりも、わからないことだらけですね。